二人を伴って拠点に帰還後、荷解きの前に一先ず冒険者組合に報告に行くことにした。
依頼者の違反報告をする事で、件の村長に対し早めに動いて貰いたい、というのが一点。そして、淫魔の繭を受けたことによる冒険者活動休止届の提出がもう一点である。
自惚れのようで自分で言うのも恥ずかしいが、俺とアメリアのコンビはそれなりに売れた冒険者だ。まだまだ先達には叶わないが、それでも指名依頼が溢れかえってしまう事も珍しくない。
ミリンさんの淫紋のおかげで、生活において影響はないが、戦闘となると話は別だ。魔法などを使い魔力が変動すれば、淫紋に刻まれた魔法の効果もぶれてしまい、元の敏感ボディに戻ってしまうのである。
雑魚相手ならばともかく、強敵相手に"共有"など魔力運用は必要不可欠。全力を出せない状態で依頼など受けられる訳もなく、体に慣れるまでは休むことになったのだった。
見た目がこれなので、いつもは同伴しないアメリアと、ミリンさん達も連れ立ってギルドに向かったのである。
「こんにちは~ミーシャさん」
「アメリアさん、お疲れ様です!! 依頼の報告ですか? シージさん抜きは珍しいですね」
にこやかに挨拶を交わすのは、いつもお世話になっている受付嬢、淫魔族のミーシャだ。
一緒に趣味の劇を見に行く仲である彼女は、普段職場に姿を見せないアメリアを珍しげに観察している。アメリアは気まずげに頬を掻き、すっと視線をそらした。
「あーいや、お兄ちゃんは……」
「すいません、自分がシージなんですが」
「……? ああ、シージさんじゃないですか!! お疲れ様です」
その視線の先にいる、ちょっと小さなアメリア。もとい、今の俺の姿を見つけるミーシャ。
不思議そうな顔をしていたミーシャは、ふと気づき瞳に魔力を通す。淫魔族特有の、魂を見る視界に切り替え、俺を識別したのだ。
姿が変わっても、魂は同じ。受付にエルフや淫魔族が多いのは、こういう時に姿形が変わろうともスムーズに話が進み、重宝される為である。
「随分可愛い姿になりましたね。アメリアさんそっくりです。種族は変わっていないようですし、性別トラップでも踏みましたか?」
「ああいや、そうじゃなくてですね……」
全部を説明すれば、非常にややこしい事になる。どう話そうか、と口籠った俺に、ふと彼女の視線が俺のお腹に向かう。
魂を見通す瞳に、別に隠蔽もしていない魔力の流れがくみ取れないわけがない。淫紋の存在に気付いたらしいミーシャは、服の上からそのデザインを透視して、目を真ん丸にして驚いていた。
「……淫紋? え、しかもこの形は……ッ!?」
刻まれた淫紋の意味なんて深く知らない俺は、背後のミリンさんの恥ずかしそうな顔や、淫紋の形状を今知ったらしいアイカちゃんの、マジで? 顔など見れるわけもなく。
「ああ、それはですね――」
「し、シージさん結婚されたんですかぁ!?」
「へぁ!?」
呑気に説明しようとした言葉にかぶせられた台詞に、俺は完全に思考停止状態に陥るのだった。
あのシージが、恋人を作って帰ってきた。
酒場併設の影響で、昼間どころか深夜でさえ騒がしくざわめくギルド館内に、今年最大のどよめきが奔った。
まだ結婚はしていないということは何とか伝わったが、万年独身者としていつ恋人が出来るか、トトカルチョが組まれるレベルで有名な俺に恋人ができただけで、界隈では大事件には違いない。ミリンさんとのことは、俺が女になっている事など些事とばかりに、冒険者業界を揺るがす大事件として都市中の同業者に轟いた。
早速揶揄おうかと思ったら、何故か俺が女になっていることでどう絡んでいいのか距離を取る同業の男勢に対し、アメリア含む女性陣はガンガン姦しく絡んできて、さんざんな目にあった。その夜、その絡みに嫉妬したミリンさんに強く求められたりと、ミリンさんたちの引っ越し初日はどたばたと過ぎていった。
翌日。双子コーデで出かけるアメリアとアイカを、俺とミリンさんは玄関で見送っていた。
普段着のミリンさんと、ゆったりとしたサイズになってしまった寝間着姿で見送る俺に、妹組は振り返って手を振ってくる。
「「じゃあお姉ちゃんとお義姉ちゃん、行ってきまーす!!」」
「呑み込みが早すぎるんだよ。兄と呼んでくれ、兄と」
「アメリアちゃんもアイカも、気を付けるのよ~」
「はーい!! プティングもミリアールさんの劇も、間に合ってよかったー!!」
「スイーツもそうだけど、私劇って見るの初めてなのよね。楽しみ!!」
早期に帰ることが出来たことで、念願のスイーツと新作劇に滑り込みで間に合ったアメリアは、約束通り彼女と一緒に行くことにしたようだった。
義姉呼びは色んな意味で気が早い、と俺が突っ込む前に、二人は駆け出していく。つい先日あったばかりだというのに、随分仲良くなったものだなと俺は二人の社交力に改めて感心していた。
「はじめは相性が良いのか悪いのかわからず心配でしたが、随分仲良くなりましたね」
「暇があったら言い合いしてたものね。ふふ、本当に楽しそうにしていたから、私は全然心配していなかったけど♡」
引っ越しが決まり、こちらに返ってくる最中も、二人は食事がてらセックスしながら無限にお喋りし続けていた。
昨晩も、俺がミリンさんとのお食事で敢え無く気絶させられ、満足げなミリンさんと目覚める事となった一方。アメリアは明日見に行く劇の見どころをアイカちゃんにずっと語っていたようなのだが、二人は夜通し話しこんでいたのである。しかも、それがセックスしながらだというのだから、果たして俺は感心すれば良いのやら呆れれば良いのやら。
複雑な表情の俺とは対照的に、妹の晴れやかな顔を見て笑顔のミリンさん。
「さて、今日はどうしましょうか? 荷解き手伝っても良いですし、2人がいないうちに手続き関係を済ませるのも良いですね。家でゆっくりするのも捨て難いですが……」
「私はお買い物に行きたいです♡ こんな大きい街にしかないお店も見て回りたいですし、足りない家具も買いたいですね♡ それに何より、シージさんに似合うお洋服を見繕ってあげないと♡」
連日の依頼による疲労もありゆっくりしたい気分だったが、恋人のやりたいことがあるならそれ優先な気分である。とはいえ、それは自分に実害が及ばなければ、の話だ。うきうきと楽しそうに語られる展望から着せ替え人形にさせられる未来を想像し、思わず天を仰ぐ。
「う、考えないようにしてたんですが……大丈夫ですよ、ほら、袖詰めれば前の服も着れますし……」
「ダメですよ! せっかく可愛くなったんですから、お洒落はしないと♡ それに、長い付き合いになるんですから……少しずつ慣れていきましょう?」
「そう、ですね…」
何とか言い繕おうとしたが、そっと肩を抱かれて語られると、確かにと納得してしまう。
長い付き合い、それもそうだ。ミリンさんと付き合っていく以上、必然的にこの姿のまま生活していかざるを得ないのだ。
短くなったリーチや身体能力の変化など、冒険者として慣らしていかなければいけない面もたくさんあるし、シンプルにトイレやお風呂など生活面での苦労も想像するだけでも数えきれない。
それでも一緒にいると決めたのは、損得勘定だけではない、それ以上の物があったからなのだ。
「ミリンさんには、色々と教えてもらわないといけませんからね。これからも、ずっと一緒にいるんですし」
「まあ♡ 殺し文句に、私の大好きな清楚系の下着をチラ見せだなんて……♡ 上手な誘い方なんて、いつ覚えたんです?♡ シージちゃんはえっちで賢いですね〜♡」
「そ、そんなんじゃないですよ!? と言うか捲らないでくださいっ!! ってあっ」
ちらり、と自分でシャツを捲って覗いておきながら、チラ見せも何もない気はする。
誤魔化すように、ミリンさんは俺を後ろから抱きしめた。
体格差のせいで、すっぽりと胸に後頭部が埋まるようにきゅっと後ろから抱きしめられると、その適度な拘束感と心地よさに、抗議の勢いが弱まる。
ジト目で上を見上げると、ニコニコと笑顔を浮かべるミリンさん。
完全に受け身の体制で、男としては微妙な心境だが、悪い気分じゃない。
見つめあっていると、自然と距離は縮まって行き、気づけば0になる。
言葉にせずとも伝わる愛情に、生娘のように胸が高鳴ってしまい、思わず目線を逸らす。
「……えっちは、夜までお預けですよ」
「安心してください、わかってます♡ ただ、シージちゃんが可愛すぎて、我慢が効かないだけですので……♡」
「え、それって襲いかかるって言ってるようなもんじゃ……ッ!?♡」
感想や評価などいただけると励みになります。既にしていただいている方、誠に有難うございます!
また、他の方のとせがらでもTS百合でも良いので、是非もう一作品でも見ていただけると界隈が盛り上がって嬉しいのでよろしくお願いします!
(もし、書くとするなら)次のうちどの蛇足が見たい?
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幸平と美衣
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慶介と恵里佳
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アキと凪咲
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真尋と亜美
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TSしちゃった連合の飲み会話