最初はきちんとR-18させるつもりがどう考えてもえっちできなさそうだったので、結局こういうオチに落ち着けることに。
ある意味没原稿みたいな感じだけど公開しないのも何なので、こちらに。
「在原くん、今日ちょっと良いか?この間話してた、リマスター版のブルーレイが届いたんだ。よかったら一緒に見ないか」
「うん、今日は空いてるから大丈夫。晩御飯の後でいい?」
「あぁ、もちろんだ。それではまた後でな」
以前から話には聞いていた、時代劇のブルーレイが届いたらしい。前々から見せたがっていたようだったから、今晩は早速の上映会だ。朝のランニングで誘われ二つ返事で返す。その楽しそうな足取りを見るに、やっぱり相当楽しみにしていたらしい。もともと、時代劇はあまり興味がなかったけれども、これだけ楽しそうにしているなら付き合わないわけには行かないだろう。
そうこうしているうちに時間は経ち、いつの間にか学校は終わり寮へと戻る時間に。特にすることもないからと部屋でくつろいでいたら、机の上に見覚えのない本が置いてある。
「あれ、こんな本買ったっけな……」
中身を見ると、よくあるオカルト系の本のようだ。ただ、不思議なのはその本の「催眠術について」という項目にのみ付箋が貼ってあることなのだが。誰かからのトラップを疑い、不審に思いながら本全体を読んでみるが、これといって怪しいものはない。大方のところ、七海が部屋に来たときに置き忘れていったかなにかだろう。こんなものを買ってるという事実については、気にしないでおこう。
「催眠術……ちょっと面白そうだな」
気づけば晩飯の時間まで読みふけってしまった。今までちょっとした好奇心で催眠術やその手のマインドコントロール術は調べてみたことがあったが、特班の研修で受けたような軽い尋問術のほうが実用性もありそうだ。ただ、こういうたぐいのものはジョークでもできるとウケる気はする。今晩、そういうのを試せそうな相手は……。
心の中で少し謝りつつ、ちょっと興味本位で試してみることにした。
「よく来てくれた、これが例の物だ」
「いきなり麻薬か何かみたいな言い方をするなよ、二条院さんはもう見たの?」
「リマスター前のは一度だけ。ただ、こっちを見るのは初めてだぞ」
「そうか、早く始めないと消灯に間に合わないから始めよう」
「そうだな、ちょっと待っててくれ。すぐに飲み物ぐらいは用意する」
少し待って部屋に入る。そして、デッキにディスクがセットされ、本編が始まった。それからの2時間はあっという間で、いつの間にかエンドロールまで行ってしまったように感じるほど、楽しかった。
「うむ……改めて見るが画質がよくなったことでより楽しめた。在原くんはどうだったか?」
「俺も楽しかったよ、また機会があったらぜひ呼んでくれ。ところで、まだ消灯まで時間があるから、ちょっとしたことに付き合ってもらっていいか?」
「ん、ワタシにできることならなんでも。こちらも自分の好きなものを見てもらったんだ、気にすることはない」
持ってきた本を取り出し、軽く見せる。そして、催眠術のページを開いてこれが試してみたいと話す。一瞬困惑の表情が浮かぶも、すぐに快諾してくれた。
「催眠術か……信じがたいが、まぁ試してみたいと言うなら良いだろう」
手順はいたって簡単。本の付録についていた、紐つきのコインを横に振りつつ、相手の手を握って念じる。特殊なコインと術者の間に共感反応が起きて云々、と書いてある点についてだけは妙な疑似科学臭を感じたが、一応言われるがままにやってみるほかない。
「催眠術のためとはいえ、手を握られるのはちょっと緊張するな」
「ごめん、それじゃやってみるよ」
本に書いてあるとおりのテンポでゆっくりとコインを動かす。同時に、かけたい催眠の内容を考えつつ念じる。やっぱりここは定番の動物になるやつ、にでもしておこうか。
突如、大きな鐘を叩いたかのような音が鳴り響く。驚いて周囲を見回すも、目の前の二条院さんには聞こえてないのか、全く反応する気配もない。これだけ大きな音なら廊下の方からも誰かが反応しそうなものだが、それもなさそうだ。この音はどうやら俺にだけ聞こえたらしい。そして目の前の二条院さんはすでに目を閉じ、こちらの催眠を受け入れたかのような様子だ。わざとかかったふりをしてくれているのだろうか。試しになにか言ってみよう。
「……お手」
「ワンッ!」
それはあまりに突然だった。あの二条院さんが、はっきりとした声で犬の鳴き真似をして、更に四つん這いから俺の右手へと手を差し出してきた。おかしい、俺が何を念じたかなんて言ってないはずなのに。それに、仮に付き合ってくれているとしたらあまりに元気が良すぎる。
「二条院さん……?」
「くぅ~ん?」
「二条院さん!?」
あの二条院さんが、こんなことに。完全に犬だ。まさか、こんな簡単に催眠術にかかるだなんて、いやそもそもあの催眠術自体が嘘だと疑ってたはずなのに、こんな結果になるとは。
「ええと、ええと、これで解けばもとに戻るはず……っと」
「……はっ、いまワタシは何を」
「催眠術にかかって、完全に犬の真似をしていたよ」
「犬だって!?なんで、そんなワタシが……」
相当驚いている様子だ。俺もまだ驚きを隠しきれていないが、当事者の二条院さんが一番驚くのも当然か。とりあえず、この後どうするか思案していると、目の前の二条院さんの様子がおかしい。
「な、なぁ在原くん、この部屋少し暑くないか?ちょっと失礼するぞ」
「いや俺は別に……って、ちょっと待ったまった!」
「いきなり大声を出してどうした、ただシャツを脱いだだけだぞ」
前触れなく服を脱ぎ始めた二条院さんを前に、俺は硬直した。もともとお互い室内着で、重ね着なんてしてないのにその二条院さんが脱ぐ。つまりは下着姿。眼の前で服を脱ぎ、顕になる双丘を前に息を呑む。普段から思ってはいたが、やはり大きい。しかし、今はそれどころではない。
「ちょっと待て、脱いだだけって、今その格好」
「別に問題はなかろう?あぁこっちも脱ぐか」
そしていつの間にか、今度は下着まで脱ぎ捨てている。眼の前で少女が服を脱いでいく様子を見せられて、俺も正気でいられるはずがない。いや止めなきゃいけないのは分かっているのだが、さっき解除したはずなのにまだ催眠の効果が効いているなんて思いもしなかった。さて、どうしたものか……。
「何を恥ずかしがっているんだ?別に部屋だし問題なかろう」
「いや俺がいるのにそれは」
「それなら君も脱げばいい」
「はい?」
上半身裸の二条院さんが服を脱がそうと迫ってくる。2つの大きな果実を押し付けられながら、なんとか逃れようとするが、無理に押しのけるわけにも行かない。完全に押し倒される形になり、脱がされる。
流石にまずい。この局面を打破するために、少々荒業に出ることを決意した。完全に不意をついた一撃。俺の上に崩れ落ちた二条院さんを担ぎ、そこのベッドに寝かせ、布団をかける。服を着せるのは困難だから、とりあえずこれだけしておけば大丈夫だろう。そして部屋から立ち去った。
目を覚ますと、布団に寝ていた。ただ少し肌寒い。どうも上半身に何も衣服を身に着けていない。あれ、今日は在原くんを部屋に呼んでリマスター版のを見て……。そこから先の記憶がない。
「在原くんはもういない、時間は消灯間近。一体何があったのか……寒いな、早く服を着なければ」
男を部屋に入れたあと、服を着ていないとなればそういう乱暴をされたと思うしかないのだが、まさか在原くんに限ってそんなことはないだろう。明日、一応何か事情は知っていないか確認することにしよう。
部屋に戻った俺は、まずこの本の処理に困った。そもそも俺のですらない以上、これをどうするべきか、まずはそこからだ。おそらく七海が……。いや、あんな危ないものを七海に渡すわけにも行かない。ふいに電話がなる。これは、親父からか。
「暁、明日の昼、いつものコンビニにウチのスタッフを向かわせる。今持ってるその本の付録ごと全て、痕跡を残すこと無く引き渡せ」
「えっと、この催眠術の」
「そうだ、特定のアストラル能力者が使うと重大な事故が起きかねないって報告があってな。まさかお前も試してみたとか言うんじゃないよな?」
「……まさか」
「勝手に通販の履歴を見たのは謝る。ともかく、それはこっちで回収すべきモノだ」
「まぁ、見られちゃまずいものは買ってないから問題はないが……」
「良かった、とりあえず明日はよろしく頼む。以上だ、おやすみ」
電話が切られる。流石に親父にあの話はできるわけがない。とりあえず今日のことは忘れよう。それにしても、俺がこんなものを頼んだのだろうか……
今年最後の投稿はおそらくこれになりますね......また来年もどうかよろしくお願いします。それではまた