※この作品はR-18です。

TS百合短編集   作:くえん

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後編

『淫魔の繭』。対象の体を作り替える効果がある、淫魔族の固有魔法だ。

 セックス時に相手が感じる性感からエネルギーを得る淫魔は、より効率良く食事を取るべく、性技に長けた者が殆どである。だが、種族的な問題として同性が相手の場合、いくらイかせたところで、得られるエネルギーは異性の場合の1000分の1以下になってしまうという特徴があった。

 体を作り替えるということは、性別すら全くの別人に変える事が可能ということ。つまり、インキュバスが男から、サキュバスが女から何とか食事を取るべく開発されたのが、前出の『淫魔の繭』だ。

 淫魔の魔法なだけあり、作り替える――つまりは、相手の性別を変えてしまう際は、副次的に感度が上がってしまう為、非常にイきやすくなってしまう。淫魔族の持つ魔力特性的に、魔法がどうしてもそちらよりになってしまうことも原因だが、作り替えたことで表皮が新しくなり、神経が過敏になってしまうのも理由の一つである。

 簡潔に結論を言えば、この術を受けた者は慣れない異性の快感に翻弄されるだけでなく、より敏感になった体でイきまくる羽目になるのだ。

 その影響たるや人狼症の比ではなく、冒険者ならば2か月以上も休息が必要な場合がある程。餓死寸前の場合など緊急時を除き、冒険者が使ってはいけないし受けてもいけない魔法ランキング堂々の第一位に輝く、当の淫魔にとっても最終手段な魔法なのである。

 同性の場合に使用する魔法なので、相手がサキュバスであればこの魔法を受けるのは自然とアメリアになる。

 反省はしてほしいが、これを理由にしばらく休ませてやろう……

 ミリンに持ち掛けた話は、そんな兄心が働いたシージの計らいだったが、実際はどうだったかというと。

 

 

 

「はぁ、は、あぁぁ……」

 

 喉に絡みつくような、鼻につくトーンの高い吐息が部屋に籠っている。

 落ち着かない呼吸。肩を上下させ深く息を吐くたびに、滝のように流れる汗がぱたぱたとベッドのシーツに零れ落ちた。

 すんすん、と鼻を鳴らす音と、すぅ、ふぅ、と深い呼吸音が耳元から脳内に響く。

 

「ふふ、シージさん、可愛いね……♡」

 

 心臓の鼓動が落ち着かないのは、鼓膜をくすぐる淫靡な声色からか、それとも背中から感じる豊かな胸の感触からか。

 ミリンさんの自室、広いベッドの中心で、足を開いて座り込むミリンさんの股座にすっぽりと収まる形でぐったりとしている俺は、背筋を駆けあがる寒気のような絵も言われぬ感覚に耐えながら、絞り出すように言葉を返す。

 

「可愛くなんて、無いですから。恥ずかしい事、言わないで下さい……」

「謙遜しないで下さい♡ 抱き心地の良いぷにぷにボディ♡ 体も心もとろとろになって、真っ赤でふにゃっとしたお顔♡ 甘くて、良い匂いの体臭……♡ 小っちゃなアメリアさんみたいに可憐で、扇情的で、今すぐ食べちゃいたいくらい……♡」

 

 陶酔した様子のミリンさんは、俺の身体の造形を確かめるように、きゅ、と背後から抱きしめた。

 

「くふぅっ……!!♡」

 

 過敏な皮膚の神経は、想像外の刺激に抗いようがない甘い悲鳴をあげる。男では出しようもない甲高い声で喘いでしまった俺を見て、ミリンさんはますます燃え上がった様子で、興奮を隠せず語気を荒げ、抱きしめる力を強める。

 

「ぁぁっ、シージさん――いや、シージちゃん、の方がいいよね♡ 反応もとっても女の子で、最高に素敵よ、シージちゃん♡」

「く、あぁッ♡」

 

 同じくらいの身長だった筈のミリンさんに、すっぽりと覆いかぶさられてしまう現状。

 少し焼けた小麦色の肌、肩に感じる汗に濡れたセミロングの黒髪、うっすらと生える体毛と、膨らんだ胸。

 鏡で見た限り、ミリンさんの吐息1つで喘がされる敏感な全身は、姉サキュバスの言う通り、少年期のアメリアの容姿に近かった。

 今の俺は、何処からどう見ても立派な女の子である。そう、淫魔の繭を受けなければいけなかったのは、アメリアではなく俺の方だったのだ。

 

 

 

 決闘後、気絶したアメリアを洋館の中に運び込むと、行為に及ぶべく、早速とばかりにミリンさんと俺は寝室で二人きりになった。

 余程お腹すいてるんだな、と鎧を脱ぎ裸になろうとした俺に、ミリンさんはじゃあ早速、と魔法を行使しようとしたのである。

 

『え、ちょ、淫魔の繭俺に使おうとしてます!?』

『してますけど……どうかされました?』

『え? 男と女ですよ……!?』

 

 男女で使う必要はない魔法なだけに、俺は慌てて止めに入る。だが、そんな俺をきょとんとした顔で見ているミリンさんは、少し考えてぽん、と手を打つ。

 

『……ああ!! 普通、そういう反応になりますよね。ごめんなさい、私ったら先走っちゃって……説明しておりませんでしたね。私は女で、シージさんは男。そうだけど、そうじゃないんです……♡』

 

 表で話していた頃とは打って変わり、その時の彼女の笑みは、淫魔に相応しい艶を伴っている。

 強敵との生死を掛けた戦いをを前にした時の様に、ぞくりと全身に走る緊張感。冒険者生活で養ったその感覚は、今にして思うと間違っていなかった。ただ、あまりにも働くのが遅かっただけ。

 

「そんなにかわいい姿見せられちゃうと、私、昂ってきちゃいます……♡」

「ひぅっ♡」

 

 舌をうなじに這わせられると、神経をくすぐるこそばゆい快感に、堪えようのない情けない声が漏れた。

 身をよじると、股間に感じる存在感。股の下をくぐり、無毛でつるつるの股間をずりずりと刺激しながら、軽くなった俺の体を余裕で支えているそれ。見覚えはあるが、自分の知るどの物よりもはるかに長大で、えげつないサイズの棒状の器官は、誰がどう見ても男性器だった。

 彼女たちは、ただのサキュバスではない。淫魔の中でも極稀に生まれる、女性の体でありながら男性器も合わせ持つ、"ふたなり"のサキュバスだったのである。

 ふたなりのサキュバスの場合、捕食対象は男性ではなく女性となる為、必然的に淫魔の繭を受けるのはアメリアではなく俺になる。村長が彼女達を目の敵にしていたのも、これで得心が言ったというものだ。

 とはいえ、両性の淫魔族は知識としてはあったが、実際に遭遇することも初めてなら、『淫魔の繭』を受けることも初体験。

 俺の動揺もある意味当然なのだが、そんな困惑した様子を見て、じゃあやめておきましょうか、なんてしょんぼりと悲しい顔をされると、断るのも忍びなく……大人しく受け入れた結果、現在に至る。

 

「見てください♡ 女の子の手首くらい太くて、軽ーく子宮まで届いちゃうような長さの、エラが張ってる私自慢のおちんちん♡ どうです? 可愛い可愛いシージちゃんを見て、こんなに大きくなっているんですよ……♡」

「う……」

 

 視線を下にやると、ミリンさんの男の象徴が目に入る。

 ギンギンに勃起し、グロテスクなまでの亀頭には、ふつふつとカウパーがにじみだしている。鍛え上げた筋肉など見る影もない、ぷにっとしたお腹に擦り付けている動作は、絶対に犯してやるぞ、というミリンさんの意思が伝わってくるよう。

 流されるがままに女になって、現状を受け入れる前に行為が始まろうとしているのだ。やらないとミリンさんは困るんだろうな、という理屈は納得できるが、いくら相手が美人だとは言え、入れる方ではなく入れられる方では、否応なしに嫌悪感は拭いきれない。

 

「ふぅぅ……♡」

 

 だがその一方で、体の方は準備万端だった。

 空気の流れを肌で感じられるほど敏感になった全身は、その脈動をお腹越しに感じている。まるで、体外に心臓がもう1つあると錯覚してしまうほどの凄まじい熱。生まれたばかりの子宮の存在を、俺の脳に強烈に意識させる。

 嗅覚を刺激する、お香を炊いているのかと錯覚するくらい甘い匂い。裸で俺を抱きしめているミリンさんから漂う淫香と、すっかり変わり果てた自分の体臭が混ざり合い、俺の精神を酔わせていく。そこに、男性器の芳香まで上塗りされれば、熱に浮かされた意識が傾いていく気がしてくる。

 こぷ、と身体の奥から愛液が零れる感覚。張り詰めていた神経が、蕩け落ちる錯覚。

 

「ハッ、ハッ……ぁ♡」

「私のおちんちんを、エッチなお汁でぬるぬにしちゃって……♡ シージちゃんも、準備万端みたいね?♡」 

「んぁっ♡ ぁっ、うっ♡ んきゅぅっ♡」

 

 背後のサキュバスが腰を動かす度に、竿が表面をくすぐり、くちゅくちゅと淫猥な水音が鳴った。

 竿がクリを撫でつける度に腰が跳ね、乳首を指でさわさわと触られると、切ない快感にきゅっと手足に力が入る。

 本来ならば、前戯ですらないからかっているような手さばき。だが、あまりにも敏感なこの身体は、それを本気で受け取り簡単に昂っていく。

 視界が白熱する。身体の操作権を失う中、漏れそうになった喘ぎ声を咄嗟にかみ殺した。どろり、とろとろ、と下半身が汗とは別の液体でぬれていく。

 

「ぁぁ♡ 好みの子の、初イキエナジー……♡ なんて、美味しいんでしょう……♡」

「はー……♡ はー……♡」

 

 うっとりと陶酔に沈む、淫魔の艶を含んだ吐息。サキュバスの感想に交じり聞こえる、蕩けた声色の、聞くだけで舌に甘さを感じるほどの、色の乗った呼吸音。ちかちかと光が散る視界の中、それが自分の物だと理解するのに、今しばらくの時間が必要だった。

 

「優しくなでなでしてあげただけなのに、イっちゃいましたね♡ でも、初めての女の子の身体に、淫魔の魔術が合わさってしまったんですもの♡ どんな堅物でも、許しを請うてイキ狂ってしまう事請け合いの、トラウマ必死の組み合わせです……♡ 仕方ありません……♡」 

 

 今までの人生で経験してきた女性とのセックスや、オナニーで味わったどの快感とも違う、受動的で与えられるだけの女性の快感。放精すれば落ち着く男の欲情とは違い、尾を引くようなそれを、何倍にも増幅された状態で味合わされ続けているのだ。

 胎内で燻ぶる淫欲の炎は、接しているだけのミリンさんにすら火移りしてしまったよう。

 はぁ、と色っぽい吐息が耳にかかる。くちゅ、と耳に舌を差し込まれると、背筋が悲鳴を上げる。

 

「ぁっ♡ や、やめ……♡」

「だから♡ 私の為に、女の子になってくれたシージちゃんの為に♡ トラウマにならないよう、ゆっくり、じっくり、行きますね……♡ 心の底から気持ちよくなってもらって、もう戻りたくない、って言ってもらえるように♡ 私、頑張りますね……♡」

 

 絶頂の余韻から未だに解放されておらず、脳がクラクラしている。前戯ですら無い状態でこれなのに、いざ行為に及んでしまえば、狂ってしまうのではないだろうか。

 そんな俺の恐怖を、和らげるどころか加速させるようなセリフを吐いたミリンさんは、俺の身体をひょいと持ち上げ、ベッドに寝かせると、覆いかぶさった。

 見上げる俺と、見下ろすミリンさん。紅潮した頬、しっとりと汗を掻き、色気たっぷりに笑みを浮かべるミリンさんと、目と目が合う。

 

「んふふっ♡」

「っ♡」

 

 ただでさえ美形ばかりで知られるサキュバスの中でも、俺の好みドストレートをつく成熟した容姿のミリンさん。そんな彼女が向けてくるのは、単なる食事以上の熱が籠ってそうな情熱的な視線。まるで見た目そのままの少女になってしまったかのように、どくん、と胸の高鳴りが抑えきれない。

 ごまかそうにも吸い寄せられるように視線が逸らせず、落ち着こうと深呼吸をしてしまう。

 

「はぁ、う♡」

 

 どろり、と下腹部がうずく。

 同じ空間にいるだけで発情の効果がある淫魔の体臭を、ダイレクトに吸い込む。初イキから継続している発情状態が更に一段階上へ上昇し、直下に迫る肉棒に淫らな装飾を加えてしまう。

 

「準備万端みたいですね♡ ゆっくり挿入すると喪失感が続いてお辛いでしょうから、奥まで一気に行きますね……♡」

 

 ちろり、と蠱惑的に舌なめずりをしたミリンさんは、きゅっと引き締まったヒップを持ち上げる。愛液とカウパーで塗された鈴口を、生まれたばかりの秘泉に押し当てられた。

 熱を感じ、反射的に視線をやると、閉じていた筈の膣は自らを口を開き、迎え入れる準備を始めている。

 本当に触れただけ。それだけなのに、いつのまにか恐怖は鳴りを潜め、期待感で満ち溢れる。自ら求め、僅かに身じろぎし受けいれ態勢を整えてしまう始末。

 

「行きますよ……♡」

「……ッ!!♡」

 

 その瞬間に耐えるべく、シーツを握りしめ目を瞑った俺に、くすりと笑う声が聞こえる。

 つぷ、と中に侵入してきた事を感じた次の瞬間。ごちゅん、と肉と肉がぶつかり合う音と共に、体が浮くような衝撃が体を突き抜けた。

 

「か、ふっ♡」

「ん~~♡ キツキツおまんこ、気持ち良い……♡」

 

 男性器が、自身の身体の中にある。否応なしに意識せざるを得ない存在感に、入れられた直後は内臓を圧迫されるような痛み、息苦しさでいっぱいだった。

 如何に淫魔の繭を受けた状態とはいえ、いきなり挿入は厳しかったに違いない。そんな苦しそうな声を漏らした俺とは対照的に、緩みきった心底気持ちよさそうな表情を浮かべ、感嘆の吐息を漏らすミリンさん。

 

「苦しかったらどうしようかと思ったけど、気持ちよさそうで良かった♡ シージちゃんのエナジー、美味しいですよ♡」

「ぁ、ぅ……?♡」

 

 淫魔は、相手が絶頂した際に発するエナジーを栄養として生きる。全く気持ちよくなかったのに、何を摂取したというのか。

 疑問符を浮かべたはずのセリフが蕩けている事に気付いたのは、声を出した後だった。

 ミリンさんの汗が頬を伝い、ぱた、と鼻の上に落ちてくる。肌の感触に認識が追い付いた時、ぞわ、と全身が総毛だつ。

 

「は、ひ♡ ふぁぁあッ!?♡」

 

 頬に当たった汗の感触をきっかけにして、さざ波の様に全身に快感が駆け巡る。

 真っ新で初心な処女膣が、カリ高のペニスでごりごりえぐられ、一撃で淫乱に落ちる様。

 ごちゅん、と圧し潰され、男性器の形状に歪んだままの子宮の衝撃。

 一度に与えられた膨大な量の情報を脳が処理しきれなかったのだろう。余りの快感で処理落ちした脳内で、味わう様にスロー再生される。

 

「~~ッ!?♡ あっ、ひぃ♡ おか、し♡ ずっと、イっへ……!!♡」

 

 組み伏せられた体がビクンビクンと痙攣する。

 体内で快感が反響して、たった一度の挿入を何度も反芻させられるようだ。

 ちかちかと視界が明滅する。力は入らないのに、電流が流されているように、ちぎれそうなくらい握りしめたシーツは手放せない。暴れる全身が制御出来ないのだ。

 

「ぁぁ♡ 感じすぎて、遅れて快感が来てるんですね……♡ 女の子になったばっかりの初イキなんてこってりした物、身体に悪いとわかっていても、もっと欲しくなっちゃう……♡」

 

 見上げる視界には、口元を抑え、恍惚な笑みを浮かべるミリン。それは、精を搾り取るサキュバスの淫猥さと、女を征服するインキュバスとしての力強さを兼ね備えた、ふたなりだけが浮かべる事の出来る独特な表情だった。

 完全な受け身。快感を逃がすことの出来ない、与えられる一方の立場。自分が今している行為での立ち位置を、たった一回の抽挿でわからされる。

 骨の髄まで絞りつくされてしまうような予感。果てには、イキ殺されてしまうのではないかと一抹の恐怖を感じる。

 

「でも、我慢します♡ 飢えてる私達に優しくしてくれたシージちゃんに、辛い思いなんてして欲しくないですから……♡ 最初から最後まで、適度な快感をお約束します♡ ずっとふわふわ浮かびっぱなしの、最高の女の子体験にしましょうね♡」

「ぅ……♡」

 

 だが、こちらを安心させるように顔を胸元に抱き寄せるミリンさん。近くで香ってくる甘い汗の匂いと、その身じろぎでぐり、と奥が刺激され、また股間からどろりと濃い液体を溢れさせたことを感じ取る。

 何度かサキュバスと交わった時に味わった、最早苦しさすら感じるような、男が味わえる限界のような快感。

 その淫魔の技を、苦しくない様に終始気持ち良く調整された上で、女の立場で味合わされるのだ。絶対に、どうにかなってしまう。

 確信にも近いその予想に、俺は想像だけで再びイキかけてしまっていた。

 

 

 

「ん、んっ♡」

 

 正常位で見つめあったままの睦言。奥まで挿入したまま小刻みに腰を揺らされ、繋がったままの結合部がねちっこい音を立てる。

 溢れそうになる喘ぎ声を必死にかみ殺すが、その抵抗が上辺だけのものである事は、目の前の淫魔にはお見通しであった。

 

「出来立ての女の子を、あっつーい肉棒でぐりぐりされるの、結構来ますよね……♡」

 ずるるるるっ……

「ほら、ゆっくーり、抜いていきますよ……♡」

「んっ♡ んぉぉっ……♡」

 

 視界が揺れ始めたところで、止めを刺すように引き抜かれる剛直。体内にあった圧倒的な存在感の喪失と、引き換えに得られる膨大な量の快楽。閉じていた口が開き、本能からの声が飛び出してしまう。

 

「シージちゃん、わかりますか?♡ おまんこ中の愛液が、でかいカリ首で根こそぎえぐり出されていきますね……♡ ベットの上、もうびしょびしょ♡」

「あぁッ♡ んおぉぉッ!!♡」

 

 尿道から一瞬迸る液体を体で受けて、淫魔はにんまりと笑みを深める。

 お尻、腰の辺りに感じる水の感触。紅潮したミリンさんの顔から視線を逸らすと、結合部の下には、掻き出された愛液が水たまりになってシーツに溜まっていた。水筒をそのままひっくり返したような量である。

 この惨状は、全て自分が原因なのか。

 そう思うと、ただでさえ沸騰気味の脳がさらに沸き立つようだ。

 

「はい、亀さん抜いちゃう手前で、一休み♡ 乳首くりくりして、掻き出しちゃったお汁補充しましょうね……♡ おまんこ濡れ濡れにしておかないと、感じすぎて辛いですよ♡」

「んあっ!!♡ や、やめへぇ♡」

 

 時には激しく、時には優しく胸を揉まれ、乳首やクリトリスを摘まんだり押しつぶしたり、耳元でこちょこちょとささやかれたり。

 入口に亀頭をひっかけられた状態で愛撫されると、開いたばかりの花園から、隙間を埋めるように際限なく体の奥から蜜が湧き出てくる。

 激しく貪りあう獣のようなセックスではなく、腰と腰が繋がりあったまま、睦事のようにゆったりと進むスローセックス。

 一分かけて1ストローク。男からすればじれったい程のスローペースで進む交尾でも、抜き差しされる度にイっている俺にとっては、本気のピストンとさほど変わりがない。

 男性器を突きこまれる被征服感、引き抜かれるときの喪失感と開放感、子宮を圧し潰される圧迫感、いきり立つ乳首をソフトタッチで虐められる掻痒感、敏感になった陰核を押しつぶされるときの高揚感。

 普通の男じゃ一生知ることのない、女の快楽の極みのような行為を纏めて浴びせられているのだ、そうなるのも無理はないだろう。

 むしろ、処理できないほど快楽を一気に浴びせられて、理解できずに気絶するほうがまだマシだったかもしれない。何せ、一回一回のアクメを、じっくりと快感に向き合った状態で経験させられるのだから。男に戻っても、元の体で快楽を甘受できるのか、不安になってしまう。

 

「恥ずかしいのに、それでも気持ちよくって、全身汗だくになってあんあん喘いじゃうシージちゃん、とっても可愛いですよ♡ 見た目も、喘ぎ方も、エナジーの味も♡ 全部私の好みど真ん中過ぎて、なんだか怖いくらい……♡」

 

 だが、絶えず流し込まれる気持ちよさと、彼女の心底うれしそうな言葉が、その懸念を押し流してしまう。

 彼女のとろんと蕩けた声色は、聞くだけで脳を溶かすような色を感じさせた。不安や悩み、全てが絶頂と共に溶けて消えてしまうような、そこはかとない安心感を与えるよう。

 このままでは、されるがまま押し流されてしまう。そう思った俺は、少しでも攻め手を緩めてもらうべく、せめてもの抵抗に話を逸らすことにする。

 

「淫魔の、繭を使ったんだから♡ みりんさんの、好みの格好に、なるのは……あっ♡ あたり、まえじゃ……?」

「んー?♡ そんなことはありませんよ♡」

 

 喘ぎ交じりの俺の質問に、ミリンさんは愛撫の手を止めずニコニコと答えてくれる。

 

「"淫魔の繭"というのは、相手の性別を変えるだけの術ですから♡ 自由自在に容姿を変えるような、都合の良い改ざんはできません♡ 甘くて美味しい、舌が蕩けてしまうそうなエナジーや♡ シージちゃんの、双子の妹さんより幼げだけど、大きく育った胸は♡ シージさんが女の子に生まれてたら、持っていたはずの物♡ 私の一目惚れは、自作自演じゃありませんよ……♡ だから、こんなこともできちゃうんです♡」

「え……?」

 

 すっと整った顔が近づき、胸をどきりとさせる間もなく、次の瞬間には頬に柔らかい感触。

 リップ音が耳に届いた頃には、何をされたのか理解し、焦りの感情が俺を駆け巡る。

 

「え、あ、ぇ……!?」

「キス、しちゃいましたね……♡」

 

 キス。唇同士を重ねあう方ではなく、頬にする軽い挨拶のようなものだ。

 一般的には愛を確かめ合う行為でもあるが、友好を確かめ合ったり、行きずりの関係でも前戯のように行うこともある。様々な意味を持つが、ある程度の男女の関係であれば総じて誰でも行うことのある、人間の日常においては当たり前の行為だ。

 

「いろんな種族の風習に詳しいシージちゃんなら、この意味わかってくれますよね?♡」

「そ、それは……♡」

 

 だが、相手が淫魔になると、キスは殊更重い意味を持つ。淫魔にとってキスとは、愛の告白を意味するのだ。

 淫魔という種族は性的エネルギーを主な栄養源としているため、セックスとは子孫を残す神聖な物という意識より、栄養補給の為の手段という認識が強い。ゆえに、ただの食事と愛し合う行為を区別するべく、キスで愛を伝えあう、というのが古くから伝わる文化なのだ。

 

「淫魔にとって、セックスとは食欲を満たし性欲発散する方法でしかありません♡ でも、私は今、それと一緒に愛情も感じたいんです♡ 他ならぬ、シージちゃんと♡」

「意味、はわかりますけど♡ と、突然すぎて……」

 

 淫魔は性技に長けた種族だが、ただの食事の際は決して、口を使った前戯はしない。

 故に、受け手が淫魔に対してキスやフェラを求める事は厳禁で、冒険者が違反すれば一発でブラックリストに載ってしまう程の重大な禁止行為である。例えるのであれば、エルフの住居に火を放つのと同じ程度といえば、その重大さが通じるだろうか。

 アメリアの代わりに交渉で矢面に出ることが多い俺は、各種族の文化やタブーなどは人一倍勉強してきたつもりで、その経験も多い。つまり、このキスに含まれた意味も、ミリンさんが俺に向けている感情の正体も、否応なしに理解してしまった。

 ぽってりとした唇をちろりと舌で一舐めする彼女の瞳には、異性に向ける性欲以外の熱が籠っている。

 淫魔特有の、ねっとりとした艶の乗った、色っぽい声色。常日頃、そんなつもりがないと頭でわかっていてもドギマギしてしまう淫魔のささやきが、正真正銘の熱をもって自分に向けられているのだ。

 体が女になっていても、男として興奮しないわけがない。だが、彼女とは今日会ったばかり。初対面でそんないきなり、という戸惑いが勝る。

 

「シージちゃんの見た目やエナジーのお味、普段は妹思いで凛々しい男の人なのに、女の子になった途端、こんなに可愛いところを見せてくれるところも、全部が大好きです♡ 結婚して、一生傍にいてほしいと思ってます♡」

「そ、そんな急に言われも、ぉぉぉぉッ!?♡」

 

 愛のささやきを受け困惑する俺を無理やり説き伏せるように、再び剛直が膣壁をずり上げながら侵入してくる。

 ごちゅん、と一気に奥まで貫かれると、ぴん、と足は伸び、言葉は叫びになり、全身で悦びを表現してしまう。

 

「おなか、いっぱいぃ……♡」

「んふぅ♡ きつきつおまんこ、とっても気持ち良い……♡ 一目ぼれですから、急な告白は許してくださいね♡ ただ、一言で一目ぼれとは言っても、私の一目惚れは一味違うんです♡」

「は、ひぃ♡ んぁあっ♡」

 

 豊満な胸に顔をうずめる様に、上から豊満な体でぎゅっと抱きしめられる。汗をかき、しっとりとした素肌。密着した乳房の奥からは、激しい鼓動音が聞こえてきた。

 

「早鐘を打ってる私の鼓動音、聞こえますか?♡ 運動してるからじゃない♡ シージちゃんとの睦み合いで、これだけ興奮してるんです♡」

「みりん、さん……♡」

「えっちなことをしてお腹を満たす私たち淫魔は、他の種族よりも人一倍、人の汚い面を見がちです。ですから、人を見る目は人並み以上に肥えています。物知りなシージちゃんなら知ってると思いますが、淫魔やエルフは、相手の魂を直接見ることもできます♡ 私たち淫魔の殆どは、一目見て少しお話しただけで、相手がどんな方なのか、大まかにわかってしまうんですよ♡」

「ふぁぁっ、あ、やぁあっ♡」

 

 胸元に抱え込まれたまま、シーツとうなじの隙間に細い指差し込まれる。過敏な神経をおちょくるように、うなじの上をこちょこちょと指先に踊られると、あまりのくすぐったさに身悶えし、声色は完全に少女のそれと化してしまう。

 

「誠実で、純粋に人々の為に身を粉にして働くことのできる素晴らしい方だと、見ただけでわかりました♡ 話を聞いて、貴方が田舎に引き籠ってる私達でも聞いたことがあるような、有名で腕が立つ冒険者さんで♡ しかも威張るどころかとても親切で、初対面の私たちの事まで心配してくれるような素敵な男性だと知りました♡ そして、勘違いで迫ってしまったのに、お腹をすかせた私たち姉妹のために淫魔の繭まで受けてくれる、とても優しい人と身体を重ねて♡ あなたと私は、身体の相性やエナジーの味まで相性抜群の、運命の相手なのだと確信しました♡ だから決めたんです♡ あなたに唇同士を重ねあう、正真正銘の愛の告白をするんだ、って……♡」

 

 女みたいな所作をしてしまっていることへの気恥ずかしさなんて、微塵も気にならなかった。何せ、情けない声を出した後に我に返る間もなく、それ以上に気恥ずかしい真正面からの告白の言葉を浴びせかけられているのだから。

 確かに、淫魔やエルフには魂の淀みを見抜く力がある。エルフや淫魔と仲良くなるのに必要なのは、コミュニケーション能力ではなく純粋な相性だ、というのは有名な話。

 だから俺自身、話す前から嫌われたり、逆に好意を寄せられる経験もないわけではない。だが、ここまで深く気に入られ、尚且つ真正面から褒め殺されることなどあるわけがなかった。

 純度の高い快楽に加え、気恥ずかしい告白に悶える俺の姿をしっかり観察しているのだろう、ミリンさんはくすりと笑みを零し、ささやくような声量で呟くのだ。

 

「セックスから始まるなんて、ベタな告白でごめんなさい?♡ でも、我慢できなかったんです♡ 冒険者然とした凛々しい表情や、私の下で可愛く喘いで恥ずかしがるあなたの仕草も、全部大好きです♡ これからお互いの事を知り合いながら愛していきたい、そう思ってるんです♡」

「は、ぁ……♡」

 

 膣内に突きこまれたままの男の象徴の脈動と、全身に密着するもちもちとした素肌。自身の内外から感じる彼女の体温に、いっそう蕩ける思考と理性。

 少し話しただけだが、決して悪い人ではないとわかっているし、誰もが見惚れるような美人だ。男としては、嫌なわけがない。だが、いくら必要だったとはいえ、女になった状態で交尾している最中に頷くというのも、男の尊厳が侵されているようで抵抗がある。

 しかも、告白の相手は今日あったばかりの女性。別に初心なわけでもないが、流石に躊躇いも生まれるというもの。

 喜び半分、躊躇半分。

 息を整えながら、複雑な心境を整理していると、ふと身体が離れ、彼女と目と目が合う。

 

「どう、ですか?」

 

 浮かれたような熱を帯びていた姿から一転、不安を孕んだ彼女の瞳に、視線がひきつけられた。少女のような体をくすぐる手を止め、告白の返事を待つ彼女の姿に、快感で鈍っている頭で思う。

 

 ――使っていいと言ったのは、俺だしな……

 

 半ば流されているのは間違いない。とはいえ、『淫魔の繭』を使うよう言ったのは自分だし、俺が抱く羞恥心の殆どは自分の責任である。

 胸が締め付けられるような罪悪感に、俺は覚悟を決めた。

 彼女の後頭部に手を添え、ゆっくりと顔を近づけると、静かに唇同士を重ねた。

 

「っ!!」

「サキュバスの恋人なんて生まれて初めてなもので……返事の仕方は、あってますか?」

 

 それは、俺の知る限りで最上位の、サキュバスに対する明確な好意の示し方。

 言葉よりも、行動で示す方が淫魔にはストレートに伝わるのだと、インキュバスの彼氏持ちの女性冒険者から聞いた。

 俺の意思表示が伝わったのか、ぱぁっと華やいだ表情を浮かべたミリンさんは、メリハリのある体で包み込むように俺を抱きしめてくる。

 

「んあ゛ッ♡ み、ミリンさんッ♡」

「シージさ……♡ あぁ、シージちゃんッ……♡」

 

 互いに名前を呼びあいながら抱きしめあう。

 むにゅり、と顔が幸せな感触で包まれる。と同時に、先ほどよりも更に屹立したふたなりペニスが、生まれたばかりの膣壁をごりごりと抉り取りながら更に奥へと侵入してきた。

 顔を見ずともわかる。喜色に満ちた声色に、俺も思わず快感以外の理由で口端を釣り上げてしまう。

 

「ごめんなさい、ちょっと激しかったですよね♡ でも私、うれしくってっ♡ こんな美味しい食事、初めてで……!!♡」

「ふ、ぎッ!!♡ ぁッ!!♡」

 

 全体重をかけてくるような重苦しいピストンに、ぎしり、ぎしりとベッドが軋む。グロテスクなまでにバッキバキに腫れあがった亀頭が、女性器の奥の奥まで侵入を果たし、雌を犯しに来ている。

 身長差により、ミリンさんに包み込まれるような正常位でのセックスにミリンさんの声も上ずって余裕がなさそうだった。

 

「あぁ、シージちゃんの不慣れなアクメ、美味しい……♡ ふふ♡ ちょっとお味が濃ゆいのですが♡ シージさん、はッ♡ ちょっと乱暴な方が、お好み、ですか?♡」

「ちがい、ます♡」

 

 快楽を与え、美味しい食事を取ろうとする先ほどまでの慮る動きとはまた違う、快感を貪るオスの動き。漏れ出る苦しそうな声とは裏腹に、内心で沸き起こるのは幸福感だった。

 

「ミリンさんが、自分で気持ちよく、なろうとしてくれてて♡ なんでか、嬉しいんです♡ 俺、女の子じゃ、ないのに、ぃ゛ッ♡」

 

 次々と襲い来る弾けるような快感で、俺の頭も少しゆだってきているのだろう。

 使われていることを屈辱と捉えられず、彼女が自分で気持ちよくなろうとしてくれていることがうれしいと思ってしまうのだ。

 

「~~!!♡ あぁ、可愛すぎて、もうたまりません……♡」

「う、う゛ぅッ!!♡ ぁんっ!!♡ あぁッ!!♡」

 

 脳の奥底で光が飛び散った。より一層重く早くなる抽送に、意識が飛びかける。喘ぎ声を気にする余裕もなく、彼女に四肢すべてを使って抱き着き抵抗を試みるが、それがかえって深いピストンにつながってしまうことに、必死な俺は気づけない。

 最近、王都で『だいしゅきホールド』などと呼ばれている恥ずかしい態勢になっていることなど、意識にも上がらない。ただただ、与えられ続ける快感に脳を揺さぶられるばかり。

 

「苦しいですよね?♡ 辛いですよね?♡ でも、ごめんなさい、シージちゃん♡ もう少し、我慢して……♡ 私、シージちゃんで、気持ちよくなりたいの♡ シージちゃんが蕩ける姿を、もっと見たいの……♡ ああ、これが、本当の交尾と言うのですね♡ 生きる為じゃない、愛し合ったもの同士が思いを交し合う、素敵な行為ッ♡ 我慢、できないですっ♡」

「ぉ゛ッ!!♡」

 

 ミリンさんが腰を振る度、ばすん、ばすんとベッドが揺れる。ベッドの反発と、迫りくるミリンさんの迎えピストンに挟まれ、中身事シェイクされているのかと錯覚せんばかりの激しい快感が襲い来る。

 

「出る、でちゃう♡ 濃ゆいザーメン、出ちゃう♡ どろどろのふたなり精液、女の子初心者の"彼女"に、浴びせちゃうッ!!♡」

「くッ!!♡ ぁッ!!♡」

 

 次第に早くなる二人の吐息と、淫らな水音。

 付き合ったばかりのふたなりサキュバスの上ずる声に、絶頂の気配を感じる。生まれたばかりの雌の本能はしっかりとその気配を読み取り、きゅう、と膣を引き締めてしまう。

 

「うっぐぅ、いく、いくよシージちゃん!! ックぅ……!!♡♡♡」

「~~ッ!!♡♡♡」

 

 生まれたばかりの内臓に叩きつけられる、膨大な熱量の液体の感触。

 チカチカと脳内に光が迸り、きゅっと視野が狭まり世界が遠くなるような、だが幸福な感覚に包まれる。

 

「んっくぅ!!♡ シージちゃん、しめつけ、強すぎっ……!♡」

「ッは、ぁ!!♡ んンっ!!♡」

 

 下半身から全身に満ちる絶頂感を受け止める事で精一杯の俺は、喉の奥から絞り出すような声にならない声を上げることしか出来ない。

 味わったことのない女性が絶頂する感覚――それを、魔法のせいで敏感な性感で最大限に味わっているのだ。

 そんな状態で、腰を密着させ、心底幸せそうな声色を漏らすミリンさんにぎゅっと抱き着いていたり。そんな彼女と負けず劣らずな、だらしない笑みを浮かべてしまっている事を、気にする余裕などあるわけがなかった。

 

「っはぁ~……♡ 久しぶりの、中出し射精も♡ シージちゃんの、初めての中出しイキも♡ 最高に、美味しかったぁ♡」

「はっ、はっ、ひぃ♡」

 

 出来たばかりの雌穴を貫いていた雄芯が、どくん、どくんと徐々に脈動を収めていく。

 満足げな言葉を吐くミリンさんの一方で、未だに体のけいれんは収まらず、呼吸も整わない俺。

 しっとりと汗ばんだ肌から伝わるミリアさんの体温。膣壁にへばりつくような濃度の精液の熱や、未だに膣内でぴゅぷっと噴き出ている精液の感触など。鋭敏な今の俺の体は、情事の余韻を余すことなく伝えてくる。

 寄せては返す波のように、絶頂が収まりきらないのだ。

 

「あぁ、トロンとした顔でイッてるシージちゃんも可愛い……♡」

「んんっ♡」

 

 きゅっと抱きしめられると、若干萎えたまま、しかしそれなりの大きさを誇ったままの"それ"の存在感に加え、その豊かな体の感触だけで更に達しそうになる。

 

「大丈夫よ♡ ゆっくり、息を吸って……♡ イクのが落ち着くまで、私が抱きしめてあげますから♡」

「は、ひっ♡」

 

 神経が高ぶったまま帰ってこれない俺は、子供のように胸に抱かれ、言われるがままに深呼吸を繰り返した。

 花の蜜のように甘い香りに包まれる。快楽神経を掻き立てるはずの淫魔の媚香が、不思議と快感でさざなむ心身を落ち着かせてくれた。

 

「……♡」

「は、ふっ♡ ふぅー……♡」

 

 俺の乱れた息遣いと、ミリンさんの情感たっぷりの吐息。それと、彼女の心臓の音だけが、しばらくの間俺の聴覚を満たしていた。

 荒い呼吸音が徐々に収まり、二人の胸の起伏がほぼ同じペースになった頃。ぎしり、とベッドが軋み、二人の距離が開く。

 

「落ち着きましたか?」

「は、はい。すみません、恥ずかしいところを……」

「とんでもない。乱れた姿も、赤ちゃんみたいに抱っこされてる姿も、どちらもとても可愛かったです♡」

「もう、恥ずかしいんで、やめてください……♡」

 

 にやにやと意地悪な笑みを向けられ、恥ずかしすぎて視線を逸らすことしかできない。

 

「ふふ♡ 名残惜しいでしょうが、そろそろ抜きますよ♡ 刺激しないように、ゆっくりと……♡」

「そ、そんなことっ……んんっ♡」

 

 半勃ちでも、膣壁をぐりぐりと刺激しながら抜き去られる快感は、喘ぎ声を漏らすには十分以上だった。恐る恐る下半身に視線を向けると、ミリンさんの男性器が抜かれぽっかりと口を開いたままとなっている女性器から、どろり、と白濁液が零れ落ちる瞬間を目撃する。

 

「すごい、量ですね……♡ お腹の奥が重い気がします……♡」

 

 膣内の奥にまで注がれた液体が、どろりと口から溢れてくる。ごぽり、と擬音が聞こえそうな、濃厚で粘度の高い液体が垂れる感触。

 自分は今女で、射精される側に回っているのだと改めて自覚させられているようで、ごくりと唾をのんでしまい、頬が紅潮するのがわかる。

 

「ふふ、ごめんなさい♡ もっと手加減するつもりだったんですが、シージさんが可愛すぎたので、ついつい沢山出ちゃいました♡ ご馳走様です♡」

「お粗末様、です。ご満足いただけたのなら、わざわざ女になった甲斐があります……んくっ♡」

 

 女の体での初絶頂からしばらく、昂った神経は治まってきたが、"淫魔の繭"の影響は絶大である。

 目の前のミリンさんの吐息が肌に当たる感触だけで、上擦りそうになる声を必死に制御する俺だったが、音を立てない軽いキスを頬に落とされるだけで、呆気なくあられもない鳴き声を発してしまった。

 

「あらそんな、他人行儀な言葉遣いなんてしなくていいんですよ? 私達はもう、恋人同士でしょう?♡」

「そう、でした……」

 

 ミリンさんの言葉で思い出す程、あまりにも現実感がない。だが、この心地よい疲労感に交じる高鳴りが、恋人であることを遅れて実感させる。

 

「でも、元来喋り方はこんなものですよ。自然体でこれです」

「それなら、可愛らしい今の姿にあった喋り方にしたらいかがです?♡ その方が似合いますよ、シージちゃん♡」

「勘弁してください……♡ ただでさえ、恥ずかしいの、にぃっ♡」

 

 耳元で囁かれように喋られると、普段の数十倍はこそばゆく感じてしまう。耐え切れずに動いてしまう俺を見て、ミリンさんはくすりと笑みをこぼす。

 

「あぁ、シージさん可愛い……♡ シージさんの艶姿はいくらでも見れちゃいますが、揶揄うのはこのくらいにしましょうか♡」

 

 すっと密着していた体を話すと、まじまじと俺の全身を観察する。

 

「やっぱり、魔法の影響は大きいようですね。こんな僅かな刺激で感じていては、淫魔としては美味しくても、シージさんがお辛いでしょう。ですから、これは私からのプレゼントです♡」

 

 ミリンさんは右手の人差し指を俺の下腹部――それも、子宮のあるあたりにおくと、魔力を流し始めた。

 

「んくぅっ♡」

 

 他人の魔力が流れてくる感覚でぴくんと仰け反る俺に対し、ミリンさんは空いている手でなだめるように頭をなでてくる。

 

「は、ふ……♡」

「もう少しの我慢ですからね♡ リラックスですよ♡」

 

 いい大人が恥ずかしいと思うものの、羞恥を上回るその安心感に、体の力がすっと抜け、気の抜けた声が漏れ出る。

 キスをしながら、空いた手を絡ませながら、ゆったりと流れる時間。まるで整体で体を解してもらっているように心地良い、他人の魔力が流れる感覚。ミリンさんにされるがままで、すっかり安心しきって身を任せていた。

 

「ん……♡」

 

 子宮を通し、全身に巡っていく彼女の魔力。体中に魔力が流れていくと、昂っていた神経が静まり、徐々に平静を取り戻していく。

 どれほど時間がたったかわからない。二人とも呼吸はすっかり落ち着き、頬の赤みも引いたころ。最後に、ミリンさんは子宮のあたりで魔力が収束させると、1つの魔法を発動し、おなかの辺りから指を引いた。

 

「はい、出来ました♡」

 

 肌と触れ合う温度がなくなり、名残惜しさを胸に視線を下すと、真っ白なお腹に刻まれていたのは、ハートの印章が練りこまれた刻印であった。

 

「こ、れは……刻印ですか」

「そうです♡ 淫魔族の刻印だから淫紋、なんて呼ばれる事もありますね♡」

 

 持続的に魔法を発動させたい場合、物や体に刻むのが刻印である。エルフの荘厳なデザインや、ドワーフのシンプルで厳格な刻印と比べ、いささか淫靡な印象を受ける紋様。

 

「刻んだのは、感度を落とす魔法です。これがないと、とてもじゃないですが生活出来ませんし、掛けっぱなしも大変ですからね……♡」

「あ、ありがとうございます」

 

 確かに、シーツと擦れる感触でさえ敏感に感じてしまう今、この魔法は有難かった。

 とはいえ、刻印魔法は高難易度魔法に分類される。どんな魔法であろうと、発動させっぱなしというのは手間と苦労がかかる為、助かることは助かる。とはいえ、至極簡単な魔法である感度調整魔法をわざわざ刻むというのは、少々勿体ない、というのが正直な感想である。

 

「シージさんの為、っていうのもあるんですが……ごめんなさい♡」

 

 そんな内心を俺の微妙な表情から読み取ったのか、ミリンさんはつつ、と淫紋に指を這わせながら、耳元でこうささやく。

 

「シージさんに、貴女は私のモノなんだ、って証を刻み込みたかっただけでして♡ エンゲージリング代わり、です♡」

「っ♡」

 

 体内の魔力が刻印を通して循環していく度、とくん、とくんと胎動する淫紋。さながら第二の心臓と良いその紋様は、俺の興奮度合いを表すように、脈動する速度を速めていた。

 

「こんなに可愛いらしい運命の相手、逃すなんて絶対したくないなって……♡」

「女として褒められるのは、嬉しいような、悲しいような……んっ♡」

 

 指先から注がれる魔力の感触に、漏れる声とピクン、と跳ねる手足。

 ミリンさんから後ろから抱きかかえられると、ちゅ、と上から軽く唇同士を交わす。お腹に巻かれる、サキュバスの尻尾の感触がこそばゆい。

 

「ふふ♡ それだけ、貴方が素敵だったって事ですよ♡ サキュバスから見ても、恋人としても♡」

「……嬉しいですが、やっぱり、複雑な気分です」

 

 俺の言葉に、ミリンさんは実に楽しそうに華やいだ笑みを見せるのだった。

 

 

 

「そうだ。お二人さえ良ければ、このまま自分たちの家に来ませんか?」

「え?」

 

 ふたなりサキュバスと恋人になった以上、早々元の性別に戻る事はない。わかっていたことではあるが、用意された女物の下着を前にし、改めてその覚悟を問われている中、シージはふと思っていたことを口に出した。

 

「件の村長には追って沙汰があると思いますが、だからと言って今更村に戻るのも躊躇われるでしょう?」

「ええ。その通りですが……」

「自分達の拠点は部屋も余ってますし、割と大きな都市なので、妹さんも食事には困らないと思いますよ。あれだけ仲良さそうにしてれば、アメリアも嫌とは言わないでしょうし」

 

 あれから数時間が経過し、いくら女としては初めてのセックスとはいえ、へとへとになったシージと大満足のミリン。

 諸々の報告を兼ね、二人は手を繋いでアイカとアメリアがいる部屋に向かった際、部屋の中では未だに激しい水音と肌と肌がぶつかり合う音、そして罵り交じりの惚気のような掛け合いが繰り広げられており、廊下にまで響き渡っていた。

 様子を見るため、一瞬だけ使った『共有』から漏れてきた感情からも、特に悪感情はなさそうであった。否とは言わないだろう、というシージの見立ては間違っていないはずである。

 尚、アメリアが絶頂しまくっている最中に『共有』を使ってしまった為に、シージも瞬間的にイッて発情してしまい、興奮したミリンに廊下でしばらく可愛がられてしまったのは二人だけの秘密の話だ。

 

「確かにとても助かりますし、シージさんと一緒に住めるのは嬉しいです。けど、そこまで甘えてしまっていいんでしょうか……」

 

 すっかり普段着に着替えたミリンさんが、悩まし気に吐息を漏らしている。

 アメリアのことも気にしているのだろう、悩むミリンさんにきっと大丈夫だ、と俺は言い募った。

 

「いいんですよ。仮に嫌といっても、管理してるのは自分ですし文句は言わせません。それに……」

「それに?」

「折角恋人になれたのに、いきなり遠距離、というのは少々堪えますので。それに、この体との付き合い方も、教えて頂かないと困りますし……」

 

 二人の為、というのは勿論ある。村長は更迭されるだろうが、だとしても時間は少しかかるだろうし、居心地も悪いだろう。一緒に来てくれた方が、二人も心機一転新天地で頑張れるのではないか、という考えではある。

 だが結局、俺がミリンさんと離れたくないだけなのだ。

 ささやかな独占欲を口に出した俺に、ミリンさんは俺の手を取り握ってくる。

 

「ふふ、シージさんったら、誘うのがお上手ですね。わかりました、遠慮なく、アイカ共々頼らせていただきますね♡」

「……はい」

 

 漠然と思っていた、人生の伴侶がほしいという夢。チャンスは今まで幾度となくあったはずだった。だが、緊急指名が入り流れたり、お見合い相手が突如蒸発してみたりと、悉くうまくいくことはなかった。最早一生相手は出来ないのか、と思いかけていた所に、今回の件だ。

 こんな不意に叶う事があるのだろうか。いや、もしかすれば、彼女と会うために、今まで上手くいかなかったのだろう。そう思うと、女の体になったとしても、気分は上向きだった。

 手から伝わる熱も、見えている光景も、幻覚でもなんでもなく現実の光景だ。

 二コリ、とほほ笑んでくる恋人に、俺は嬉しくなって思わず手を握り返すのだった。

(もし、書くとするなら)次のうちどの蛇足が見たい?

  • 幸平と美衣
  • 慶介と恵里佳
  • アキと凪咲
  • 真尋と亜美
  • TSしちゃった連合の飲み会話
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