※この作品はR-18です。

雪の楽園   作:ホネ

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遅刻しました。それでは本編どうぞ!





第六十六話

 

-Side Iroha-

さて、、、、先程までのデレデレは無かったことにして、一旦リセットしよう。

卓球をするために運動公園の体育館に到着した頃には頭を冷やすことが出来た。

流石にさっきのはわたしもエンジンかかりすぎた。あんなのは、もうわたし口説き落とされてますよサイン以外の何物でもないじゃないか。なんというか後の祭り感が半端ないけど、一応一日でわたしを口説き落とせるか否かという勝負の真っ最中なのでそのルールと設定には則ってもらおう。正直、このルールあるのか無いのかわからないようなものになってしまっているとかは禁句。

先輩も羽目を外しすぎたと反省しているのか、さっきから微妙にわたしとの距離が遠くなっている。それはそれでちょっと癪なんだけどなぁ。先輩は無かったことにしないでほしい。

「何セットマッチにします?」

卓球台を境にお互いが向かい合って立つ。コートの向かい側に居る先輩はあの時よりも少しだけ大人びていてドキドキする。

「2セットとかでいいんじゃねーの?知らんけど」

「せっかく先輩のラーメンおごりがかかっているんですから、1セットだけは確かに味気ないですよね~☆」

「ねぇ、それってちゃんと俺が勝ったらとかの条件もあるやつだよね?そうだよね?」

チッ……。前回の失敗からきちんと学んでいるらしい。先輩が指摘しなければ、前みたいに負けてもわたしに何のデメリットも無いような不平等条約を押し付けてやろうと思っていたのに。

「まぁ良いですけど、先輩がもしわたしに勝ったらどうしてほしいんですか?」

「そうだなぁ…。かと言って何か特別やってほしいことがあるわけじゃないんだけどな」

いや、ねーのかよ!なんなら身体とか要求されたとしても勝負に乗ったまであるのに。寧ろ、わたしが勝ったら先輩の身体を要求したいくらいなのに。

「別にわたしが奢るとかでも良いんですよ?」

「いや、別に俺が勝っても奢るつもりだったから良いよ」

「え……?」

いや、嬉しいんだけど、それ言っちゃったらわたしが頑張る意味無くなっちゃうじゃん!!馬鹿なの!?もしかしてこの人滅茶苦茶馬鹿だったりするの?

「え~。でも先輩がお金を出してくれるってわかってちゃ、この卓球にかけるモチベーションが無くなってしまうといいますか~。何か他の条件設定してくれないとわたしも本気で挑めないですよ?」

「た、確かに。じゃあお前の命令を聞ける範囲で1つ聞くっていうのは?」

「へ~。その聞ける範囲ってのはMAXでどれくらいまで行けるんですか?」

「俺が現実的に、物理的に達成できるって意味でだ。勿論、非道徳的だったり、倫理観には反するものはNGだ。平塚先生に求婚してこいとかもダメだ。あの人本気になっちゃうから」

「注意書きがやたら多いのが先輩らしいですね…」

というか、具体例で平塚先生に求婚がネタにされている時点であの人フラグZEROですね。なんというか杞憂に終わってほっとはしているんですけど、張り合いがないというか……。平塚先生って単純に今性欲とかヤバそう。いや、マジで偏見でごめんなさい。

ラケットでボールをポンポンと羽つきのように跳ねさせながら先輩が靴紐を結ぶのを待つ。

前回は不意打ち作戦や絶対領域戦法を活用しても勝てなかったので、それらの上を行く戦法を考案&実行しなければ先輩を倒すことは出来ないからなぁ。いや、正攻法で倒すとかマジでない。イカサマして勝つ!!必勝法を模索するのは当然の考え方でしょ♪

向こうもわたしがまともに卓球するとは思っていないはずなので、いかにしてその裏をかくか……。でも先輩って基本的に色仕掛け弱いっていう分かりやすい弱点あるんだよなぁ。

そこを突いて攻略していきたい。しかも、この作戦は同時に、先輩を誘惑するという副次的効果ももたらしてくれる。寧ろそっちが本命まである。

「じゃあわたしが勝ったら、勝ってから1時間の間は先輩がわたしに触れるの禁止で!」

「ゔぇ!?」

ふふふ……。あからさまに『なんでーーー!?』みたいな顔してるなこの人。この反応から察するに、さっきの映画館の手応えが良かったものだからそんなに努力しなくても口説けるだろとか思ってるんだろうなぁ。甘い!甘いですよ先輩!あの程度でわたしは崩せません!もっと積極的に情熱的に先輩から愛情を表現してもらわないと、わたしは満足できません!

「……分かった。なら俺が勝ったら同じ条件を提示させてもらう」

「ヴェェェア!?」

なんでーー!?なんで先輩がお触り禁止をペナルティにしてくるの!?

「そ……そんな事言って本当に良いんですか?わたしにアプローチ出来るチャンスをみすみす逃すなんてどうかしてますよ?」

「心配しなくてもいい。それにお前も分かってて言ったんだろ?俺たちが提示しているのはあくまで”相手から自分への接触”であって別に自分から相手に触れることに関しては一切の制限を設けていないってな」

「な!?」

バレた……やっぱりバレた……。わたしが勝負に勝って先輩を1時間ひたすらからかう計画が……。

違う!

というかマズい!ヤバい!

先輩も同じカラクリに気づいたということはつまり、わたしが卓球で先輩に負けたらわたしが反対に先輩に1時間からかわれるということだ。それだけは絶対に避けないと……。

だって、そんな拷問耐えられないっ……。

5分もしないうちにわたしの方から先輩に触れたくなっちゃうよ……。

わたしがもう先輩に口説き落とされて、滅茶苦茶にされたいってことがバレてしまう…。

それは……わたしとしても本望ではあるんだけど、自分の中のプライド的な何かが崩れてしまう気がしてならない……。

絶対に負けられない戦いがここにあるっ……!!

 

これはもうなりふり構ってられない。

どんな手を使ってでも、先輩に勝つ!

 

 

 

 

……………。

 

そして……。

 

「………はぁ………ふぅ……。せ、、先輩、いい加減折れてくれませんかね?」

「ぜぇ……ぜぇ……そ。それはこっちの台詞なんですが?」

「はぁ………はぁ………。まさかの……10連続デュース……なんて展開は予想だに、しませんでしたよ……」

「ぜぇ……はぁ…ま、まったくだ。しかも……フルセットにもつれ込んで……」

先輩の言う通り、ゲームは完全に泥試合と化していた。てっきりどちらかがあっさり勝利すると思い込んでいたゲームも気がつけば、互角の戦いを繰り広げてしまった。そして、現在お互いが1セットをもぎ取り、運命の最終セット。わたしが先にマッチポイントになり、勝負あったかと思われた矢先、先輩による謎のサービスエースが決まってしまいデュースに。それ以降、お互いが決めきることが出来ずに泥沼の10連続デュースという状態にもつれ込んでしまっていた。正直お互いに体力の限界などとっくの昔に来ていたけど、ペナルティへの恐怖と子供じみたプライドが相乗効果となって無限の気力を生み出していた。お陰様でハリウッドのゾンビとしてエキストラ出演が可能なレベルには息も絶え絶えなアンデッドいろはとしてこの地に降り立っている。先輩なんて最初からゾンビみたいなものだから、ウォーキング・デッドの長だ。ワイトキングだよあれ。いや、それは骸骨か。

絶対領域色仕掛け作戦やよそ見攻撃の戦術も虚しく、このザマ。先輩意外に卓球上手いんだよなぁ。これでもわたしもわたしでそれなりに自主トレーニングと研鑽を重ねてきたつもりなのに。先輩もいつか自分で卓球を練習していた時期でもあったのかな?

そして、わたしにはもう一つの大きな問題が……。

そう体力の限界。

某横綱の言葉を拝借して言うほどのことでもないけど、わたしとて立っているのが精一杯。

先輩も疲れているとはいえ、流石にまだ余力を残しているように見える。もしかして……不倫の頃にシすぎてたせいで夜の体力がつくのと同時に運動のスタミナまで付いちゃったんですか?なにそれずるい。わたしなんて……ってわたしもまぁシすぎて体力付いてるかもしれないけど。尚こっちは自主トレ。泣けてくる。

しかも、さっきわたしが痛恨のサーブミスで先輩のマッチポイント。ここで1点獲られたら終わってしまう……!

こうなれば……。

「ねぇ……先輩熱くないですか?」

少しだけ服をはだけさせて先輩の欲望を掻き立てる。わたしに最早プライドなんてものはない。先輩がわたしを口説き落とすゲームの最中なのにわたしの方から先輩にアプローチするとかいう本末転倒に陥っているのはこの際無視だ無視。

「別に……そこまで熱くないだろ……」

そう言いながらも先輩の視線はわたしの胸に集中しつつある。ですよね~♪こういう疲れが出た時は性欲が出てきちゃいますよね~☆男の人って本当単純……。下世話で醜い生物。でも先輩は別。いや、わたしって本当単純……。

「どうですかね~☆そんないやらしい目つきで言っても何の説得力も無いですよ?♡」

「これは……自然の摂理、真理といっても差し支えないだろ……」

股間が苦しいんですか?いつもより屈んじゃって……。ふふ。先輩って本当に面白い。目だけがこっち向いたりそらしたりをずっと繰り返していて……。あの時よりも胸だって大きくなって、色っぽくなったでしょ?実はエステとか行って豊胸マッサージとか受けてるんですよ。おっぱいを柔らかくするみたいなコースもあってそれを一時期毎週。今でも月イチで行って…。なんでってねぇ、どっかの朴念仁に見せつけるために決まってるじゃないですか。

先輩……えへへ……首から谷間に汗が落ちる様子を凝視しちゃってる……。凄く情熱的な目……。これじゃわたし、痴女だなぁ。でもこれくらいしないとこの人落ちてくれないし、わたしのことを意地でも意識してくれないから。

ほら、見えますかぁ?先輩のサーブですね…。サーブを逃さないように腰を低く構えて下から覗き見るように相手をじっと見つめて…。見えそうですか?もう、わたしの胸に目を奪われてサーブミスしちゃえ。

先輩がトスをあげてサービスを放つ。放たれたボールは綺麗に2回バウンドしてわたしの手元に吸い寄せられるかのようにたどり着く。これを思いっきり返せばわたしにもまだチャンスはある。先輩にしては甘い球を打ってくれましたね~これでまずは……!

 

 

「…………いろは」

 

スカッ。

わたしは思いっきり空振ってそのまま卓球台に突っ伏した。あまりにも情けない醜態を先輩の前で晒してしまう。とどのつまり、この卓球試合におけるわたしの敗北が決定した瞬間であった。

え………ちょっと待って。今のは聞き間違い?

 

今………先輩……。わたしのこと……下の名前で……?

え?え?ゑ?絵?江?繪?

 

えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?

 

なんで今まで一度も呼んだことがないのに、こんなタイミングで言っちゃうんだよこの人!?下の名前呼び童貞をこんな試合の最中に捨てるなよ!おかげでせっかくのいろは呼びボイスがおぼろげだよ!脳内で再生出来ないじゃないですか!どうしてくれるんですか!?責任とってもらって下さい!いや、平塚先生かわたしは!

 

あああああああああもう!恥ずかし過ぎて顔上げられない。めっちゃ顔赤い。心臓バクバクしてる。あそこもキュンキュンしてる。ぶっちゃけちょっと濡れてしまった。

「~~~~~~~~~~~~!」

「あ……あの……その……大丈夫か……?」

未だに台に突っ伏して足をもじもじさせたり、バタバタさせているわたしの様子を見て先輩がどうしたら良いか分からないといった声を発している。

「……反則ですよ……」

「いや、ごめん、あっ…あの……急すぎたか?ごめんな、一色」

「は?」

わたしが冷めきった表情で先輩をじっと睨むと今度は別の意味で狼狽し始めた先輩が取り繕うように両手を前に出す。

「いや、なんで戻したんですか?」

「え、な……何?めっちゃ怖いんですけど……俺何かやらかした?」

「先輩」

「……はい」

ゲームの敗者が勝者に物凄い剣幕で詰め寄る。

「わたしの名前は?」

「……一色いろはさんです」

「わたしの呼び方は?」

「……一色」

「は?」

「………いろは………」

「あーあ……!もう先輩には二度と卓球で負けないってつもりだったのに~!悔しいですけど、じゃあ今から一時間わたしの方から先輩へのタッチは自粛ですね!」

「……切り替え早すぎだろ」

「でもラーメンは先輩のおごりですからね☆」

そう言ってあざといポーズを見せつける。これでもう、いつものわたし。さっきは不意打ちで思わず面食らっちゃいましたけど、今後はそう上手くはいきませんよ?

「わかってる。じゃあ、疲れて腹も減ってきたし行くか」

先輩は手を出してくる。これは手を繋ぐということだろうか。……って、そうか。

これは寧ろ都合が良いな。この試合、負けた方がわたしにお釣りが来る。

「な~にやってるんですか~せんぱ~い…。わたしは、試合に負けちゃったからわたしから先輩に触れないんですよ?つまり~……”わたしから先輩の手を握ることは出来ない”ってことですよ?☆」

「っげ……!」

やっぱり気づいていなかったみたい。ふふふ……。まさか自分で提示した条件に首を絞められるとは思ってもなかったでしょう?ほ~ら。今まで誘い受けしてわたしに行動させていたツケをここで払ってもらいますよ~♪

「……じゃあ握るぞ」

「許可なんて取らなくてもさっさと握っちゃえば良いんですよ」

「仕方ねーだろ……。正直自分から握ったことなんて殆どないんだから……大体、結衣の方からだったし」

「へ~……。じゃあ、わたしが初めての相手ですか?」

「いや、その前に雪乃がいる」

「………」

は?なんですかそれ?いや、分かってはいるんですけど、なんかめっちゃムカつく。雪乃さんは自分から言っておいて、わたしには許可もらおうとしてくるんですか?何その差別。いい加減私も雪乃さんや結衣さんと最低でも同列に思ってくれていないと流石のわたしもキレますよ?ていうかもうキレてますよ?

「でも……」

「……え!?」

先輩は指を絡めてきた。つまりこれは恋人繋ぎというやつでは……?

 

「この繋ぎ方を……自分からやるのは……いろはが、初めてだと思う」

 

………………。

 

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」

何このあざとい男!めっちゃ面倒くさい!本当に面倒くさい!面倒臭すぎて若干キモい!ウザい!ムカつく!

なんでそういう事をこのタイミングで言ってくるんですか?確信犯ですか?ですよね、わたし分かってますよ。先輩って人はそうやってあざとい事をして口説かないとやってられないんですよね?本当に不意打ちが大好きな人ですね、そんな口説き方して受け入れてくれる変人まっしぐらな女性って希少価値高いですよ、いや、絶対この世に存在しませんって、わたし以外。

あ、もしかして口説いてますか?ありがとうございますわたしって本当に回りくどくて面倒くさい人間なので、こういった変化球のアプローチってぶっ刺さりますし滅茶苦茶心に響きましたつきましては次のデート含めベッドインをするホテルの打ち合わせを行いたいと思いますのでしばらくわたしに一人で考える時間を下さいごめんなさい。

 

 

………。

 

あーもう本当好き。

 

 

 

続く






プラトニック()な関係


次回の投稿も一週間後を予定しておりますm(_ _)m
楽しみにして頂ければ幸いです!!
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