暁の堕姫~堕ちていく人妻~ 作:人妻大好き
「……やっぱ、入りづらいわ」
と、渋い顔で呟いたのは、美しい顔立ちの女性だった。歳の頃は二十代前半くらいだろうか。服の上からでも分かるメリハリのある身体はモデル顔負けだ。出るところは出ていて、絞るところは絞っている。
彼女の名は浅葱。旧姓藍羽、そして今は暁姓を名乗っている。
言わずもがな、暁の帝国の関係者――――第四真祖の妻の一人であった。
そんな浅葱は、今は暗闇に覆われた路地裏の一画に一人で佇んでいた。すでに深夜だ。仕事帰りのサラリーマンが酒で顔を紅くして歩いている大通りならばまだしも、ビルとビルの間の狭い路地裏に人気はない。
真っ暗な地下世界へ通じる階段が、浅葱の前に存在している。この先にある店に用があるのだが、なかなか一歩を踏み出すことができないでいた。
「く……予約もしちゃったし、いい加減行かないと迷惑よね」
女は度胸と腹を括った浅葱は、地下に向かって階段を降りていく。
その場の勢いに流されたところはあるが、まさか自分がこんな店を訪れることになるとは。
その店は、女性向け性感マッサージの専門店だった。ついでに女性向け風俗店でもある。浅葱はそういったジャンルに詳しくないので、知人を通して知った。
意外だったのは、長年の付き合いになる築島倫が常連客だったという事だろう。浅葱も倫も吸血鬼の血の従者として実年齢よりも若い年齢で老化を止めているのだが、それでも長く夫婦生活を続けているとマンネリ化してしまうものだ。
相手は吸血鬼。それなりの立場になれば複数名の妻を持つことも一般的だった。最初期の妻である浅葱は育児に仕事にと忙しくしている間に、夫は次々と女性と関係を持ってしまった。いや、それ自体はもともとだったが、最近は国が大きくなるに従って夫婦の時間も減ってしまい、ここ数年はぱったりと途絶えていた。
肉体年齢が若いというのが、ある意味で問題で、性的関心が衰えていないのだ。夫は別の女でも抱いて解消できるが、そういった相手のいない浅葱には由々しい問題だ。しかし、だからといって誰かに相談できるはずもなく、だらだら悶々とした日々を送っていった先に、この店に辿り着いてしまった。
「いらっしゃいませ」
と、気持ちのよい挨拶をされる。
夜も遅いのに、快活な雰囲気だ。
店の雰囲気はバーのようで、思っていたのと全然違った。シックというか大人びているというか、落ち着いた内装は、ここが風俗店だということを忘れさせる。
「ご予約のお客様ですね」
「はい……えーと、サナです」
浅葱は、戸惑いながら偽名を名乗る。予約するときに、こうした店は本名でなく、別の名前で予約してもいいと知ったからだ。咄嗟に頭に浮かんだのは、かつての恩師が「おかしくなった」時に名乗っていた名前だった。
「サナさんですね。はい、分かりました。お部屋にご案内します」
気のいい男性スタッフに案内された個室は、ホテルの一室のようだった。大型液晶モニターがあるし、シャワールームもあるようだ。ソファはなかったが、代わりにベッドが部屋の真ん中に置いてあった。通常のマッサージ店には通ったことがあるので、それに比べれば聊か宿泊施設のような色合いが強い。
とりあえず、ベッドに腰掛けた浅葱にスタッフが名刺を渡してくる。
「綾瀬、さん?」
「はい、オーナーの綾瀬と申します。本日は、倫さんの紹介でご来店いただきましてありがとうございます」
「あ、はい。よろしくお願いします」
物腰柔らかい挨拶のおかげで、多少は緊張も解れたか。それにしても倫は、まさか本名でこの店に通っているのか。ものすごい度胸だ、と浅葱は内心で呆れてしまう。「倫」でも別に個人がそれだけで特定できるわけでもないのでいいと思っているのかもしれないが。
「さて、本日は七十分の基本コースとなります。お飲み物は、どうされますか?」
「麦茶で」
「ありがとうございます」
一通りの説明を受けてから、浅葱はグラスに注がれた麦茶で唇を濡らす。
初めての来店なので、基本コースとなる。オプションやその他のコース指定は、二度目の来店からだ。基本コースの内容はアロマオイルを使った通常のマッサージと性感マッサージのみだ。
(二度目があるわけでもないし)
と、浅葱は思う。
興味本位で性感マッサージを体験してしまったが、風俗など通うものではないと分かっている。
シャワーで汗を流してから、タオルを身体に巻きつけてベッドに戻った。
「緊張されてますか?」
「少し」
と、言いつつ、浅葱は緊張しっぱなしだ。
夫以外の異姓に素肌を見られることに加えて、性器にも触れられることになるのだ。マッサージと銘打っていなければ、断固お断りだ。
それでも、こんな店に足を運んでしまったのは、やはり日頃の夫婦生活に不満があるからだろうか。
浅葱は促されるままにベッドにうつ伏せになった。タオルを肌蹴させて背中を出す。
「それでは、通常マッサージから始めますね」
「お願いします」
度胸度胸と浅葱は何度も念仏のように唱える。
ほんのりと香るアロマの香が不意に鼻腔をくすぐった。ラベンダーの香りだ。
「ラベンダーですか」
「その通りです。おなじみですね。本日は、ラベンダーのアロマでマッサージを楽しんでいただきます」
アロマオイルが背中に垂らされる。
香りのよいアロマオイルのおかげで、身体の緊張が和らいでいくような気がした。
肩甲骨から背筋にかけてを丹念にマッサージしていく。綾瀬の大きな手の平が優しく背中を撫でて、オイルを伸ばし、その上でツボをぐっと指圧してくる。
「う……ん……」
「痛みはありますか?」
「そう、ですね。少し、だけ」
「例えば、こことか」
「ッ……い、つつ」
「やはり、凝ってますね。デスクワークが多いお仕事ですか?」
「はい……分かります?」
「もちろん、この仕事をしているとよくここが凝ったお客様がいらっしゃいますから。大抵、長時間座ったままの姿勢でお仕事をなさっていますよ」
「あはは、やっぱり同じとこに来るんですね。あたしも、長いと十時間は座りっぱなしで」
浅葱の業務はパソコンとの勝負だ。といって、浅葱は天才プログラマーである。国家レベルのサイバー犯罪すら、彼女一人で対応できる。その分、浅葱にかかる負担も大きい。パソコンとのにらめっこは、もう二十年以上になる。
探り探りではあったが、綾瀬の指圧はほど良い刺激になった。聞けば整骨もあん摩もできるらしい。それらを組み合わせて、独自のマッサージを行っているという。
確かに心地よい。ラベンダーの香りとの組み合わせが最高だと感じた。筋肉が深いところから解れていくような実感がある。
マッサージは腰から両足に及び、丹念に行われる。ふくらはぎはくすぐったかったし、太ももは気恥ずかしかった。
「仰向けになってください」
「はい」
すっかり気持ちよくなった浅葱は、言われたとおりに仰向けになる。
すると、タオルで隠されていないので、すべてがありのままに曝け出されていることに遅れて気付いた。ぼうっとしていて、何も考えていなかった。
「あ……」
「どうしました」
「い、いえ、何でも」
どうしよう、と一瞬考えてしまったが、綾瀬は別に何か思うところがあるわけでもないらしい。それに、これからマッサージを続けるのにタオルで隠していたらできない。もともと、そういう店だと分かって来店しているのだから、とりあえず指示には従っておく。
「では、続けますね」
そう言いながら、綾瀬はアロマオイルを浅葱の身体に塗布していく。首の付け根から、鎖骨を通り、ついに乳房に手の平が至った。
大きく、形の良い乳房だ。二十代前半で老化を止めているので、垂れることなくハリがある。そんな浅葱の乳房を綾瀬は手の平で包み込み、優しく揉みしだき始める。
「う、ん……ぅ」
(始まった……! どうしよう、これ!)
萌葱は乳房に与えられる甘い刺激に困惑しながら、冷静さを保つよう心がける。
ここに触れたことがあるのは自分自身を除いて夫と娘だけだ。絶対不可侵の領域に、マッサージと称して他人が触れているということに罪悪感と共に不埒な昂揚感があった。
綾瀬の手の平に張り付く瑞々しい肌の感触。少しばかり乱暴に扱っても型崩れしない乳房は、多くの女性と関係を持ってきた綾瀬からしても希少な逸品だった。
扱いを間違えないように慎重に慎重を期して、ゆっくりとマッサージを重ねていく。アロマオイルを染み込ませるように、浅葱の乳房に快感を蓄積させていくのだ。
「ぁ……ん……ん……ぁ、ぅ……ん……ぁ……」
浅葱は小さく吐息を漏らす。
快感を堪えているという風でもない。小さな快感が、彼女の唇から音を漏らしているのだ。
乳房を下から支えるように持ち上げて、ぷっくりと勃った乳首を摘む。
「あんっ……ふ、あ……んんっ」
恥ずかしげに浅葱は顔を紅くする。
「声、出したくなったらいくらでも出していいですからね。隣には聞こえないようになっていますから大丈夫です」
「そうかもしれませんけど、でも……んん……きゃ……ぁ、く、ぅ」
(この人、胸の扱い、上手すぎ……!)
浅葱は内心の驚愕を秘めて、シーツを握る。
さすがは女の身体に慣れている。浅葱は、自分の胸でここまで気持ちよくなったことはなかっただけに、驚愕も一入だ。
丹念なマッサージは、あっという間に浅葱の乳房を開発していく。やはり感じるのは乳首だ。乳房を揉まれて高まった性感は、乳首を刺激されて爆発的に昂ぶってしまう。
「んんんッ……あ、ふぅ、ぁ……んっ……ぁ……ふ、ぅんっ……!」
じりじりと責められている。
我慢しようとしているが、どうしても声が漏れ出てしまう。浅葱の額に汗が滲んだ。乳首を重点的に弄られ始めてからは、絶え間のない快感が両乳首に集中している。
「ふ――――あ、んんッ♡」
思わず、声を上げてしまった。
乳首とは関係のない、まだ触れられてもいない秘所がじれったそうに濡れだした。
「サナさん、そろそろこちらも触れていきますよ」
「ふぁ……? ぁ、そこ……ん、んんっ!」
太ももの間に手を差し入れた綾瀬は、浅葱の秘所に指を伸ばしたのだ。温かい液体が滲み出ている。大陰唇を愛撫しながら、乳首も同時に責める。二箇所を触れるか触れないかというギリギリの線で愛撫し、浅葱の反応を窺う。
(何これ、こんなの卑怯……! 二箇所同時に、しかも、そんな弱くなんて……!)
乳首を責められて浅葱の性感は高められている。長年のセックスレスが蓋をしていた性欲まで、引きずり出されているようだったのだ。
そこにきて、焦らすような指技に浅葱は心よりも先に身体が屈しそうになっていた。
「ふ、はあ……ん……ぁ、ぁ……あ……あ……ふぅ、ん……あっ……あ……ん……ふうぅ……ん、ぁ……あ」
太ももをいやらしく撫でる綾瀬。乳首も同時に何度も弾いてくる。身体中が性感帯になったみたいに火照って、どうしようもなくなっている。
(これが、本当の性感マッサージ? ヤバイかもしれない、こんな……全身が熱い……早く、触って欲しくなるなんて)
浅葱の瞳に欲情の火が灯る。声も先ほどよりも大きくなってきた。僅かな刺激でもしっかり感じられるようになってきた。
「直接、マッサージしていきますからね」
「ん……♡」
浅葱は抵抗しなかった。これは所詮、マッサージなのだから大丈夫だと言い聞かせて自分の股を開く。大陰唇を広げて、膣口につっぷりと指が差し込まれる。
「ふ……んあっ!」
ぞわりとした感覚が浅葱の膣内に広がる。二本の指が、ゆっくりと侵入してきたのを感じたのだ。
「ん、あ……ぃあ……あ、はあ……んんんっ。ふう、はあ、はあ……あ、ああ、ぁ……んんっ!」
唇を噛んで、浅葱は頭を左右に振る。
綾瀬の指は、膣内に入ってから襞と襞の間を行き来している。時にGスポットと的確に突いては浅葱を喘がせてくる。
「ああ、んあっ、あ、はあ――――ん、くふ、ぅ、んんっ、んあ、ああ、ああ、ふああ♡ あ、やめ、んあ、そこ、ヤバイっ……あ、きゃあ♡ あ、んあ、ふうぅ、んふぅ、ふあ、あああ、ダメ、んあ、ああああ♡」
浅葱の懇願も聞かず、綾瀬は指責めを繰り返した。
愛液がどんどんと溢れてくる。実に素直な身体だった。どこが性感帯で、どう責めればいいのかすぐに把握できた。
「んあっ、あ、あ、あ、あ、ああッ。ん、ふぐ、ぅ、んあ、ああ、ああ! んく、あ、はあ、ん、ん、んんんッ!」
Gスポットを断続的に刺激する。さらに、奥の方にまで指を押し込んでポルチオを狙う。手マンの速度そのものも上げている。
すでにそれをと分かるくらいに声を上げている浅葱に対して、綾瀬はさらに苛烈にマッサージを続ける。
きゅんきゅんと下腹部が熱を持ち、淡い絶頂を繰り返しているのが膣内の媚肉の反応から分かる。
「やだっ、んあ、や、い、イク、ん! んんっ! い、いあ、はあ……ん。無理、ん、そんな、激し、く、あ、ふう、んっ、んあ。くひ、ぃ、ぃ、ぃあっ……あ、んん♡」
指を抜こうとすれば絡みつき、押し込めば抵抗する。分かりやすい膣の反応だ。愛液も順調に出ていて、浅葱の膣内の性感帯は把握できた。
浅葱の腰が跳ねて、足の筋肉がピンと張る。
「んん、んん、はあ、ア――――っ、んあ、ふう、はあ……や、あ、ああっ、また、来るっ、ん、んん……っ! はあ、ふう、ふう、んあ、あ、あ、ああああああっ……!」
がたんとベッドが揺れる。
強烈な快感が浅葱の身体を勝手に振り回しているのだ。絶頂で腰が上がり、脱力してスプリングを軋ませる。全身の血流がものすごく早まって、気持ちよくなることしか考えられなくなってしまう。
「ふぐぅ、ん、はあ、あ、あ、イイっ……ん、ふう、んんん♡」
「奥の方が敏感ですね」
「それは……ん、知らない、く、ふう、ぅ、ん、あっ、あっ、あっ、ああっ♡」
言われるまで考えてもいなかったことだ。
しかし、そう指摘されると綾瀬の指が膣奥を刺激したときのほうが、強い快感を得ているような気がしてくる。自分でも知らない性感帯を探し出されてしまったようで、浅葱は顔をさらに紅くする。
(あたしの身体、こんなに敏感だったんだ……! まずい、気持ちよすぎるっ!)
「ああ、もうダメっ♡ はあ、ん、気持ちイイっ……んくふぅ、ん、ああ、い、くぅ……!」
我慢することも忘れて浅葱は嬌声を上げる。
もう何回イッたか分からなくなった。秘所はとろとろに蕩けて愛液を垂れ流し、綾瀬の指が最奥から愛液をさらに外に掻き出している。
恥ずかしいことなのに、どうしても抑えることができなかった。媚肉は絶え間なく与えられる快楽に屈し、綾瀬の指にだらしなく吸いついている。
「あ――――ん、ふうあ、ふぃ、ぃ、あ、あああああああああああああああッ♡」
この日一番の絶頂が浅葱を襲った。
来た、まずい、そう思った瞬間には、我慢の限界を超えていた。あっけなく、浅葱は崩壊してしまった。喉を震わせ、背筋をそらし、淫らなえびぞりを見せ付ける浅葱。身体の自由はすでになかった。挿入された綾瀬の指に全身の性感帯が刺激されているようですらあって、とてもではないが抵抗できる快楽ではなかったのだ。
「はう、んあ、はあ……あ、はあ……ふうあ……」
絶頂の余韻で身体が熱かった。
綾瀬は指を抜いて、浅葱を自由にした。快感がなくなっても、秘所の熱は変わらない。浅葱は自分で確かめるように秘所に触れてみる。
(まさか、こんなになるなんて……)
浅葱の指はびっしょりと濡れていた。自分の身体からこれが分泌されたのだと思うと信じられなかった。
「そろそろ時間ですね」
と、綾瀬は言った。
七十分がすでに経とうとしている。
あっという間に時間が過ぎ去っていた。
「ありがとう、ございました」
浅葱は呼吸を整えながら、そう言うのが精一杯だった。
身体の火照りがすべて解消したわけではない。むしろ、今まで封印していた分も合わさって、増したようにすら思えた。
こんなに気持ちよくなれるのなら、また来てもいいかもしれない。機会があれば、と浅葱は不意にそう思った。
雪菜ルートとの繋がりはないです。