和奏ちゃんで書くのはもう少し待ってください......夏コミの方でありったけの愛をぶつけたものを書きますので.......
エロシーンはきっとそのうち。
「だから、ハルが気付かないなんて本当に……ううっ」
「その時はごめんって、天罰の影響もあったのはあるけど」
「天罰が何よ! あたしがあんだけ、ハルのこと心配してたのにぃ……」
完全にできあがった葵を前に、途方に暮れるしかなかった。喫茶店の閉店後、カウンターの向かいには祖父さんがいて、そしてこちら側には俺と葵。渉さんは先に帰ったらしいが、おそらくはこの事態を想定してのことだろう。
発端は、祖父さんが出したある飲み物だ。そう言えばロビンって純喫茶だっけ、そもそもこのご時世に純喫茶という言葉が死語だとか、そんなことは言ってはならない。
「若きことは良きことかな……ほれ、これはワシの奢りじゃ」
「祖父さんにしては気前が良いな」
「何を言っておる春樹。お前の彼女ということは、いわばワシの孫じゃろ。身内に優しくするのは当然のことじゃ」
「ちょっと前に俺からコーヒー代を取ろうとした祖父さんのセリフとは思えないな」
「そうか、これまでのカップ撃墜数とその内訳をそろそろ伝えるべき頃じゃったか」
「わーっ、それはいいから!」
思い返せば、確かに複数回カップを無駄にしてしまっている。確か、一個あたり5000円は下らない、なんて話を前に聞いた記憶があるけれど。実際どのぐらいこの店の収支に負担をかけているのか。
「そんなことはまぁ問題ではないが……して、春樹。いつひ孫の顔は見れそうかの」
「そ、そんな……まずは学校を卒業してからじゃないと」
「祖父さんの言葉を真面目に受け取る人間は初めて見たぞ」
祖父さんも祖父さんだが、それを真面目に受け取る葵も流石に困る。まぁ、もうすぐ高校も卒業だし、これからも葵と一緒に過ごしたいならどうするか考えなければならないところだが。
「ところで、その飲み物は? ウインナーコーヒーとはまた違うみたいだけど」
「ほう、ウインナーコーヒーを知っておったか」
「そりゃ、俺もこっちに顔だしてたし」
葵に出されたその飲み物は、ワイングラスのような容器に入ったコーヒーだった。上にホイップが乗っていることもあって、見た目はウインナーコーヒーを想起させるがこのカップで提供していただろうか。
「ありがとうございます、ウインナーコーヒー、ではないんですか」
「そうじゃな、君たちみたいな若い二人にはピッタリの飲み物じゃ」
「……その言い方、明らかに悪意がある気がするんだが」
「バカモン、ワシの好意をそうやって疑ってかかるでない。いくら3丁目のプレイボーイとして名を馳せたワシでも、孫の彼女を奪おうなど考えるわけもないわ」
「はいはい……」
「これ、不思議な味がして、それでも美味しいですね」
「ちょっと砂糖を多めにしたが、しっかり溶け切ったようじゃな。おっと、春樹の分ももう出来たぞ」
「ありがと、いただきます」
葵が祖父さんから出された飲み物を口にする。普段のコーヒーとは違うその味に、パッと顔が明るくなり、そして飲むたびに微笑みを絶やさない。幸せそうな彼女を見て、俺も嬉しくないわけがなかった。
「うん、いつもどおりの味で安心する」
「ワシもこの仕事を初めて長いからな。常に80点を出し続けることについては自信があるぞ」
「むしろこれで80点なんだな」
「あの、眞一郎さん。もう一杯もらえますか」
「あぁ、葵くんの要望とあれば’もう一杯ぐらいすぐに用意するぞい」
横の葵は渡された飲み物をすぐに飲み干してしまった。普段は一杯で満足するはずが、今日は珍しくおかわりを頼んでいる。そんなにさっきのが気に入ったのだろうか。
「さて、春樹よ」
「ん、何?」
「ワシは見ていて思ったのじゃ。お主らにはときめきが足りないのじゃないかと。いつしか隣にいることが当然の間柄、仕方あるまい。じゃが、恋愛とは緊張が大事じゃないのかと」
「……祖父さん?」
「まっ、答え合わせは後でするが良い。さて、葵くん。おかわりの用意が出来たぞ」
「ありがとうございます。これ、今まで飲んだコーヒーで一番美味しいかも……」
結果的に、これが混乱の幕開けだと誰も思わなかったわけだが。この時点では、俺も幸せそうに飲み物をすする葵を見つめていただけだったわけで。
隣の葵はすでに2杯めを飲み干し、そして祖父さんに3杯目を要求している状況だ。祖父さんが提供したドリンクはアイリッシュコーヒー、つまりアルコール入りのカクテルだ。今まで飲酒なんてしたことない葵は、当然ながらはじめての酩酊感に身を任せてしまってさっきからこの調子で。祖父さんの思う壺になってしまうが、こんな葵を見られるのはちょっとだけ嬉しい。だまし討ちみたいな形で酒を飲ませたことについては、後でしっかりと言っておかないとならないが。
「もう……ハルったら鈍感すぎて困っちゃうんだから」
「そ、それはお互い様だろ」
「だってぇ……ううっ、ハル、ハルぅ……」
葵ってこんなに泣き上戸だったっけ。長い付き合いだったのに、こんな感情を露わにしている葵を見るのは初めてで、少しドキドキしてしまう。それに、こんな可愛い少女を泣かせてしまった今、祖父さんからの目が痛い。すでにこっちにもたれかかり、涙目で抱きついてくる葵を直視することも出来ない上に、正面の祖父さんは呆れ顔、もはや逃げ場はない。
「出来心で出してしまったが、まさかここまで効果てきめんとはな」
「出来心で人の彼女に飲酒させるなよ。ほら、ごめんって」
泣きつく葵を抱きしめ、背中を撫でる。後ろで束ねたその長髪は背中にかかり、撫でようとするとどうしても手にかかってしまう。しかし、絡むことなくスルスルと抜けていくほどになめらかで、むしろもっと触れていたくなるぐらいだ。これだけ長くなると手入れも大変だろうに。
「ねぇ、ハルはあたしのどこが好きなの」
「ど、どこって言われても……」
泣き止んだかと思ったら答えに窮する質問を投げかけられる。きっとここでの模範解答は、全部と答える事だったのだろうか。ただ、そんな出来合いの答えじゃ葵に伝わらないような気がして答えることはできなかった。幼馴染として長い間付き合いがあるおかげで、むしろ改めてどこが好きなのか考えてみるとよくわからなくなりそうだ。
「……春樹、店を閉めるから葵君をつれて部屋に上がっておきなさい。渉君にはワシから連絡しておく」
「わかった、ほら、行くよ」
「あっ、答えごまかしたね!」
答えに困ってとりあえず背中をなでていたら、祖父さんに店から出るよう言われた。確かに時間もそんな頃だし、だからといってこの葵を外に出して良いわけがない。そういう意味で一旦俺の部屋で休ませるのが最適解だ。……祖父さんが別の意図を持っている可能性についてはほんの少し疑いをはさみたくなるが。
「それで、まだあたしはハルから答えを聞けてないんだけど」
「そんな目も顔も赤くして言われても……幼馴染だった時間が長いから、具体的に何が好きって言われると」
「あたしはハルの好きなところ、なんでも言えちゃうよ。寝顔が可愛いことや、不幸なことに遭ってもいつでも気丈に振る舞えるところとか」
「お前、今どんだけ恥ずかしいこと言ってるか自覚あるか?」
酔っ払ってリミッターが外れてしまった彼女の言葉は一つ一つが破壊力をもっている。俺の制止に対してきょとんとした様子の葵は可愛くて、見惚れてしまいそうだ。ただ、俺はこの可愛らしさを具体的に表現する言葉がなくて困っている。
「だって、ハルが大好きなのは本当だもの。それで、あたしの何が好きなの」
「それは……こんなところかな」
言葉に窮した俺は結局、葵を抱きしめることでしか愛情を表現できなかった。いきなりの抱擁に少しびっくりした様子だったが、それでもすぐに抱きしめ返してくれた。思えば、俺に何度もお守りをくれたり、事あるごとに心配してくれたりと、思い出すたびに葵に大事にされてきたことが想像できる。今までは幼馴染だから、って納得しようとしていたけど、本当はやっぱり、こういうことだったんだと改めて思う。
「ずるいよ……ハル。こうやって答えを誤魔化すんだから」
「俺が、葵のことが大好きなのを伝えるのに、これしか思いつかなかったから」
「またそんなことを言って……でも、ハルだから仕方ないよね」
抱きしめる体の温度は熱く、少し汗もかいているからか、いつも以上に女の子の甘い匂いがふわっと香る。お互い地べたに座っている状態で抱き合っているものだから、少し動くと簡単に姿勢が崩れてしまう。ふと思った瞬間、葵に強く抱きしめられ、そのまま押し倒す形で倒れてしまう。
「あっ……」
「ごめん、こんなつもりじゃ」
「良いよ、あたしはもっとハルを感じたいから」
眼の前の愛しい人に誘われ、我慢できるわけがない。床に寝そべる葵をお姫様抱っこして、ベッドの上に寝かせた。
幼馴染というもの、リアルだと小→中のときに結構遠いところに行ってしまった関係で、存在しないもの。
だからなのか、私は幼馴染ヒロインがめちゃくちゃ好きです。