UA8000超えた…。日に日に狐につままれたような表情になってます。(本当に恐縮です)
またオリキャラ出ます。
今回出てくる二人以外にはこれ以上、主要人物でオリキャラは登場しない予定です。
オフィスに入ると既に何人かは席に着いて仕事の準備を始めていた。
乱雑に置かれた資料を整理する者。
これからやってくるであろうファイルの山に備え、ゆったりとコーヒーを飲んでいる者。
昨日…いや、今日寝るのが遅かったのか、惰眠を貪る者など過ごし方は多種多様だ。
従業員500人の内、コンサル部門に所属している人間は30人ほどである。
自身の席に着くと鞄から今日使う資料の入ったクリアファイルや間食用の菓子を取り出した。あとはマッカン。まこと不思議なことに、このビルの自動販売機にはマッカンが置かれていない。何故あのベストセラー商品が導入されていないのだろうか。思い切ってAm●zonで中国人観光客並に箱で爆買いしたらものすごい剣幕で結衣に怒られた事は記憶に新しい。しばらく夢に出てきたし。
席についてうんと一つ伸びをした。これからやってくる長い仕事に備える。
今日も帰りが遅くなるだろう。繁忙期ではないとはいえ、深夜近くに食い込みそうな量の仕事が待ち構えていることは昨日の時点で上司から連絡を受けていた。
残業代がきちんと出る辺り総武高校時代のボランティア活動よりはマシなのかもしれない。アレはアレで嫌なことはたくさんあるが…。
結局のところやっていることは、どこぞの知らない誰かの幸せと時間のために奉仕活動を行う。自分の本質は変わらないなと乾いた笑いがこぼれ出た。
手持ち無沙汰になりズボンのポケットに手を入れて、椅子にもたれかかっていると隣の机にドスンと大きな鞄が置かれた。
「よ、比企谷」
見上げると芦間が快活な顔でこちらを見下ろしていた。
「相変わらずその甘ったるいコーヒーなのな」
「うるせー。逆に聞きたい、マッカンの良さが何故わからない?」
「そんなこと言われましても…私甘いの苦手ですしおすし。なんだあれか?もしかして、俺は他のやつとは一味違うってやつか?」
芦間はケタケタと笑いながら鞄をあさっている。
たまにいるなぁ。一匹狼を誇るやつ。ぼっち最高ってか。
「マイノリティであることを過大に誇っている面倒くさい連中と一緒にしないでくれ」
「ん?それは特定の誰かさんのことを言っている?」
「不特定の大衆を揶揄しただけだ。孤高を誇るなんてのは今時もう寒い」
「これはこれは。どっかの国の野党みたいなブーメラン発言ありがとうございます」
「ほっとけ。ぼっちなめんなよ?固有スキル満載だからな。異世界物のラノベだったら人気者だ」
「奥さん居るやつがぼっち語ったらもう嫌味だろ…」
芦間がやれやれと溜息をつく。
俺と同じ時期に入社した芦間は正直苦手な部類の人間だった。どんなやつかと聞かれると、例えるなら葉山と海老名さんを足して2で割ったような人間だ。人当たりはとても良く、彼を嫌いな人間を見たことがない。ただ親しいものからの評価は軒並み変態の一言。それだと海老名さんが変態みたいな言い方に聞こえるかもしれないが決してそういうことではない、うん。ハチマン、ウソ、ツカナイ。
芦間はテキパキと自分の机の上にパソコンや必需品を並べていった。俺と同じく、物を置く定位置を決めており、それはまるで自分の領域を主張しているかのようにも見える。
「比企谷、今日から新しい取引先だろ?メールや昨日配られた資料にはもう目を通したのか?」
「お前は俺のお目付け役か。まぁ昨日受け取ったものに関しては昨日の時点で見てあるぞ。お前は?」
「殊勝だねぇ。俺は引き続き取引先の相談相手だわ。私、コンサル業っていうのは恋愛相談みたいなものかと思っていましたが、そうでもないというのを最近、身に沁みて理解してきました。あいつら無茶苦茶無理言ってくるぞ」
席に着いた芦間が毒づきながら器用にペン回しをしている。そういえば昔ようつべにペン回しの動画を上げていたとか言ってたっけか。興味がまったく無かったのでそんな自慢話を聞かされた当時、華麗に右から左に受け流したのでそこら辺の記憶が定かではない。
こいつの見た目は率直に言うと絵に描いたような好青年である。高い身長に整った顔、ワックスでキメた爽やかな髪型。スーツ姿もモデルのそれと言っても差し支えない風貌だった。それ故に当然のごとく社内での女性人気は圧倒的一位を記録している(※ハチマン調べ)。
言っておくが褒めていない。目の前にある事象を淡々と説明しただけでコイツに対しては何一つ感情を抱いていない。
こいつのことなんかどーでもいいんだからね!
…流石に我ながら吐き気がしてきたな。
とりあえず、リア充爆発しろ。
もうコレも俺が言ったら嫌味か。
「ふっ・・・」
「なんかキモいぞ比企谷。どうせまた、妙ちきりんなこと考えてんだろ」
「っ…。ほっといてくれ」
露骨な苛立ちをぶつけてみるも、芦間はその飄々とした表情を全く崩さなかった。
マッカンのプルトップに手をかけて勢い良く上に引き上げると心地よい開封音が響き渡った。うん、美味い。マッカン最高。
ちびちびと飲みながら、机の上のクリアファイルを手にとって今日の俺の担当企業の資料を見る。
−EIGHT KNOWS—
聞いたこともない会社だ。記載してある会社概要を読むと事業内容が資材調達、会計補佐、探偵業等かなり幅広く展開しているようだが、いまいち企業理念が見えてこない。
時間もあったのでホームページを検索して開いてみた。それなりに整ったインターフェースと共に、社員であろう男女達が仕事をしている風景の写真がスライドショーのように代わる代わる映し出された。こんなこと言っては顰蹙《ひんしゅく》を買うかもしれないが上場企業でありがちな美男美女で綺麗に固めるというレイアウト一辺倒というわけではなく、日常的なデスクワークの写真も織り混ぜていて好感が持てる。
それ以外の企業説明等のレイアウトに関しては特に変わった所は無く、総評としてはそつなくまとまったウェブサイトという印象だ。
企業理念の項目をクリックしてみる。
「お客様の改革を共に促す」
改革を促すねぇ…。
何処かで聞いたことあるようなワードだ。
『奉仕部は生徒たちの自己改革を促す』
ふと懐かしい面々の顔が浮かび上がった。今となっては高校時代の知人とそうそう会うことも無くなっていたし、思い出すことすらも少なくなっていた。戸塚の事は毎日想っているけど。
マッカンをズルズルとすすりながらぼんやりとしていると頭の上にポンと軽い衝撃がのしかかった。
「おはよう比企谷君。今日はいつにもまして辛気臭さが過ぎるぞ?」
振り返るとオフィススーツを着た、男ばかりの空間に似つかわしくない妖艶さを帯びた女性が立っている。
「おはようございます、智佐吹さん。辛気臭いのはいつものことでしょう?大体、月曜日の朝に元気が良い人なんてこの世に居たら教えてほしいものですね。後、柄にもない元気な上司の振る舞いというも全然似合ってないですよ」
「あらま、辛辣。だってもうね、これくらい自分に嘘つかないとやってらんないのよ。取引先のおっさんにセクハラまがいのことされてて、こちとらストレスマッハよ。な~にが『個人的に、色々と相談に乗って欲しいな』っての。夜の遊びしこたまやってる人間の悩みつったら、新しい女のストックの悩みが相場よ相場」
マシンガントークを終えて、智佐吹さんは赤茶色のウェーブがかかった長い髪をかき上げてふぅと一つ溜息をついた。月曜日の朝からアクセル全開だなこの人。
あの人、自分のデスクに向いながら「そんなしょーもない話を日曜の朝からしてくれてからに…」と未だにぶつくさ言っているぞ…。
彼女はこの会社の男性社員の人気女性社員にして俺の直属の上司でもある。この人のパートナーになれるどうかは新入社員になった男性社員の最初の明暗を分けるイベントの一つとなっていた。
現在は俺と芦間が彼女の下につく事になっているわけだが同期は勿論の事、他の男性上司まで敵に回すことになってしまうという特典がついてきて相当肩身の狭い思いをしている。
芦間や智佐吹さんという眉目秀麗なコンビに混ざっている目の腐った新人…自分で目の腐ったとか言うの悲しくなるわ。
とどのつまり、こちとら平穏に暮らしたかったのだが、入社早々から現在に至るまで妬み嫉みにさらされる会社生活なのである。
横目で智佐吹さんをみると既に喫煙室で太めのタバコをスパスパと豪快に吸っていた。ポケットに手を突っ込み、壁を背に持たれかけながら煙を吐く。
どこかの少年漫画が大好きな女教師の姿がトラウマのように浮かび上がった。見た目や性格も結構似ているから智佐吹さんに会う度に若干の身震いがする。もうPTSDみたいになってるじゃねーか俺。
余談だが、件の女教師は未だ独り身である。本当に早く誰か貰ってあげて、もう俺が貰うこと出来ないから!それどころか未だに彼女から一緒にラーメン行こうとか週一でLINE来るんですけど(泣)怖くて未読無視してるわ。
無論、未読無視でも『なんで読んでいるのに返信してくれないの?』とかは来るが、既読無視は言い訳が出来ない。未読無視なら忙しくて本当に読んでいない可能性を残してある程度は寿命を伸ばすことが出来る。
でも多分一週間後くらいには朝、家の前に左ハンドルのスポーツカーが止まってそうではあるな…。
「あ、そうだ。比企谷、ちょっといいか?」
芦間が先程まで回していたペンで俺の肩を小突いた。
「なんだ?」
首だけ傾けて芦間を見る。
「いや、あのさ。今日、アレ頼めるかな?」
またか。この時だけ拝むように頼むよなこいつ…。商談の時より平身低頭。
「おぅ。まぁいいぞ」
「ありがとうございます兄貴!今度マッカン奢らせていただきやす!」
調子良いな。前言撤回、芦間は葉山と海老名さんと戸部を足して3で割ったようなやつだわ。
あと、意外にも義理堅いのかこいつはマッカンを必ず次の日にちゃんと買ってくる。
「本当にありがとな比企谷」
「急に真面目になるなよ、調子狂うわ」
「何を言うのだ。俺はオールウェイズ真面目やぞ!( ゚д゚)」
「へいへい」
その後もだらだらと他愛もない会話を続けていると、智佐吹さんに頭を小突かれ実務に戻ることになった。
午前中は来客も無いので情報の整理や午後の打ち合わせの準備をした。何枚もの資料と取引先の情報を頭に叩き込んだ頃には気づけば13時になっていた。
背もたれに背中を預けながら大きく身体を伸ばすとバキバキと体の関節から悲鳴が上がった。20代とはいえ流石に多少なりとも年齢を感じるようになったわけだ。
思えば自分もあの時の平塚先生と同じくらいの歳になっている。一応、まだそれよりは歳下だけど。
「腹減ってきたな…」
「お、比企谷飯行くか?」
芦間が年甲斐もなく、そわそわしていた。こいつ、めちゃくちゃ顔に出るタイプだな。
とは言いつつも、キリが良かったので休憩を取ることにしよう。
出入口のタイムカードを切って廊下に出ると、既に昼食を終えた他の社員と何人かすれ違った。
この様子なら混み合い時は避けられただろうか。
すれ違う女性社員たちは芦間に羨望の眼差しを送り、俺に対しては様子をうかがいながら、コソコソと会話をしている。いかにも俺が邪魔な存在であると言わんばかりに煙たがっている様子であった。最早恒例行事と言ってもいい。
ため息を漏らしつつ階段を登り、上階の食堂に向かった。
隣りにいる芦間は横目で俺をじっと見ている。何やら言いたげな表情だったが、絡んだとしても有耶無耶にされるだけだろう。
食堂に着く頃には大学の学食のような喧騒が聞こえてきた。
この時間でも人が多いことこの上ない。
「さてと…あいつを探すか」
「そだねー」
と言ってもすぐ見つかるけどな。
芦間の足が早くなる。
俺も遅れないようにほんの少しだけ早く歩いたが、五秒と持たなかった。
うん、お腹すいてるからそんなに機敏には動けない。
全然進みませんね(汗)
自分のプロットのチャート見たら、雪乃と交わる→自宅で結衣と会話→会社の説明 みたいな感じで書いてあるのですが会社パートまだまだ続きます(;´д`)トホホ…
というか自分のWordに書いてある原本すら未だ会社パート(泣)
エロ描写をお待ちの方ごめんなさい。当分先です。
いずれエロシーンありの話にはタイトルに何かマークつけるようにしますので。
それではまた次回もよろしくお願いいたしますm(_ _)m