しかもそのタイミングで先生にカチ込まれて絶望的なタイミングだったのを今でも覚えてます
でも女の子二人のポッキーゲームは見てみたい
あと、感想とか評価とかもらえるとめっちゃ喜びますので何卒お願いします
ハロウィンパーティも無事終わり、並行して行っていた後片付けの色々もようやく片がついた頃。部活に行ってみると、そこには大量の箱が積まれていた。今日は11月11日、確かポッキーの日なんて製造会社が大々的なキャンペーンをやっているのをスーパーで見かけはしたが、まさかその戦略にまんまとハマっている人を見ることになるとは。
「あっ、先輩、ちゃろー!」
「保科くんも、一つどうですか」
部室には因幡さんに綾地さん、そして椎葉さんの3人が。先輩は流石にそろそろ受験勉強に本腰を入れなければならないと部活を引退したこともあって、少し広く感じるようになった部室に、所狭しとポッキーの箱にその販促用のバルーンらしきもの。うちはオカルト研究部ではなくポッキー研究部に改称したほうが良いんじゃないだろうか。スーパーの特設スペース並だぞ、これは。
「それにしても、こんな数買ってどうしたんだ」
「元はワタシとめぐるちゃんでポッキーを部活やクラスの皆に、って思っていたんだけど……」
「皆さん考えることは同じみたいで、ちょっと余らせちゃいました」
「そこに私が、せっかくだから部活の皆で食べようと」
机の上に山積みにされたそれは、部員がこの10倍いても食べきれるか不安な量だ。安直にオレも買ってこなくてよかった、と心の底から思わずにはいられない。
「ただ食べるだけなのもちょっと飽きてきちゃいましたね」
「帰る前にちょっと様子を見ようとおもたら……なんだかすごいことになってるね」
「あれ、先輩」
「あはは、びっくりさせちゃったかな。部活の様子が気になっちゃって、そのまま帰るつもりだったんだけど寄り道しちゃった」
戸隠先輩が部室のドアを開けて、中に入ってくる。皆も予想外だったとはいえ、この大量のポッキーを前にして援軍の登場は喜ばしい。さらに綾地さんがコーヒーを入れてくれたおかげで、ちょっと豪華なお茶会というような雰囲気にもなってきた。
「保科クンはポッキーゲームとか、したことあるのかな?」
「ぶっ……いきなり何言うんですか」
「せっかくならお姉さんと」
「バカ言わないでくださいよ」
飲んでいたコーヒーを吹き出してしまった、幸いそんなに汚しはしなかったが、そもそもポッキーゲームって、付き合ってるカップルがイチャイチャするような空気の中やるようなものだろう。これまで恋人がいた試しもないオレにそんな相手がいるわけが。
「前に聞いた話だと、女の子同士でもポッキーゲームするんだって」
「えっと、センパイ、ポッキーゲームって何ですか」
そう口を挟んできたのは因幡さん。こういうことなら知ってそうなイメージだったが、まさか知らなかったのだろうか。
「実はワタシも知らないから……」
「それじゃ、椎葉さんと因幡さんがやってみれば良いんじゃないかな」
「えっ」
今度は口の中に何も含んでいなかったから、吹き出すものは何もなかった。ただ、それでも口からは不意をつかれたこともあって言葉が飛び出す。一体この人は二人に何をさせようというのか。今は綾地さんが離席していることもあって、オレ以外に止められる役は居ない。だが、心の奥底で二人のそんな姿を見てみたい、そんな邪な気持ちを抱いてしまった今、口出しはできそうにない。
「それじゃ、二人は一旦目をつぶってね」
「は、はいっ」
「そして、このポッキーを咥える」
起立したまま目をつぶる因幡さんの口にポッキーが咥えられる。差し出された細い棒状のものを口にするその様子に、少しばかり興奮を覚えたというのは思っても口に出すのをはばかられる。ただ、先輩の手付きが妙にエロい。それがその背徳的な感情を呼び覚ましてしまうのだと、そう言い聞かせる。
「それで、椎葉さんはちょっとこっちに来てね、それでこのポッキーを咥える」
「こう、ですか」
言われるがままに、因幡さんが咥えるポッキーの逆端を椎葉さんがついばむように咥えた。贔屓目なしに見てもかわいい二人が、こんな姿を見せているのを見て自分の中の何かがひどく揺さぶられるような気がした。
「それじゃ、そのポッキーを食べ進んでみて」
そろそろ止めないと非常にまずい、無知な二人はこのまま、気づかないうちに唇がゆっくりと触れ、そして……。そもそもポッキーゲームなんて、目をつぶってやったらドキドキも何もないんじゃないだろうか、というツッコミは飲み込む。
一口、また一口と彼女たちの口が近づいていく。そして触れそうになった瞬間、オレの口から声がこぼれた。それを合図に、彼女たちの目が開かれ、ようやく二人が今キス目前であることを理解した。
「……っっ!」
「ふ、ふぇぇっ!」
目を開けると、目の前にお互いの顔があるというのだから叫ばずには居られないだろう。二人の可愛らしい悲鳴は部屋にこだまして、お互い口にしたポッキーはちょうど二人の間で半分に折れ、そして反動で彼女たちが後ろへ飛んでいった。
「せ、センパイっ! ポッキーゲームって言うからもっとこう、王様ゲームみたいな」
「あれ、因幡さんそっちは知ってるんだ」
「たとえですよたとえ! こ、こ、こんな恥ずかしい真似を……ああっ、センパイも何とか言ってくださいよ」
「わた、ワタシ……いま、因幡さんと」
プルプルと震える二人と、それをちょっと楽しそうに眺める戸隠先輩。更にオレも二人のその様子を見て開いてはいけない扉が開きそうな感覚を味わっている。確かにもともと二人が仲良さそうにしていたのは見ていたけれども、そういう関係ではない。だというのに今の二人があのままキスしてしまっても……ダメだ、やめよう。
「それで、ポッキーゲームはどうだった?」
「もう、懲り懲りですよ! どうしてこんな恥ずかしいことを……」
「めぐるちゃん、今度は……目を開けてやってみない?」
恥ずかしそうに顔を赤面させた椎葉さんから思わぬ提案が。さっきまで全面拒否といった様子の因幡さんも、その言葉を受けて語勢が弱まっていく。さっきの眼福をもう一度、なんてオレも心のうちで思いつつ、その行く末を見守ることにした。
「えっと、それじゃ……」
「すいません、今戻り……」
手にポットを抱えた綾地さんが硬直する。無理もないだろう。部室に戻ってきたらお互いの体を抱き合いながら、少女二人がポッキーゲームに興じているというのだから。二人の間に流れる甘ったるいほどに濃密な空気は、誰の侵入も拒む鉄壁のバリアのように、それでいて見ている俺たちを釘付けにする。
「えっ、綾地さ、んっ!」
ドアを背にした因幡さんは、綾地さんに気付くことなく、口にしたポッキーをすべて食べきってしまった。椎葉さんが何か言おうとしたのを無視して、そのまま押し当てられる唇が、彼女の言葉を封じてしまう。まだこの様子を見ていたい、なんて思ったその瞬間、視界が黒に覆われていった。
ハッ、と目を覚ますと夕日が差し込む部室の中。机の上に山積みにされてあったはずのポッキーは大きく数を減らしていた。外から聞こえる運動部の声は明らかに声量を減らし、そろそろ部活の終了時刻に近づいていることを示していた。
「保科くん、大丈夫ですか? ずいぶん深く眠っていたみたいでしたので」
「えっと、今は?」
「もう部活は終わりですよ、鍵、もらってきますね」
そう言って綾地さんが席を立ち上がる。まだボーッとしたままの頭を揺さぶりつつ、必死で何が起きたかを思い出そうとするも、今日一日の記憶がまるまる抜け落ちている。それにあの綾地さんの目、明らかに心配とは別の何かが含まれている。ともかく今日は早いところ帰ろう。
それから数日の間、ポッキーというワードがどういうわけか皆の間で封じられたのだが、その理由は誰も教えてくれなかった。