※この作品はR-18です。

エトの兄はやべーやつ   作:闇と帽子と何かの旅人

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11話 草刈ミザ3

 ナッツクラッカーは、普段ならば、けして誘いに乗ってこないだろう強姦魔(レイパー)に疑問を抱きつつも、喜びを隠せないでいた。久々のデートである。余計な者が着いて来る予定だが眼中に無い。彼女の視界は彼しか存在しないし、興味すら無い。

 今日はどの服を着ていこうか、黒系の服を好む彼女は勝負下着も黒色で統一されている。普段のボンテージとはいかない。ドレスコードのある場所へ、ショッピングに向かった後行く予定だからだ。

 

 「これが良いかも……迷うわ……」

 

 語尾に音符が付きそうなくらい彼女は舞い上がっている。彼に買ってもらった、クローゼットに飾られているように鎮座する服を眺め、今日はどれを着て彼の隣を歩こうか。まるで無垢な少女のような気持ちで、ナッツクラッカーは着替えに勤しんでいた。

 

 普段なら逃げるように行方をくらませる男が、何ゆえ彼女の誘いに乗ったのかと言えば、彼が上機嫌だからだろうか。笛口親子との性活は、彼に潤いと充実感をもたらした。無論男の性欲があの程度で発散できるはずも無く、その性欲の捌け口は主に草刈ミザに向けられていたが。

 ある日の夕方は公園のトイレで。別の日には、早朝に起こされ衆人環視が見守る中、交差点のど真ん中で。昼寝していたミザを起こすかのように、寝ているミザの口へ、そそり立った肉棒を無理矢理咥えさせて。毎日のようにミザと男はまぐわっていた。

 

 そんなミザも今日のショッピングデートに誘われている。一緒に行こうと男から誘われたミザは、何故自分だけじゃないのか不満だったが、デートに誘われる事自体には不満も嫌悪感も無い。拗ねたような素振りを見せながらも、嬉しそうに着ていく服を選んでいるのが何よりも雄弁に語っている。

 

 「これなら大丈夫……」

 

 少し緊張した面持ちで、ミザも勝負服を身に纏い、女の戦場へ向かう。

 あの痴女に負けてなるものかと。女である前に一人前の戦士であるミザは、ナッツクラッカーに対抗意識を芽生えさせていた。彼女は結構単純な所がある。支配下に置かれつつも、毎日のようにまぐわっていれば、情もわくものだ。元々嫌いでもない。男に感じていた恐怖は、いつしか好意に近いモノに変わっていた。

 恋心なんてモノでは無いかもしれない。ただ、快か不快かで判断するならば快。つまり嫌いじゃない。そう、重要なのはそこだ。安全な巣の中で彼と過ごす日々。心も身体も潤っているミザ。今日の天気のように晴れ渡る、心がご機嫌なのは仕方が無い事。

 

 「ここに来て良かったッスね。ミザ姐毎日楽しそう。まるで恋する乙女……イテッ」

 「ミツシタ、三十路喰種にそれはやめろ」

 「殴らなくてもいいじゃ無いッスかー。照れちゃって、ほんとに恋する少女みたいッスよ」

 「な訳あるか。私はそういった感情なんてアイツに持ってないし、アイツも……」

 「脈はあると思いますけどね」

 

 落ち着かない様子で、本当に恋する少女にしか見えない仕草をするミザに、やれやれと肩をすくめるミツシタと呼ばれる彼女の部下。

 

 「私もこれから出かけるので、互いに頑張りましょうミザ姐!」

 「ああ、楽しんでこい」

 

 部下が団地で仲良くなった人間と共に出かけていく。彼らも彼らで、この地区での生活を楽しんでいる。最初は恐怖しか無かったものの、過ごしていく内に彼らはこの場所に順応した。性を気ままに解放したい者にとっては、まほろばの夢。素晴らしい場所に見える12区にも黒い場所はある。背徳の王に付き従う、老王達が管理する場所。支配しているわけではない。ただ適切に誰にもわからぬよう自然体で、裏から管理している。

 その一人が管理している地は暴力的な性の解放区。穏やかに過ごしたい場合、けして近寄ってはいけない。軍服姿の者達が跋扈する。まるで性の戦場。運がよければ、人が人を喰らう共食いの場面(シーン)が見られる。12区に敵対的、あるいは、そぐわない者達の処刑場でもある。そこ以外の場所は比較的穏やかか、楽しげな地区なのだが。

 

 「アイツらは……」

 

 戦闘できるように改造されている、表面上高級車と並んでも違和感の無いジープやらワゴン車が到着する。軍服姿の者達が、中でひしめいている。ミザは彼らが苦手だ。まるで強姦魔(レイパー)が時折見せる負の部分だけを真似ているような者達が。その後ろから黒いリムジン。黒塗りのベンツ等高級車が並んで到着した。

 

 「到着したようですね、行きましょうか」

 「ん? ああ……おはようって、今日は違うだろっ!」

 「おはようございます。良いじゃ無いですか、挨拶ですよ」

 

 いつのまにやらミザの側にやって来ていた強姦魔(レイパー)。ミザの緊張をほぐす為かはわからない。近付いて来て、軽くミザの胸を触りながら、尻に股間を擦り付けてくる男。普通にデートする気で居たミザは、少し離れて男の挨拶に頬を赤らめながら怒っている。

 

 「ほんとうにお前は……雰囲気というものをだな……」

 

 そんな男に説教をかますミザ。だが、男はどこ吹く風か、目を輝かせながらミザを笑顔で見ているだけ。

 

 「可愛らしい服ですね。とてもお似合いですよ」

 「……そうか」

 

 ふざけているように見えて、きちんと自分を見てくれている。だからだろうか。彼を嫌いにはなれない。わかってはいるのだ。彼は純粋過ぎる。まるで子供。欲しいものがあれば我慢はしない。ヤりたい事は絶対にやる。力ずくだろうが、遠まわしだろうが、あらゆる手を使ってでも対象を手に入れようとする。普段は性欲馬鹿にしか見えない彼だが、時折見せる、深い知性を伺わせる瞳がミザはたまらなく好きなのだ。

 

 もっとも、情事の後(賢者タイム)にしか見れないが。

 

 彼に選んだ服を褒められ、少々照れくさそうにしながらも、男の手をさりげなく握るミザ。少女漫画のようなラブコメを繰り広げるミザと男。そんな二人の様子を見て、黒塗りのベンツからナッツクラッカーが降りてこちらへやって来た。

 

 「さっさと行きましょ」

 「おはようございます。痲ユ」

 「早く」

 

 ナッツクラッカーはミザを完全無視である。手を対抗するように握り、自分が乗ってきた車の中に引き込もうとする。ミザはミザで微動だにしない。痲ユとミザ。彼女達は視線こそ合わせないが、心の目から互いに出ている火花が交差しているに違いない。

 男がこれからミザとカーセックスでもして、痲ユに見せつけようかと、この場にそぐわない事を考えていると、リムジンから老紳士風の男が降りて来て彼らに助け舟を出す。

 

 「儂の車に乗って、一緒に行けばいいだろうに」

 

 ド直球の正論で彼らを諭す様は、まるで本場英国紳士。だが、口に咥えているピンクローターが全てを台無しにしている。

 

 「それもそうですね、お言葉に甘えましょう。二人も良いですね?」

 「……構わないわ」

 「……ああ」

 

 どいつもこいつも浮世離れし過ぎている。ミザはやれやれと思いながらも、楽しげに頬を緩ませながら、男に続くようにリムジンへと乗り込む。痲ユも痲ユで、運転する手間を省けたと、儲けたと言わんばかりの表情で共にリムジンへと入る。

 リムジンの車内はダンスホールに似ているような照明。紫色に淡く光るライトが天井を照らし、紅色で小さな光が地面を彩る。ソファーのような座席にそれぞれが座りながら各々話し出す。痲ユがたまに男を連れて行くクラブに似ている雰囲気かもしれない。それもそのはず。そのクラブは老紳士がオーナーを勤めているのだから。

 

 「いい雰囲気ですね。嫌いじゃない」

 「頻繁にクラブに来てくれてもいいのよ?」

 「ワタシの求めるモノが、ほとんど無いので……あそこへは、あまり行きたくないです」

 「家出少女とか居るかもしれないのに?」

 「高級クラブに居る可能性……少なすぎる」

 

 満足げに頷く男に冷や水を浴びせるように、痲ユが男へ語りかける。本当ならずっと一緒に遊びたい。いろいろな場所で共に過ごしたい。だが、男はすぐに逃げ出すようにどこかへ行ってしまう。痲ユはその度に我慢するのだ。本当(、、)に嫌われてしまわないように。男も本当に嫌いならば完全に無視するか、相手にすらしないだろう。少なからず興味がある故に相手をする。それがどんな感情なのかは、彼にしかわからないが。

 こういった雰囲気に慣れていないミザがそわそわと、落ち着かない様子で、男の手を握りながら片手でワインボトルを手に取る。喰種である彼女でも飲める血のワインだ。

 

 「なあ、飲んでいいのかコレ」

 「ええ、構いませんよ。イイですよね?」

 「うむ。楽しむといい」

 

 まるで車内を我が物顔で寛ぐ男は、一応は前の方に座っている老紳士へと断りを入れる。老紳士は後ろの席で、両手に華で浮かれながら楽しんでいる男に対して、孫を見るような目つきで微笑んでいた。

 

 「冴木君、出したまえ」

 「はい」

 

 老紳士が運転手に声をかけて、リムジンが走り出す。

 運転手である冴木空男。通称トルソーと呼ばれるダルマプレイ愛好家の喰種。元々はただのタクシー運転手だった彼。12区にやって来て、ふと風俗店に入ってから彼の人生はがらりと変わった。何者にも邪魔をされる事無く、堂々と店でダルマプレイができる。周りを気にする必要性が無い。金はかかるが、そんな事はどうでも良かった。冴木は店の常連になる。

 店で欲望を満たした後、浮ついた気持ちで仕事に戻ろうとすると、前を走っていた黒いリムジンにぶつかってしまう。高級車のカマを掘った。こちら側が100%悪い。借金ができてしまう。タクシーの運転手では到底払えないだろう額。だが、数奇な運命かリムジンの持ち主は風俗店のオーナーで、自分が店の常連客という事を知っているようだった。

 その風俗店のオーナーに、運転手にならないかと声をかけられたのが、冴木空男の転換期。その日から彼の生は光り輝いていく。毎日が充実して、濁っていた目も輝きを取り戻し、潤っていく。

 

 ふと、この風俗店の女性達はどうやって調達されているのか。気になった事を雇い主である老紳士に尋ねた事があった。少数はマダム界オークション等で仕入れてくるそうだが、ほとんどが後ろで寛いでいる男からの提供だった。人も喰種もお構い無しに、彼の好みではない女は老紳士の管理下へ送られていく。

 冴木にとって老紳士は拾う神であり、後ろで女性陣と寛いでいる男は救いの神だ。素晴らしい店を提供してくれている。自由に、気の向いた時に楽しく過ごせる。大きな波に飲まれるように、リムジンの運転手になっているが、今では誇りに思っている。

 自分も12区という楽園を守る。維持する。少しでも彼らの役に立てばいい。そんな気持ちがわいてくるのは自然の成り行きだった。

 

 ショッピングモールに着くまでの間、車内でまったりと過ごす。ただ過ごすだけでは駄目なのか、男はミザの股間にさりげなく手を添えて弄りながら痲ユと会話している。思わず血のワインを吹き出しそうにミザはなったが、なんとかこらえた。本当にこの男は、性的に休む暇が無い。常に手か股間を動かしていなければ、死んでしまうのではないだろうか。そう思えるほどに、彼の側は常に性的である。

 

 ミザは男をジト目で見遣るが、彼は痲ユとの会話を続けながら、彼女のクリトリスを服越しに弄り続ける。いよいよミザが絶頂を迎えそうになった時、ショッピングモールにリムジンが到着した。非常に間が悪い。車から降りるミザは、降りる際運転手を睨むが、冴木は悪くない。睨まれた冴木は非常に困惑し、怯えた。神が気に入っている特別な少女に粗相をしただろうか。自分の運転にミスがあっただろうか。

 そんなミザを見て笑っている冴木にとっての神、強姦魔(レイパー)は機嫌が悪そうなミザへ小声で、続きはどこでもできると耳打ちする。話しかけられたミザは耳まで真赤にしつつも、不貞腐れたような表情で歩いていく男に着いて行く。

 

 「冴木君、昼頃にまた、ここに。次はいつもの場所だ」

 「わかりました」

 

 老紳士は両手に華の彼を見送りながら、運転手へと指示する。彼は彼で仕事があるのだ。ついでに彼らをショッピングモールへ送ったに過ぎない。停車しているリムジンへ、秘書のような出で立ちで女性がやって来る。老紳士の側に寄ってきた秘書っぽい女性へ手を伸ばし、股からピンクローターを取り出し咥える。老紳士は女性をリムジンに連れ込み、車を出発させた。

 

 

◇◇◇

 

 

 ショッピングモールでウィンドショッピングを楽しむ痲ユ、ミザ。女性陣を少し離れた場所で眺めながら楽しんでいる男。店内は落ち着いた音楽が流れている。これなんかどうかしら。痲ユが男に選んだ服を見せる。

 

 「いいんじゃないでしょうか。似合うと思いますよ」

 「本当に?」

 「……何故疑うんですか」

 「だって……」

 

 あまりこっちを見てくれないじゃない。と、痲ユは男に対して、少々拗ねた感じの声色で話す。彼女が多少拗ねるのも仕方が無い。何故なら男はミザの方ばかり見ているからだ。困ったような笑顔で男は、宥めるように痲ユの相手もしている。

 これなんてどうだろうかと、男は試着に時間のかかりそうな、一人で着替え辛い服を痲ユへすすめる。痲ユが更衣室へ入ったのを確認した男は、店員に何かを渡した後、ミザが入っているであろう更衣室へと、躊躇無く入る。

 

 「なっ……おい……」

 「続きをしましょう」

 「お前……なぁ……」

 

 ミザは少々驚いたものの、予測できていたのか、すぐさま小声で男へ注意を促す。だが、男はそんな事よりもミザと絡みたいのだ。性的な意味で。後ろから抱きしめるようにミザを包む男の体温。彼女は身体が火照ってくるのを感じた。ミザの体臭でも嗅いでいるのか、大きく息を吸い込みながら、男は胸やら股へ手を伸ばす。

 試着しようとしていたミザへ男の性なる奇襲。下着をこれ以上濡らされたくないミザは、ショーツを戸惑いも無く脱ごうとする。彼女は車内でワインを飲んでいた事もあり、ほろ酔い気分。普段より大胆になっていた。

 

 「ちょっと待て……脱ぐから」

 「いいじゃないですか」

 

 濡れて駄目になっても新しいのを買いますと、男はお構い無しに、少しずれたショーツが見せる柔肌。その隙間へ股間を擦り付ける。周りには他の客も居る。それに、ここは12区ではなく普通の街。流石に男も大人しいかと思われたが、どうやら違ったらしい。手淫だけするのだろうと思っていた彼女。お返しにフェラでも返そうかと思っていたが、男は本番をご所望。

 

 「……いやいやいや、待て待て」

 「待てができる犬になった覚えは……無いッ!」

 「あっ……くっ……」

 

 焦るミザへお構い無しに、彼女の蜜壷へ容赦なく肉棒を挿入する男。更衣室の鏡に映る繋がった下腹部。ミザは赤面せざるを得ない。色々と男に仕込まれている彼女だが、まだ慣れきっている訳では無いのだ。ゆったりと動き出す男。鏡を見ているミザへ見せ付けるように、緩慢な動作で肉棒をミザの子宮、その最奥へ届かせる。

 

 「ほら、綺麗ですよ」

 「あんっ、ド阿呆ぉ……ぅう……」

 

 ミザは、相変わらず自分の欲求に素直な奴だという思いと、感じてしまう身体のよう正直になろうかという想い。少しふわふわした思考をしながら、悪戯っ子のように笑う彼を鏡越しに見遣る。嫌じゃないが少しムカツク。出かける前の純粋な気持ちを返せと、男へ言葉では言わないが、表情で語っている。そんなミザにスイッチが入った男は、彼女の赤くなっている耳へ小声で囁く。

 

 「……こうされたかったんだろ? 素直になれよ」

 「んんんっ!」

 

 違うと、自信を持って言えないのが悔しい。ミザの身体は正しく快楽を求めていた。ヒクヒクと蠢く、彼の形に作り変えられた膣襞。流れ出すアイエキ。抑えようとはするのだが、少し漏れてしまう可愛らしい声のように、彼女の蜜壷から蜜が滴り落ちる。

 小さな動きだが、とても力強いストローク。子宮の奥まで届く肉棒。ミザは軽く絶頂を迎える。

 

 「俺より先にイきやがったな。お仕置きだ」

 「はぁ……はぁ……えっ、そこ、ちがっ……んひっ!」

 

 彼はアイエキを絡ませた肉棒を彼女のアナルへ容赦なく挿入する。蜜壷とは違い、前戯も無く急な肉棒の侵入。初めての熱い感触。直腸から伝わる彼の温度。少し違和感があるものの、ミザのアイエキが潤滑油の役目を果たし、肉棒を難なく受け入れた。

 ミザは普段から綺麗にしていて良かったと、ほっとする反面。何故ここに挿入するのか疑問げだ。どうせなら子宮に欲しい。彼の熱い欲望で中を満たされ、絶頂を迎えたい。浮かれていた表情に翳りが混じる。そんなミザを察したのか、男は静かに彼女へ語りかける。

 

 「安心しろ。お前の穴という穴、俺のセイエキで満たしてやるよ」

 

 他に何も考えられなくしてやる。男は非常に気合の入った言葉で、ミザへ囁く。もしや、飽きられたのかと不安になったミザだったが、彼が囁く言葉に安堵し、スイッチが入る。ミザは自分のクリトリスを弄り始めた。いやらしい水音が更衣室から漏れ始める。恥じらいも何もかも捨てて、よがり狂おう。そう思った矢先だった。

 

 「……ねぇ、あの人見なかった?」

 

 ミザの手の動きが止まる。男も静止する。鏡越しに見る彼は、忘れていたと言わんばかりの表情だった。ミザは普段話しかけてすら来ないナッツクラッカーが、自分に声をかけてきた事に驚きながらも硬い声で返す。

 

 「……いや、見ていない」

 「そう……どこに行ったのかしら……」

 

 更衣室の前でナッツクラッカーが思案に耽る。早くここから離れろ。ミザは邪魔をされて少々不機嫌になる。ミザの表情が硬い。男はそんな彼女の表情も可愛らしいと思いながら、肉棒を再び動かし始める。歯を食いしばりながら、声を漏らさないように男へ振り返る。今はやめろと言わんばかりの表情で男を見遣ると、彼は悪戯を思いついた子供のような笑顔で笑っていた。

 店内に流れている音楽に合わせるよう、ゆっくりと肉棒を前後させる。アナルの処女も彼に奪われ、色々な初めてを男から貰うミザ。だが、流石に今はまずい。男は喋らないが、よく見ろ。お前の痴態が鏡で確認できるぞと、言っているよう。ミザを持ち上げて、結合部分がミザにもよく見えるように肉棒を動かす。

 ミザは眼で、今はやめてくれ。後で思い切りしよう。後でならいくらでも付き合うからと。懇願するような視線で男を見つめる。それがいけなかったのか、任せろと言わんばかりに、肉棒の動きが少し早くなる。

 

 「んんっ……あっ、んっ」

 

 例えナッツクラッカーが近くに居ようがお構いなしの男。少し涙目になるミザ。彼女の表情にそそられたのか、男はどんどん動きを激しくさせる。流石に喰種であるナッツクラッカーは、更衣室から漏れてくる淫らな音に気付く。

 

 「貴女……こんな所でまで自慰するタイプだったの……はしたない」

 

 侮蔑するような声。ミザは違うと言い返したかったが、じゃあ何だと言われれば返答に窮する。頭は困っているが、身体は快楽を欲する。そんな鬩ぎ合いの中、ミザはアナルセックスに慣れてきたのか快感らしきモノが感じられるようになった。

 こんな所を見られたらまずい相手。絶対に面倒くさい事になる。ナッツクラッカーがカーテン越しに居る。だが、身体は興奮する。何とも言えない優越感にミザは包まれる。お前は彼に抱かれた事など無いだろう。せいぜいカーテン越しに侮蔑の言葉でも吐いているがいい。彼女は満足げで不敵な表情に変わる。

 

 「くっ……んっ……あんっ……」

 

 男の気持ちのいい所を探るような肉棒の動き。次第に艶を帯びるミザの表情。その瞬間を彼は逃さない。ここだと言わんばかりに、丁寧でいて力強い動きで彼女の感じるポイントを容赦なく責め立てる。肉棒の熱、すぐ側にある男の横顔。とても嬉しそうに、彼はよがる自分を見つめて肉棒をより硬くさせ、動かし続ける。自分に夢中な男にミザも嬉しくなる。もっと快楽を。ミザは再びクリトリスを弄り始める。声はなるべく出さないように。

 

 「あくっ……んっ……」

 

 返事を返さず、自慰(、、)をやめないミザに呆れたのか、ナッツクラッカーは更衣室から離れていく。最早外の様子など、どうでもいい感じでミザはよがる。鏡に映る自身を眺めながら、肉棒の熱と感触に酔い痴れる。男の肉棒が脈打つ。そろそろなのだろう。何度も何度も交わったミザだからわかる。彼に最高の快楽を味わってもらおう。健気な想いで彼女はアナルを締める。

 

 思わぬミザの反撃に男はたまらず欲望を吐き出してしまう。

 

 「熱いぃ……んんっ……ぁああっ!!」

 

 直腸へほとばしる熱い彼の欲望。初めての感覚。彼に処女を奪われた時のような、トキメキに似た何かを感じながら、ミザは大きな絶頂を迎えた。

 

 「はぁ……んっ、はぁ……」

 「ふぅ……ありがとうございます。貴女も気持ちよかったですか?」

 「はぁ……はぁ……ぅん……」

 

 息を整えながら男に対して頷くミザ。男は何やら懐から取り出してミザへ渡す。

 

 「……何コレ」

 「栓です。下着を汚したくないのでしょう? 今日一日付けてください」

 

 夜、また続きをしましょう。男はそう言いながら、莞爾として笑い。更衣室から優雅に出る。残されたミザは呆然としながら、男に言われたようにアナルに栓をする。夜など待たず、これからヤりまくりたいと思ったが、彼がそう言うなら仕方が無い。我慢くらいできる。

 

 ただ、早くこの疼く子宮を満たして欲しいと、だらしのない牝の表情だけが鏡に映っていた。

 

 

◇◇◇

 

 

 ショッピングを終え、昼食を済ませ、一旦ホテルにチェックインし、各々着替えを済ませる。これから行く場所は、昼食をとった場所とはまた違う、ドレスコードのある服装に煩い所。男の用意していたドレスに二人は身を包む。店員に金を払い、彼は予約していたドレスを購入していた。既に彼女達の為に用意していたのだ。情事に感(かま)けてショッピングなんて二の次かと思えば、こういう気配りを欠かさないのが、何とも言えない。

 

 行きのように老紳士がリムジンで送ってくれるらしい。彼らはリムジンに乗車し、オークション会場へ向かう。昼食時から、ずっとジト目で男を見詰める痲ユ。食事中すら、彼はミザの股間を弄っていた。流石に怒ったのか、ずっと黙って男を批難するかのように見続ける。ふと、リムジンから見える景色に見覚えがあるのか、痲ユの視線が懐かしげに変わる。

 

 「ちょっと止めてくださる?」

 「うむ? 冴木君」

 「はい」

 

 突如停車させる痲ユ。

 

 「覚えてる?」

 「……ええ。まだあったんですね、ここ」

 

 ――それは、幻想のような追憶。痲ユの宝物。

 

 「そう、ならいいわ。許してあげる」

 

 ――それは、彼と奏でる終わり無き旋律の始まり。

 

 「あの頃の貴女は美しかった」

 「今は?」

 「……ノーコメントで」

 「ねぇ、今は?」

 

 とあるブディック。彼と痲ユが初めて出会った場所。ミザにはよくわからない話だが、恐らく過去の話だろうと推測する。痲ユは一旦機嫌をなおしたかに思えたが、今度は詰問するように男に迫る。彼の腕を抱きしめ、答えるまでは離さないと言いたげに。

 

 そんな風にじゃれ合いながら、オークション会場にやって来た強姦魔(レイパー)一行。

 リムジンから降りる際、老紳士から仮面をミザや痲ユは渡される。とある火薬陰謀事件の主犯がしていた仮面に良く似ている。気付けば強姦魔(レイパー)も老紳士も同じ仮面を被っていた。ここは上流階級の喰種達が集い、人間やら喰種といった商品を競り落とす会場。ドレスコードもある。来る者達は皆、品格が漂い、格式ある場所なのだ。

 オークションは紹介制で、一般人どころか、普通の喰種は入る事すら許されない。老紳士が彼らを案内し、皆席へ座る。周りを見渡せば、自分達のように仮面を被る者達。アサダ貨物の浅田二郎。ジュエリー・ティコのティコヨハネス。アポログループの呉井等、人間社会に溶け込んでいる喰種(、、)が居たりするのだが、素顔がわからないので、誰も気付かない。

 

 老紳士は隣に座る、スーツ姿で眼鏡をかけている老人と顔見知りなのか話し始める。

 

 「おや、貴方も来ていたので」

 「おお、お久しぶりです」

 

 老紳士と話すスーツ姿の老人。通称クロックムッシュ。とある財閥グループの総裁。隣には彼の息子なのだろうか、何やら気障っぽい男が座っていた。

 場違いな感じがしてたまらないミザ。ふと、自分の隣に座る男を見れば、退屈そうに欠伸をしている。普段とは違ってスーツ姿。ミザと反対側、彼と腕を組みながら隣に座るナッツクラッカーのように、素直にべた褒めした方が良かっただろうか。馬子にも衣装と言ってしまったが、とても似合っていて、心と子宮がときめいた。そんな照れ隠しのような可愛い反応。男は笑っていたが、嫌な気分にさせてないだろうか。

 ミザはオークションそっちのけで、素直になりたいが、素直になれない自分と戦っている。そんなミザは気付かない。オークション会場に来ている客達が、軒並み畏怖の眼差しでこちら側を見ていることに。

 

 「これとか、いい商品じゃない?」

 「男に興味はありません」

 「そう言う意味じゃないのに……もう」

 

 強姦魔(レイパー)を筆頭に、マダム界では名の知れたナッツクラッカーが、お品書きのようなモノを見ながら彼と談笑している。彼の後ろには、無理矢理着ているようなスーツが似合わないプロレスラー風の男。受付嬢から剥ぎ取ったパンツの匂いを嗅ぎながら、どっしりと座っている。ナッツクラッカーの横を固めるように、表面上わからないがセーラー服の上からスーツを着ているサムライヘアー。こちらは乳首辺りが機械音を鳴らしながら振動しつつ、何やら書類を眺めている。

 それぞれの部下だろうか、似たような者達がずらりと並んでいる。まるで強姦魔(レイパー)一行を取り囲むように12区の面々が座っていた。何か文句があろうものなら、受けて立とうと言わんばかりに威風堂々と。

 

 オークションがそろそろ幕を開けるのだろう。ピエロの仮面を被った者達が三人、会場へ登場する。会場の客達も視線が司会に向き、ざわめき出す。待ってましたと。さあ、今日の商品は何だ。我々を唸らせるモノは出てくるのかと。

 果たして強姦魔(レイパー)が好む。純真無垢な少女は出品されるのだろうか。それとも、何事も無く終わるのだろうか。オークションがまもなく開始される。

 

 

◇◇◇

 

 

 金木研は霧嶋董香と共に高槻泉のサイン会場に来ていた。所謂デートのようなものだ。高槻泉という作家は彼女本人にファンが付くほど、雑誌の記事で露出がある。まるでアイドル扱い。カネキ的には、きちんと作品を読んでファンになってもらいたいと思いながら、自身は違う(、、)と、暗示をかけるように心で十字をきっている。

 

 「すっげぇ人……カネキ、アイツすげえ奴だったんだな」

 「うん。トーカちゃんも今度読むといいよ。僕の持ってる本貸してあげる」

 「……そう言えば、肝心の本人がまだじゃん」

 

 未だ笛口親子を救った者は高槻泉だと。強姦魔(レイパー)=高槻泉と当て嵌めている二人。そもそも高槻泉は女だ。けして高槻泉が男だったという衝撃の事実は無い。

 小走りにやって来る緑髪の小柄な女性が会場に到着した。会場にやってきていた者達がざわめきはじめる。主役のおでまし。どうやら寝坊したらしく、髪をセットする時間も無かったのかボサボサだ。それでも美しいとしか言いようが無い彼女の容姿。集まったファンは誰も文句など言わない。むしろ、起き抜けの彼女が見られて感極まり、涙するファンまで居る始末。

 

 「アイツ、覆面の下すげえ綺麗なんだな」

 「……」

 

 ふと返事を返さないカネキの様子を見れば、だらしのない表情で高槻泉を見詰めていた。これにはトーカも面白くない。

 

 「……」

 「イタッ! 痛いよトーカちゃん……」

 

 高槻を見ては、カネキが鼻の下を伸ばす。かつて見た情景を思い出し、股間も盛り上がりそうになる。必死に隠そうとするのだが、トーカにはバレバレのようで、カネキは足を彼女に踏みつけられていた。

 そんな彼らを他所に、サイン会は開催される。ある者は高槻泉をべた褒めしながら、デビューからファンだとか、登場する人物が気に入っているなど。そんなファン達の声ひとつひとつに、丁寧な対応で答える高槻。一緒に写真をとって欲しいという要望にも、嫌な顔せず気軽に応える彼女。係りの者が止めようと入るがお構いなし。トーカは明るい奴だなとカネキに漏らす。

 

 そうこうしているうちに彼らの順番が回ってくる。

 

 「お……? お似合いのカップルですね。あやかりたいものです」

 

 カップル呼ばわりされ、トーカが赤面する。人が沢山周りに居るので、違うと否定するのも恥ずかしい。そのまま流す事にした。

 

 「……お久しぶりです」

 「はい?」

 

 久々の再会だと言わんばかりに、彼女が出版している本を渡しながら、カネキは小さな声で高槻に話す。考える素振りをしながら、困ったような笑顔で高槻は返答する。

 

 「あー……最近忙しくて、モノ忘れが激しいんですよ。どこで会いましたっけ」

 「あんていくですよ」

 「あー、はいはい。あんていく(、、、、、)でしたか。あの喫茶店いい雰囲気ですよね」

 

 自身は一度もあんていくに入店した覚えは無い。だが、話を合わせる高槻。その後、いつから読んでくれているのか。拝啓カフカから。短編集どころか他も全て読んでいる根っからのファンだというカネキ。塩とアヘンについて熱く語る。カネキはどうやら容姿目的のファンではなく、きちんとした読者、しかも熱烈なファンだと気付く。

 叔父がどう、家族構成、時系列、きちんと読んでくれている事に喜びながらサインする高槻。思ったよりも時間をかけて、相手をしている高槻を急かすように声をかけるスタッフ。

 

 「高槻さん。そろそろ……」

 「は~~い。じゃあねカップルさん」

 「ありがとうございました」

 

 ふと、思い出したように去り際トーカは、店長が会いたがっている。たまには顔を見せたほうがいい。そんな事を言うものだから、高槻は思わず吹き出しそうになる。笑い出しそうになる衝動を我慢しつつ、頷きながら手を振る。またサイン会においでと、去り行くカネキとトーカに声をかけながら。

 お似合いカップルが去った後も、彼女は色々なファンを捌き、ようやくサイン会は終了。彼女は彼らの去った後、笑い(、、)をこらえるのに必死で、常時笑顔が張り付いたままファンへ対応していた。

 

 「あんていく……盲点だった」

 

 周りにまだスタッフが残っている為か、声をあげて笑い出す事は無いが、彼女は今にも爆笑したい気分に包まれている。忙しく、自身で探す事ができず、知り合いや部下(、、)に長年探してもらっていた兄(、)の手掛かり。日本へ帰国し、東京内に居る事はわかっていたが、どの区か絞れず、行方知らずだった兄。それが棚から牡丹餅のように、転がり込んできたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「兄さん……見ィツケタ」

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