暁の堕姫~堕ちていく人妻~ 作:人妻大好き
身体の奥底から噴き出した熱がとめどなく全身を駆け抜けて抗いがたい衝動となって理性を壊す。
頭は高熱を出したかのようにぼんやりとして、しかし身体の感覚は鋭敏になっている。
カーテンを通った月の光が室内の暗闇を青白く取り払う。月明りで浮かび上がるのは白銀のシルエットだ。抜けるような白い肌とはよく言ったものだ。身体の凹凸で生まれた影と青白い月光のコントラストが艶めかしくその女体を演出している。
「ん、ふぁ……あ、ふぅ……はあ……はあ……んあっ」
美しい。
あまりにも美しい妖精にも例えられる面貌が悦楽に染まり、折れそうなくらいにくびれた腰を波打たせ、激しく上下させている。
「ん……ん……いい、すごくいいよ……はあ、んっ……もっと、突いて、いいから……はあ、はあ、んんっ」
その唇から媚びるような嬌声が流れ出る。
精を求めて蠢く媚肉を要望の通りに突き上げる。
ベッドが軋みを上げて、小さな身体が大きく揺れる。快楽に顔を歪ませて、ひと際甲高く彼女は喘ぐ。恐ろしいほどの欲望が鎌首を擡げて、オスを高ぶらせ、ペニスはますます固く鋭くなっていく。
酒の匂いに交じった汗と女の香りは、世代を問わず男を酔わせる媚薬も同然だ。
「く……雪菜さん」
「はあ、はあ、んんっ、はあ……ああ……気持ちイイ……すごくいいよ」
雪菜と呼ばれた女の下で快楽に顔を歪めるのは少年から青年に移り変わろうかというくらいの歳の男だ。若いというよりもまだ幼さを残している年齢に見える。
外見で年齢を推し量るのは難しいが、人間であると仮定すればまだ十代でも納得できる。そんな少年にしがみ付き、腰を打ち付けながら雪菜はその首筋に淡い桃色の唇を吸い付かせ、囁く。
「もっと……もっと……突いて……綾瀬君……はあ、はあ、このまま、イカせて……」
綾瀬は華奢な身体を抱きしめる。
求められるがままに性欲を吐き出し続ける。一度や二度では終わらない。精力を持て余した思春期の童貞ならではの感情に任せた突き上げで、「幼馴染の母親」を突き上げる。
なぜ、こんなことになったのか。
いまいち、思い出せない。
どうでもいいと思った。
理由も経緯も今となっては意味がない。
勢いに任せて交わって、ただこの快感があるだけだ。
突き上げて、喘がせて、膣の奥まで征服する。
恐ろしいほど強くに、大胆に腰を動かす。性を貪るオスとメス。淫らな男と女の交わりは、眠りに落ちるまで延々と続いた。
☆
暁の帝国は夏の真っ盛りを迎えていた。
南の島に降り注ぐ太陽は極めて強烈。また人工島であるがゆえのヒートアイランド現象は世界最先端の科学技術の粋を結集してもなお殺人級とすら思えるレベルだ。
強い日差しを受け止めて柔らかくしてくれるカーテンがさっと開き、まばゆい太陽光が目蓋を焼く。
「うあ……暑っ」
光を弱めるカーテンは熱も弱めてくれている。それがなくなれば顔面に日差しがストレートに届くことになる。慌てて少年は日差しを避けるべくタオルケットに潜り込もうとして、無理矢理タオルケットも没収される。
「何をする?」
「呼んでるんだから、そろそろ起きてよ。パンが湿気るじゃん」
少年の快適な睡眠を妨害したのは、顔なじみの少女だ。艶やかなセミロングの黒髪と抜けるような白い肌の対比が美しい。透き通った青い瞳は父親からの遺伝だという。母親の学生時代にそっくりと言われる顔立ちは、鼻筋が通っていて人形のように整った美しさだ。それでいて機械的でなく、人好きのする多彩な表情が魅力的でもある。暁零菜。この国のお姫様の一人で、少年――――綾瀬の幼馴染かつ同居人だ。
零菜は引っぺがしたタオルケットを手早く畳み、ベッドの上に放り投げてから、開いたカーテンをタッセルで纏めている。カーテンがなくなれば室内の気温は上がる一方だ。零菜は部屋からも綾瀬を追い出そうとしているようだ。
「綾瀬君のことだから、そうそう起きてこないとは思ってたけど、もう十時だからね」
「起きてたよ、頭は。ベッドから出なかっただけで」
「知ってる。だからベッドから出て。まったく、夏休みに入ったからってだらだらするのはよくないから……っ」
振り返った零菜が顔を紅くする。
零菜の視線は綾瀬の一点に吸い寄せられている。綾瀬はTシャツとボクサーパンツという下着だけのスタイルだ。そしてボクサーパンツは少々自己主張を強めてテントのようになっている。
「あ、朝からそんなの見せないでよっ」
「すまん……ていうかこれは生理現象だし、タオルケット取ったのお前じゃん」
「……っ」
零菜の不機嫌ゲージが上昇したのを感じた。
真っ赤な顔で国語辞典を手に取るあたり高い殺意が伺える。
「待て、辞書構えんな。それ、マジで痛いんだぞ?」
さっと身構える綾瀬。
電子辞書が当たり前となった今では珍しい紙の国語辞典は、おそらく綾瀬が所有する本の中では最も重量がある。厚紙のケースに入っているので空中でページが開き失速することもない。投擲武器としてはかなり優秀な部類だろう。
零菜は見た目が華奢な少女ではあるが、最高位の吸血鬼の一人だ。筋力は並の人間よりも強いし、運動神経も抜群なのだ。二メートル程度しか離れていない標的に紙辞書をクリーンヒットさせるのは難しくないだろう。電子機器と違って投げても壊れないというのも魅力的な小道具だし、綾瀬が勉強のためにこの国語辞典を開くことは皆無なので、ここ数年、零菜の投擲武器としてしか使用されていないのだった。
零菜はジトっとした目で綾瀬をねめつけてからため息をついて凶器を机の戻した。
「ご飯、出てるから」
「おう、ありがと」
「ちゃんと、着替えてきてよね」
「分かってるよ」
さすがに下着姿で部屋を出るほど耄碌はしていない。
ここは綾瀬の実家ではない。
綾瀬は居候の身である。我儘は言わないし、同居人を不快にすることも極力避ける。今回のような事故は、残念ながら一緒に暮らしていれば多少は発生する。気を付けてはいるが、完全に防ぐのは難しいのだ。
ベッドを抜け出した綾瀬は、小さくため息をつく。
昨日の夜のことを思い出す。目が覚めた時、ベッドの上はいつもと変わりがなかった。あれだけ吐き出した精も一切残されていなかったし、雪菜もいなかった。ならば、あれは夢だったのだろうか。
夢にしては鮮烈な印象が残る。
しかし、そうなる前のことが判然とせず、思い出せない。頭が妙に痛み、身体がだるい。この体調不良が二度寝の原因だった。雪菜と関係したという実感がありながら、そこに至る経緯が分からない。結果、妙に記憶に残る夢としか思えないのだった。
「おはようございます」
「おはよう、綾瀬君」
キッチンで洗い物をしている義理の母とも言える女性に声をかける。暁雪菜。零菜の母だ。二十歳の時に零菜を産んだという彼女は、すでに四十近い年齢なのだが若々しい見た目をしている。吸血鬼の血の従者になることで成長を止めているのだ。雪菜の外見年齢は二十歳を少し越えたくらいで固定されている。零菜を大人びさせたような見た目で、未熟さを感じさせる若々しい外見と多くの人生経験を積んできた大人の余裕のミスマッチさが魅力的だ。
「パンだけだけど、朝は軽くでいいでしょう?」
「はい、ありがとうございます」
綾瀬の席には二枚のトーストが置いてある。ハムを乗せて焼いただけの簡単なものだ。そしてテーブルの真ん中にあるのはサンドイッチだ。雪菜手製のサンドイッチに零菜が手を伸ばしているところであった。
すでに零菜は自分のトーストは食べきっているようだ。朝から食欲旺盛なことだと思ったが、口に出すとまた辞書が襲い掛かってくるかもしれないので黙っていることにした。
「いただきます」
トーストを齧りつつ、テレビを眺める。静かに冷気を吐き出すエアコンのおかげで室内は快適だ。外に出れば真夏の灼熱が攻め寄せてくるところだ。ニュースでも今日の気温が今年の最高気温を更新するかもしれないと言っている。
「また異常気象か」
「いつも言ってるよね」
「異常じゃない年が異常って感じでいつものことだよな」
気象情報に対して特に意味のない感想を漏らす。
去年も一昨年も気温のことで異常気象と騒いでいた。もう覚えていないがその前の年もそうだったに違いない。もう平均的な気象の年のほうが珍しいのではないか。
天気予報の技術も年々進歩しているらしい。かなりの精度で天気は予報されている。ゲリラ豪雨とかつて呼ばれた突発的な雨も、時間単位、地域単位の予報が確立してからは注目度が下がっている。
「ん、野菜しかない」
トーストを食べ終えて、サンドイッチを楽しもうと思ったところでサラダとハムのサンドイッチしかないことに気づく。
さっきまで大皿の上にはタマゴハムサンドもあったはずだ。
「零菜、タマゴばっか食ったな」
「タマゴ好きだし、綾瀬君が来るのが遅かったから」
「一個は残しといてくれよ」
「あら、ごめんね」
特に悪いと思っていない零菜は口だけの謝罪をする。
綾瀬も零菜を追及する気は全くない。
文句を言いながらもサラダサンドを頬張っていく。
もともと、綾瀬は少食なので、トーストとサラダサンドだけで十分だ。あまり食にこだわりもない。
「綾瀬君、お腹空いてない? あまり、量を用意していないんだけど、大丈夫かな?」
キッチンでの作業を終えた雪菜が話しかけてくる。
「あ、はい。大丈夫です」
「そう、よかった」
目の前でサンドイッチを食べている少女とよく似た顔立ちの雪菜。しかし、立ち居振る舞いは天と地ほども差がある。
真面目で厳格、しかし淑やかさも併せ持つ美女である雪菜と真面目ではあるが時折ずるがしこいところもある零菜。
水と油な部分が二人にはあって、二人暮らしだとどうしても価値観や優先順位がぶつかってしまうことがあるのだが、綾瀬という異分子が間に挟まることで衝突が避けられている状況とも言えた。
淡く微笑む雪菜は、そのままリビングを後にする。綾瀬はその背中を目で追ってしまう。
昨夜のことがフラッシュバックする。
自分の腰の上で雪菜が激しく悶える様が目蓋の裏側に焼き付いているようだった。
朝、最初に目覚めたとき部屋には綾瀬一人だった。雪菜と身体を交えた痕跡はまったくなかった。雪菜のほうも特段、綾瀬に対して何を言うでもなく普通にしている。
あれが夢だったとは思えないが、もしかしたら行き場のない性欲が見せた淫夢だったのかもしれない。
あまりにもリアルな夢ではあるが、綾瀬の場合は可能性が無きにしも非ずである。
綾瀬はいわゆる夢魔の近縁種である魔族である。
世の中には様々な魔術や超能力があり、そして多種多様な魔族が共存している。巨人種であったり、獣人であったりは外見から人のそれと異なるものを持つものもいる。
夢魔は魔族の世界ではさほど優れた能力を持つとは言えない。精神干渉系を主とする能力を持ち、特に性欲に関わる力を有するのが一般的だ。
性欲が強まる思春期を迎えた綾瀬は自分の夢魔の力にも悩まされるようになっている。精力が実感できるほどに増していて、自慰の回数が増えている。それにも拘らず、淫夢を見る機会も日に日に増えている。昨夜の淫夢も、その影響なのかもしれない。現実と区別がつかないほどの夢というのはいいのか悪いのか。ともあれ、寝ているところを誰かに見られたくはないというのが現状だ。
「零菜はいつ出るんだったっけ?」
「夕方、五時くらいかな?」
「夕ご飯はいる?」
「いらない。向こうで食べるから」
食事を終えた後で、雪菜と零菜がそんな話をしている。
零菜は今日、異母姉の萌葱のところに遊びに行く予定が入っていた。母親違いの姉ではあるが、姉妹中はすこぶる良好だ。母親同士も学生時代からの友人だそうで、非常に親密な関係を続けている。零菜と萌葱はたびたび互いの家を行き来し、今日のようなお泊り会も頻繁に行っていた。
「後でお菓子用意するから、浅葱さんに持って行って」
「分かったー」
一緒に暮らすようになってから、何度も同じような光景を見てきた。以前は綾瀬も一緒にお泊り会に参加していたが、さすがに思春期になってからは遠慮するようになっていたし、そんな心境の変化を母親たちは温かく受け入れていた。
「さて、と。わたしもそろそろ準備しないと」
雪菜は時計に目を向けて慌ただしく廊下を行き来する。
もう少しで正午になる。
多くの学生が夏休み入り自由を謳歌する八月初頭ではあるが、社会人は仕事がある。雪菜もまた遅番なだけで、今日は普通に出勤日だ。
薄く化粧をして、すらりとスーツを着こなす。若々しい外見は新入社員と見まごうものではあるが、外見年齢があてにならないのは暁の帝国ではよくあることだ。
「綾瀬君、後はよろしくね」
「はい、いってらっしゃい。雪菜さん」
一時間後、雪菜はそう言い残して家を出た。
今日の帰りは遅くなると言っていた。
「綾瀬君さあ、今日どっか行ったりする?」
と、零菜が話しかけてきた。
「いや、全然。そんな予定は入ってない」
「じゃあ、誰か呼んだりは?」
「ないよ。てか、勝手に人呼んだりできないだろ」
「まあ、そりゃそうなんだけど」
零菜は何か言いたげだ。
綾瀬の交友関係は決して広くはないが、狭くもない。休日に友達と外出するくらいは珍しくないが、この日は特に予定を入れていないのだ。
友人と外出することはある一方で友人を自宅に呼ぶことは皆無である。理由は綾瀬が雪菜に引き取られた居候だからということもあるが、そもそも、雪菜と零菜の立場が特殊だからである。
暁の帝国において、暁性を持つのは最上級の一族だけだ。すなわち、皇帝である第四真祖とその妻と子だけである。
第四真祖は他の夜の帝国の真祖と異なり吸血鬼にしてはまだ若い。孫すら生まれていないくらいなので、第二世代までが暁性ということになる。
つまり、目の前にいる暁零菜は正真正銘のお姫様であり、育ての親ともいえる雪菜は皇帝を取り巻く妃の一人なのだ。
そんな二人と一緒に暮らしているというのは、極めて異質なことではある。
綾瀬は皇族ではない。
亡くなった雪菜の友人の息子というだけだ。
暁家を狙うテロに巻き込まれたという事実があるにしても、雪菜が亡き友人の子を引き取るというのは、珍しいことであり、暁家が歴史の浅い皇家だからできたことであった。
だからこそ、綾瀬が一存で人をこの家に上げるなど不可能なのだ。
「綾瀬君の家には呼んだりは?」
「ないって。今日は何も予定が入ってないんだ」
と、綾瀬は答える。
綾瀬にも宛がわれた家がある。かつて実の両親と暮らした家は暁家に引き取られたときに解約せざるを得なかったが、その代わりに綾瀬が中学に上がった頃にマンションの一室を与えられている。
暁家の綾瀬の部屋から転移の魔法陣で繋がるそこが、綾瀬の本来の住所地となっているのだ。日常生活を送る上では、綾瀬の自宅から外に出入りしている。事情を知らない外部の人からすれば綾瀬は若いながらも一人暮らしをする訳ありの少年という見方にもなるだろう。
ただの一般人である綾瀬がいつまでも皇族の中で暮らすわけにもいかない。しかし、家族として暮らしてきた歴史は変わるものではなく、今も事実上同居している状態が続いている。
「……この前は」
「ん?」
「いや、何でもない」
何か言いたげな零菜だったが、結局多くは語らず野菜ジュースを啜ってテレビに視線を移した。
零菜が言いたいことを何となく綾瀬は察していた。
この前、綾瀬は友人を家に上げた。魔法陣のことは当然伏せてある。零菜は綾瀬が誰かを自宅に上げたことを気にしていたのだ。綾瀬が誰かといつの間にか親しくなっているのではないかと疑っている。自分の知らない人間関係を綾瀬が構築するのを恐れているようでもあった。
中学生になったころから、綾瀬と零菜の関係は徐々に離れていった。交流は続いている。喧嘩をしたわけでもない。互いに理解しあっていると思えることもある。しかし、それ以前のように気さくに接するには、男女の違いは大きすぎる。
成長するにつれて肉体は大きく変化する。
綾瀬は身長が伸びて筋肉が付き、零菜は腰の括れととともに胸部がすくすくと発達した。今となっては雪菜すら上回るボリュームが服の上からでも分かってしまうくらいになっていた。
変化は外見だけではない。
精神的にも大きく変わったし、それに比例して魔族としての性質も強くなっている。
綾瀬は夢魔として、零菜は吸血鬼として目覚めの時を迎えていた。
綾瀬は自分のことで手一杯だが、もしかしたら零菜も吸血鬼特有の何かで悩んでいるのかもしれない。それもあって、一年先輩の萌葱との仲が良好なのはいいことだ。少なくともすぐに相談できる相手が傍にいるのは心強いだろう。
零菜は可愛くなった。
もともと、安直な言い回しをすれば美少女だったが、第二次成長期を迎えてますますその可愛らしさに磨きをかけた。
今や、同年代の女子に大差をつけて美しいと言える容貌を手にしている。若いころの母親にそっくりだという顔立ちには本人は複雑な思いを抱いているようだが。
「っ……」
綾瀬は慌てて思考回路を切り替える。
危うく綾瀬の中の夢魔が反応してしまいそうになった。
性に関する衝動を強いのが若い夢魔の悩みどころだ。こんなに近くに零菜という美少女がいれば、内心は大揺れである。心頭滅却も生半可な気持ちではできない。
「綾瀬君? どうかした?」
「別に、何でもない」
零菜との関係を崩したくはない。
綾瀬にとっては大事な幼馴染だ。友人というよりも家族としての意識が強い相手だ。
学年を上げるにつれて、適切な距離感が掴めなくなっている。零菜は綾瀬にとって最も身近な少女であり、同時に最も苦手な少女であるとも言えた。
☆
時計の針がゆっくりと進んでいる。
針といってもアナログ風のデジタル時計だ。ガラス製の文字盤に映し出される光の針が音もなく時を刻んでいるのである。
綾瀬がいるのは暁家にある綾瀬の部屋だ。事実上、ここでの生活が基本になってしまっている。時刻はちょうど日付が変わるくらい。今頃零菜は萌葱と一緒にゲームをしているかテレビを見ているかしているのだろう。対する綾瀬はパソコンを開いてネット三昧だ。夏休みを謳歌する。それは何も友人と外に繰り出すということだけではない。
部屋の扉がノックされたのはその時だ。
「綾瀬君、いいかな?」
「どうしたんですか、雪菜さん」
声をかけてきたのは雪菜だった。
静かな言葉にどことなく影を感じたのは気のせいではないだろう。
部屋の中に入ってきた雪菜は、思いつめたような表情を浮かべている。
「何かあったんですか?」
「え? いや、そういうわけじゃないんだけど」
雪菜は言い淀んだ。
服装は見慣れた薄手のパジャマだ。クロップド丈のベージュ色のボトムと紺色をしたビッグシルエットのトップスである。身体のラインを隠すゆったりとしたトップスは、逆にその下に隠れる雪菜の引き締まった肉体を想像させた。
「ごめんなさい」
と、雪菜は頭を下げた。
不意打ちともいうべき謝罪に綾瀬は言葉を失った。まず、雪菜が何を謝罪しているのか理解できなかったからだ。
「綾瀬君に、どう謝ったらいいかと、ずっと考えてたの」
徐に雪菜は口を開いた。
「謝るって」
「昨日のこと」
綾瀬の脳裏に雪菜の淫蕩な顔をフラッシュバックする。
「ぁ……」
「綾瀬君は、どこまで覚えてる?」
「ええと、それは……」
綾瀬は雪菜とベッドの間に視線を行き交わせた。
「昨日、雪菜さんと……あれ、でも、本当に。てっきり、夢かと」
「……やっぱり、ちゃんと覚えてなかったんだね。昨日は、お互いにお酒も入ってたからね」
「お酒……あっ」
不意に綾瀬の脳裏に雪菜とグラスを傾けた風景が思い浮かんだ。
「俺、昨日、酒……あ、すいません」
「綾瀬君が謝らないで。わたしが悪いの、全部」
雪菜と話をしているうちに、少しずつ綾瀬の記憶が戻り始めた。
昨晩遅く、喉が渇いたので水を飲みにリビングに行ったところで雪菜が晩酌をしているところに行き会った。雪菜も大人なので時折酒を嗜むことはあるが、昨日はいつもと様子が違った。珍しく深酒をしていて、悪い酔い方をしていた。
雪菜にとってはショックなことがあったからだ、というのは綾瀬にも理解できた。長い付き合いだ。雪菜がいつもと違う方法で、極端に高まったストレスを解消しようとした結果だろうというのはすぐに想像できることだった。
「本当にごめんなさい。わたし、取り返しのつかないことを……」
と、雪菜は声を震わせる。
昨晩のことは夢ではなかった。アルコールで意識が茫洋として、記憶が定かでなかったことと普段から淫夢を見るようになっていたことが不透明な認識の原因ではあった。
綾瀬は雪菜で童貞を卒業したというのは厳然たる事実だった。
「あの、その、何というか……俺もきちんとした対応をするべきだったわけで、雪菜さんが悪いわけじゃないです」
綾瀬はなんと答えていいのか分からなかった。
雪菜は育ての親であり憧れの存在でもあった。けっして雪菜を困らせようと思っていたわけではない。
「その、俺は雪菜さんが辛そうにしてたのを何とかしたかっただけで……ああなってしまったのは、俺にもお酒が入ってたからだと思いますし、その、俺は別に、その昨日のことで雪菜さんに謝ってほしいなんて全然思ってないです」
適切な言葉を探しながら、とぎれとぎれに綾瀬は言う。しかし、何としたものか。何を言ってもきちんとした答えにはなっていない。
「綾瀬君は、まだ子どもなのに、お酒を許した挙句にあんなことをしてしまったのだもの。だから、わたしは……」
「そんなに思いつめないでください。俺は怒ってるわけでも困ってるわけでもないですから」
むしろ、幸運だったとすら思える。
初めての相手が雪菜だったのだ。世の男たちに知られたら、嫉妬だけで殺されてしまうだろう。零菜には、本当に申し訳ないとは思うが。
本質的に生真面目な雪菜のことだ。思いつめて警察に自首しかねない。それは、雪菜と綾瀬だけの問題ではなくなってしまう。
雪菜には感謝しているのだ。
「雪菜さん、その絶対に自分を追い詰めたりしないでください。その、愚痴だったら今後もいつでも付き合いますし、今回のことも俺、正直運がよかったとすら思えるくらいですから」
「運がよかったって、どうして?」
「……雪菜さんとできたから、です」
「え?」
綾瀬は顔を紅くして答える。
綾瀬の答えを予期していなかった雪菜は珍しく戸惑ったようだった。
「え、ええと、わたしとシタのが幸運だったって、そんなこと……ないでしょう。わたしとあなたは一回り以上も年が離れてるのに」
「え、いや、本当ですよ。だって、雪菜さんは美人だし、俺は正直に言えばずっと憧れもあったっていうか」
「そうだったの?」
「そうですよ」
今となっては綾瀬は顔が真っ赤になっている。
死ぬほど恥ずかしい告白をしている。憧れの女性であり母代わりでもある雪菜に、そうと伝えるのは思春期の綾瀬にとっては拷問に等しい災厄ではあった。
「俺は、雪菜さんから求められたのは素直に嬉しかったし、酔っていたって、嫌なら断っていたと思います。受け入れたのは、相手が雪菜さんだからですし」
雪菜の表情には後悔と苦悶、そして戸惑い羞恥が同時に浮かんでいた。彼女からすれば、息子も同然に育ててきた子どもに自らのいら立ちをぶつけ、ともに飲酒し、そして襲った。あまりにも大きな罪を犯したも同然だった。
そうして追い詰められた雪菜にこともあろうに綾瀬は欲望を抱いていた。昨晩のことが幾度も思い起こされた。目の前の美女と肉欲を貪り合ったのだと思うと全身の血流が加速してしまう。
「雪菜さん、昨日、自分に魅力がないって言ってましたよね?」
「それは、だって……」
「そんなことはないです。絶対に」
雪菜の胸のうちに蓄積した鬱屈や悩みの原因は夫婦関係が薄れてしまったことである。皇帝である第四真祖は多忙かつハーレムの主だ。雪菜以外にも何人もの美姫を囲っているし、彼自身が非常に持てる男のために女性受けもいい。雪菜のように母となって育児と仕事に精を出している間に、別の女性が間に割り込んでしまうというのも珍しいことではなかった。
夫である古城が雪菜を気に掛ける機会は大幅に減った。仕事上のパートナーとしては依然、重要な立ち位置にいるが女として古城に愛されているという自信はとても持てなかった。昨日、雪菜はもう女としての自分の居場所はないのではないかと感じるような出来事に直面した。それが昨晩の暴走の原因ではあった。無論、綾瀬に手を出していいという理由にはならないが、女としての自分を受け入れてくれた綾瀬に甘えてしまったのだ。
「誰だってそういいますよ。もしも雪菜さんに魅力がないっていうのなら、それはそういった人に見る目がないんです」
「あ……いや、そう、今はそんな話をしているところじゃなくて。それに、わたしはもう歳も歳だし、綾瀬君も気を使わなくてもいいの。若い娘のほうがいいのは、分かってるから、だから昨日のことは……」
「雪菜さんが魅力的なのは間違いないですから。それは絶対です。なんなら、証明してもいいです」
雪菜の頑なさがマイナス面に出ている。業を煮やした綾瀬は雪菜に歩み寄った。
「あ、綾瀬君!? いきなり、何をっ――――んっ!?」
困惑する雪菜に綾瀬は強引にキスをした。唇を重ねて、言葉を奪った。衝動に任せた強引な口づけだ。雰囲気も何もあったものではない。
雪菜は綾瀬の胸を押して、よろけるように下がった。
「あ……な、なんで」
「すみません……でも、雪菜さんが女性として魅力的だから。雪菜さんにはそんな風に自分を卑下するようなことは言ってほしくないんです」
「え、ぁ、ありがとう」
場違いなお礼を言ってしまう雪菜。正面から真摯に雪菜を元気づけようとしてくれているという気持ちがありありと伝わってきて、頑なな心が揺れ動く。
立場上他者の悪意や嫉妬に曝されることには慣れたが、歳を重ねるにつれてこうして正面から褒めてくれる相手はいなくなっていた。
「雪菜さん」
綾瀬の脳が爆発しそうなくらいの熱量を帯びている。そう錯覚するくらいに血流が加速度的に増している。雪菜の魅力を語るうちに綾瀬自身が雪菜に参ってしまったのだろうか。
今のキスで綾瀬の箍が緩んだ。いい加減、我慢の限界だった。
「あ、待って、さすがにもう、こういうことはっ……」
「昨日したじゃないですか」
「あ、あれは、その……」
「俺は雪菜さんを魅力的だと思ってます。だから、こうしてそれを伝えることもできる」
「ん……ふぅ……んんっ」
雪菜は弱みを握られたも同然で、いつになく強気の綾瀬を拒めない。抱きしめられて口づけを受けると不思議と身体の力が抜けて身を委ねてしまう。
(この魔力、夢魔の魅了?)
綾瀬から漂う魔力の正体に雪菜は気付く。長年、魔族や魔獣と戦ってきた彼女にとっては魅了に関わる力は珍しくない。綾瀬が夢魔だと知っているので、事故を防止するための予防策も敷いている。
(弾こうと思えば弾ける……けど、今は……)
強引に迫られて雪菜は年甲斐もなくときめいている。綾瀬を拒めなかった時点で、それは自覚せざるを得なかった。
キスをしながら、綾瀬の拙い魅了を自ら受け入れる。途端にぞくぞくとした電流にも似た刺激が身体中にいきわたる。綾瀬の魔力が心身を縛り汚染していく感覚が心地よかった。
「は……あ……ぁ、綾瀬君、本当にいいの?」
「はい。無理矢理、すみません」
「いいの、もうそれは……元気づけようとしてくれたのは、分かるから」
心臓の高鳴りは収まらない。
雪菜の中に芽生えた期待感は膨れ上がる一方だ。
綾瀬ももう我慢できなくなっている。
思春期の夢魔――――性欲を持て余し気味の綾瀬が自分の欲情している。状況を正しく認識した雪菜は、女としての自分を求めてくれたことで舞い上がってしまう。
求められるままにキスを返す。触れるだけのキスだが、十分に思いは伝わる。綾瀬が雪菜の腰に手を回す。その手を取って雪菜は言う。
「綾瀬君、ここだとダメ。ベッドに、行こう」
魅了の呪いが思考に靄をかける。
綾瀬のすべてを受け入れてあげたくなってしまう。
母として育てた息子も同然の少年であり、同時に女としての自分を求めてくれる男であり、おそらくは娘が憎からず思っている相手でもある。
一世代も下の相手から求められるというだけで、雪菜の歪んでしまった自尊心を満たすには十分だった。
「すごく、綺麗ですね」
綾瀬は目の前に広がる女の身体に生唾を飲んだ。
裸になった雪菜がベッドに横たわっている。
子どものころに見たことがあるが、そのころには理解できなかった魅力がまざまざと見て取れる。真っ白な肌は白磁のようで、しかし健康的な朱を帯びている。形のよい胸と括れた腰、程よく鍛えられてハリのある太もも、すらりと伸びた足。きちんと手入れの行き届いた女の園は、充血していやらしく膨らみを帯びている。
今すぐにむしゃぶりつきたくなるようなデザートも同然の肉体であり、目を潤す宝石のような身体であった。
「そんなに見ないで」
「もっと、見ていたいです。昨日は、ちゃんと見れてなかったような気がする。とても、綺麗です、本当に」
「綾瀬君、お酒が入ってないよね?」
「はい。でも、俺、酔ってるかもしれないですけど」
雪菜という女にか、それとも夢魔の力そのものにか。きざったらしく比喩まで口にするくらいに綾瀬は上機嫌だった。
性欲のコントロールがうまくいかない。取り出したペニスははち切れんばかりに勃起している。
「あ……もうそんなに……」
雪菜は自分に向けられる肉の凶器を見て心臓を高鳴らせた。
(綾瀬君も、もう男の子なんだ)
服を脱ぎ、肌を曝す綾瀬を見て雪菜は感慨深く思う。幼少期から面倒を見てきた。いつの間にか身長が自分を追い抜いて、筋肉を身に着けている。その成長具合がしっかりと見て取れる。
「雪菜さん」
「うん、いいよ……好きにして」
股を開く雪菜の割れ目に綾瀬はペニスを突き付ける。
魅了の影響からか、すでに雪菜の身体は受け入れる準備を整えている。愛液が割れ目から滲み出ていて、肉ビラがいやらしく男を求めていた。
そんな雪菜の秘所に綾瀬はゴムをつけたペニスを押し込んだ。濡れそぼった膣肉がペニスを優しく包み込み、そして絞るように締め上げてくる。
「う、あ……っ」
「んあぁ……っ」
綾瀬と雪菜が同時に言葉にならない声を漏らす。
(雪菜さんの膣内、あったかい。ぬるぬるで、すげえ気持ちイイ)
(綾瀬君のやっぱり大きい。熱いし、固い)
ペニスを雪菜の肉に埋めた綾瀬は腰を止める。射精欲が急速に高まってしまったからだ。このままではすぐに絶頂してしまう。
オナニーなら何度でも連続でできてしまうくらいに性欲が高まっている綾瀬だが、雪菜の膣の気持ちよさはオナニーとは比較にならなかった。ともすれば、数発分を一気に使ってしまうのではないかとすら思えた。
「くっ……」
膣圧に耐え、射精欲を何とか抑えて綾瀬はさらにペニスを奥に進める。
「ふう、ぅ……あっ!」
雪菜が背筋を這うような快感に唇を震わせる。
ついに素面でシテしまったという事実が綾瀬と雪菜の両方を蝕む。
雪菜の膣肉を押し広げて、根元までペニスを挿入する。先端は正しく膣奥を捉えていた。
「ふぐ……ん……はあ……あ、奥、届いてる……んんっ」
昨日したとはいえ、酒で理性を飛ばしていたときのことだ。今、まさに雪菜は自分の意思で夫以外の男を受け入れたのだ。
(ごめんなさい……古城さん……でも、わたし)
両膝を綾瀬が広げてくる。浅い角度で雪菜の膣奥をペニスがノックする。ゆっくりとしたストロークで小刻みに、射精を堪えているのは顔を見れば分かる。
「あ……ん……ん……んん……ふう……ん……あ……あ……くう……はあ……ぅ、んんっ」
綾瀬が腰を動かす度に雪菜から甘い声が漏れ出る。
優しい刺激が膣を蕩かしているようだった。
強いオスであり優しいオス。
綾瀬のセックスは素人ながら雪菜を慮った動きだった。あまり激しくしても自分が果ててしまう。綾瀬はそう思っていたが、同時のこのセックスは実質十数年ぶりの行為となる雪菜を慣らす意味も内包していた。
「はあ、はあ、あ……ん……ふう……ああ……ん……綾瀬君、もっと強くしていいよ」
「雪菜さん……!!」
「んはあっ……!?」
雪菜の顔に浮かぶ淫蕩な表情が昨日の雪菜と被る。
普段の彼女が見せることのない熱に浮かされた表情はどこまでも男の欲望を誘ってくる。言葉にされればなおのことだ。
綾瀬は一気に高ぶり、力強く腰を打ち付ける。
「あ――――くっ、はあ、んあ、ああ……激し、ぃ……ん……はあっ……ああっ」
雪菜を押し倒し、覆いかぶさるようにして綾瀬は乱暴に腰を叩き付ける。鋭く固くなったペニスが雪菜の膣内に潜り込みカリで肉壁を引っ掻かく。
剃刀で切り付けられたような鋭い快感、かと思えば膣奥を圧迫する深い快楽。綾瀬の腰使いが徐々に巧みになっていく。
「はふ、んあ、はあ、ああっ、く……はぁん♡ これ、イイ♡ なんで、急にうまく……ああっ」
緩急をつけた抽挿は昨日、童貞を卒業したばかりの綾瀬には不釣り合いな技術だ。
しかし、事実として綾瀬はポルチオを亀頭で圧迫することもできているし、角度をつけて抉るように膣肉を愛撫することもできている。
久しぶりの肉の快楽に雪菜は声を殺すことができなくなっている。
(もしかして、夢魔の本能?)
性欲を司る魔族の本能は雪菜との交わりで開花したのかもしれない。
女を悦楽に沈めて狂わせる魔族の力。その一端を雪菜は味わっている。
「雪菜さんの膣内、すごくイイです。はあ、く……我慢できないかも」
「はあ、はあ、ああ……ふぐ……はあ、ああ、気持ちイイ♡ ん、いいよ、綾瀬君。好きなように、射精していいから。ああっ、す、ごい……わたしも、もう、ダメかも」
はあはあ、と雪菜は大きく口を開けて酸素を求める。
連続して突き込まれるペニスは確実に雪菜をオーガズムに導いている。
「はあ、はあ、はあ、はあ、ああっ、うぐ、ふう……あ、イイ、ん……もっと、わたしで気持ちよくなって……はあ、ふう、ん……綾瀬君……はあ、く、気持ちイイ……ひあ、あ、気持ちイイの♡ すごい♡ あっ、あっ、んぐぅ♡」
ギリギリと雪菜は奥歯を噛み締める。
膨れ上がったオーガズムの感覚を懸命に先送りにしようとしている。
「あく、雪菜さん……もう、俺っ」
「待って、今、熱いの来たらわたしっ」
雪菜の制止は何の意味もない。
高められた射精欲は制御不可能な域に達していた。
睾丸で生成された白濁液は瞬く間に鈴口から外に解き放たれたのだ。ゴムという壁に遮られて、膣への侵入は阻止されたが、射精の熱は隠せない。そして膣内でペニスが精を吐き出した事実が雪菜の女を大いに盛り上げさせた。
「あ、あ、あああ、い、イクっ、わたしもっ」
雪菜の足が閉じあわされて綾瀬を抱き込んだ。
シーツをしっかりと握りしめて、男をより深くまで飲み込んで雪菜の媚肉がすべて、同時に痙攣する。
「あ、んはあああああああああああああああああああああああ…………っ♡」
強烈なオーガズム。
頭の中が真っ白になる感覚に雪菜は溺れる。
同時に今まで積み重ねてきたものが崩れ落ちていくのを感じていた。
「雪菜、さん……ん、ちゅ、ちゅぱ、ちゅ……」
「んあ、ふう、んんっ、ちゅ……れろ、れろ……ちゅ、んん」
行為が終わった後も二人は密着を続けていた。
ペニスを膣に挿入したまま横たわり、まるで愛し合う恋人のようにキスを楽しみ出す。
雪菜は綾瀬に求められたままに唇を差し出して、うっとりとした表情で涎を絡め合う。
「はあ、はあ、はあ……あ、こんな、キスまで……綾瀬君、物好きだね」
「まだそんなこと言うんですか。雪菜さんは本当に魅力的だから、こうしたくもなりますよ」
「ふむ……れる……れる……ん、ちゅ……はあはあ……ぁ、ありがとう……んちゅ……嬉しいよ……れろぉ♡」
魅了がどこまで効いているのか分からない。もしかしたら、もう解けているのかもしれないし、あるいは行為の中でより深く雪菜の中に根付いたのかもしれない。
いずれにしても雪菜は綾瀬との交わりに夢中になった。求められることが気持ちよかったし、自分もどんどん求めてしまう気になった。気分は高揚し、欲望も高ぶっていく。
今日、綾瀬と雪菜の間に秘密ができた。
淫欲に歪んだ瞳で口づけを求める。理性は蕩けて、剥き出しになった本能のままに母と子の関係性は歪んだ愛へと昇華していく。