一週間足らずで、UA一万突破、、、( ゚д゚) 沢山の方に読まれていることに驚きました。本当に恐縮です、ありがとうございますm(__)m
コレ毎回書いてるなぁ…(汗)
では第三話です!よろしくお願いします。
遠足前の子供のような顔をした芦間を引き連れて社員食堂に入ると、案の定、多くの社員たちで賑わっていた。
食堂はよくある食券式のものでメニューはと言うと、日替わり定食は勿論、中華や、和食、メキシカン、フランス料理やイタリアンまで幅広く用意されている。味も悪くないことから下手に外食するよりは食堂で食べたほうが美味い。しかもそれだけのバリュエーションをたった4人の調理師だけでこなしているというのが驚きだ。その要領の良さを呆然と眺めているのが俺の昼休みの楽しみの一つでもある。決して食堂の美人給仕に目を奪われているわけではない。いいね?
早速あたりを見渡すと一人の女性をあからさまではないにしても確実に囲むように人だかりができているのが確認できた。集団の構成を見ると男性社員が大半を占めている。
いつもの自分であれば当然ああいった、地雷の満漢全席のような危険地帯は避けるのが定石だ。
しかし、俺達のお目当てはあの群衆の中心に居るに違いないのでそうもいかない。
その中のある一人の社員がこちらを見た瞬間に敵意むき出しのオーラを爆発させた。スーパーサ●ヤ人になる時の演出が想像で補完出来る程にはバリンバリンの全開である。
他の男性社員たちも続いて一斉にこちらを睨む。ジョイント型の念能力であれば俺達はまさしくオーラで仲良く即死なこと請負だ。
「すんごい敵意っつーか、殺意が向けられているぞ芦間」
「いや、俺じゃなくて主にお前に対してじゃねーか?」
ものぐさに芦間が呟く。
「そうか?俺はイケメンでデキる男の芦間クンに対する嫉妬の目だと思うがね?」
「お前、皮肉を言う時だけ褒め言葉使うのな。普段から言ってくれてもいいのよ八幡クン?☆」
「何言ってんだ?この世に存在する褒め言葉の99.9%はお世辞だぞ」
「夢の無いこと言うなよ…。じゃああの時たくさん甘い台詞を囁いてくれた新宿のあの子の言葉は嘘だったのか…」
芦間がそうぼやくと周りの女性がこぞって距離を取っていた。午後には芦間が夜の歓楽街に通いつめているなどと噂が立つのだろう。その前に俺はこいつと一緒に行っていないことを釘を差しておかねば。
やれやれと肩をすくめていると、
「あ!」
人だかりの中心にいた人物が俺の姿を認めると駆け寄ってきた。
「せ〜んぱ〜い!!」
そのまま腕に絡みつこうとしてきたのでサラリとかわして彼女を見る。
「おぅ一色」
一色いろは。俺達が探していた人物だ。
「むぅ?なんで避けるんですか?」
「タックルは避けるものだろ、常識だ」
「うわ、女の子からのアタックをスポーツのそれと一緒にするなんて本当、先輩は相変わらず無神経ですね。もう少し女性を気遣える人にならないと駄目ですよ?」
「ほっとけ、これでも妻帯者だ。というか他のやつにやってくれ。俺がそれに応えたら浮気になるだろーが…」
「ん、それの何が悪いんですか?」
ワーオ。この子マジだ。
「おい、俺を社会的に殺す気か?恨みを買うような事はしていないはずだぞ」
「え・・・先輩忘れちゃったんですか・・・?」
突然一色が信じられないと言った表情でこちらを見た。そして、先程よりも倍近い声の大きさで
「私のことをあんなにも弄んだくせに、忘れたなんて先輩は最低です!」
「ちょ!おま!!」
予想通り、食堂内の人間が一斉にこちらを非難の目で見つめている。男女問わず軽蔑の視線が四方から突き刺さる。まさしく針のむしろ、四面楚歌とはこのことである。
隣では芦間が腹を抱えて笑っていた。
「おい芦間。助けろ」
「くくく…。夫婦漫才乙」
「ほ〜んと、先輩ってば罪深い男ですよね〜♫ こうなったら責任取って私を貰うしかないですよね〜?」
「もしかして口説いてますか?すいません、私、妻がいるので無理です。誠に申し訳ございませんが他をあたってください。ごめんなさい」
「はぁ?今のもしかして私の真似ですか〜?全然似てないので二度としないでください。あと、返事は『はい!よろしくお願いします!』ですよ、先輩♫」
「いや、だから俺、結衣がいるから」
「もぉ〜。中々折れないですね、先輩。いい加減私のこと貰ってくださいよ」
「この国は一夫一妻制だ」
「じゃあ一夫多妻制なら貰ってくれるんですか?」
「いや、そういうことではない」
「じゃあ俺がいろはちゃんを貰うよ☆」
頭を抱えていると、芦間が我こそは!と立候補している。因みに日常の光景だ。
「もしかして口説いてますか?すいません、今は先輩にしか興味がありません、誠に申し訳ございませんが他をあたってください。ごめんなさい」
「キターーー!今日で連続奪543三振!」
芦間が悲恋と陽気さが混ざった独特の声と共に、右腕を高々に突き上げた。
両腕で自分の肩を抱くようにして恍惚とした表情を見せている。気持ち悪いやつだと思った矢先、気づけばいつものように整ったビジネス顔に戻って日替わり定食をあっという間に買っていた。
俺と一色のことを夫婦とからかったかと思いきや、毎度のように一色との食事をセッティングしてもらうようにお願いしてきたりと、本当によく分からない奴。芦間に対する印象はそんな感じだった。
というか高校の時からの付き合いのあるやつが居なくなってきたとか言っていたが、よくよく考えてみれば一人忘れていたな。一色だけはどういうわけか大学から就職先までなぞるように後をついてきている。
こうして、からかわれることは日常茶飯事ではあるのだが、一つ高校時代から変わったことと言えばご覧の通りで、一色が俺に対する好意を全く隠さなくなったことだった。
実は高校の卒業式に何人かの女子生徒から告白されていた。勿論、そのうちの一人が結衣なのだが、それ以外にも全く接点のない後輩の女子生徒からも想いを打ち明けられたことはまさに青天の霹靂であった。自分の悪評は後輩たちにも知れ渡っていたはずだからな。
一色には卒業式の一週間ほど前に告白されていたのだがその時には断っていた。いつもの生徒会の手伝いと聞かされて呼び出されたから、当時は余計に驚いたのを覚えている。
その後は結衣と付き合うことになり、大学でもずっと一緒だった。
ところが、一年後には何かと一色が結衣と二人きりの時に混ざってきたり、俺が一人でいる時を狙って話しかけてくるようになった。俺と結衣が恋人関係になったことを知らない彼女ではない。
『アレで諦めたつもりないですから』
それが大学のキャンパスで再会した一色の一言目だった。
葉山にフラれたときもそんなことを言っていたのを思い出した。
勿論、所構わずというわけではなく結衣の手前ではきちんと彼女のことを立てており、一歩引いた立ち位置で俺たち夫婦を見守っている。
こちらから彼女の行動にとやかく言うのも憚られるので彼女の好きにさせていた。
というのも大学時代、有耶無耶にしているのも嫌だったのではっきりと一色に言ったほうが良いと思いその旨を結衣に話したことがあった。
しかし…
『私は大丈夫だから。いろはちゃんのことも大事にしてあげて』
と言われ、これ以上追求できなくなってしまっていた。
どうやら、大学時代に結衣と一色の間で話があったらしいがその内容は未だに俺に知らされていない。詳細を聞きたい衝動に何度も駆られたのだが、あの時の結衣の表情がそれを止めさせた。
しつこく聞いたとしても、結衣は墓場まで持っていく覚悟だと言わんばかりの顔つきだった。
まぁ、そもそも論ではあるが、結衣に話す前に一色に直接言わない俺の優柔不断さもいけないのは否めない。
そうしてズルズルと引き伸ばされて現在に至るというのが事の顛末である。
券売機に小銭を入れて日替わり定食Bのボタンを押すとぺらぺらとした食券が吐き出された。
食券を手に持って列の最後尾に並ぶとその後ろを忠犬のごとく一色がベッタリと張り付いた。嫉妬と憎悪に満ちた空気の中で自分の食事が用意されるのを待たざるを得ないのは毎日のことだが慣れるものでもない。
気づけば後ろで芦間と一色が仕事の愚痴を堂々と話している。ここには上司もいるのにも関わらずなんとも豪胆なやつらだなホント。
会話している二人の姿を見るとやはり眉目秀麗な二人なことから非常に絵になる。ドラマのワンシーンを切り取ったかのような華やかさがそこにあった。
こうして見るとやはり芦間は一色のことが好きなのだろう。
一色は芦間との会話をしながらもこちらを気にかけている。その度に芦間の表情がわずかながらに曇るのがその証拠だった。
おそらく他の人間ではわからないであろう一瞬の余韻を俺は見逃さなかった。
知らないほうが、気づかないほうがどれだけ楽なことだろうか。
芦間はその視線に気づいたのか、俺を見ると微笑を浮かべた。
その気遣いが居心地を悪くさせた。俺が気まずくなるのを承知でやっているのだろうから、余計にたちが悪い。
一色は芦間の本心や俺の心境にも察しがついているようだった。
芦間と話しつつ時折、俺の袖をそっと掴む。
まったく。早く定食を食わせてほしい。
食事が来るまでのこの時間が正直苦手だった。
ようやく自分の日替わり定食が用意されると手にとって、足早に食堂端のカウンター席に向かう。
人も少なく、トイレや出入り口からも遠いこの場所は高校時代のベストプレイスよろしく心安らぐ場所である。
飢えた農民のごとく食事にありつく。間もなく次いで、一色、芦間と並んで座った。だいたい席順はこの並びだ。因みに2 x 2のテーブル席に座った時は大抵は俺と一色、対面に芦間が座る。
「そういえば先輩。今日から新しい企業の担当になるんですよね?」
一色がエビフライを頬張りながら横目でこちらを見る。
なんで知ってるんだ。
情報提供者をじろりと睨むと件の人物はてへぺろと言わんばかりに舌を出してアピールしてきたがにべもなく無視した。一色の真似だろうが全く似ていない。芦間は鼻白むと味噌汁を行儀悪くすすり始めた。
子供かこいつは…。取り合っても仕方がないので一色との会話に戻る。
「まぁそうだな。初めて聞く会社の名前だったわ」
「そーなんですよね。私も初耳の会社でした」
「おい、なんで会社名まで知ってるんだ…」
芦間は素知らぬ顔で器用に漬物を次々と口へ運んでいる。こいつに話したら情報ダダ漏れじゃねーか。
ん?いや、俺こいつに話してないよな?
勝手に資料見やがったのか…。
今度から貴重品だけでなく資料までトイレに持っていかないといけないのか俺は。思わず頭を抱えてしまった。
「気にすることはない!そこまで深くは読んでいない!」
芦間がビシっと箸を立てて自慢げに言う。
勝手にモノローグに侵入してくるなし…。
「それで今回、先方から来る担当の方の名前とかはチェックしたんですか?」
一色がスイッチの切替を促すように質問をした。間の取り方が絶妙である。
「いや、それが社長らしき人間の名前はあったんだが、他に名前が書いてなかった。だからこっちは鬼が出るか蛇が出るかって感じで前情報がほぼ無いし、そもそも社長が来るのかすらも分かってない」
「それ、ちょっとどころか、かなり怪しくないですか?」
一色の言う通りだった。
勿論昨日、智佐吹さんにその事を訪ねたのだが、それとなくはぐらかされてしまった。
他にも渡された資料に基本的な企業情報が少なかった事もあって、今朝ウェブサイトの方を検索した経緯がある。代表取締役の男は若い見た目の40代の男の者でとくに不思議な所は見当たらなかった。会社の所在地が幾度となく変更されている等の怪しさがあるわけでもない。ネットの評判を見ると匿名チャットでアンチスレはあれこそ、評価は総合的に見れば高めであった。他にも色々と調べてみたものの、きな臭さが漂う点は渡された資料以外には別段見受けられなかった。
「じゃあ先輩も今日誰が来るのか分かってないってわけですよね?まぁ午後、私入り口の受付担当やるんで先輩よりも先にどんな人か確認できちゃいますね」
「まぁそうなるな」
「じゃあ、お先に先輩のお客さん見よっと♫」
一色は箸を目元に持っていってVサインを作るとウインクした。高校の時からずっと使っているポーズだ。行儀が悪いが、若干ドキッとしてしまったので注意できない。
「はいはい、あざと可愛い」
ぶっきらぼうにそれだけ告げるとお椀に少しだけ残っていた白米を一気に平らげた。
一気に食べすぎたせいで、喉に詰まった。水で流し込んで整える。
ちらりと芦間を見ると一色とおかずの交換をしていた。一色から貰ったエビフライを美味しそうに食べている。
時計を見るともう休憩時間が終わりに近づいていた。
先に立ち上がり、返却口の方に向かった。運良く人が少なかったため直ぐに返すことが出来た。
トレーを置くとカウンター越しに割烹着を着た若い女性の控えめな「ありがとうございます」が聞こえた。
ちらと見ると自分とほとんど変わらない年齢だろうか。一色や智佐吹さんのように見た目が非常に華やかな女性が多く目に入る職場で、彼女の存在が逆に際立っていた。
なんというか今日は朝っぱらから女性に目を奪われ過ぎな気がする。
「先輩、今ゆかさんに見とれてましたよね?」
いつの間にか一色が横にいる。
「あの人、ゆかさんっていうのか・・・っていてぇ!」
思いっきり一色に脇腹をつねられた。
「結衣さんに言いつけますよ?私、職場で他の女性に浮ついたことしてないか監視するように頼まれているので」
おい、聞いてないぞそれは。比企谷先生の初耳学ェ…。
思い返せば、それで玉木さんや智佐吹さんにデレデレした日とかに家に帰ると結衣の機嫌が悪かったのか。ちなみに玉木さんの脚を凝視した日には晩御飯が白飯となめ茸だけにされた事がある。密告者はこいつだったわけだ。
「そんで、“他の女性”の対象に自分は含まれてないのか?」
「そうですね♫ 私は特別です!」
自分で言うんかい。
「そうだぞ、比企谷。俺もお前のカミさんから頼まれてるからな」
しれっと芦間も合流していた。
「お前は俺の嫁に会ったことないだろ…」
「バレたか、じゃあ紹介してくれないか?」
「断る」
「んじゃあ妹さんは?」
「絶対断る」
「なんで妹さんの時の方が語気が強いんだよ・・・」
馬鹿野郎。小町をお前のような馬の骨の視界に入れることすら烏滸がましいというものだ。たとえ両親が許したとしても俺が許さん。
「先輩は重度のシスコンですからね〜」
「薄々、これまでの会話から感じてはいたけどここまでとは…」
「そりゃあもう、医者が匙投げるレベルですから、手遅れです」
「妹さんもこんな兄を持って苦労されただろうに。とても出来た方なんだろうな」
「小町ちゃんは先輩とは比べ物にならないくらい人としての器が違いますよ。本当に兄弟なのか疑わしいです。私も会う度に何回も本人に確認しました。『残念ながら血の繋がった兄妹です』って言質取れましたよ」
本人の目の前で堂々と失礼な会話をするな・・・。あと、最後のはまた初耳だ(泣)
とぼとぼと歩きながら食堂の外へと向かった。小町に残念ながらとか思われていたなんて・・・。しばらく立ち直れなさそう・・・。
「それじゃあ先輩♫ また後で会いましょうね!芦間さん、先輩の面倒ちゃーんと見てあげてくださいね!」
「了解であります!じゃあね〜いろはちゃ〜ん!」
一色はひらひらと手を降って受付部の控室へと消えていった。芦間はというと娘を見送る父親のような目で一色が視界から消えるまで目で追い続けている。
俺と二人になると芦間は別人になったかのように顔を切り替えた。
「んじゃあ、行くか。午後から初対面の人と話すんだろ?腹壊すんじゃねーぞ比企谷。あとサンキューな」
ニヤニヤと意地悪そうに背中を叩かれる。人見知りは一生モノだから仕方がないだろ。
「お気遣いどうも。あと、それは気にしなくても良い」
ぶっきらぼうにポケットに手を突っ込み、そそくさとオフィスの机へ戻った。
時計を見ると一時前であった。
一時半には先方がやってくる。気を引き締めると本日二本目のマッカンを開封した。朝とは違い一気に飲み干すと資料の山に埋もれた、今日使うクリアファイルの発掘作業に取り掛かった。
続く
はい、いろはすです。
勤務先が同じ設定なので、もしかしたらというか普通にガハマさん以上に物語に出てきます(汗)
仕事場パート超長い…。日常感を出しておきたかったので、描写も細かく書くつもりです。
次回の更新も早めになるように頑張ります。(原文の方は1.5万字ほど今はストック中)
それではまた次回もよろしくお願いいたします(*˘︶˘*).。.:*♡