天神乱漫10周年にして初めてプレーしたわけですが、いい作品でした。
俺の卒業と同時に、祖父さんに俺たちのことを話すことにした。すでに家の様子から察しているというのは間違いないが、これはあくまで俺たちが決めた一つのケジメだ。卯ノ花たちが帰って、少しだけ静かになった夜の食卓で、この話を切り出すことにした。
「ふむ……して、春樹よ。ワシがそのようなことに気付かぬほど老いているとでおも思っておったか」
「いや全く。俺はともかく、佐奈はもとからこんな調子だったし」
「えっ、ええええええ! やっぱり、私隠しきれてなかったんですか」
「あのだな佐奈くん。君の態度を見ていればそのぐらいワシでなくてもわかるぞ」
少し呆れた口調の祖父さんも無理はない。あれで大真面に隠しきれていると思った佐奈も佐奈だが、気付かないふりをし続けていた俺への呆れも多分に含まれているようだ。ともかく、気を取り直して本題へと入る。
「それで、ワシに何の用じゃ」
「改めて、俺たちが家族としてじゃなくて、恋人として付き合っていることの報告とこれからについて話したかった」
「そうか……そうじゃったな。確かにワシは、春樹から直接は聞かされておらんかったな。ところでどこまでやったんじゃ?」
頭を抱える。相変わらずこういう神妙な空気で平然と言ってのけるその様子にツッコミの1つや2つはさみたくなる。しかし、祖父さんも改めてそのことを聞かされ、少し動揺があるらしく、こっちに目を合わせようとしない。
「どこまでって……そりゃ」
「に、に、兄さん! ちょっとストップ、ストップです! これ以上はいくら家族でもダメですよ!」
「まぁ、ワシもそこまでは聞くまい。それで、これからとは何をするつもりなのかな」
本気で話すつもりはなかったが、一瞬話そうとした俺の様子を見て先に取り下げてきた。とはいえ、これでいよいよ俺も逃げ道がなくなった。元はといえばこのことを話すために祖父さんを呼んだんだ。口の中が乾いて仕方ないが、食事中に飲んでいた麦茶はすでにコップに残ってない。少し諦めの気持ちで、椅子に座り直しまっすぐ見つめる。
「俺たち、2人とも学校を卒業したら結婚します」
「……それは、親には話したのか?」
「いや、まだだけどもまずは祖父さんに言わなきゃと思って」
「そうか、そうだな。まぁ、ワシが今更止めたところでその意志に変わりはないのじゃろ。それで、佐奈くんはどう思ってるのかね」
「私は、私は兄さんと結婚したいです。むしろ、兄さんとじゃなきゃ嫌です」
横に座る佐奈も、祖父さんをまっすぐ見据えて答える。今までにないほどに強く、そして真面目なその眼差しを見て俺も応えなければと改めて強く決意した。しばらく目を閉じ、上を向いて唸る祖父さんを眺めている。少なくとも俺たちがそういう関係になっていたことは知っていたわけだが、結婚といった更に先のビジョンを示されては改めて考えることもあるのだろうか。無理はない。
「若きことは、本当に強いことだな……わかった。両親の説得はワシにまかせておれ」
「えっ、そこまで言っては」
「安心せい、ワシとて君たちを心の底から応援しておったのじゃぞ。だから、これはワシからできるプレゼントじゃ」
隣に座る佐奈と顔を見合わせる。当初はもう少し反発や、あるいは消極的な態度を示されるかもしれないと思っていたが、そんな心配は無用だったらしい。満面の笑みで今にも飛びつきそうな佐奈を目でたしなめつつ、2人で揃って祖父さんへの礼を言う。
「ありがとう、祖父さん」
「ありがとうございます」
「うむ、それでよい……ところで、つかぬ事をお聞きするが、ひ孫はいつ頃見れそうかな。ワシの目がしっかり開いているうちだと助かるのじゃが」
少しでも尊敬の念を抱いた俺が間違っていたのかもしれない。しかし、いまさら突っ込む気にもなれず、乾いた笑いでごまかそうとしたら佐奈に案の定、軽く小突かれる。
「も、もう! 兄さんはなんで言わないんですか、2年後の今頃って」
「ちょっと待て、それは本当か佐奈くん」
真面目も大真面目、付き合う前といえばやや罵倒混じりのツッコミを佐奈からは受けていたものの、今回のツッコミは想定外すぎて、頭がフリーズしてしまった。しかも、この様子だとさっきの発言は本気にも見える。
「ちょっと待て、それだとお前卒業する前に」
「兄さんのためなら学校に妊婦姿で通うなんて造作もないことですから、そんなことよりも早く兄さんとの子供が……待ちきれないです」
「卒業じゃなくて退学の危機だからやめろ! あと祖父さんもこれは止めろ」
「そうかそうか……。ワシは先にゴシップ対策をしたほうが良さそうじゃな」
「ああもう! なんなんだこの家族は」
それから数日、場所を変えて今日はロビンの店内。いつもの皆が卒業するということで、ちょっとしたパーティをすることになった。庵や虎太郎、あとは葵と木賊も来て、いつもの面々といった様子だ。あの2人が居ないことだけが心残りではあったが、とかく神の世界にも面倒があるらしく、試験が終わってから滞在を引き伸ばすにも2年を終えるまでが限界だったらしい。
「それじゃ、皆の門出を祝して、乾杯」
「乾杯!」
乾杯の音頭は俺がとった。乗り気ではなかったが、皆からあれだけ推されては断るほうが難しかった。
「もうあたしたちも卒業なんだね。早かったなぁ、高校生活」
「学園祭に色んなイベント、ボクは部活動に精一杯だったけど、本当に毎日楽しかったね」
「そういえば、庵がこの時期に旅行してないのは珍しいじゃん」
「ん、俺か? そうだな……実は明後日から世界一周に挑むつもりでな。一応大学に行くつもりではあるけど、先に世界を見てくるのも悪くないなって」
相変わらずスケールのでかい男だ。流石に庵ほどのインパクトがある進路の人間は少ないにせよ、ここの皆はそれぞれの進みたい道を目指して大学だったり、専門学校だったりとなにかに挑戦するようだ。改めて、俺も負けてられないな。
「皆さん、頑張ってくださいね」
「あぁ、そういえば佐奈ちゃんはあともう一年だもんね。ハル、佐奈ちゃんがいないからって浮気とかしちゃダメだよ?」
「大丈夫です、兄さんが浮気をしたら皆さんに色々お願いしますから」
「ええと、とりあえずハルにひときわ強い呪印でも刻んでおけば良いのかな」
「なにかと物騒だな! 大丈夫だよ俺は浮気なんかしないから」
「冗談です♪兄さんがそんなことをする人じゃないって、私知ってますから」
「……なんか、本当に佐奈ちゃんって千歳くんを信用しきっているよね」
改めて神に誓う、必要もないか。すでに俺と佐奈の関係は神に誓ったようなものだ。あの、俺からファーストキスを奪った神とその遣い……今頃どうしているんだろうな。
「兄さん? なにか良からぬ事を考えてましたよね。スピリタスで消毒しますか?」
「その必要はないけど、ここって純喫茶じゃなかったの?」
「春樹よ、ワシにも裏の顔というのはあるのでな」
知りたくもない事実を知らされてしまったような気がするが、知らなかったふりをしておこう。しかし、後一年か。今までずっと一緒だったからその1年が限りなく遠く感じる。それでも、俺と佐奈ならなんとかやっていける、そんな気がした。
時期的にはエンディングからその後の間に挟まる感じのエピソードをイメージしてます。
ゆずソフト最強の妹こと佐奈はいいぞ。