※この作品はR-18です。

雪の楽園   作:ホネ

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すいません。場面の都合上、今回短めです!







第五十六話

眠い……。

飛行機にはまだ搭乗出来ないのだろうか。もしものことを考えて早く到着したのは良いものの流石に二回目ともなるとお土産を選ぶにも困ってしまう。アメリカ土産とかいうひとくくりな渡し方をしてしまったせいで中々前回とは異なったユニークな商品を見つけられずにいた。

「比企谷、お前凄く眠そうだな」

「あぁ、訳あって徹夜してしまった」

「なるほど、飛行機の中で寝るためか?」

「……そうだな。12時間も何したら良いのか分からん」

帰りのフライトは偏西風が向かい風の為行きよりも時間がかかる。

「映画とか見ればいいのに」

「そこまで見ないんだよなぁ…俺」

「そういえば前にそんなこと言っていた気がするわ」

「まぁ暇になったら一本くらいは見てみようかと思う。何かおすすめはあるか?」

手持ち無沙汰にキーホルダーやマグネットが沢山ぶら下がった回転式の商品棚とくるくると回しながら芦間を横目で見る。

「スクールア○ドルムービーは?」

「もう何回も見てる。作中の歌までアカペラで歌える」

「比企谷氏、意外とガチ勢だった件www」

「スレを建てるな…」

「誰推し?」

「お前には言わん」

「まぁ予想つくから良いけど」

芦間はケタケタと笑っていた。相変わらず癇に障る。

「じゃあ安価で見る映画決めたら?」

「フライト中ネット使えねぇわ」

「お金払えば使えるけど」

「経費で落ちるならそうする」

「多分自費」

「なら我慢だ」

「まぁそうなるわな」

葦間は隣でオリジナルが一体なんなのかよく分からないぬいぐるみとご当地のステッカーを購入していた。スーツケースは既に手荷物検査ゲート前で預けてしまったので買った荷物はカバンの中にしまっていた。

「また前回と同じ物を買ってしまうことになりそうだ……」

「お、そのチョコレートか。それ結構美味しいよな。言うて俺も留学時代は親が毎回買って帰れって言って俺にラインしてた」

「そうか。これ結衣にもかなり好評だったわ」

「キャラメルだったり、マカダミアナッツだったり色々な種類のがいっぺんに入っているから飽きがあんまり来ないのも高評価だな」

「あと、俺も結衣も甘いのが好きだからっていうのもある」

「女の人が甘い物好きなのは分かるが、比企谷も甘い物好きなのが俺にとってはそれなりに意外」

「そうか?」

「ブラックコーヒーを好き好んで飲むタイプだろ普通は」

「あれはコーヒーではない」

「ブラックコーヒーがコーヒーじゃなかったら他のコーヒーもコーヒーじゃねぇだろ……」

葦間のほうが言っていることは正論な気もするが、俺の中ではマッカンこそがコーヒーの定義なので異論は認めない。

「さて、もうすぐ時間かね……」

「そうだな。ようやくか」

「比企谷もキーホルダー売り場を眺めるだけで30分以上粘ってたからな……」

「本当に見るところがなかったんだよ…。それに今本なんか読んだら絶対に寝てしまう」

「変な意地を見せる比企谷氏」

「なんかせっかく徹夜したのにここまで来て飛行機乗る前に寝たら癪だろ?」

「まぁ言ってることはよく分かる。負けた気がするんだよなぁ」

「そうだ。俺は俺に勝ったんだって満足して俺は寝たい」

「面倒な男」

「お前にだけは絶対に言われたくないけどな」

「それ言った瞬間に言われると思ったわ…」

 

何故か飛行機に乗った瞬間に眠気がなくなってしまった。どうしてだろうか。今寝たらヤバイって時に限ってすごく眠くなるのに、いざ眠れるぞって時間になると途端に元気になる。誰かこの現象に名前をつけてくれ。俺はたった今、その名称不明の現象のせいで完全に目が覚めてしてしまっている。先程までの睡魔との戦いの果てに得られるものが至高の睡眠ではなく自我の覚醒だったとは。なんと皮肉なことか。

仕方がないので俺は今累計何回目かもう忘れてしまったが、またもやスクール○イドルの映画を見ているわけで。こんだけ見るようになってしまうと最早、歌どこか次にキャラクターが言う台詞まで暗唱出来るようになっていた。本当に何の得にもならない特技を会得した。

幸い隣の席に誰もおらず、空席を挟んで葦間が奥に座っている。二本の通路に挟まれた真ん中の三席になのでトイレに行く際に何の気遣いもいらない。おまけに足も伸ばせるので大助かりだ。

通路を挟んだ反対側には智佐吹さんがすぅすぅと静かな寝息を立てて寝ている。彼女はここ一ヶ月はほとんど睡眠時間が無かった。隣の席にいる島田さんも到着まで夢の中に違いない。

しかし、今更新しい映画を見る気にはならない。CAさんの色っぽい後ろ姿を見ても何も感じない。今朝まで最高の女性を抱いていたのだからそれは当然といえば当然なのだが。

 

手持ち無沙汰になって物思いにふけってみる。

雪乃との不倫が始まってからどれほどの月日が経過したのだろうか。少なくとも半年以上はこうして蜜月の関係を続けている。それらの逢瀬のそれぞれが自分と彼女にとってかけがえのない時間になっていた。

次の不倫場所はどこにしようか。そんな間抜けなことを平然と考えるようになってしまっていた。色々なホテルを試してみた。勿論、お互いの知り合いが少ない場所を選ぶようにしていた。おおっぴらにデートは出来ないので本当なら雪乃が行きたい場所に連れて行ってあげたいのだが。ここ最近は専ら雪乃の家かホテルだ。大きな連休でも取ることが出来たら、二人で旅行にも行ってみたいが机上の空論だろう。でももし行けるとしたら、温泉旅館にでも行って雪乃の浴衣姿を拝みたいものだ。

CAが持っていた水の入った紙コップがたくさん置かれたトレイを見てそれを一つもらう。

晩酌を飲むかのように水を口に含んだ。

機内のライトが消えた。急にモニターのライトが眩しく見えた。重い腰を前にやって光量を下げる。まだ起きている人はちらほらと見えるが、近い内にアイマスクをつけるのだろう。

そういえば結衣に会うのは随分と久しぶりだ。帰ったらまずはご飯にでも連れて行こうか。そもそも雪乃とのことよりも結衣との関係を考えないあたり本当に俺の理性というものが完全に崩壊しているような気がする。こんな風になってしまったのは一体いつからなのか全く身に覚えがない。

ふと前に留美に言われたことを思い出した。

“正直、奥さんに浮気もバレてると思うんだよね……”

結衣はもう俺達の関係を知っているのだろうか。だとしたら何故…何も言わないのか。

いや、待て。そもそもの話だ。

 

どうして俺は雪乃と再会したんだ……?

 

原因となったのは勿論言うまでもない。陽乃さんだ。彼女が雪乃の会社に俺を派遣したことで今の関係が始まったと言えよう。だが、どうして陽乃さんは弊社にやって来たのか。勿論、彼女の広い人脈を使えば俺の勤務先を突き止めることなど造作も無いことだ。そんなことを言っているわけではない。何故、このタイミングであったのか。どうして俺はまた雪乃に会わなければならなかったのか。そこが分からないのだ。

雪乃に再会することが出来て勿論この上なく嬉しかった。その気持ちに偽りはない。彼女と逢瀬を重ねるたびに自分の人生に生き甲斐と意義を感じる。

しかしこれまでの日常を振り返ると、会社に通い家に帰れば、美しい妻が出迎えてくれる。それだけでなんと幸せなことか。皆そう思うだろうが、人間とはまこと悲しい生き物で、それが当たり前になると鈍感になる。何も感じなくなってしまうのだ。それがなくなって初めて今の生活が良かったと気付かされるとよく言うだろう。

しかし、結局無くならなければ気づかない程度の存在だったということではないのだろうか。人間は得るものよりも失うものの方に存在を大きく感じる。ただそれだけのことではないのか。

……一人になるとどうしようもない考えが堂々巡りしてしまう。

早く結衣に、雪乃に会いたい。人とは誰かに会って話をしないと自我を保つことが出来ない生き物であると最近心底思う。それとも自分という人間が孤独というものに耐性がなくなってしまったのか。分からない。でも人肌が恋しくてたまらない。これは拷問に違いない。

12時間のフライトが永遠のように長く感じた。

 

 

 

 

 

………。

 

 

……そして俺は今どうしてこのような状況にいるのだろう。

足の自由は効かず見慣れた天井をただ見上げるだけ。

両手も縛られており、ダブルベッドの上に生まれたままの姿で羞恥を晒している。

 

あれから、、、出張から帰ってきてどれだけ経過したっけか。2ヶ月は経過しただろうか。つい先週雪乃と不倫旅行に行って帰ってきたばかりだったはず。

 

 

時は夜。場所は自宅の寝室。

俺と結衣の愛の巣だ。

いつもと変わらない光景。

違うところを挙げるとすれば俺は普段からこのような状態にはなっていないということと、彼女の様子だ。

眼の前には蠱惑的な笑みを浮かべた愛すべき妻がこれまた一糸纏わずにこちらを見下ろしていた。

 

「……結衣、これはどういうプレイなんだ?」

恐る恐る彼女に問いかける。これまでそれなりに夫婦の営みとして多少なりともマニアックな行為を試してきた俺達だが(勿論、公序良俗には違反しない範囲でだ)、こういった趣向ははじめての試みだ。

いや、そんなわけがないだろう。何か彼女に、いや、俺達の関係に何かが生じたからに違いない。

そして、彼女は俺の質問には答えずただ笑ってこう言った。

 

 

 

 

「ねぇ、ヒッキー……。……ゆきのんは元気?」

「……………」

 

 

 

一瞬で自分の顔から血の気が引いて行くのが分かった。

言うまでもないだろう。

これはつまりそういうことだ。

 

彼女は知っていたのだ。いつからなのかは分からない。しかしそこにある事実を端的にいうのであれば、最も知られてはいけない秘密を最も知られてはならない人物に知られてしまったということだった。

 

 

 

続く

 

 

 

 





アニメ俺ガイル最終話凄く良かったですね。
(まだ見てない方は感想ちょっとだけ話してるので、ブラウザバックして下さい。)











ゆきのんとの写真を撮る時、ゆきのんって原作だと控えめに撮るような感じがしましたけど、アニメだとめちゃめちゃ積極的で吐血しました()



次回の投稿も一週間後を予定しております。
それでは次回もよろしくお願い致しますm(_ _)m
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