※この作品はR-18です。

雪の楽園   作:ホネ

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ご無沙汰していますm(_ _)m
今回は久しぶりに . 5話シリーズです。


それではどうぞ




第十.五話

———都内とあるオフィスにて・・・・。

 

芦間敏生は退屈だった。いつも仲良くしている同僚が不在、意中の女性とは食事に行けず、仕方なく食堂で誘われた他部署の女性と味気ない時間を過ごした。今日食事をした女性の話題は終始、ファッションの話からの自分自慢であった。何かと付けて最後には自分を近くに置けばステータスが高くなるという宣伝文句の押し売りというワンパターン戦法で辟易した。おまけに首元から漂う香水の臭いが鼻を刺すものだからせっかくの栄養補給すらまともにさせてもらえない。

そんなわけで、味気ない時間を済ませると、そそくさと席に戻ってだらけていた。

幸い両隣の席には誰も居ない。一人は出向、もう一人は昼食の休憩を取っているようだ。それをいいことに芦間はわざとらしく大きな溜息を漏らした。

 

八幡が居ないことを残念がっているのは芦間や一色だけではない。

 

休憩時、芦間が一人で食堂に向かった時、すれ違う女性たちが驚いた目で見つつ、溜息をこぼす姿が見受けられた。

「あの。芦間さん」

「ん?はい、なんでしょうか?」

気がつけば、一人の女性が側に居た。いつも八幡話しながら歩いている時にとすれ違うと、こちらを見ながら話している女性の内の一人である気がする。他の男性社員からの人気も高い、可愛らしいタイプだった。休憩室で独身の社員たちが彼女をものにできないかと作戦を練っていたのを芦間はちらと見たことがあった。その話題に既婚の男性も参加しているのがまたなんともアホらしい。愛人にでもする気だろうか。

芦間は彼女をじっと見た。他の社員がいる中で、男性社員に話しかける事に気後れしているのか、動揺が見られる。

「なにか気になることでもあったら、聞いてくださっても大丈夫ですよ」

芦間は彼女の口が開くのを暫く待っていたが、埒が明かない気がしたので、軽く次を促した。

「あ、ありがとうございますしゅ…」

女性は八幡と似たようなかみ方をした。

先程のパスが功を奏したのか、未だ緊張はしているものの、彼女の肩から力が抜けていき、落ち着いたように見える。女性は呼吸を少しだけ整えると芦間の目を見た。

「その、きょ、今日って比企谷さんは…」

「え、比企谷?」

驚いたような口ぶりを見せるものの、芦間はおそらく八幡についての話題だろうと予想をしていた。それ故に、その答えも直ぐに用意できるように頭の中の出荷棚に置いてある。

「あいつ出向で今日は居ないんですよ」

「え、出向ですか…。そうだったんですね、いつも芦間さんと一緒にいらっしゃるから変だな〜って」

女性は下を向きながら後ろで腕を組んでいじらしそうにしている。

別段この女性が珍しいというわけではない。

それに気づいていないのは本人だけだった。まさに知らぬが仏とも言える。

八幡は女性人気が高い。当初は、悪人のような細い目をした猫背の男に良い印象を持つ人間は少なかった。芦間も多分にもれずその内の一人だった。当初は出勤場所を間違えた営業マンではないかと揶揄されていたことも記憶に新しい。しかし、問題解決における手腕、驚くほどのお人好しさ、優しさに考えを改めた。ちなみに、女性人気が上がったのは八幡が眼鏡をかけ始めた頃からである。風采が上がらない男という第一印象は今やどこ吹く風だ。

 

芦間も女性からの好意の対象となることが少なくないが、女性との交流が多い方ではなかった。それどころか同姓と軽口をたたき合うといったことも滅多にない。狭い人間関係の中で一人生きてきたタイプの人間だろう。

彼にとって一人の時間は慣れていたし、割と好きな時間でもあった。休みの日は何もせず、呆けている時間も多い。勤務中にそんな風になってしまうのは御法度だが。

昼食を済ませると、恒例の眠気が襲ってくる。普段の彼ならありえないことだが、この日は珍しく睡魔に負けてもいいかと睡眠欲に抗えなかった。

「いて!」

智佐吹千紗に起こされたのは今まさに眠りこける寸前のところだった。

「トシ、比企谷が居なくなって一人寂しくなっちゃったの?」

芦間を下の名前のアダ名で呼ぶのは彼女くらいだ。芦間の性格を把握した上で、彼女なりの親しみを込めて接してくれているからこそ芦間はそう呼ばれることを許していた。

「千紗吹さん、俺ストレートですよ…、そんな、一部界隈が大好物の恋みたいなこと無いですって〜。ま、自分は女性同士ってのは嫌いじゃないんですけどね」

オフィスにはあまり社員が居なかった。数人だけがパソコンに向かって黙々と作業を続けている。周りの社員はこちらの会話に全く興味が無さそうだ。

「あら、そうなの。じゃあ、いろはちゃんとご飯食べられなかったとか?」

「そうそう!そうなんですよ〜。見事にかわされました…」

芦間は勘弁してくれと思いながらもおどけてみせた。眠気覚ましにはちょうどいい一発だが、致命傷に近い。

完璧に近い芦間の外見設計の僅かな急所を的確に貫いてくる。中々に、陰険な上司だ。芦間は、自分が嫌われるような事をしたか記憶を辿るも思い当たる節はなかった。

「それで、メール来た?」

千紗吹は勤務中にだけかけている眼鏡をかけ直した。黒縁の眼鏡も彼女がかけるとファッションの一つとして映えるのが憎らしい。仕事中に八幡がかけている眼鏡と似ているのは気のせいだろう。

「いいえ、まだ来ていないですね。今朝送ったばかりですし、向こうはもう深夜ですからね。おそらく翌朝には来るかと」

芦間は素早く、心を切り替えた。

「そっか。予定の方は?」

「今朝のメールの内容って契約書の送付だったので、予定に関して言えばもう確定ですよ。現地時刻10月XX日16時にC大学正門にあるクマの銅像の前集合。17時から企業説明会一時間、18時から2時間半で一次の面接で予約取れました!」

芦間は敬礼をして大げさに振る舞った。一部、空元気も含んでいる。先日の残業のダメージが殆ど抜けていない。昨晩は終電を逃し、近くのビジネスホテルに泊まる羽目になった。そこのホテルのベッドの硬さたるや、安眠を妨げる害悪でしかなかった。労災でも降りてくれないものかと悪態をつきたくなるような寝起きだった。

「了解、ありがとう」

千紗吹は献身的な部下を労った。彼女にそう言われるだけで疲れが吹き飛ぶという男性社員も少なくないが、芦間がそれを理解出来るまでには一生かけても足りないのかもしれない。

とりあえず一校の予定が決まった。海外の大学と面接の予定を決める際には一ヶ月近く交渉と連絡が必要になるのでそれなりに、根気がいる作業だった。芦間は学生時代に企業相手に採用面接の準備をしていた経験から慣れたものだ。

「そういえば9月のロスキャリだけど、私と、トシ、人事の島田さんで行く予定だったんだけどさ、もう一人必要になったのよ。それで比企谷君連れて行こうと思っているんだけど、どう?」

「比企谷ですか?自分は別に構いませんが、こっちが勝手にメンバー決めても良いんですかね?」

ロスキャリはボスキャリの二ヶ月弱ほど前にロサンゼルスで行われるキャリアフォーラムのことだ。例年コンサルティング会社や、会計監査法人等が多く参加している。ボスキャリに比べると小規模だが、それでも有名企業の多くが参加する大きなイベントの一つだ。

「島田さんから私の方で選んできてくれって言ってきたのよ。まぁその一言でお察しよね。私、他に連携取りやすい子あんまり居ないし」

千紗吹は首をゆっくりと回しながら虚ろな目で自分の足元を見ながら言った。

芦間は八幡に渡すはずだったマッカンを口につけながら千紗吹の視線の先を辿った。芦間は甘い物が苦手だったので正直なところ、マッカンは飲むに耐えられない代物だった。それを逆に利用して、自分の眠気を覚まさせた。芦間は眼を千紗吹の方に戻すと、表情を柔らかくした。

「じゃあ比企谷連れて行きましょう。嫁に暫く会えなくなるからってゴネそうではありますが」

上司が欲しがる答えを勿体つけて返す。こうした方が彼女には効く事を経験から知っていたからだ。

芦間としても他の社員と行くよりかは八幡と行くほうが余程楽であったし異論は全く無かった。

「そうね、仕事なんだから我慢してもらわないとね♫」

そう言って持ち場に戻った千紗吹の足取りは非常に軽そうであった。芦間にはその後ろ姿が浮かれているようにすら見えた。それにしてもいろはちゃんとはね〜っと芦間にだけ聴こえるように独り言を漏らしていたが、触れないことにした。芦間とて露骨な釣り糸にかかるほど判断力を失っていたわけではない。

 

窓外は曇天だ。雨に降られそうな雲行きの怪しさだった。芦間は傘を持ってきていなかったので、出来れば自分が帰るまではなんとか持ちこたえてほしいものだと少しだけ天に願ってみた。とはいえ、彼は神秘やオカルトの類など微塵も信じてはいない。

 

芦間はパソコンの画面に目を戻すとメールの受信BOXを開いてみた。画面には新規の受信メールが一件あると表示されている。差出人は先程話していたC大学の日本人会からだった。向こうの時刻は深夜を回っているはずだが、夜遅くまで課題をやっている合間に返信をしてくれたのだろう。芦間は自分の大学時代を思い出した。

メールを開封するとメールの入力者は彼がいつも連絡を取っている日本人会(JSA)キャリアの担当の女子生徒からだった。年齢に反して落ち着いた性格であることが伺える文章で芦間の方が背筋を伸ばさねばならない時も多い。

 

芦間は内容を確認すると数分で返答を入力して送信した。

丁度その時、会議の呼び出しが入った。

 

芦間は席を立つと、持っていたマッカンを一気に飲み干す。喉の奥にまとわりつくような甘ったるさに眉をしかめながら会議室へ向かった。

会議が終わったら、緑茶でも飲もう。

芦間はそう決心した。

 

 

 

---------

From: University of CXXXX JSA CAREER

To: 株式会社XXXX 人事部

件名: RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:RE:貴校での採用面接について

本文:

芦間様

契約書の送付、ありがとうございました。それでは10月XX 日、C大学にてお待ちしております。イベント近日になりましたら、また私の方から当日の予定表及び、詳細を記載したメールを送信いたしますのでご参照頂ければ幸いです。改めまして、弊団体でのイベント開催をご検討頂き誠にお礼申し上げます。また、私事ではございますが、9月に開催されるロサンゼルスでのキャリアフォーラムに参加する予定でございます。なのでその時にでも芦間様及び貴社人事担当の皆様に個人的にでもご挨拶に伺うことが出来ればと存じます。お会いできることを大変楽しみにしております。

 

 

University of CXXXXXX JSA CAREER Officer

鶴見

 

 

続く




なんやかんや、案外番外編シリーズのほうが書くのが楽しかったりします()
うん?書き終わって読み直したら、原作のキャラが一人も出ていない( ゚д゚)ポカーン

これもう何の作品なんだろう…。
いや、最後に原作のキャr(ry げふんげふん。

では来週も頑張って一週間後に上げられるようにがんばります…汗
現在7連勤中。落ち着いてかける時間が無いですが、飢えている時の方が変に進むのでテンションおかしい時にバンバン書いて書き溜めておこうと思います(_ _;)←現在、6000字くらいしかストックない

では、次回も宜しくおねがいします
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