今回も無事に投稿することが出来ました!
今回と次回は番外編のようなエピソードです。一週間間隔で投稿を行う予定です!(次話既に書き上がってます)
今回はいよいよ彼女が登場です。
前書きはこのくらいにして今回もよろしくお願いします。
———アメリカ合衆国、とある大学にて……
雲ひとつ無い澄んだ青い空が上空を覆い尽くす。
この地域では雨が降ることは殆ど無い。一年中空気は乾いており、日本のような湿気に満ちた環境とは無縁だろう。雨が降る時はスコールのように一気に降り注ぐ時か、ポツポツと小雨がわずかのどちらかであることが多い。
映画の本拠地がロサンゼルスのハリウッドにあるのは、一年中気候が殆ど変わらないからと言われている。映画の撮影のスケジュールが立てやすいからだ。
逆に同じ西海岸地区でも北にあるシアトルでは曇りの日が年間200日以上もある。
そして、天候と同じく大学の特色も地域に依って多種多様だ。
大学の数は多く、主に四年制大学…Universityと呼ばれるものやそこに入るための座学を中心としたコミュニティカレッジ...Community Collegeと呼ばれる二種類の大学形態に分かれている。
その中で彼女が通うのはUniversityに分類されるもので全米の中でも有数とされる超有名大学の一つだった。
文武両道で数多くのプロスポーツ選手を排出する傍ら、世界の大学ランキングにも常に上に名を連ねる。
また、州立大学なので一般にも校内が解放されており、学生ではないことがすぐに分かる幼児達の走り回る姿やツアー客がキャンパスを歩く姿も珍しくない。
彼女の授業は朝の八時からだった。朝の六時半に目が覚めると全ての支度を済ませ、荷物を持って食堂へと向かう。学生寮に住んでいるので、講堂までは、校外に住む生徒に比べればそう遠くない。入り口を出て中央広場を横切れば直ぐに食堂もある。
部屋を出て細長い廊下を抜けた。階層中央に位置するホールでエレベーターを待つ。エレベーターは整備が整ってなく、一階に着く度に機体全体が激しく振動し命の危険を感じてしまう。それでも修理が一向に入る気配がないのが流石四年制大学といったところか。
寮の入り口には朝の日差しが差し込んでいた。少女は眩しさに目を眩ませつつも重い入り口のドアを押して、食堂へと足早に向かった。キャンパスではスケートボードやキックボードに乗った生徒の姿がちらほらと窺える。
偶にセグウェイに乗った生徒もいるが移動速度は前者二つに比べるとお察しではあった。
程なくして彼女は食堂に到着した。開場は七時からであったが既に十人程が入口の前でスマートフォンを見ながら待っていた。
食堂の開場を待つとは言え、彼女は普段は優雅に食事を摂るわけではなかった。いつも、荷物をロッカーにしまって朝食で果物を貰ってからそのまま授業に参加するのが彼女の日課だった。
しかしそれは一人で食事をする時の場合のみである。
「オハヨウ!ルミ!」
食堂前のロッカーに荷物を入れていると、後ろから彼女を呼ぶ声がした。
「うん、おはよう。レイチェル」
名前を呼ばれた少女・・・鶴見留美は茶髪の似合うクラスメイトに挨拶を返した。彼女…レイチェルとは初めての授業で隣になって以来の仲だ。一番最初の数学の授業で留美が数学を彼女に教えたことがきっかけだった。出題範囲が留美が高校時代に修了していた範囲に似ていたこともあり、苦労しなかったのが幸いした。アメリカでは微積は大体、大学から学び始めることが多かった。逆に日本では微積は高校時代から学ぶので、語学はどうしても遅れてしまうものの、数学に置いてはある程度留美にアドバンテージがあった。同時に国史や政治学などの授業では留美はレイチェルに非常に助けられた。流石にそういった科目では自国民であるか否かの差は大きく、これらに留美は勉強時間を多く割かなければならなかった。レイチェルの助けがなければ留美は睡眠時間の多くを削って勉学に励む必要があった。留学を全て一人で行うというのはかなり酷だ。
そうしてお互いが自分の苦手な科目を助けるようになって以来、二人はそれなりに知己と呼び合えるほどの関係になっていた。
レイチェルが日本語を教えてほしいということで手始めに日本語での挨拶を教えてからというもの、いつも練習を重ねるように日本語を使って話しかける。それがまた可愛らしくて、新しい日本語を毎日教えていくのが留美の楽しみでもあった。
「ルミ。今日はどんな予定?」
レイチェルは質問をしながらヨーグルトを頬張っている。彼女も留美と同じく朝はフルーツなどのあっさりとしたものを好んだ。彼女がコーンフレークと混ぜながらヨーグルトを食べる時は、決まってその日の授業で試験や小テストがある時だ。
食堂ではアスリートであろう体格が非常に優れている者や、パソコンを持ち込んで、宿題のレポートを必死に終わらせようとしている者がいた。当然だが、人種も多種多様で留美が座っている長机を一列だけでも随分と多国籍である。
隣では、理系であろう生徒がフラッシュカードで必死に単語を覚えていた。最後の追い込みというところか。大量の化学式が見えた。
「私…?私は今日は八時から統計学の授業やってから午後から心理学」
「それってGE?今学期やってる教授ってペーパーが多いから、ネットの評価でレート凄い低かったと思うんだけど」
GEはGeneral Education、、、日本語では一般教養と言われるものだった。リベラルアーツの授業はかなり重要視されており、どんな専攻の生徒であっても最低◯個というような形で明文化されている。学生たちはRate my Professorなどの生徒たちが投稿する教授評価サイトなどで事前にテストの難しさや採点傾向を下調べするのが通例だ。
「まぁでも、ペーパーは多いけど出せばB+以上は確実に貰えるから実際、そうでもないと思う。試験に関してもほぼ教授の授業の範囲から出るし、試験勉強はスライドを読んでおけば大丈夫だよ」
「へー、意外。なんか思ってたのと違うかも。来学期取ってみようかな」
「レイチェルもうGE取り終わったんじゃないの?」
「終わってはいるけど、副専攻に何か学ぼうと思っていて、心理学興味あるんだよね」
「心理学は理系だし、選考あったんじゃない?」
「げ。確かに…。都市開発みたくGPA3.5とかないと厳しかったよね」
「うん。あと、面接もあるし、出願用のエッセイも出さないと行けないはず。というより、心理学に副専攻コースがあるのかなぁ」
「そうだね、今日午後からは授業なくて暇だし、デパートメント行って聞いてみるよ」
「それが良いと思う」
「まぁ副専攻に出来なかったとしても、GPAをブーストしたいから楽単はぜひともほしいな。来学期結構ヤバイのがあってさ」
レイチェルはフォークを器用に回しながらぼやいている。首を回しながら、垣間見えるうなじが彼女の物憂げさを代弁していた。
留美は小切りにされたパイナップルをフォークで丁寧に刺すと口に運びつつ、レイチェルをチラと見る。
「何の授業が大変そうなの?」
「アカウンティング。会計だよ、会計。結構テストが鬼畜らしくてC以下が半分以上でなおかつ途中でクラスを落とす人が半分以上」
「それってパス出来る人すら最初の人数の四分の一にも満たないってことなんじゃ?」
「そーだよ。うちの大学って最初の座学のほうが三年生以降にやるアッパー(三年生以降に行う専門知識に特化した授業)の授業より難しいじゃん?だからその授業がビジネススクールに出願して入って来た生徒の足切りに使われているってよく噂されているよ」
「なるほどね。それを来学期に取るんだ」
「そうそう。もう今から憂鬱…」
レイチェルはやけ酒のように牛乳を一気飲みした。片や留美はもし自分がそんなことをしたら、胃腸が悪くなりそうだと呑気なことを考えていた。
「あ、もう時間だよレイチェル」
「え、やばい。もうこんな時間!?ごめんね、ルミ!私先に行って教授に話しておかないといけないことあるんだった!」
留美に時間を聞いたレイチェルはヨーグルトを男性のように乱暴に口の中にかきこむと慌てて席を立った。その際、丁度後ろを通りかかっていたメキシコ系の女性にぶつかりそうになり、流暢な英語で謝罪していた。
彼女を流し目で見送った後、留美はパイナップルを口に入れるとゆっくりと席を立った。食器を返却し、入口前のかごに積んであるバナナを一本取る。授業の後に講堂前の机で栄養補給がてら食べる為だった。
食堂を出て授業の教室に向かった。教室に向かうとは言え、大学の規模も非常に大きな為、移動にも相応の時間を要する。因みにマンモス校となると校内を行き交うバスが運行している。
坂道を下り、市民も自由に使うことのできる巨大なジムを左手に歩いていく。途中、この大学の象徴である銅像が鎮座するメインストリートをまっすぐ抜け、草原の斜面を分断する並木通りを登った。
留美が教室に到着したのは食堂を出て15分経過した後のことだった。
授業の席に着くと留美は携帯を取り出して、メールを確認した。受信BOXには新着メールが五件あることが確認できた。大学からのキャリアフェアや予定表が書かれたものやメアド登録しているオンラインショッピングサイトなどからの広告だった。なれた手付きでメールを開封せずに削除すると、別のアカウントに切り替えた。
アカウント名には『JSA CAREER』と書かれていた。このアカウントは彼女が所属する日本人会理事のキャリア部門・・・日本人留学生と彼らを採用したいと考える日本企業たちの就活を斡旋する日本人会の理事達が、共有しているフォルダだった。仕事の依頼や、日程の調整等は基本的にこのメールアカウントを使って行われている。そして、複数の会社と連絡を取るため、自分が担当している会社のメール以外は開封しないというルールが設けられていた。
新着メールは三件。この内、留美宛に送られてきていたのは一件だった。
留美は今年は三社と連絡を取り合っている。そして、今年の採用面接のイベント運営を依頼された企業の中でもかなりの目玉とされている企業を留美が担当していた。今回のメールはその企業からのものだった。
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From: 株式会社XXXX 人事部
To: University of CXXXXX JSA CAREER
件名:当日の予定に関しまして
本文:
鶴見さん
当日の予定表の送付を送っていただけるとのこと、誠にありがとうございます!ロサンゼルスにいらっしゃるのですね(*^^*)その時はお会いできること、楽しみにしております。
イベント当日の弊社からの参加人数は四人を予定しております。その内、面接官は2〜3人です。募集人数に応じて臨機応変に対応するという形ですね。因みに、面接時間は全部で4時間を予定しております。
イベントページは鶴見さんに作っていただけるということですが、今回の内容の詳細や弊社紹介文まで任せるとなると、鶴見さんの負担が半端じゃなさそうなので、こちらで作成いたしますね。
新卒採用の募集ページも後ほど、私の方からリンクを貼ります。その際、イベントで共同開催者に私を入れていただけると非常に助かります!そうしていただければこっちでもページの編集できるので。
(これ僕の顔本プロフです!適当に使ってやって下さい)
XXXX社
芦間
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留美はパソコンを取り出して、JSACAREERのメールアカウントを開くと、先程届いたメールに慣れた手付きで素早く返信した。携帯でも返信は可能ではあるが、PCで行った方が、同時に別のタブでFacebookを開き、イベントページの作成に取り掛かる。授業が終わり、夜になってしまえば宿題に追われることになるのでそうなる前に早めに片付けておきたかった。
メールに添付されていたリンクを開くと、留美と連絡を取っている芦間と思わしき男性のプロフィール写真が出てきた。どうやら均整の取れた顔つきの好青年と見える。それ以上の感想は留美には出てこなかった。留美はイベントページに彼を追加し、友達申請をながら作業のように押し、タブを閉じた。
授業のグループワークの一環でFacebookを利用することはよくあるので留美の本来の友人の数とは違い、アカウントの友達の数が膨大になっていた。よく知らない男からのメッセージが来ることが多いので、基本的に留美はSNSを利用していないがこういった場合にのみ開いている。
丁度、イベントページの下書きが終わったところで前の入口から教授がやってきた。後は芦間という男に任せるとしよう。
留美はパソコンをしまうと、カバンの中からノートを取り出した。他の生徒はパソコンのWordやメモ帳、ノート用のソフトウェアなどを使って、授業のノートを取ることが多いが、留美はやはり使い慣れた手書きのほうが記憶に残るということもあり、今でもシャーペンと大学ノートを愛用している。
教授が自身のパソコンをケーブルに接続すると、今日の授業のスライドが講堂前方にある大きなスクリーンに投写された。今回は二時間弱の授業でスライドが100ページ超らしい。留美は自分の手が腱鞘炎になるのではないかという危機感を抱きながら、今日の日付をノートの一番上に書いた。
続く
ようやくルミルミの登場です。
別に出し渋っていたわけでも、満を持しての登場というわけでもないのですが随分と彼女を物語に出すのに時間がかかってしまいました。
ルミルミは成長してしまいました。小さなルミルミが好きなファンの皆様ごめんなさい(¯―¯٥)
来週まで外伝です。
投稿は一週間後を予定しております。
それでは今回もありがとうございました!
次回もまたよろしくお願いいたしますm(__)m