いつか企画していた100万UA記念の番外編。
こっそりと書いておりました。
※完全にIFルートです。世界観も時間軸も全く共有していないので本編読み返す必要なしです。
【IF】 Episode 1
「おーい!比企谷くん、こっちこっち~」
俺を呼ぶ声の方へ視線を向けると、あまりにも悪目立ちした美女がそこには立っていた。今日は大学の講義が無く、午前中にゼミに顔を出しただけだった。
周りの男達が飢えた獣のような目で彼女を見ている。勿論中には同性からの羨望の眼差しや嫉妬に満ちた黒いものもある。こうなることがわかっていたからこそ集合時刻の30分以上前に来たはずだった。しかし、どうしてか彼女はそこに居た。まるで俺が早く到着することをわかっていたかのようだった。しかも待ち合わせ場所が駅前の時計塔の下というのがまたいやらしい。そんな場所、どう考えても目立つ。いや、目立つ場所にわざと設定したのだ。しかも俺が悪目立ちするためだろう。会う前から機嫌が良い方ではなかったが、たった今すこぶる機嫌が悪くなった。
「おはようございます、陽乃さん」
俺をここに呼びつけた女性―――雪ノ下陽乃さんは蠱惑的な笑みを浮かべて俺を迎えた。映画のワンシーンを想起させるような美麗さだ。長袖にロングスカートで素肌はほとんど見えないのにもかかわらずどうして、こんなにもエロく見えるんだろうか。大学院を卒業して社会人になったからなのか妖艶さが倍増している気がする。
「あれ?もしかしなくてもご機嫌ナナメだったりする?」
「どうですかね」
「男と女が言う方入れ替わってるような会話だね」
「それって俺が女々しいってことですか?」
「比企谷くんはとても格好良い男の子だと思ってるよ」
「俺も陽乃さんはとても素敵な女性だと思ってますよ」
「うわ~こんなにも心がこもってない口説き文句初めて~」
「お互い様でしょうに」
超本気の口説きしかされたことないのにわたしとぶつぶつと文句を言っているがこれ以上は反応しないことにした。陽乃さんのこういった嫌がらせはいつものことだ。一々反応していては身がもたない。俺は陽乃さんを置いて歩き始めた。彼女はぴったりとついてくるように後ろから小走りでついてくると直ぐに俺の隣に並んだ。周囲の視線がこちらに集まるのはいつものことなのだが、どうにも慣れない。
「比企谷くんってやっぱりわたしのこと嫌い?」
「100の自信を持って好きとは言えないかもしれないですね」
「じゃあちょっとは好きが入ってるんだ?」
「嫌いなのに付き合ってるとしたら、それは何か弱みを握られているか契約かのどっちかですよ」
「素直にわたしのこと好きとは言ってくれないの?」
「露骨に胸を押し付けたり、腕を公共の場でわざとらしく絡めてきたりしなければもう少し好感が上がるかもしれないです」
「その割にはおっぱいから目線を外してない気がするんだけど?」
「生理現象です」
これは女性を恋愛対象としている人間なら皆そうなる。真理と言っても過言ではない。万乳引力ははるか古代から存在するのだ。現代の人類の細胞に本能として刻まれていることは自明の理ではないだろうか。
「また頭の中で屁理屈こねてるんでしょ…」
「そ、そんなことはないですヨ」
「なんか唐突に外国人キャラみたいな話し方になってるし」
「陽乃さんって漫画とか読むんですか?」
「そんなに。でも比企谷くんが『年上のお姉さんに甘やかされる』系のライトノベルを愛読しているからね~。一応彼氏の性癖ぐらいは今後のことを考えてしっかりと把握しておこうかなと」
「え?」
なんでそれ知ってるの?というかそのシリーズは隠してたはずだよね?いつの間に勝手に見つけたの?絶対に見つかるはずのない場所に置いておいたはずなのに…。
「今度アレやってあげようか?4巻の267ページに書いてある、、、」
「陽乃さん行きましょう。ここは目立ちます」
「いやん」
強引に彼女の腕を引っ張る。これ以上彼女のペースに付き合うとロクな事にならない。中学生の頃に書いた自作のポエムを朗読されるような気持ちになりたくない。中二病はまだ卒業できてないけど羞恥心というものはあるわけで。
「偶には男らしいところあるんだね、比企谷くん」
「草食系だからこういう行動をとってるんですよ。肉食ならあの場所で陽乃さんに迫ってるんじゃないですか?」
「それされちゃったらコロッといってたかもよ?」
「ご冗談を。冷ややかな目で一瞬見た後に作り笑顔になる未来しか見えないです」
「あはは。それは比企谷くん以外の男にされた場合の話だね。というか作り笑顔ってひどいなぁ」
「されたことあるんですか?」
「あるって言ったら嫉妬してくれる?」
「陽乃さんがその相手にお熱だった過去があるんなら嫉妬するかもしれないですね」
「ずるい答え方するなぁ」
「自己紹介ですか?」
「そういう事言うと、ここで思いっきりキスするよ?」
陽乃さんが更に一歩詰め寄ってくる。目を輝かせないでほしい。
「なんですか、その斬新な脅迫。やるなら誰も見てないところでお願いしますごめんなさい」
「誰かのマネかな?でもキスはしたいんだよね。もぅ可愛いなぁ…ん」
陽乃さんはこちらが身構える前に襲いかかってきた。痛恨の一撃。ハチマンは萌え死んでしまった!
「っ…け、結局するんですね」
「興奮した?」
「最初の行き先をホテルに変更する可能性が出てくるくらいには」
「じゃあ行く?」
「映画見に行くんじゃなかったんですか?」
「そうだった。まぁ比企谷くんを呼び出す口実に使っただけだからそこまで興味は無いんだけどね。公開してから2ヶ月くらい経ってる映画だし」
陽乃さんは腕を絡めたままもう片方の手で人差し指を口元に当てる。その仕草はとてつもなく可愛らしいのは勿論なのだが、密着した双丘の方に意識を奪われてしまう。
「口実って。普通にデートしようって言えばいいのに」
「デートって言葉。比企谷くん嫌いそうな感じするから」
「どこまで俺をひねくれ者だと思ってるんですか。俺だってデートってものにはそれなりのあこがれがありますよ」
「高校生の時はリア充に対して否定的な感じだったじゃんね」
「それは今も若干そう思ってますよ」
「え~。わたしのどこが不満なの?やっぱり性格?それとも雪乃ちゃんくらいのおっぱいの大きさが趣味になったの?」
「性格の次に胸のサイズが評価基準だと思っているところとか結構直してほしいですね。普通に失礼ですよ俺に対して」
「おっぱい凝視しながらそんなこと言っても何の説得力も無いんだけど…」
陽乃さんは呆れたように大きなため息をついた。
「ふふ、まぁいいや。とりあえず映画見よっか」
「そうですね」
「映画館では大人しく出来るの?」
「子供じゃないんですから普通に見ますよ」
「触ってくるんじゃないかって話だよ」
「暗いからって俺が痴漢するかもってことですか?むしろ陽乃さんの方からしてくるんじゃないかって俺のほうが心配してますけど…」
「それは〜うん。あるかも」
あるのかよ。意外とこの人甘えたがりというか寂しがりだよなぁ。結構一人が平気な人って印象だったのに。いや、でもよくよく考えたら雪ノ下や俺によく絡んできてたし、その節はあったかもしれない。
「でも比企谷くん、されるの好きじゃん?」
「それはそうですけど」
「比企谷くんはマグロだからなぁ」
「もうちょっと言い方ありませんか?しかも別になにもしないわけじゃないでしょ…。というか陽乃さんが何もさせてくれないというか」
「それはそうだね」
くすくすと陽乃さんが笑う。この人エッチの時めちゃくちゃ責めてくるから抵抗する間もなくひたすら蹂躙されるのがいつもの流れだった。
「後でしてあげるね♡」
陽乃さんは耳元でそう囁く。耳元で言われるのはとても嬉しいのですが、言いながら股間をなで上げるのはやめてもらっても良いですかね?すぐ固くなっちゃうし、今日ジーパン履いてるから苦しくなるし。
「あはは。こういうところはいつまで経っても童貞だね~可愛い♡」
「そういう陽乃さんだって強がってはいるけど意外と押しに弱いじゃないですか」
「それはそうだけど、比企谷くんの押しに弱いだけで他の人なら突っぱねてるよ」
可愛い。何この彼女超可愛い。お姉さんのくせに死ぬほど可愛い。この人、俺の彼女です。
「ちょろ谷くんだ」
「雪ノ下みたいに新しい名前を俺に付けないでくださいよ…」
「雪乃ちゃん、わたしが会った時は比企谷くんのことよく話題に出してるよ。こんな美人姉妹に愛されてるなんて罪な男だね~」
「雪ノ下は別に面白がってるだけでしょう。別に俺のことは好きじゃないと思いますよ」
「………」
「なんで急に黙るんですか」
「これ本気で言ってるんだもんなぁ…。雪乃ちゃんにいつまくられるかわかったもんじゃないよね…敵は多いなぁ」
何かボソボソと陽乃さんが呟いているがギリギリ聴き取ることが出来ない。正直何を言ったのか聞いてみたいのだが、ここで何て言ったなどと言おうものなら彼女がその日終わるまで口をきいてくれないまである。
「券買ってくるからちょっとここで待っててね」
「え、一緒に行きますよ」
「大丈夫大丈夫。列にいっぱい人いたら迷惑でしょ?おすわりだよ比企谷くん」
「待てじゃなくておすわりなんですね」
「わたしのペットでしょ?」
「それは語弊がありすぎる」
「ふふ。冗談だよ。わたしのカレシくんだもんね」
それを最初から言えないのかなぁこの人は。そういうところがめっちゃ面倒くさくて可愛いんだけども。
続く
数話分のショートになりますが、はるのん編です。本編と違ってけっこうまったり目なので気楽に読んでいただければ幸いです。