※この作品はR-18です。

雪の楽園   作:ホネ

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俺ガイルの原作の小説が完結してから1年が経過しようとしている事実に戦慄しました。時間の経過が早すぎる……。


※今回は少し短めです


第六十四話

 

~Interlude~

 

――――――今日彼は、平塚先生にあってくると言って家を出た。

本当はずっと可愛がってきた後輩のあの子に会うんじゃないの?

だって、貴方は平塚先生に会う時にはそこまで身だしなみを気にしなかった。

何度も何度も。初デートみたいに鏡を見なかった。

気怠そうに家のドアを開けていくくせに、顔はどこか笑っているような。

彼女とデートした時もそんな顔をしてた。まるであたしのことが見えていないんじゃないかって疑ってしまうほどに…。

これが本当にあたしが望んだ結末なのかな?

貴方はあたしのもとに戻ってきてくれる?

あたしと彼女を選んでくれる?

それとも………。

 

 

 

 

-Side Hachiman-

休日出勤という言葉を作った人名乗り出て下さい。八幡先生怒らないから。

流石に、週末ということもあってかローカル線の乗客数は決して多くない。途中駅からの乗車であっても余裕を持って座ることが出来た。

どうして、休みの日に出かければならない。旅行会社やレジャー施設の悪しき洗脳に我々は毒されてしまったのではなかろうか。いや、偶に俺も出かけると言えば出かけるからそこまでは言わないけどね。ちょっと考えちゃったくらいで。

流石に早く着きすぎるかもしれない。だって、あいつを待たせたら絶対にペナルティを儲けてきそうだし。それにしても、集合場所まであの時と同じにしなくても良いのでは?

 

改札を出て、指定された待ち合わせ場所で携帯を見る。画面には新着メッセージが1件入っているとの通知が表示されていた。

『ひょっとしてもう着いちゃいました?』

彼女からだった。俺は素早く返事を返す。

『ひょっとしなくても着いたな』

『もうちょっとかかりそうだよ~みたいな気遣いは無いんですか?お陰様でわたしめっちゃ急がないといけないじゃないですか~』

『別に強要はしていない。ゆっくり来てくれて構わない』

『その返しは一番反応に困ります汗 素直に罪悪感しか生まれません……』

LINEの公式キャラクターのウサギがドヨンとしているスタンプが送られてきた。別に気にしなくても良いのだが。

というのも俺が集合時刻の30分以上も前に到着したからだ。どう考えても早すぎる。俺の方が一色を急かしてしまったようで申し訳ない。

まさか、勢いというかノリで話していた休日デートが本当に実現してしまうとは思いもよらなかった。流石に、一色と二人で会ってくるとは結衣には言えなかったので平塚先生と会うことにしておいた。一応、一色とのデートが終わればそのまま夜に平塚先生に会うことになっているというのは紛れもない事実なので嘘は言っていない。

 

いや、ふと改めて考えてみると女性を梯子することになってるな俺。一色には夜は他の予定があると言って日中だけと了解は得ているものの、その後の予定がバレたらとんでもないことになりそうな予感しかしない。

夜はラーメン屋じゃないほうが良いな。昼に一色とラーメン屋に行く予定になっていたので、平塚先生とまでラーメン屋になると3食のうちの2食がラーメンになってしまう。嫌いじゃないが流石に胃がもたれそうなのであっさりしたものが食べたい。もうすぐ三十路だからね俺。というか、なんであの人はアラフォーにもなって、ラーメンをあんなにもガッツリ食えるんだ……。ひょっとしなくても同じカテゴリの生物とは思えない…。しかも、年々綺麗になってしかも可愛くもなってるし。本当に早く誰かもらってあげて!じゃないと俺の愛人になろうとしてくるからあの人。最近はマジでアプローチ半端ないからかわすの必死なんだよ(泣)

「ごめんなさ~い!先輩、大変お待たせしました~!」

後ろから大声で俺を呼ぶ声がする。早速、周りの人の視線が突き刺さるからやめてほしい。彼女の相手が俺だという事実を周知させたくない。このまま黙ってやり過ごしたい……。でもそれをやるとあの後輩はもっと過激な方法で攻めてくるからそれだけは絶対に回避しなければならない。

出来るだけ周りからの視線を外すように柱の陰に隠れて携帯を見るふりをした。こういう時にイヤホンでも付けていれば言い訳のしようがもっとあったのかもしれない。

「………なんで無視するんですか?」

横からひょっこりと顔を出して頬を膨らませている。無視をしているわけではないが見方によってはそう見えるのかもしれない。

「……おはよう一色」

「……おはようございます先輩」

納得いってなさそうだったが、どうやらそれを飲み込んでくれたらしい。普段まとめている長い髪は今日は下ろしており、街行く男性を虜にしている。かく言う自分も多分に漏れず、そのうちの一人だった。ベージュ色のロングコートが綺麗さと可愛らしさを共存させている。総武高校の時に葉山とのデートの予行練習みたいな形で週末に付き合わされた時と似たような服装をしている。

一色は俺の前に回り込んできて、じっと顔を覗き込んできた。直視できない……。

「どうですか先輩?今日のわたしのコーディネートは?」

一色が見せつけるようにくるりと一回転をして今日の衣装を披露する。

「凄く似合ってるぞ。可愛すぎて真っ直ぐ見ることが出来ないくらいには…」

「もしかして、そう言っていればわたしと目を合わせずに済むとか思ってませんか?」

「そ、そんなことはない」

「はぁ…これだからこのヘタレは……」

さらっとディスられたな。まぁいつものことだけど。ディスられすぎて感覚が麻痺しているまである。

「まぁ良いです。じゃあ行きますか先輩♡」

一色が腕を絡めてきた。最近はそれが当たり前になってきていて、それを俺も当たり前のように受け入れている。

「えへへ~♡」

「随分と嬉しそうだな」

「そりゃあまぁ☆先輩と仕事終わりじゃない時に会うなんて大学の時以来ですから」

「そういえば社会人になってから、一度もなかったっけか?」

「ええ全く」

「…それはなんというか。申し訳ないことをした」

「え、なんで先輩が謝るんですか……」

「え?違うのか?」

「いえ。先輩はわたしのわがままを聞いているだけなのに……」

「そうだな。でも嫌なら断るだろ普通」

「え……それって……」

「……まぁ吝かではない」

「そ、そうですか…嬉しいです…」

一色はしおらしくなっていた。こんなことを言えば調子づくかと思っていたら案外突き刺さったらしい。好意的に受け入れてくれただろうか。

何年も真っ直ぐな好意を向けられ続けている故に勘違いをするという杞憂もないからこその言葉。ずっと捻くれた言葉で詭弁を弄して彼女から逃げ続けてきたことに対する自分なりの贖罪。勿論、決してそれだけではない。それだけじゃないからこそ、俺は今日こうして彼女と二人でいる時間を選んでいる。

「先輩……それって同情……とかじゃないですよね……?」

「……同情が無いと言えば嘘になる。でも……それだけじゃないから。それよりも、もっと大きな感情があったからここにいる」

「っ!」

一色の腕に力が入る。しがみつくような締め付けの強さが伝わってきた。

「良いんですか?本当に………………?」

彼女も曖昧に質問する。その言葉を口にしたら今の関係が壊れてしまうのではないかと恐怖しているかのように。ラウンジで一度伝えているはずなのに、やはり信じられないというのが彼女の正直な感想なのだろう。

「俺は、一色さえ良ければ俺でも良いんじゃないかと思っている」

「結衣さんと雪乃さんのこと…どうするんですか?」

デートを始めて、すぐのことなのに彼女は早くも核心を突いてきた。

「でも、俺には……彼女たちを選ばないなんて事は出来ない」

それだけは譲れなかった。あの2人も俺にとってかけがえのない存在だ。歪んでいると分かっていてもどうしても嘘はつけなかった。

「……はい。分かってます。わたしだってそれは理解しているつもりです。先輩にとってあの2人がどれだけ大きな存在であるかも、わたしなりに納得しています」

「2人だけじゃない」

「……え?」

「俺には……2人だけじゃないだろ……。もう1人、大事な人がいる。たとえ彼女たちとは違っても、それとは別に大切な繋がりだと思ってる」

「~~~~!」

一色が真っ赤になって顔を伏せた。”誰”とのとは明確には言ってはいないものの、真意は伝わったらしい。

「その、だな。関係とか。繋がりとかってさ。1種類というか、1つじゃないだろ?愛情とか、恋慕とか、それこそ相手を想う感情を一括りに出来ないだろ?”LIKE”と”LOVE”だけじゃない。そんな一言で……。俺は、この関係も感情も……括りたくない」

「そ、それ、どういう意味で言ってるんですか?」

「悪い…。上手く言えなくて…。だから、その…」

どんなに探したって、辞書で引いたって見つからない。紡ぎ出すことの出来ない感情だから。手放したくない、ずっと大切にしていきたい感情だから。それが傷つける事になっても、エゴだとわかっていても、嘘という一言で終わらせたくない。曖昧な終わらせ方で理解もしないで、終わらせたくない。わかりたい。その行為が、彼女の拒絶を生むとしても……それ以上に今は……彼女に踏み込んでいきたい。

「俺には一色いろはが必要で、大切で、もっと隣に居てほしい存在なんだって事だと思う……」

一色は目を丸くしてこちらを見た。そして、吹き出したかのように笑みが溢れる。

「ぷふふ。意味分かんない」

「俺も自分で言ってて意味わかんね―よ」

それが説明できていたら、今頃こんなことにはなってない。

「それ、わたしへの回答になってるようで全然なってないと思うんですけど。てか、わたしの解釈次第でどうにでもなりません?」

「かもなぁ」

「本当ヘタレだなぁ~…」

一色は呆れたようにため息を付いた。

「先輩」

「なんだ?」

「今日、ちゃんとわたしの事を恋人だと思って本気でデートして下さい」

一色は鋭い眼で俺の目をじっと見つめる。

「先輩がわたしの事を大切だと思ってくれているのなら、行動で証明して下さい。わたしを納得させて下さい」

「今日一日でか?」

「…はい。今日の終わりまでに……わたしのことを…口説き落として下さい」

そう言うと一色は手を解いて俺から一歩距離を取った。

それは彼女からの初めての挑戦状だった。俺の気持ち、回答を試すかのような試練。

「わかった」

「わたし、そんなに軽い女じゃないですよ?」

「知ってるよ」

「もしかしたら、先輩を困らせたくて勘違いさせるようなこといっぱい言っているだけかもしれませんよ?」

「だったら確かめないといけないな」

「……っ!…………そ、そしたら、またわたしに振られちゃうかもしれませんよ?」

「そしたらまた口説くよ。お前が振り向いてくれるまで、何度も振られてやる。だってもう数え切れないくらいお前に振られてるからな俺。一回の失恋のダメージ程度で終わるようなやつじゃね―よ」

「~~~~~!ル……ルール違反です。今日までに口説き落として下さいって言ったじゃないですか」

「でも明日以降も口説いてはいけないとは言ってないだろ?」

「~~~~~~~~~~~~っ!」

「そうやって何度も試合をしてきた仲じゃね―か俺たち。今度は俺が何年でも付き合ってやるよ。お前が10年近くそうしてきたなら少なくとも10年は同じように頑張らないとな」

「……そんなの無理です。………絶対に無理です……!」

「なんでだ?」

「だって………そんなの……一日ももたない……」

「……いや、最後がよく聴こえなかったんだが……」

「~~~~~!もう良いです!早くデートしましょ!ほら!さっさとわたしのこと口説いて下さい!!」

「おい一色!待てって!」

一色は俺を置いて早足でその場を去った。

彼女に置いていかれないよう俺はその後ろをなけなしの体力で必至に追いかけた。

走っている最中、俺はかつて進路希望を聞き出そうと葉山に躍起になってついていったあの頃を思い出していた。

 

 

続く

 





いろはすデート編。

二期OVA。原作10.5巻を大人になり、事情も関係も変わった二人がやり直していくシリーズ。


これまでとはちょっと違った感じですが、楽しんでいただけたら幸いです。

次回の投稿も一週間後を予定しております(既に原稿は仕上がっております)。

それでは今回も読んでくださってありがとうございました!
次回もよろしくお願い致しますm(_ _)m
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