※この作品はR-18です。

雪の楽園   作:ホネ

77 / 91

投稿遅れましたが、よろしくお願いします。




第六十七話

-Side Iroha-

「休日の昼だからサラリーマンの人少ないかなって思ってましたけど、結構多くてびっくりしてます」

「休日出勤が多いのかもしれん……」

「世知辛いですね」

「そんな中、俺達が店に入るのは確かに申し訳無さがある」

「デートですもんね」

「そ、そうだな」

行列の最後尾に並びながらわたしはぼんやりとラーメン屋のメニューを眺めていた。メニューは先輩が店の前に置かれていた待機している人用の物を取ってきてくれた。枚数に限りがあったので、先輩と2人で1つのメニューを見ている。端っこと端っこをそれぞれ握る。なんか本当のカップルみたいで良いなぁ。

「先輩はどれにするんですか?」

「俺は基本、メニューの一番左上を選ぶタイプだぞ」

「先輩らしくてなんか安心しました」

「いや、オススメって書いてあるのにおすすめ選ばないのはなんか店員さんに変な目で見られそうじゃないか?」

「世間体とか先輩が気にするんですか?」

「おぉうふ。それはどういう意味だ……?」

「それはもう色々な意味ですよ☆」

元々ひねくれててぼっち極めてたとことか、浮気しまくってることとか、奥さん持ちで後輩とデートしてることとか。最後の2つは同じ意味か。

「い、いろはは何にするんだ?」

おぉ…。先輩がわたしを下の名前で呼ぼうと努力してくれている。なんかもう改めてそれだけでも嬉しい。

「わたしも先輩と同じ物にしようと思ってますよ」

そう言ってわたしも先輩と同じくメニューの左上を指差す。先輩の手に触れるか触れないかの距離に指の先を添えながら先輩をじっと見る。

「……これのギトギトで良いのか?」

先輩は人差し指だけをわたしの指先にそっと触れるか触れないかの位置に置いてくる。モヤモヤした気持ちが溢れてきた。

早く…。触れてよ。

先輩はそんなわたしの気持ちを弄ぶかのように、ギリギリを攻め続けてきた。やっぱりこの人わかってるんだ。だからこんな酷いことを…。女の子の気持ちをおもちゃにするなんて最低過ぎます。あーもう、こうなるって分かってたからあの試合負けたくなかったのに……。

「そうですねギットギトのが食べたいです」

「平塚先生もギットギトが好きだな」

「は?なんでこんな時に他の女の名前出してくるんですか?」

「ちょ…怖い。いろはす怖い……」

「は?いろはす?誰ですかそれ?お水?わたしがお水の人ってことですか?そうですか」

「違う違う。いや、どうしてこうなった」

「………ぷっ。冗談ですよ☆」

本当先輩って可愛いなぁ。こんなことで今更怒るわけないじゃないですか。なにせ先輩はこれまでに、わたしというものがありながら結衣さんはともかく、頭飛び越えて雪乃さんと浮気しまくったり、あまつさえアメリカでおそらく留美ちゃんともイチャコラしやがって。いっぺんぶっ殺したろかこいつ。

「時々冗談に聞こえないんだよなぁ」

「だって、8割位本気でしたから」

「それもうマジじゃん…」

「どっかの甲斐性なしのせいじゃないですか?」

「そ、それは…うん、そう、だな。このままは、良くない、よな…」

「え?」

「あ、いや。なんでもない…」

先輩はわたしを置いて店の中に入ってしまった。その後も会話が浮かばずに粛々とラーメンが来るのを待つばかり。味?そんなもの何も覚えているわけがない。ギットギトの油が鬱陶しく感じるくらいには思考に没頭してた。先輩の言葉の真意を考えることにしか脳を使いたくなかった。

 

 

「‥旨かったか?」

店を出て開口一番先輩が愚問を口にした。

「そうですね……凄く気まずかったです」

「何の感想……?」

「うるさい先輩」

わたしは先輩の腕にしがみつく。

「もう一時間経ちましたよね?」

「え?あ、あぁ。そうだな」

「それで…この後はどうします?」

「胃もたれするしカフェで休憩で良いんじゃないか?」

「先輩にしてはナイスチョイスです。じゃあ行きましょう」

「あ、おい引っ張るなよ……あ……あと、めっちゃ当たってる……」

当ててるんですよ馬鹿。唐変木。女たらし。

 

 

…………。

 

 

 

そして…。

 

 

「すっかり日が落ちてきましたね……」

「お前と話してると時間の経過があっという間だな」

「それ褒めてます?時間のムダがすぎるとかそういうニュアンスで言ってたりします?」

「普通に気が楽だってことだよ」

「そ、それなら良いです」

あれからカフェで何時間も他愛のない話を続けてしまって気がつけばすっかり夕暮れ時になっていた。

 

午前中や昼の積極性がどこへやら、後半は先輩は殆ど畳み掛けてこなかった。それなりに警戒していたんだけど、先輩はカフェに腰を下ろしてからはがっつきを全く見せずひたすら穏やかにわたしとの会話を続けていた。それはまるで帰宅部の放課後のダベリのように、一縷の生産性もない猶予期間。わたしと先輩の席だけが時間の流れから切り離されて残ってしまったようだった。わたしがくだらないうわさ話をすれば先輩は優しく笑ってくれた。わたしがお水や追加のカフェラテを頼もうとすれば黙って買ってきてくれた。情熱的なアプローチとは正反対の包み込んでくれるような優しい距離の詰め方。心が安らいで、この人とずっと一緒に居られたら良いのにと思わせてくれるような時間だった。

どうして先輩はそんな方法を選んだのだろうか。それとも先輩が本当にそうしたかったのかな。優しく重ね合わせられたままの手のひらからは何も伝わってこなかった。

 

それが不安でしかない。

 

「それで、これからどうします?」

「いろははどうしたい?」

「今日は先輩がエスコートしてくれるんじゃないんですか?」

「俺が決めても良いのか?」

「はい。先輩が行きたいところにわたしを連れて行って下さい」

そう言ってわたしは促す…。わたしの求める展開を。わたしが望む展開を。先輩が決してそんな事はしないと分かっていながら。でもほんの僅かな希望を抱いて。

「…なら、少し座らないか?」

「え……?」

先輩が指差したのは近くのベンチだった。帰るかとか、そんな答えを予想していたけれどこれは想定外だ。どういうことだろう……。

それでも今は大人しく従うしかない。

決して人通りは多くは無い。往来から少し外れた場所にあったそこにわたしたちは座った。

 

なんだろうこの緊張感。先輩のことだから胸キュンな展開なんてものはわたしの頭に隕石が直撃するよりもありえないことなのに、心臓のざわめきが止まらない。

もしかしておまけのプランがあったりしちゃいますか?

期待しちゃっても良いんですか……?

本当に責任とってくれるんですか……?

 

「いろは」

「は、はい…」

先輩が口を開く。

 

わたしは固唾を呑んで次の言葉を待った。

 

 

しかし、それはわたしが待ち望んでいたような言葉ではなかった。

 

 

 

「これで俺が計画していたデートは終わりだ。率直に聞くんだが、どうだった……?」

 

 

 

 

………。

 

 

 

「え、あ、、、え……?」

え?

どういうこと?

 

も……もう終わり……?夕ご飯は?そのあとは……?

嘘でしょ……?

そんな………。

 

 

こんなにも幸せな時間がもう終わりなの……?

 

 

「楽しくなかったか……?」

先輩は曲解してしまった。わたしが肩を落とすのを見て、落胆と解釈してしまったみたいだ。

「そ……そんなこと…無いです!絶対に……楽しくて、幸せ過ぎて……」

楽しくないなんてありえない。こんなにも幸せな日なんて他にない。自分がこんなにも満たされることなんて今までで一度もない……。

「そっか、良かった」

「だからこそ足りないんです!もっと……もっとわたしは……先輩と一緒に……居たいんです……!」

もっと先輩と一緒に楽しいことがしたい。もっと先輩と馬鹿みたいな話をしていたい。もっと先輩と真面目な話をして将来を熱く語り合いたい。もっと先輩とおしゃれなお店や美味しいお店に行って思い出を共有したい。もっと先輩と仲良くなってこんな関係じゃなくて……もっと前に進みたい。

だから……こんなんじゃ足りない……。

こんなんで責任なんて取りきれてない……。

もっと。

もっとわたしに付き合ってもらわないと割に合わない。

 

 

わたしが。わたしが止めないといけない。

 

先輩は今わたしを突き放そうとしている。

あれだけわたしのことを巻き込むと決心してくれたはずなのにしばらくたってまた揺らいでしまっている。

結局たった一人で抱え込もうとしている。

だからこそ淡白で中途半端な終わり方を選んだんだ。

ほんの少し、幸せな思い出だけをわたしにくれて。

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 

………なーんてね☆

 

まったく。ナメられたものですよね……。

 

 

そんな程度で諦めたり、踏み込むのをためらうような人間じゃないですよわたし。

 

 

ねぇ、先輩。

どうして最後に理性が勝ってしまうんですか?

あれだけのこと言っておきながら、わたしの事を捨てるんですか?

先輩がやっていることはわたしにとって一番無責任な行為なんですよ?

今までどれだけの言葉を交わしてきたと思っているんですか?曲がりなりにも沢山の時間を一緒にしてきたんです。まがい物の関係だからこそ先輩が抱えている闇だって一番わかっているんです。先輩が土壇場でチキンになることだって。

どうせこういうことしてくるなんてことは最初から知ってましたよ。

 

 

だから……。

 

 

もうそろそろ本気で取りに行っても良いよね?

 

 

 

これだけ焦らしたんだから、そろそろだよね。

 

だから今日は全力で先輩にとって死ぬほど面倒くさくて、都合の良い女になってあげます。

 

 

…………。

 

 

「それが先輩の責任のとり方ですか?」

「……え?」

「随分と身勝手で自己満足に満ち足りた提案ありがとうございます。こんな事言ってくるぐらいならヤリ捨てられた方がまだ納得できますよ」

「お前…」

「自然消滅とかでも期待しましたか?残念ですけど、こんな事されたら、もっと粘着して、先輩が我慢できないってくらいに誘惑しますよ?」

「一色…」

わたしは先輩の膝の上に跨った。会社のラウンジで2人きりになった時のように、いやそれよりも近い距離で、先輩の顔を上からじっと見つめる。わたしの長い横髪が先輩の頬をくすぐっていた。

ここからわたしは最後の追い込みをかける。

「名前呼びはどうしたんですか先輩?」

「や、やっぱり、ダメだろ……こんな関係は……」

「なんですか?もしかしてカフェでトイレに行った時に、わたしをおかずにオナニーでもして射精しちゃったんですか?それで急に冷静になって物事を考えちゃったりしたんですか?」

「ば……!?おま……」

「臭いでわかるんですよ。戻ってきてすぐ分かりました。あ、この人抜いてきたんだなって」

そう、先輩は席を外すと言ってしばらく帰ってこなかった時があった。その時点で訝しんではいたのだけれど、彼が戻ってきてそれは確信に変わった。男性が放つ濃厚な性の香りをわたしが見抜けないはずがない。

つまり先輩はわたしのことをどうしようもないくらいに性的な対象として見てくれているということだ。それは、本心ではわたしともっと深い関係になりたいということであると同義とも言える。だからといってデート中に我慢できなくなる先輩の性欲には若干どころかかなり呆れてしまったけど。そういう風にわたしが少しずつ調教したのもあるか。

いや、そもそも完全にブーメランなんだよなぁ。わたしなんか仕事中にしちゃったし。わたしの方がド変態まである。

それはともかく、先輩は堕ちるまでもうすぐそこの所まで来ている。なんとかして、最後の一押しが出来ればついに念願が叶う。

ここからは、少し強めに言って揺さぶりをかけていこう。

 

「デート中に我慢できないくらいわたしのこといやらしい目で見てたんですよね?仕方ないですよね~。雪乃さんとも連絡が取れず、結衣さんとは惰性でセックスしてるだけなんですから」

「……やめろ…一色」

効いてる効いてる。だったら、意地でもやめるわけにはいかない。先輩が折れるまで何度でも誘惑して先輩の理性を徹底的に壊してやる。獣の本性を呼び起こさせてやる。だってもうこんなチャンス二度と来ないのだから。

「良いんですよ♡わたしの身体を好きに使っても……この日のために、何年も前から先輩のために色々エステ行ったり、マッサージ行ったりして最高の身体に仕上げておいたつもりです。ほら、おっぱいだって大きくなったでしょ?」

わたしは先輩の腕を取り、それを豊かに実ったわたしの胸に押し当てた。先輩はひどく驚いた顔でわたしを見ている。結構着痩せして分かりづらいかもしれなかったけど、わたしってば結衣さん程じゃないにしてもそこらのグラビアアイドルが嫉妬するくらいには大きくなったんですよ?

「ん……んぅ……」

わたしは先輩の手を持ったままぐりぐりと円を書くように回している。先輩の手のひらがぷっくりと大きくなったわたしの乳首を刺激して甘い声が漏れ出てしまう……。

先輩の息が荒くなっている。理性が拒絶していても本能が逆らえない。香水だって男の人を欲情させる効果があると言われているハーブを使ったものにしている。嗅覚だけは五感の中で唯一脳に直接影響を与える。つまり嗅覚こそ本能に訴えかけることが出来る唯一無二の器官。至近距離でわたしのフェロモンも合わせて呼吸をしている先輩。一体どこまで耐えられますかねぇ?

逆光で夕日に照らされたわたし。

先輩好きでしょ?

わたし、凄く魅力的になったでしょ?

こんなにいい女が近くに居たんですよ?

もう少し前に詰める。そこで股座になにか引っかかるような感触を感じた。

「あはは、固くなってる♡」

「当たり前だろ…」

勃起したんですね。興奮してくれたんですね~。あぁ……。先輩のおちんちんとわたしのおまんこが……布が隔てているとはいえ、キスしちゃってる…。

動かしたい……。擦りつけたい……。

だめだ。わたしがここで流されちゃいけない。

鋼の意志で溢れ出る性欲を抑えた。わたしは尚も先輩を惑わせる。

先輩の視線がわたしの身体と虚空を行ったり来たりしていた。

今だ。先輩が一番欲しいであろう悪魔の囁きをここで与える。

「わたしは先輩と一緒ならどんなになっても良いんです。言い訳だってわたしがあげますよ。辛い時はわたしがいつでも慰めてあげます。わたしをそばに置くととってもお得ですよ?」

これはわたしの本心でもある。ほら、だめになっちゃいましょうよ先輩♡後輩の女の子となし崩しにズブズブでドロドロな関係に溺れちゃうのも悪くないと思いますよ?わたしは先輩がどんなに惨めになっても離れないですし、許してあげちゃいますよ?今先輩に一番必要なのは先輩が一番好きな人でも先輩が一番大切にしたいと思う人でもじゃないでしょ?

ゴミでクズで最低な自分をどこまでも受け入れてくれる都合の良い女こそが、貴方の隣りにいるべきだと思いませんか?

「一緒に堕ちましょう、せんぱい♡」

「っ宗教の勧誘みたいだな……」

「わたしも先輩も洗脳されちゃってるんですから似たようなものじゃないですか」

確かに、本来なら二言目にはお布施や幸せになる壺が出てくるところだろうけどわたしは神様なんてものが居たら、わたしに10年間近くもずっと片思いをさせるなんていう粘着を強いることはないはずだと思っているので信心深さなどかけらもない。とはいえ、先輩を偶像扱いして洗脳じみたレベルで崇めちゃってるのは否めないけど。

「お前は…まだ助かるだろ?」

「とっくの昔に手遅れですよ……。もう随分と前に、わたしは先輩と堕ちていくって決めたんです……」

「……そうか」

とうとう先輩の手がわたしの腰を包んだ。

わたしもそれに合わせて首の後ろに腕を回して抱きつくように絡み合う。

「まだ、確認が必要ですか?」

分かっているはずなのに確証が欲しくなって聞いてしまう。

「いや、もう大丈夫だ」

先輩が音を上げた。その事実を今一度わたしの中で反芻する。

それって…。

「……ったく。本当、お互い面倒な性格してるよな」

「わたしは単純ですよ。先輩に比べたら」

「そうだな…」

 

先輩が近くなる。

………。

それは……そういうことだよね……?

受け入れてくれたんですよね……?

やった。

あぁ……ついに……叶うんだ……。

どれだけ待ったと思うんですか?

どれだけ苦しんだと思ってるんですか?

一番近くでずっと…。ずっと辛かったんですよ?

でも嬉しい。

だから、もう逃さない。二度と言い訳なんてさせない。

 

わたしはそっと目を閉じた...。

 

「ん……」

 

唇が重なる。

ずっと待っていた先輩からのキス。

熱くて、柔らかくて、どこか力強い。身体の中から抑えられない劣情がこみ上げてくる。制御なんて出来そうにもない。

これが…。

 

これが……好きな人とする本当のキスなんだ……。

 

自分から強引にしていたものとは比べ物にならないくらい快感が違う。全身を突き抜けるような電撃がわたしの身体を駆け巡っている。

力が抜けていく。それに反比例するかのように先輩の抱きしめる力が強くなる。

「ん……ちゅ……ちゅる……ちゅ、ちゅ。はむ……んん!はぁう…、じゅる……れろ……くちゅ……」

舌だぁっ……先輩の舌、わたしの口の中をうねうね動いて……歯茎を舐め回してる。

気持ち良い。こんなの……気持ちよすぎて……声……我慢できない…。

どうしよう。

たくさんシミュレーションしたはずなのに。

先輩とちゅーしたら、こういうことしてあげたいって沢山考えてきたのに。何一つ実行に移せてない。先輩に全部任せちゃってる……。

「んん!んむぅ!ちゅっ…はぁ!ああぅ……ん!ちゅ、ちゅ。れろ……ちゅる……ぬちゃ……れろ……ちゅ…………………」

もう……だめ……先輩に犯されたい……。

誰かがわたし達を見ている気がする。でもそんな事関係ない。わたしの中の牝としての本能がほんの僅か残っていた理性を根こそぎ奪っていく。

もう先輩のことしか考えられない……。

もっと……もっとわたしを食べて欲しい……。

 

 

 

「ん……く……ぷはぁ……」

唇を離したのは10分近く経過してからだった。お互いの口の周りには唾液がべっとりと付いていて、淫猥な光沢を帯びている。

全速力で走った後のように息が整わない。

赤く染まった顔。

きっと夕焼けのせいだけじゃない。

わたしで……。わたしで興奮してくれてるんだ……。

「いろは」

「っはい………」

「2人きりになれる場所に……行かないか……?」

「っ!…………はい………!」

先輩の腕がわたし肩に回される。あぁ…この腕だ。この人にこうされることをどれだけ夢見てきたか……。

大好きな人の胸の中に居られる幸せ。

ずっとわたしが欲しかったもの。

たとえそれが歪んだ関係だったとしても。わたしにとっての本物はこれなんだ……。

わたしは先輩を強く抱きしめた。

先輩も優しく返してくれた。

これからだ……。

これからもっと堕ちていってどんどんと溺れていこう。

わたしとなら…わたしだけが出来る。

 

 

 

公道に出ると、先輩がタクシーを呼び止めた。

そこからは何も喋らなかった。

車内で、静かにその時を待つ。

辺りはだいぶ暗くなってしまっていた。

儀式の会場へと粛々と向かうように。張り詰めていく空気の中で色欲に染まった器が2つ。

路地裏近くで車を止めて、降りると目の前に見える歓楽街のネオンが眩しかった。

それはまるで、長きにわたるわたしの戦いの一つの区切りを祝福しているかのようにも見えた。

 

 

しっかりと繋がれたその手をわたしは二度と離さない。

そう心に誓った。

 

 

続く

 








この度は『雪の楽園』改め『色の楽園』を読んで頂きありがとうございました()

正直、ゆきのんの時よりも力入れました……(-_-;) 個人的な意見ですがやはり、いろはすは原作でもこのSSでもMVPだと思います。彼女がいるから物語が面白くなる。最強キャラ。


そして長らくお待たせしました。
次回、いよいよいろはすと……。



投稿は一週間後を予定しております。

最近仕事が忙しめなので、投稿ペースは守る所存ではありますが、今回のように投稿時刻が遅くなることが増えると思いますので気長にお待ちいただければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。