※この作品はR-18です。

暁の堕姫~堕ちていく人妻~   作:人妻大好き

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22話

 どうも新品らしい二人掛けのソファに雪菜は座る。

 室内には一人だけ。

 物音はなく、橙色の明かりで薄暗く演出されている。

 一通り部屋の中を見て回ったが目新しい物はない。綺麗に掃除された部屋に漂う消臭剤の香りは、きちんとした管理がされている証拠と思おう。

 平日の昼間。珍しく仕事が休みになった雪菜は、家にいても手持無沙汰だったために外に出た。といっても、もともと勉強と鍛錬と仕事以外に趣味のない雪菜には家の外も中も大して変わりはないのだ。

 雪菜がたどり着いたのは郊外にあるラブホテルだ。

 一見、そこはラブホテルとは見えない構造のビルだが、入口にはしっかりと未成年者お断りの看板が立っている。四階建てのビル一棟がラブホテルとなっていて、受付も全自動である。この辺りの知識は、最近になって身に着けたもので綾瀬の受け売りである。

 このホテルは、実は綾瀬の事業の一つであるという。このご時世でも性の産業は一定して経済の裏側を担っている。抑圧された若者たちが自分を解放する場として、ラブホテルは重要な地位を占めている。

 

(まだ、時間まで少しある……)

 

 約束の時間は三十分後。

 張り切って早めに来てしまったというわけではなく、単に郊外だったので移動時間の見積もりを誤っただけだ。しかし、それでも、こうも時間に余裕ができてしまうと、雪菜からすれば楽しみで仕方なかったというような意思表示にも見えてしまう。

 ラブホテルに来るのは、久しぶりだ。

 最近は、店で逢瀬を重ねてばかりである。ラブホテルを利用すること自体、滅多にあることではないし、若いころにすらほとんどこういうホテルに来ることはなかった。

 鏡に映るのはさわやかな春物の衣服を身に纏った自分の姿だ。

 ベージュのワンピースに空色のカーディガンを羽織っただけのシンプルなファッションではあるが、余計な色を付けないことが雪菜の魅力を引き立てている。

 若者向けのファッションではある。四十を目前にした自分が着るのは気が引ける。しかし、雪菜の外見は二十代前半の若々しい姿を留めているので、あくまでもそれは気持ちの問題であった。

 夫も娘もいる身で、異性と外を出歩くわけにもいかない。綾瀬との関係は、狭い個室の中で完結している。こうして、ラブホテルの一室で待ち合わせをするという状況も、あくまでも身体だけの関係だからだ。それでも、家庭でも仕事でも得られない刺激は何にも代えがたい。それが不貞行為だと分かっていても、止めるに止められないくらいに、雪菜は綾瀬との関係に溺れていた。

 夫や娘への背信だと分かっていた。

 罪悪感ももちろんある。

 しかし、呆れたことにそれすらも、この関係を楽しむためのスパイスとなっていることも事実であった。

 もはや、認めるしかない。

 雪菜は綾瀬との肉体関係を楽しんでいる。

 表では絶対に出せない女としての自分を受け止めてくれる存在として。母でもなく妻でもない抑圧された自分を解放できるただ一人の相手として綾瀬を認めているのだ。

 

(性欲、こんなに強いなんて思わなかったな)

 

 性の話題は忌諱してきた雪菜だ。欲情という感情は馴染みが薄い。母になったのも早かった。血の従者となって若い身体を維持しながら、人間の若者以上に性から切り離された生活が十年以上も続いていたのだ。雪菜自身が自覚していないうちに、身体は欲求不満になっていたのだろう。

 この数か月、綾瀬と身体を貪り合った自分を客観的に見てそう思う。

 雪菜は小さくため息をつく。

 今のままがいいとは言えない。それは分かっている。倫理的には悪いことをしている自覚があるだけ辛いのだ。理性が手を引くように叫んでいる。 

 もう何度も、綾瀬との関係を終わらせようと自問自答を繰り返した。

 綾瀬もプロだ。

 綾瀬が個人的に雪菜に連絡を取ることはない。雪菜から距離を取ればそれで終わる関係なのだ。にもかかわらず、二人の関係は続いていた。

 お店の店主と客という気軽な関係がそうさせている。その一方で、今日のようにその範疇を超えて密会することも時たまあった。

 インターホンが鳴った。

 いつもとは正反対に雪菜が綾瀬を迎え入れる。それも新鮮な気がした。

 

「こんにちは。お久しぶりです」

「お久しぶりです、雪さん。最近は、あまりお店にいらっしゃいませんでしたね」

「少し、ばたばたしていまして」

 

 顔を合わせてすぐに何気なく会話を進める。

 直前まで緊張して心臓がどきどきしていたというのに、話始めれば自然に会話が成立した。

 

「それにしても、ホテルで会うなんて珍しいですね」

「今日は、少し時間が空いていて……お店もお休みだったので……やっぱり、ご迷惑でしたか?」

「いいえ、まったく。嬉しいですよ、雪さんに誘ってもらえるなんてね」

 

 何ということのないように綾瀬は言ってくれる。

 急な話だったし、綾瀬の店は定休日だった。もしかしたら、綾瀬にも都合があったかもしれないが雪菜との密会を優先してくれたのだ。

 

「スーツじゃないのも久しぶりですね」

「仕事帰りじゃないですから。変ですか?」

「可愛らしいと思いますよ。とても似合っています」

「そうですか? ありがとうございます。あまり、わたしくらいの歳で着るには明るすぎるとも思ったんですけど」

「そんなことないでしょう。明るいといいますけど、とても落ち着いた雰囲気ですし、雪さんにぴったりですよ」

「あ……はい。あまり褒められると、それはそれで気恥ずかしいですね」

 

 雪菜は嬉しそうにしつつ、頬を染めて俯いた。

 手放しで外見を褒められたのは久しぶりだ。無論、雪菜はその容貌から突出して美しい。そういう声は昔からあったものだが、ずっと聞き流していた。自分の外見に必要以上の関心がなかったのだ。おしゃれから縁遠かったのも、このためだ。

 すべすべとしたハリのある雪菜の頬を撫で、さらさらとした絹のような黒髪を耳に掻き揚げる。 

 それから綾瀬は雪菜の腰を抱き寄せる。

 

「綾瀬、さん」

「いいんですよね?」

「はい……どうぞ、好きにしてください」

 

 もともと、そのつもりで誘ったのだ。雪菜に否やはない。このまま、強く抱きしめて、滅茶苦茶にしてもらいたいくらいだった。

 緊張と期待に震える雪菜の唇を綾瀬は親指で撫でる。もっちりとした弾力があって柔らかく、しかし押し返してくる強さがあった。

 リップグロスを塗って艶を出していたが、べたつきは全くなかった。下唇の向こうに真っ白な歯が見えて、その奥に舌が垣間見えた。その隙間をめがけて綾瀬は口づける。

 

「ん……っ!?」

 

 ぐい、と頤を上げてしっかりと唇を合わせる。

 雪菜は強引な口づけに一瞬固まり、すぐに力を抜いて綾瀬に合わせた。

 

「ふむ……ん、んむ……ん……はぁ……ん……ふむぅ……ん……ふう……」

 

 口を塞がれた雪菜の喉から小さく呻く声がする。

 二人唇は溶け合うようにしっかりと押し付け合っている。

 感触を確認するかのようなキス。そして、さらに深くつながるべく次の段階へ進む。口づけの角度を変えて、音を立てて吸い合ってから、どちらともなく舌を絡め合ったのだ。

 

「はあ、はあ、はあ……んむ……ちゅ……んぁぁ……れおぉ……ちゅる……んふぅ♡」

 

 雪菜は鼻息も荒く綾瀬の舌の裏側を舐めてから、自分の舌を押し当てるようにして奉仕する。

 綾瀬の唇はもとより、舌も涎も雪菜は余さず味わう。綾瀬の舌に口づけて吸い、ぴちゃぴちゃと音を立てて涎を混ぜ合わせる。二人の涎の混合液は顎を伝って糸を引いた。

 

(キス、気持ちイイ……)

 

 唇を合わせる。舌を絡める。それだけの行為が心地よかった。

 雪菜は、はあはあと吐息を漏らしながら綾瀬の首に絡みつき、濃密なキスを求める。

 

「んふっ、ん……ちゅく……ちゅく……れる……あふぅ、んっ……れろぉ♡」

 

 口づけながら、カーディガンを脱ぐ。

 キスだけであっという間にエンジンがかかってしまう。理性の警鐘などあってないようなものだった。

 

「ベッド、行きましょうか?」

「はい」

 

 服を脱ぐ時間すらももどかしい。

 褒めてもらった衣服をあっさりと脱ぎ捨てて、雪菜は白磁のように白く透き通った肌を晒す。

 

「実はもうシャワーを浴びてますね」

「……時間があったので」

「私も時間を貰えればシャワーに行きますけど」

「綾瀬さんは、そのままでいいですよ」

「いいんですか?」

「いいんです。それで。その時間はありますけど、でも、まあ、それで……」

 

 なんとも歯切れの悪い雪菜の物言いではあるが、雪菜がそれでいいとそこまで言うのなら綾瀬が無理にシャワーに行く必要はない。

 

「ふぅ、ん♡」

 

 裸になってキスをする。

 肌と肌が密着して全身で温もりを感じる。

 口づけしながらベッドに倒れ込み、互いに抱き合いながらより深い、貪るようなキスを堪能する。

 

「ちゅ……あふ、んちゅ……れろ、れろ、ちゅ……んふぅ♡ れちゅ……ちゅ……んちゅっ♡」

 

 雪菜は綾瀬の唇にキスを落とし、頬や首筋にも積極的に吸い付いた。そして、綾瀬もまた雪菜に同じようにキスを落とす。

 

「あんっ……あ、綾瀬さん……」

 

 綾瀬は雪菜の上半身に顔をスライドさせた。舌で乳首をなぞる。くすぐったさに雪菜はぴくりと身体を捩る。

 

「相変わらず敏感な乳首ですね」

「恥ずかしいこと、言わないでください」

「ふふ、そうですか。れろぉ」

「あ、んふっ……はあ……ぁっ」

 

 綾瀬に乳首を吸われるとぞくぞくとしてしまう。

 性感帯としてはそこまで敏感ではないはずなのに、綾瀬が吸い付いているという事実だけでも興奮してしまうのだ。

 綾瀬の舌先がつう……と正中線をなぞっていく。その先にある女性器まで一直線に舌が涎の線を引いていく。そして、雪菜の股を掴んだ綾瀬は桃色の割れ目を覗き込むようにして股を開かせる。

 

「ふ、んあっ♡」

 

 雪菜から甲高い嬌声が溢れる。

 綾瀬の舌先がついにクリトリスに達したのだ。

 

(あそこに綾瀬さんの舌がっ……!)

 

 雪菜の膣口がびくびくと震えているのが分かる。

 ゆったりとした綾瀬の舌の動きがもどかしい。

 がっしりと股を抑えられているので刺すような快感から逃げることができず、クリトリスを舐める舌先の動きは恐ろしいほどに的確だ。

 敏感に過ぎる雪菜の弱所に痛みを与えることなく快感だけを与えている。

 

「ん、ふう……んあ……ふう、ふう、んふうぅ♡」

 

 綾瀬の舌がクリトリスに触れる。

 そこから割れ目の表面をなぞっていき、スローペースでその動きが繰り返される。時々、思い出したかのようにクリトリスを口先が啄んでいって、急な刺激に雪菜は目を見開いて腰を跳ねさせてしまう。

 

「雪さん、愛液がどんどん出てきますね」

「ん……んん……だって、それは、んっ、綾瀬さんが、舐めるから。はう……♡ ん、ひぃ♡ あはぁ♡」

「気持ちよくなってもらえてうれしいですよ」

「んぁんっ、あ、んんっ……あっ、やっぱり、気持ちイイ……っ」

「ちゅぷ、れろ……れろ……じゅるる……じゅるるる」

「んんんっ、強いっ、あ――――はあぁ♡」

 

 切ない吐息が愛らしい唇から零れ落ちる。

 シャワーを浴びたばかりの雪菜の額にじっとりと汗の粒が浮かび上がった。体温が上昇し、血流が加速する。身体はオスを受け入れやすいように切り替わり、媚肉が充血していく。ぷっくりと膨らんだそれを綾瀬は二つに割いて膣口を広げる。

 糸を引く愛液で潤う肉の道がおどろおどろしく口を広げる。

 雪の精のように透明感のある美女の媚肉とは思えない、いやらしく愛欲に塗れた膣肉に舌を突き入れる。

 

「ああっ……!」

 

 跳ね上がる雪菜の腰を押さえつけて綾瀬の愛撫は続く。

 舌の上で愛液を味わい、媚肉の表面を舐める。ぞりぞりと舌を動かして表面に滲み出る愛液を舐め取っていく。

 

「ひ、い、ううっ! ん、ああっ……イイっ!」

 

 雪菜が喉を反らしてシーツを握りしめる。

 よほど気持ちイイのだろう。歯を食いしばり、今にもイってしまいそうな顔をしている。舐めている綾瀬にはその表情は見えないが、膣の感じから雪菜が感じているのは理解している。

 だが、すぐにはイカせない。

 綾瀬は舌で敏感な場所とそうでない場所を舐め分ける。刺激の強さも弱めたり強めたりを繰り返し、雪菜の性感を高めつつも絶頂の一歩手前を維持させる。

 

「んあ、あ、あ、ああっ、ん……くう……ふあ……い、意地悪っ、してますねっ」

「はい、だってすぐにイクのは面白くないでしょう?」

「ん……そんな……別にわたしは、んんっ……はあっ、ああっ……くう、あ、またっ」

 

 もう少しで達する。その一瞬を綾瀬は見逃さず、愛撫を止めてしまう。昇天できなかった切なさは雪菜を一層苦しめる。

 

(なんて意地悪なこと……それに、こんなに上手なの、反則ですよ)

 

 雪菜の目じりに涙が浮かぶ。

 膣口からはどんどんと愛液が流れ出ていく。綾瀬の舌がそれを舐め取り、そのたびにぞわぞわとした快感が背筋を駆け抜けていく。

 

「もう、もう……無理……綾瀬さん……イカせてください……」

「ちゅぷ、もうイキたいんですか?」

「はい……お願いします……イカせてください。もっと、気持ちよくして」

「分かりました。あまり、焦らしても……ですしね」

「あ――――ふうん♡」

 

 じっくりと快楽を味わわされた膣肉は、綾瀬の舌を深々と突き立てられて猛烈な快感に酔いしれることになった。

 

「じゅく……れる、れる、じゅるるうっ」

「あひっ、んひっ、ひああ♡」

 

 水音に合わせて雪菜の声が跳ねる。

 綾瀬の舌の激しい動きが快感を増幅し、感覚を狂わせていく。

 

「ひ……あっ、あああっ!?」

 

 やがて、それは雪菜の限界を超えて快楽の奔流となって押し寄せる。

 

「い、イクっ、もうっ!」

 

 この日、初めての絶頂。

 快感が身体をおかしくする。綾瀬はそんな雪菜の腰を押さえつけて、絶頂をさらに継続させるべく舌を這わせる。

 

「はあっ、あっ、い、イクっ、それ、止まんないっ、ああああっ♡」

 

 連続絶頂が雪菜を襲った。爆発するような快感が断続的に繰り返される。

 

「あ、ああ……これ、気持ちイイ……♡」

 

 びくんびくん、と媚肉が痙攣している。

 雪菜は魂が抜けたような顔で呆けている。絶頂が落ち着いて満足げだ。

 

「雪さん、ずいぶんと激しくイキましたね」

「もう、綾瀬さんが焦らすからですよ」

 

 雪菜は頬を膨らませてむくれた。

 とはいえ、まだ挿入もしていない段階でここまでの絶頂は滅多にできない。指や玩具で自分を慰めても、こうはならないのだ。

 

(やっぱり、綾瀬さんじゃないとわたし……)

 

 下腹部に残る快感の残滓が雪菜の胎内に締め付けるような切なさを生じさせる。

 綾瀬を見ると、綾瀬のペニスも発情済みだ。大きく固くなっているのが分かる。男性は変化が分かりやすい。

 

「綾瀬さん、わたしもしますよ」

「してもらえますか?」

「はい」

 

 雪菜に抵抗感はなかった。

 綾瀬のペニスを右手で掴んで上下に扱く。

 横たわる綾瀬の表情を見ながら、手の動きに加減を加える。

 

「こんな感じでどうですか?」

「いいですね。すっかり上手になりました」

「綾瀬さんにいろいろと教わりましたから」

 

 軽口を叩きながら、手の中のペニスがさらに固くなっていくのを感じている。

 

(これで、まだ完全に勃起したわけじゃないのだからすごいんですよね)

 

 雪菜は綾瀬の胸に舌を這わせる。

 

「れろ……れろ……れろ……ん……ちゅ♡」

 

 舌先で八の字を描くように肌を濡らし、乳首に挨拶とばかりにキスをする。さらにペロペロと乳首を舌で弾く。こうしながら手淫も忘れない。ただ、すぐにイカせてしまわないよう手加減は加える。先ほどの綾瀬と同じだが、こちらは焦らすというよりも長く楽しむための技術だった。

 

「れろ……れろ……れろ……れろ……れろぉ……んふ、ん……ちゅぷ……れろぉ♡」

 

 雪菜はキスと舐めるのを繰り返し綾瀬の肌を掃除していく。

 

(汗の臭いと味がする……嫌いじゃない……これ、もっと欲しいくらい)

 

 雪菜は右と左の胸を行ったり来たりして舐めしゃぶった後で、股の間に身体を移動させる。

 目の前に屹立するペニスは十分に勃起していた。

 

「もうすごい臭い。先走りも出ちゃってますね」

「雪さんのおかげですね」

「んふふ……れろ♡」

 

 楽しそうに雪菜は先端を舐める。銀の雫を舌の上に乗せて口内に運び込む。

 

「んちゅ……ちゅ、ちゅ、ちゅ……れろぉぉ♡」

 

 亀頭にキスをして、竿にも上から口づけをする。そして根本から鈴口までを舐め上げていく。

 

「はあぁ……れろぉ……れろぉ……苦いですね……こんなに先走りが、れろれろれろ、いっぱい出てます、ん、れろぉ♡ ん、ふう、はあ、んんっ」

 

 雪菜の舌が激しく綾瀬の竿を愛撫している。

 ざらざらとした感触がペニス中に溢れる。敏感な裏筋を丹念に舌先で刺激してから、見せつけるように大きく舌を出してゆっくりと全体を舐め上げる。頂点まで行くと根本を掴んで固定して、亀頭から口内に飲み込んでいく。

 

「んも……ん、んふう♡ ん、くぷ……♡」

「ん……熱い」

 

 雪菜の熱い口内は涎で溢れている。口の中で待ち構えていた舌がいち早くカリ首に巻き付いて扱き始める。雪菜の舌技に綾瀬の腰は蕩けてしまいそうだった。

 

「はふっ……んむ……じゅる……じゅる……れる、ちゅう……ん、くぷ、くぷ、じゅぷ……んふぅ♡」

 

 水音を立てて雪菜は頭を前後に振る。

 髪がさわさわと揺れてシャンプーの匂いがふわりと香る。そのさわやかな香りとは正反対の肉欲に塗れた女がペニスを喉奥まで咥え込んで、激しくしゃぶっている。

 頬を窄めて大きな音を立てる。唇を締めて愛撫の刺激を高めている。舌が鈴口から尿道に入り込もうとするかのように丹念に舐めてくる。

 

「んふ、はう……んあぅ♡ ん、じゅる……じゅる……じゅる、んあ……ふ……ん、じゅる……れる……んあぁ……んふ……ふぅん♡ あふ、んじゅる……ん……おいひい……れる……れる……れる……じゅるる……ふう、んん……ん……じゅる……ちゅぷ、んうぅ♡」

 

 一心不乱にしゃぶり続ける雪菜。

 綾瀬はすぐに雪菜の口内に精を吐き出したい欲求に襲われる。

 

「くぷ、くぷ、くぷ、くぷ、んじゅうぅ♡ はふ、んは……はあ……今、ぴくんてなりましたね、れろぉ♡ はふ、んちゅ……もうイキそうですか?」

「そうですね」

「ちゅぷ……ん、はあ……」

 

 雪菜はペニスを口から取り出して、竿を扱く。

 

「雪さん?」

「どこでも、好きなところに射精していいですよ」

 

 そう言って雪菜は舌を出して口を開けた。

 涎で糸を引く口内が喉まで丸見えだ。 

 綾瀬の中に美しい雪菜の顔を穢したいという願望と喉奥まで挿入して果てたいという願望がせめぎ合う。

 

「ろうひまひたか? れおぉ♡」

 

 雪菜は射精を促すべく、舌先で裏筋を愛撫する。舌にペニスの先端を乗せたまま左右に揺らし、射精感を急速に高めていく。

 

「う……出ます」

「ん……んあぅ♡」

 

 どびゅるるっ……と、白濁液が亀頭から飛び出した。

 結局、綾瀬は喉奥と顔のどちらかを選ばず、その両方を穢す選択をした。口を開けた雪菜の顔に口内を目掛けて射精しつつ、飛び散る白濁液で妖精のように美しい顔を無残に汚したのだ。

 

「んふぅ、んあ……あふっ、れろっ、はあぁ……熱い、精液」

 

 雪菜は射精をすべて受け止めた。雪菜の反射神経ならば避けることもできただろうに、甘んじて綾瀬の精をすべて口と顔で受け止めたのだ。鼻を突くオスの臭いは雪菜の身体を発情させる。口に入った精液を飲んでから、雪菜は綾瀬のペニスを掴んで扱きながら先端を啜った。

 

「ん……んふっ……じゅるる……」

 

 口の中でぴくぴくとするペニスから残った精液が吐き出される。雪菜はそれをすべて啜り上げると、愛おしそうに舌に絡めて飲んでいった。

 

「はあ……ん、やっぱり、濃いですね。臭いも味も、すごいです」

 

 頬についた精液を指で拭って舐めてみる。

 

「ぬるぬるで苦くて、魔力もいっぱい……綾瀬さんの臭い、顔についちゃいますね」

 

 雪菜は立ち上がってベッドから降りる。

 

「ちょっと、洗ってきます」

 

 シャワーに向かおうとする雪菜は綾瀬は腕を掴んで押しとめる。

 

「雪さん、そのままでいいですか」

「え、でも、汚れてる……んあ」

 

 雪菜を引き寄せた綾瀬はそのまま雪菜をベッドにうつ伏せに押し倒した。

 

「綾瀬さん!?」

「すみません、ちょっと止めようがないんで。そのまましたいです。いけませんか?」

「あ、わたし……ぁ……分かりました。そこまで言うなら、いいですよ」

(精液、顔にいっぱいついてるのに……早く洗わないと乾いて、臭いもつくかもしれないのに。でも、綾瀬さんの、もうこんなに大きい……これ、わたしも早く欲しいって思ってる)

 

 綾瀬のペニスが膣口に当たっている。

 セックスの予感に他のことはすべてどうでもよくなった。顔についた精液の臭いも雪菜を興奮させる。

 

(顔も喉も子宮も全部精液でいっぱいにして欲しいなんて……っ)

「ふ――――んぐぅ♡」

 

 雪菜が欲望を自覚した瞬間に綾瀬のペニスが膣口を突き抜けて侵入を果たした。

 

「ひ――――はっ♡ あは♡ あ、そんな、一気に深いぃ♡」

 

 ずぶり、と雪菜の膣内に押し込まれたペニスが子宮を圧迫する。

 もう何度も使い込んだ雪菜の膣肉は、綾瀬のペニスを簡単に受け入れる。蜜に満ちた膣内のぬめる媚肉は温かくきつめの締め付けでペニスを歓迎してくれる。

 

「ああ、雪さん……すごく気持ちイイですよ」

 

 偽らざる綾瀬の感想だった。

 多くの女と身体を交えてきた綾瀬の経験から言っても雪菜の膣は一、二を争う名器だ。引けば吸い付き、押せば押し返してくる。そして奥で止まればきっちり締め付ける。幾重にも並ぶ襞を一気に突き抜けてまとめて擦り、膣奥にしっかりと亀頭を送り届ける。

 

「んはあぁぁぁああ♡」

 

 雪菜は奥を強めに突かれるのが大好きなのだ。

 何度も身体を交えた今、雪菜の性感帯は完璧にマスターしている。新しい性感帯を開発することもできるが、それはまた別の機会にしよう。

 今はとにかく雪菜との結合を楽しむ。

 そのために綾瀬は腰を打ち付けた。

 

「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ…………ああっ、んぐ……あひっ、はっ、はふっ、んふうぁっ……あっ、あっ、あっ、んあっ、は、激しいっ♡」

「好きでしょう、こういうの」

「んきゃっ♡」

 

 愛らしい悲鳴を上げる雪菜。

 腰を突き上げた姿勢に対して、綾瀬は体重をかけて根本までペニスを突き込んでいる。膣口を思い切り開き、太いペニスを丸々と飲み込む欲望の穴を何度もかき混ぜていく。

 

「ひはっ、んはっ、はひぃ♡ あ、あ、あ、それ、本当に、好きっ♡ はあ、んぉ♡ お、奥、イイです♡」

「奥大好き?」

「大好き、です♡ もっとしてぇ♡」

 

 雪菜は舌を出して涎を零す。

 精液が顔についていることなど忘却の彼方だ。汚れた顔を悦楽に歪めて、強請るように自ら腰をくねらせる。

 

「いやらしい人ですね」

「す、すいません……でも、んあ♡」

「謝らなくてもいいですよ。もっと、してあげますから。一緒に気持ちよくなりましょう」

「はいっ、あ、あ、んああっ、ひふぁ♡ あ、あああ~~~~♡ そこ、そこイイっ、んあっ、あ、あ、んあ、んひっ、イ゛イ゛っ」

 

 ギシ、ギシ、とテンポよくベッドが軋む。

 雪菜は歌うように快楽に喘ぐ。

 

(ちんぽ、気持ちイイ……体中が熱い……これがあれば、もう何でもいい……)

「ん……あはっ、ああっ、ひはぁっ、気持ち、気持ちイイ、ああん♡」

「今日はずいぶんと強い締め付けですね。そんなに欲求不満でしたか?」

「それは、ずっとしてなかったからっ……んふっ、はあ、はあ、ああ……んあっ」

「バイブ、買っていったじゃないですか。使ってないんですか?」

「ん、はあ、使ってます……使ってますけど……ん、ああん、はあ、はあ、あふっ」

 

 綾瀬のペニスの熱と形を膣を通して感じている。

 痛いくらいの快感が雪菜の身体を満たしている。何度もペニスが自分の身体の中を行き来している。この感覚が忘れられなくて、こうして綾瀬と逢瀬を重ねているのだ。

 

「ふっ、んあ♡ あ、あーーーー♡」

 

 嬉しそうに雪菜は相好を崩す。

 じゅぷ、じゅぷ、と音を立てた抽挿で、納まりきらない蜜が股からシーツに滴り落ちた。

 

「気に入っていただけたようで何よりです。オナニーで満足はできなかったんですか?」

「ひはっ、はうっ、んん、いえ、そういうわけじゃ……んああ♡ あ、あ、ああ♡ ふう、ふう、ふううぅ――――ぅ、んああ♡」

 

 雪菜の膣肉が激しく蠢く。

 ペニスを締め付ける力が増している。欲しい欲しいと何度もせがむ子供のような我儘な媚肉が容赦なくペニスを責め苛んでくる。

 

「ん、く……こんなに強く締め付けて。まるで、待ちわびていたみたいですね。雪さん、自分でするときは、誰を想ってしてるんです?」

「んあ……え? あ、それは……んんっ!」

 

 ずんずんと膣奥を連続で突きながら綾瀬は問いかける。

 

「やはり、旦那さんですか? それとも、別の人? 妄想ですからね、誰でも相手にできるでしょう?」

「そんな、意地悪な質問しないで、くださ……んあっ、ふうぁっ、ああんっ、突きながらは、反則っ、はうっ」

 

 バチンバチンと頭の中で電気が弾けたような気がする。

 呼吸が乱れて、気が遠くなるような中で快楽だけが頭に溢れている。

 

「き、気持ちイイ……っ、ひうっ、あ、はあっ♡」

 

 質問の答えが頭に浮かばない。

 気持ちイイというその一念に尽きる。

 

「雪さん、どうなんです?」

 

 静かに綾瀬は問いかける。

 

「旦那さんですか?」

「それは、もちろん……んっ、夫のことを……んんっ、はうっ、想像してっ……っ!」

 

 息絶え絶えに雪菜は答える。

 綾瀬と関係を持ってから頻度が増したオナニー。自分の性欲を自覚したことで、身体を持て余してしまうようになったからだ。雪菜は自然にオナニーを覚え、誰に知られることなく嵌っていった。

 自分で自分を慰めるのだから、不貞も何もない。シチュエーションも相手も自由に決めて構わない。人肌の温もりも香りも存在感もない寂しいものだが、絶頂は等しく味わえる。

 

「旦那さんのセックス妄想するのに、実際に旦那さんを誘ったりはしないんですね。こうして、他の男に抱かれるのに」

「そんな、い、言わないでくださ……んふあっ、ああん♡」

 

 綾瀬に突き付けられる事実に雪菜は動揺し、それが快感を増幅してしまう。言葉と抽挿で同時に責められるのも、今の雪菜には恐ろしいほど効果的だった。

 

「あの人とはもう長くしてない、から……んんっ、誘っても、もう……んあっ、はぁうっ、ん、ん、んああっ」

「なら、旦那さんとはどんなセックスをしてるんですか? 想像の中では」

「それは、それは……っ」

 

 子宮口にペニスの先端が当たっている。

 押し寄せる快楽で思考が纏まらない。身体も頭もどうにかなってしまいそうだ。本来、答える必要のないような質問なのに、雪菜は真面目に受け止めて回答を探している。

 

「雪さんのオナニーのおかずを教えてください」

「お、おかず」

 

 前後に揺れる視界。

 頭をフル回転させて、雪菜は言われるがままに自分の記憶を検索する。思い出せるだけのオナニーを思い出し、その時に自分が何を妄想していたのかを脳裏に描く。

 シチュエーションは千差万別。その日に見たドラマの内容をオマージュしたものだったり、映画や本を題材にしたこともある。

 だが、欲求不満な身体が求めているのは強い性欲の発散で、そのためのネタはそれ相応の内容に絞られる。

 

(あれ……わたし……)

 

 ペニスに貫かれる感覚。本物のそれはもう何度も経験した衝撃で、自分のベッドの上でも何度も想像したものだった。

 

(古城さんのじゃ、ない)

 

 ぞくぞくぞく、と背筋が凍るような戦慄が走った。それでいて、それは快楽がもたらす電流にも酷似していた。

 

「わたしが、想像してたのは……っ」

 

 妄想の中の自分を思い出す。

 大抵の場合それは薄暗い個室でのプレイであった。日常空間では得られない快楽を貪るメスに堕ちた自分が題材だ。

 そこは綾瀬の店で、必然的にプレイの相手は――――、

 

「あ、綾瀬さん、でしたぁ♡」

 

 ぶしゅ、と雪菜の膣口から潮が噴き出た。

 認めた瞬間に背徳感から絶頂してしまったのだ。

 

「私なんですか? 旦那さんじゃなくて?」

「んあ、あ、は、はい♡ そうでした♡ あ、あふっ、んひあぁ♡」

 

 雪菜の声が一層大きくなった。

 膣の締まりも強まった気がした。

 雪菜自身が強烈な快楽を得ていることを窺わせる。

 目の焦点があっていない。下の口の締まりが強くなる半面、上の口のだらしなく半開きのまま悦楽に浸りきっている。

 

「もう分からないんですっ、夫のはっ、ずっとしてないからっ。でも、綾瀬さんのは、んひっ、しっかり、覚えててっ、あ、んあ、はひっ、気持ちイイの、分かってますからっ、だからっ」

「だから私をオナニーのおかずにしてたんですか?」

「す、すみませんでしたっ、勝手に、そんな、んひっ、んあっ、あふあぁ♡」

(ああ、わたし、いつの間にか綾瀬さんのセックスに全部上書きされてたんだ。自分でするときだって、最近はもうこの人のことばかり……っ)

 

 理性が半ば消し飛んだ雪菜は、綾瀬の問いかけに素直に答えた。

 何をされても快楽に変換されてしまう。この状況で綾瀬に責められている今、雪菜は性欲を満たすことしか考えられないのだ。

 

「いいんですよ、雪さん。男冥利に尽きますから」

 

 じゅぶじゅぶと愛液をまき散らす膣奥を責め立てる。

 

「だから、どんどん気持ちよくなってください。もっと、素直になってください。今日はとことんまでお付き合いしますから」

「ん――――ふはっ♡ あはっ♡ んああ~~~~♡ これ、これ、欲しかったんです♡ ぃ、ひあ、あふ、んんん♡」

 

 下腹部に響く生の感触。

 夢でも妄想でも味わえない本物のペニスの重さが堪らない。

 気が狂いそうな悦楽の中で雪菜は悶え苦しみ、時間の許す限り交わり続けた。

 

 

 

 

 

 

 思い返すと恥ずかしいことばかりだ。冷静になってから、どうしてあんなことを口走ってしまったのだろうかと後悔し、顔を紅くする。綾瀬と関わるといつもこうなる。理性の皮を剥がされて、欲望をむき出しにされてしまう。そうなるともう自分が自分でなくなってしまうのだ。いや、もしかしたら、綾瀬を交わっているときのほうが本来の自分なのかもしれない。そう思えってしまうくらいには、あの時間は正直でいられた。

 雪菜は精魂尽き果てるまで綾瀬をセックスを貪り続けたが、さすがにいつまでもラブホテルにいるわけにもいかなかった。

 身支度を整えて、ホテルの支払いを済ませて綾瀬と別れて帰路に就いた。

 膣の奥に熱がある。 

 綾瀬に注がれた精がそこにあるのだ。

 最初はマッサージだけだったのに、いつの間にか挿入を許し、口づけを許し、今となっては中出しまで許容してしまっている。

 一流の霊能者でもある雪菜は、妊娠のリスクを回避する術を有しているということも行為に拍車をかけていた。

 

(今日は、少しやりすぎた)

 

 雪菜から誘いをかけてしまったこともあるが、今日、雪菜は綾瀬とのセックスに嵌り、堕ちたことを自覚した。実際にはもうずっと前から堕ち切っていたのだが、今日はそれを自ら認めて言葉にしてしまった。

 

(わたしはもう、綾瀬さんの……)

 

 ドキドキする。

 不貞による罪悪感よりも、これからに対する期待感が上回ってすらいた。

 玄関に入るとローファーがあった。零菜が帰宅しているらしい。

 リビングに入ると零菜がスマホを弄っていた。

 

「ママ、お帰り」

「ただいま。早かったのね」

「まあね」

 

 零菜はいつも寄り道したり遊びに行ったりすることもあるので、帰りがもう少し遅いことも珍しくない。母として心配はあるが、基本的に真面目な娘だと理解している。少し小言を言いたくなることもあるし、それが煙たがられる原因だとも分かっているが、心配が先になってしまうのだ。

 キッチンに立つ雪菜をしばらく無言で見つめていた零菜は徐に口を開く。 

 

「ママ、ちょっといい」

「ん? 何?」

「見てほしいのがあるんだけど」

「改まってどうしたの?」

 

 雪菜は零菜の神妙な態度に違和感を覚え、零菜の傍に歩み寄る。

 

「これ」

「え?」

 

 零菜がテーブルに置いたのはブルーレイ用の収納ケースだ。その蓋を外すと中には円盤ではなく棒状の物体が入っていた。

 雪菜の目が釘付けになる。あまりのことに頭の処理が追い付かなかった。ケースに入っていたのは、まぎれもなく男性器を模した大人の玩具だった。色は紫色で、毒々しい感じがする。

 

「あの、零菜。その、こういうのはね、その、何というか親に見せるようなものじゃないというか……」

 

 言葉に詰まる。

 親として、こういう道具の所持はしっかりと注意すべきではあるのだろう。もともと潔癖な雪菜は零菜に対しても、生活習慣を厳しめに躾けていた。とはいえ、堂々と見せられると、どう対処していいのか分からなくなる。頭ごなしに否定するのも如何なものか。年頃の娘の性教育をどうするべきか、今更に雪菜は混乱してしまう。

 

「わたしが言いたいのはそういうことじゃなくて、その、何というかママさ、これと同じの、持ってるよね?」

「え?」

 

 今度こそ、零菜が何を言っているのか理解できなかった。

 いや、理解はできたが理解したくなかったと言ったほうが正しいか。

 雪菜の手元にも確かにあるのだ。

 自慰のためにしか使えない、大人の玩具が。だが、それをどうして零菜が知っているのか。使うとき以外は厳重に保管しているはずで、同じ屋根の下で暮らしていても見つけることはできないはずなのに。

 

(まさか、見られた?)

 

 使っているところを零菜に見られた。そうとしか考えられない。雪菜は顔が紅くなったり、青くなったりを繰り返す。

 

「あの、零菜、あのね……これは、その……」

 

 冷や汗が噴き出してくる。

 まさか、自分の情けない姿を娘が見ていたかもしれないのだ。それは親としても人としても終わっている。どうにもならない。

 

「ママ、さ。このバイブなんだけど、見覚えない?」

「見覚えって、あなたのなんて」

 

 言葉を切って、零菜の言葉の意味を探る。

 そして、すぐに、ありえない結論に達した。

 

(あれ、嘘……これ、このバイブ……もしかして)

 

 男性器を模したバイブ等探せばいくらでも存在する。ネット通販で簡単に手に入るのだから、零菜がこっそり入手してもおかしくはない。

 しかし、このバイブは違う。

 忠実に男性器を模したそれは独特な筋が入っている。ただの棒状ではなく反りもあるし、しっかりとした亀頭とカリ首も完備している。何よりも材質。人肌を思わせる表面のコーティングに本物に近い触感を演出する特殊なゴムでできたバイブは、その辺の安物とはまったく違う使用感を生み出している。

 ほかならぬ雪菜がこれの色違いのバイブを使っている。零菜が言う「これと同じの、もってるよね?」というのは、バイブの有無ではなく、商品の有無を指しているのだ。

 

「これね、綾瀬さんの店でしか買えないんだって。同じものはネットでも手に入らないって。だから、持ってる人は、お店に行ったことのある人だけ」

「零菜、あなた、まさか……」

「ママ……綾瀬さんとエッチ、してる、よね?」

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