今話は途中で終わります。作者のプライベートな話になりますので、見なくて済むよう事情はあとがきに書いておきます。
いつも当作品並びに当作者を応援いただきありがとうございます。感想や評価など、全て励みにさせていただいております。
仕上がったら投げようと思っていた、幸平と美衣の短編です。途中まで、推敲無しという中途半端な状態ではありますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
男の子の日(幸平&美衣) Draft.ver
幸平さんは、私の自慢の夫である。
どんなに忙しくても私の事を気遣ってくれるし、料理も上手いし家事も手伝ってくれる。全部そつなくこなせるようで、たまに砂糖と塩を間違えたりと、ちょっと抜けたところもあって可愛いのだが、それとは裏腹に真剣な表情をしている幸平さんはかっこいい。
他にも良い点を挙げていけばキリがないのでこれくらいで自重するが、私にとって幸平さんとは、非の打ち所がない完璧な夫なのである。
いつだったか、幸平さんは私の事を自分には勿体ない程の女性と評してくれたが、その言葉は私のセリフだ。
私が好きになったのは幸平さんの見た目のカッコよさではないし、例え幸平さんの姿形が変わってしまおうとも、私の愛情は変わらない。
だからこそ、幸平さんが可愛らしい背の小さな女の子になろうとも、私は全力で愛するし、私の思いは微塵も揺るがないのだ。それに、少女になったのはただのご褒美だし。
そんなわけで、とある事件がきっかけで女の子になってしまった幸平さんに対し、私と幸平さんの仲は遠ざかることなく、むしろ以前よりも中睦まじくなったのであった。
あれから大分時間がたち、幸平さんも女性の体に慣れてきた。当初はかなり戸惑っていた髪の洗い方など、今では私が洗ってあげなくても自分でできるほど成長した。私としては幸平さんとのスキンシップの時間が少し減って残念だったが、喜ばしいことだ。
そんな幸平さんは今朝、どんな状態なのかというと……
「うううううう~……」
布団に包まり枕で頭を隠したまま、不機嫌そうにうめき声をあげていた。普段は高めのソプラノボイスを放っている声は、その機嫌の悪さを表すかのように低く鳴動している。
まるで起きることを拒否しているかのようで、寝起きの良い幸平さんらしからぬ光景だった。以前であれば珍しいを通り越して体調を心配するレベルの出来事なのだが、"彼女"になってしまってからは、定期的に起こっている出来事だ。具体的には、月に一度ほど。そういえば、察する人も居るだろう。
「幸平さん、朝ですよ?」
「うぐうううう~……」
本日はお休み。早起きする必要はないが、規則正しい生活を送っている私たち夫婦にしては遅い目覚めである。しゃがみ込み、耳元で囁きかけるが、幸平さんはいやいやと枕の下で首を振っていた。容姿と相まってむずがる少女のようで愛らしくて仕方ないが、心を鬼にして起こす。
「ほら、今日はデートするんでしょう? 早くしないと映画の時間来ちゃいますよ?」
「んんん……」
その言葉でようやく決心がついたのか、幸平さんは乱暴に枕を投げ捨てると、むくりと起き上がる。ぼさぼさに乱れた髪の下で、座った眼がこちらをこちらを見つめている。
「おはよう、美衣ちゃん……」
「おはようございます、幸平さん」
微笑むと、軽く唇を重ねる。幸平さんも逆らうことなく受け入れるが、いつもとは違い、積極的に舌を絡めてくる。為されるがままの普段とは違う、強気な幸平さんが垣間見える。
「ぷはっ。ふふ、今日の幸平さんは、積極的ですね?」
「そうだよ。僕は、男だもん」
いつもと雰囲気の違う幸平さんは、そう言って男らしい笑みを浮かべた。
女性で月に一度といえば、女の子にとって避けられない日を想像する人が大半だろう。今の幸平さんは女性の体だし、ある意味間違っていない。だが、少し意味合いが違うのだ。
今日は月に一度やってくる、男の子の日。かっこかわいい幸平さんが見れる、唯一の日である。
幸平さんの体は今、完全に女性の体になっている。ということは、内臓も全て女性のものと置き換わっているわけで、当然生理も来てしまうらしい。だが事はそう簡単ではないらしく、幸平さんを始め、今回の事件に巻き込まれた"男性"の中で生理が訪れたのは、たった一人。それは、精神構造が男性と女性で根本から違うことが関係しているらしく、男性としての自意識が強いと、機能としては存在しても動作はしないんだとか。生理が来たというその男性は、女性としての性別を受け入れた結果であり、幸平さんをはじめとするそれ以外の被害者に訪れていないのは、自分はあくまで男なのだという認識が強く残っているおかげなのだそうだ。
慣れない女性の体に困惑していた幸平さんは、そう説明するお医者さんの言葉に安心していた。私だってそう。女の子の体になった幸平さんは可愛らしくて、時間さえ許せばいくらでも愛したいと思うし、嫌うだなんて有り得ないが、私が夫にしたいのはあくまで男の幸平さん。かわいい幸平さんを見ているとつい忘れそうになるが、妻としては、幸平さんの中の男を尊重してあげるのが本来の役目ではないだろうか、と常々思っている私である。
生理が来ないということは男という性意識がまだあるということで、将来的に子供は欲しいと思っている私としても、男に戻る気があることが証明されたのは良かった点だ。だがしかし、いずれ元に戻る薬が出来た時、やっぱり戻りたくないなぁ、女のままが良い、と言われないためにも、もっと幸平さんを立て、男として自覚を持ち続けてもらわないといけないわけだ。
さて、その話と幸平さんの生理が何故結びつくのかというと、実は、幸平さんの生理は完全に来ないわけではないからなのだ。
今回の事件に巻き込まれ女性化した人々は、月経という女性の生理現象は来なくとも、ホルモンバランスの乱れからくる体の変調自体は訪れる。本物の生理と同じ苦しみが来る人もいれば、性欲が増大するという変わった出方をする人もいるのだとか。そして幸平さんの場合、自身は男だという性意識の増大化、という方向で現れる。
私や知り合いの前など、プライベートではともかく、事情を知らない相手と接する仕事上でなら、一時的にでも女性として振舞える幸平さんをして、強烈に女性を意識させられて、今の自分に対する嫌悪感を隠せなくなる。例えば、朝のように不機嫌になってみたり。
「ほら幸平さん、ブラジャーくらいは着けましょう? 見えちゃったら恥ずかしいですからね?」
「嫌だよ。僕男だし……ブラジャーなんて着けたら、変態みたいじゃないか」
今のように、女性用の下着をつけることに対して限りない敵愾心を抱いてみたりと、女性らしい行動を取る事を極端に嫌がるようになるのだ。
むすっと膨れっ面をしている幸平さんは可愛くて仕方ないのだが、見た目はともかく妙齢の女性が下着をつけていないのは大変よろしくない。私にとってもよろしくない。なので、下はトランクスで妥協し、せめてブラジャーは、と無理矢理着せてあげるのだが。
「むぅ……」
上はTシャツ下はパンツルックの格好で椅子に座り、不満そうにつーんとそっぽを向いてすねる幸平さん。そう、優しい普段の幸平さんでは中々ありつけない、ツンツンした幸平さんの出来上がりである。可愛くて仕方なくて、ついつい毎回映像に収めてしまうのだが、私はこれを、幸平さんの男の子の日、と呼んでいる。
「朝ごはん出来ましたよ」
「うん、ありがと。いただきます」
「はいどうぞ」
どんなに拗ねてても、手を合わせていただきますは言ってくれる幸平さんはとても律儀だ。そして、男の子の日の幸平さんは、いつもとは一味違う。
「今日は、僕がエスコートするから」
ぽつり、と零す言葉は、可愛らしい声とは裏腹に、男としてのプライドに満ち溢れている。予め、男の子の日は私からデートに誘っている。でも、今日は男として僕がリードするんだ、という理論で毎回宣言してくれるのだ。
女の子になってからは、女の子同士で行ける場所も選択肢に入るようになったこともあり、私がデートの計画を立てることも少なくなかった。男としての自意識が高まっている今日、幸平さんとしてはそれに甘えるのは嫌なのだろう。
「うふふ、わかっていますとも。お願いしますね、私の旦那様?」
私も最初からそのつもりで、何のプランも立てていない。今日は、男の幸平さんに甘えて、彼の男の子成分をたっぷり補充してもらう日なのだ。
可愛らしい上に男らしい今日の幸平さんは、黙ってこくりとうなずいて見せる。頼った事にご飯を食べる速度が上がり、勢いあまっておかわりするも、以前とは違い量が入らないので、私に謝りながら残してしまう所までが、今日の幸平さんである。
注意:下記のあとがきは作品の内容とは関係ないので、どうでも良い方は見なくても大丈夫です。ここまで閲覧いただきありがとうございました。
前書きと書き出しは被りますが、いつもTS百合短編集と当作者を応援いただき、誠にありがとうございます。
私のTwitterをご覧の方は事情をご存知だと思いますが、ここにはリンクも張ってませんし知らない方が大多数だと思いますので簡潔に述べますと、メンタルを拗らせました。
精神科で貰った薬を飲み、ごまかしながら何とか仕事をこなしている状態でして、とてもではありませんが執筆できる状態ではないため、いったん筆を置く事にしたのが先週の話です。
しかし、少なくとも戻ってくるつもりはあるぞ、という意思を示すべく、途中でも良いから投稿しようと思った次第です。先の事なんて今は考える余裕もない状態ですが、もし戻ってこられた際は、また当作品の事をよろしくお願いいたします。
くえん
(もし、書くとするなら)次のうちどの蛇足が見たい?
-
幸平と美衣
-
慶介と恵里佳
-
アキと凪咲
-
真尋と亜美
-
TSしちゃった連合の飲み会話