※この作品はR-18です。

雪の楽園   作:ホネ

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こんにちは(^^)
初めての連日投稿です。そしてまた、ドロンします()
丁度、区切りが良かったので早めに投稿しました。

では、第六話です!よろしくお願いしますm(__)m




第六話

「あれ?飲みに行かないのか、比企谷」

席に戻ると、早速芦間にいじられた。

「聴いてたのか」

「聴いてたっつーか、あれだけ智佐吹さんが大きな声出してりゃあ、嫌でも耳に入るわ」

ということはこのオフィスに居る多くの人間に聴かれていた事になる。また、面倒なことに…。

「良いんじゃねーの?上司と飲みに行くことぐらいは流石に浮気にならねぇって。あの人と一杯行きたいって人はこの会社にはごまんといるのに、勿体無いなぁ」

「嫁がいるから良いんだよ俺は」

なにせ、この会社では愛妻家として通っているのだ。智佐吹さんと飲みに行ったことが広まれば、直ぐさま噂になる。女たらしの比企谷なんて悪名がついた暁にはお終いだ。

『こいつ既に一色という核弾頭を抱えながら生活しているのに』って思った人、先生怒らないから正直に手を上げなさい。

「ほんと奥さんの事、大好きだなぁ、お前。感心するよ」

「お前も結婚したら分かる」

結婚生活は良いぞ〜。そりゃあ家の中じゃ実家と同じく、あんまし人権無いけど。

「俺はいいや。一人の人とずっと一緒ってのは性に合わねーし。あ、別に女遊びずっとしてたいとかじゃないぞ」

「お前、その言い方だと今、女遊びしてるみたいな言い方になるが」

「そうじゃないけどさ〜…」

芦間は会話しながらキーボードでメールを打ち続けている。

 

「それ取引先か?」

「ん?メールの相手ってことか?まぁ取引先と言えば取引先かな」

芦間がタイピングを止めてこちらを見る。

「なんか煮え切らない言い方だな…」

「あー、悪い悪い。企業ってわけじゃないのよ、お相手さんが」

「個人か?」

「その言い方の方が正解に近いか。今、俺がメールしてる人、女子大生なんだよ」

「なんだ、通報してくれって事か?」

携帯を手にとって110番通報の準備をする。善良な市民として治安維持に努めなければ。

「違うわ!歴としたビジネスだわ!でも、まぁ、そりゃあ…ちょっと期待もあったりなかったり?」

「それでなんでまた、学生と商談することになってんだ?」

乗ってやったのに急に冷めるなよと芦間に冷ややかな目で見られた。

「…学生団体だよ」

「ん、サークルみたいなものか?」

サークル、学生団体。はい、言わずもがな俺が嫌いなものツートップ。

「まぁ、そんな感じだな。ただし、日本のじゃなくて海外の学生団体の」

「海外?」

「そそ。俺今、海外の大学にある日本人学生団体と連絡取ってるのよ、俺」

 

海外の大学?どうしてまたそんなことに。

予想だにしなかった回答に狸に化かされたような表情になった。

 

「そういえば、比企谷は日本の大学からのインターン入社組か。…ならまぁ知らなくて無理ないわな。俺が今やってるのは海外採用の準備だよ」

「海外採用って要はアメリカやイギリスみたいな海外の国の大学に通っている学生を雇用するってことか?」

「その認識で合ってる。俺、アメリカの大学からの入社だったろ?それで事情を知っている人間として諸々のパイプ役を任されたってわけ」

そういえば芦間はアメリカの大学を卒業した留学経験者だったな。春入社が主流のこの企業では珍しく、秋入社の新人だったので、気になって芦間に訪ねたことがあるのを思い出した。

「それでパイプ役ってうちとその団体ってことか?諸々って他にも繋げる所がありそうな言い方だった気もするが」

素朴な疑問をぶつけてみる。

「あー…。うーんと…それを説明するにはもっと根本的な所から説明した方がいいのかもな」

「根本的な所??」

芦間は顎に手をあてて、ひとしきり考え込んだ。

「比企谷はボスキャリって知ってるか?」

「それくらいなら一応。毎年、秋頃にボストンで開かれるキャリアフォーラムで、全世界の日本人留学生が一同に介する就活イベントのことだろ?」

ボストンキャリアフォーラム。11月中旬頃に数日かけて、有名企業が一堂に会する海外大生一括採用の一大イベントだ。通称ボスキャリ。

「そうそう。まぁ他にもさ、ロスキャリとか仲介企業が個別に自分たちで開くキャリアイベントとかあって、まぁそういう場所で留学生とかは就活するのが基本なわけ。でもな、そういうところだと面接希望者一人一人にかける時間が全然足りないんだよ。履歴書読んで選別してから一気に集団面接みたいな流れでさ。勿論個別にやるときもあるけど。そこでさ、個人的に大学に行って時間取ってもらえないかなぁ〜って」

 

なるほどな。少し話が見えてきた気がする。

「つまり、ボスキャリとは別の時間を作って、大学に直接行って、企業が個人で採用面接イベントを開いてしまおうってわけか。話は分かるが、飛行機代や宿泊費を考えると相当金や時間のかかる事じゃないか?それに現地での準備や宣伝を考えると日本にいる人間だけではどうしようもない仕事もある。普通考えついたとしても実行出来るものでもない気はするが」

「さすが比企谷クン、理解が早い。現地の大学でやるにしても告知や現地での会場の準備が必須だろ?そこで、そこの大学にいる日本人学生に協力を仰ぐって寸法よ。そうやって幾つかの大学にアプローチをかけた後、ボスキャリの前に早めに現地入りして、ツアーみたいに毎日別々の学校を回るんだよ」

「そうすることで、一回の渡航でより多くの大学の日本人学生の採用面接をいち早く行えるって事か。そうして一通りの大学をまわった後に、ボストンに入ってキャリアフォーラムに臨めば良い」

「優秀な人材をボスキャリ前におさえて囲っちまいつつ、ボストンでもいい人材が見つかれば一石二鳥ってな」

 

加えて、大学にいる日本人学生に直接働きかけることで会社の印象もあげることが出来る。そのためには出来るだけ多くの学生の目に止まってもらう必要がある。

 

「そういうことか。それで日本人学生団体か」

「ご明察。海外の大学で日本でも名が知れ渡っているところであればJSAは必ずあるからな」

「JSA?」

「Japanese Student Association。まぁ日本人学生団体の英訳。そんで、大体大学名入れてその後ろにJSAって打って検索かけたら高確率で引っかかる」

芦間がGoogle先生を立ち上げて、キーボードで大学の名前を入れ、その後ろにJSAを付けてエンターキーを押すと確かにその大学にある日本人学生団体のページが検索トップに現れた。

「そうやってグループアカウントに直接メッセージを送るのか。大体、顔本使うのか?」

「海外は結構ビジネスでも大学のグループ実習でも顔本使うこと多いから大体、皆アカウント持っているぞ。そんで日本人団体にはいくつか部署というか運営部門が個別にあって、その中のキャリア部門の人間とやり取りするって感じよ。まぁ今回連絡取った団体は専用のメールアドレス持ってたからそこにメール送ってる」

「キャリア部門?」

「要は日本企業や外資系の日本支社の人事担当と連絡を取って実際に採用面接のセッティングを行う部門のことだな。俺はそこのキャリア担当の人と面接の日程調整や、場所の相談、報酬金の設定もやる。俺も昔、在学中はキャリア担当やってたから、事情も知ってるし、話が通しやすいってことで連絡役になったわけ」

芦間が鼻高々に教鞭をとっている。なんとなく鼻についたが、気にせず続きを聴くことにした。

「なるほどな。それを何校も相手にやるとなると相当な時間かかるんじゃないか?」

昔の記憶を思い出したのか、芦間は決まりが悪そうな顔をした。

「そうそう。それが結構面倒くさくてさ。大学の連絡を仲介企業に頼む会社もあるんだけどな」

「仲介企業ってそういえばさっきも言ってたけど何なんだ?」

「あぁそれか。えーと。まぁ今はあんまし、この話の本筋とは関係ないから今度休憩の時にでも教えてあげよう」

何故か次の講習勝手に受講することになっているんだが。まぁ気が向いたら時間つぶしにもるしまぁいいか。材木座の相手よりは有益だ。

「分かった。サンキューな」

「My Pleasure!」

急に外人かぶれになった芦間は学生から来たであろうメールの返信に意識を戻した。

 

よくよく考えてみたら俺は、明日から一時的とは言え新しい職場になるのか…。

智佐吹さんに渡されたメモ用紙を確認してみると、、、

『10時。改札近く。コンビニの前』

もう口頭でいいだろこれ。あと何口の改札だ…。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

〜千葉県某所、とあるオフィスにて〜

 

「雪ノ下さん、今夜、食事でもいかがですか?会社の皆で行こうって話になっているのですがよろしければ…」

「すみません。今日は他に予定が入っておりますので」

「…そうですか。ではまた別の機会に」

男性は残念そうに席を後にした。長い黒髪の女性は何事も無かったかのように淡々と仕事を続けている。デスク横の紅茶を飲みながら、午後の一息を堪能しようかと思っていたところに食事の誘いが入ってしまった。

「はぁ…」

どうして男というものはこうも毎日しつこくアプローチすることが出来るのだろうか?そう思わずにはいられないという表情であった。

 

先程、言い寄ってきた男性は一週間前、彼女に交際を申し込んできた人物だった。ところがその際、はっきりと交際を断った上に、コレ以上無いほどに、こてんぱんに希望を打ち砕いたはずの男が、尚も明光見つけたりと言わんばかりに現れたではないか。

根拠のない絶対的な自信の根源が一体何なのか。その女性には到底理解できる事象ではなかった。

 

 

「雪乃ちゃ〜〜〜ん!いる〜〜〜?」

もう一人の黒髪美女がオフィスに姿を表したのはそんな時だった。その人物は女性と親しい間柄にある人物と言って良いものなのかは分からないが、ともかく付き合いの長さに関して言えば間違いなく腐れ縁と言っても良いだろう。

呼び出された女性・・・雪ノ下雪乃は右手で頭を抱えると、わざとらしく空気を全く読まない愚姉に目をやった。

「雪ノ下さん、私語は謹んで頂けると嬉しいのですが」

「あれ〜?せっかくのお姉ちゃんなのに全然嬉しそうじゃないね?」

「…当たり前でしょう。あんな浅薄で愚盲な事を部下の目の前でされて喜ぶ人間が居たら教えて欲しいものだわ」

当初は毅然とした態度で社会人同士の会話で接しようと目論みたものの、自身の感情のコントロールが効かず、瞬く間にメッキが剥がれてしまった。相手が姉である雪ノ下陽乃である以上、そう上手くはいかない事は雪乃も百も承知だったが。

「まぁまぁ。今日はお仕事頑張ってる雪乃ちゃんにスペシャルプレゼントでーす!」

そういうと陽乃は手に持っていたクリアファイルを雪乃に渡した。

「どうせ碌でもないものだとは思うから受け取りたくないのだけれど」

「ひど〜い!でも、ちゃんと雪乃ちゃんが受け取ってくれるまで帰れないよ?仕事の資料なんだし」

「はぁ…。分かったわ」

肩をすくめながら雪乃は中には言っている資料を取り出した。流石要領の良い雪乃と言うべきか、直ぐ様仕事の顔に戻る。

しばらく熟読してから、ようやく雪乃は口を開いた。

「つまり、この職場の環境改善の依頼を他の企業に依頼したということかしら?」

「そゆこと♫ 雪乃ちゃん、毎日大変そうだったからね。流石に業務と同時進行で現場を回すのは大変だと思ったからさ。気を効かせて手を打っといたの」

「余計なお世話をしてくれたわね。私は頼んでなんかいないでしょう?」

雪乃は苛立ちを隠さなかった。憤怒の形相で姉を睨んでいる。

だが、当の陽乃はというと歯牙にもかけない様子であった。それどころか、その様子を楽しんでいる節すらある事が余計に雪乃の神経を逆撫でした。

「良いの〜?そんなこと言っちゃって?」

「どういうことかしら?」

こうして聴き入っている時点で陽乃の術中に嵌っていると理解しながらも雪乃は攻勢を崩さなかった。

「それ、最後まで読んだ?」

「渡された資料に関しては読んだわ。特に至って不思議な事は書かれていなかったと思うのだけれど」

「まぁ、依頼内容としては私や雪乃ちゃんだけでも充分に解決できるものなんだよねぇ。それでね、その中には二つ資料があるよ。多分、雪乃ちゃん一つ目しか見てないでしょ?」

図星だった。雪乃は一つ目の資料にしか目を通していなかった。ただ一つ目の資料の内容を読む限り、どう見ても雪乃が通常業務と並行して一ヶ月弱もかければ一人でも解決できる程度のものだった。

 

 

おとなしく雪乃は二つ目の資料を取り出してみた。

二つ目は私の自作だよーっと言う姉からのどうでも良い情報は早急に切り捨てた。

 

 

そして二つ目の資料を読むことなく、危うく資料をその場に落としそうになってしまった。

 

二つ目の資料には集合場所と担当企業の名前や相手の詳細が書かれたデータが記入されていた。右上にはその担当者の名刺まで丁寧に添付されてある。

雪乃は目を丸くしたまま、まるで雷に打たれたかのように動けなくなっていた。そして同時に止まっていた自分の中の時間を強制的に動かされるような感覚に陥る。

思わず口元を手で覆った。

手に持った資料から目が離れない。

 

 

そこには雪乃がよく知る人物の名が記されていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

比企谷八幡。

 

何度も確認したが間違いない。

 

 

 

資料に書かれている情報を見ても記憶と相違無い。

 

 

 

彼だった。

 

 

雪ノ下雪乃が初めて興味を持った男。

 

雪ノ下雪乃が初めて心を開いた男。

 

雪ノ下雪乃が初めて好きになって告白した男。

 

雪ノ下雪乃が初めて失恋した男。

 

雪ノ下雪乃が自分から距離を取り疎遠になった男。

 

雪ノ下雪乃が記憶の中から消してしまいたかった男。

 

雪ノ下雪乃が毎日のように想っていた男。

 

雪ノ下雪乃が会いたくてたまらなかった男。

 

 

 

 

 

 

雪ノ下雪乃が唯一、心の底から愛していた男。

 

 

 

そんな男が数年ぶりに自分の前に現れようとしている。

 

 

そして、陽乃から渡された資料が正しければ、明日の10時N駅にて自分が直接迎えに行く事になっていた。

 

 

資料を持つ手が小刻みに振動している。

 

 

明日、比企谷八幡に会えるのか?

 

あまりにも突然の展開に流石の雪乃も思考が追いついていなかった。

震える肩を抱き、その場に崩れ落ちそうになる体を何とかして支えている。

しかし、今にも限界が訪れそうな彼女のよろめきに、周りの社員達もどうして良いのかわからないと言った表情であった。なにせ、氷の女王と謳われている雪ノ下雪乃がにわかには信じがたい感情の揺れを見せているのだから。

 

 

 

比企谷君…比企谷君…。

雪乃の呟くような魂からの叫びが木霊した。

 

陽乃は声をかけること無く、静かに妹を見守った。

 

 

 

やがて雪乃はその場に膝をついた。

そして、顔を両手で覆うと静かに嗚咽を漏らし始めた。

 

焼けるような夕日が窓から差し込み、儚げな少女を照らしている。

彼女の細い影がオフィスの床を這うように伸びていた。

 

 

 

続く

 




ゆきのんようやく出た…。書いてるはずの自分が『やっとか・・・』と声を漏らしました。
次回はおそらく、エロシーンに入ります汗

R-18とは何だったのか状態に終止符を打ちましょう()

ではまた、次回もよろしくお願いします(_ _;)
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