いや、これは書かなきゃならないとプレイしてて強く思ったので、ぜひとも書きたかったんですよね
もうちょっと気力があったら、R-18シーンだって入ったかもしれないけど、それはまた今度のお話で
★結婚式(真咲)
彼女が学院を卒業して少しした頃、ようやくオーウェンさんと咲良さんの結婚式の予定がたった。婚約自体は既に済ませていたというのに、この時期まで式が遅くなってしまったのには深い事情がある。
「だからよ、オレっちの式なんて見ても楽しくないだろ」
「親父殿がワタシより先に結婚式しないと、拗ねちゃうでしょ」
彼女が卒業したことで、ボクたちもようやく大手を振って付き合えるようになった頃。真咲は卒業後、予定通りといえば予定通り牙と爪の獣亭で働くようになった。一度はオレっちの店だと言って聞かなかったオーウェンさんも、彼女の母親の説得があってからは意外とアッサリ認めてくれるようになった。
そんな日常にもちょっと馴染んできた今日このごろ、母親が研究で一旦日本に帰ったときに真咲からこのことを切り出した。確かに娘としては親の結婚式を見てからじゃないと自分たちの結婚は考えられない、というのは納得いく理由だが、かくいうオーウェンさんはそんな真咲の考えに同意できずにいた。
「ボクからもお願いします」
「いや、いくら先生に頼まれても、限度ってものがな……」
「この前咲良さんもやりたい、って言ってましたよ」
「そうだよ、親父殿だけだよ。結婚式したくないって言い張ってるのは」
「全く……言うようになったなぁ」
そういうオーウェンさんは気まずそうに目をそむけて、ボク達がいる部屋から出ていこうとする。無理に追いかけても今日明日で説得できるわけがなさそうだから、ここはひとまず見送るしかなかった。
「センセ、親父殿の説得、ありがとね」
「ボクはボクの思ったことをしただけだよ」
「わふ、そうなの?」
「もちろん、ボクだってオーウェンさんたちがちゃんと幸せになってほしいから」
「そっか、センセは優しいもんね」
そう言うなり、体をボクに預けてくる真咲。抱きしめて、その紅いくせっ毛をゆっくりと撫でてみる。外でもようやく二人でイチャイチャできるようになったから、家ではそういう姿もなりを潜めるかと思っていたが、むしろそれは逆だった。前以上にこうやって甘えてきてくれるようになってしまったけれども、それはボクにとっては嬉しい誤算だった。
そんなこんなで、そろそろボクたちもこれからを考えないと、と思っていた頃にこの話題が急に立ち上がった。もともと言い出したのは真咲だったが、咲良さんのほうはあっさりと、いやむしろ乗り気な様子で彼女の提案に乗ってくれた。これまで真咲と離れ離れだったとうちょっとした負い目とか、そういうものもあったのかもしれないが、それでも喜ばしいことに違いなかった。
「センセ、親父殿と母上の結婚式が終わったら今度はワタシたちだね」
「ちょっと気が早くないかな?」
「そんなこと言って、センセがこの前お店のドレスにニヤニヤしてたの、ワタシは見逃して無いよ」
いつもどおりのいたずらっぽい笑みを浮かべた彼女に、やはり敵わないなと自然と笑みが浮かんでしまう。それにしても、ここのところ真咲にいろいろ助けられているなと、改めて感じるようになった。セリアンスロープ特有の感覚の鋭さに加えて、彼女が持ち合わせている繊細な気遣いや心配りが、ボクの日常をこれほどまでに素晴らしいものにしてくれるなんて。
あれだけ朝が苦手だった彼女が、毎朝のようにボクのために弁当を作ってくれて、そして学校が終わる時間には迎えに来てくれる。お店は中休みの時間だからと言って来てくれているが、ランチ営業が終わってからかなり急ぎで支度して来ないと間に合わないだろう。それでも、そんな彼女の優しさに頼りたくなってしまうぐらいに、ボクは彼女のことが大好きだ。
「……突然ニヤニヤして、どうしたの」
「いや、真咲に助けられてるなって思っただけだよ」
「ワタシは理想の奥さんになるからね、センセの身の回りの世話はバッチリだよ」
「そっか、もう忠犬なんて言わないね」
「うー……それはナシって」
彼女がボクと付き合う上で使っていた方便だった、ボクのペットという口実はもう過去のものになったが、やはりたまには話題に上がる。中々衝撃的な事件だった……かくいうボクだってその衝撃から脱しきれていないと未だに思うけれども。ともかくこの話を咲良さんにしたらひどく目を丸くされてしまったのは、本当に申し訳なかった。
「それに、最近は弁当もボクのことを考えて作ってくれているのが伝わって、嬉しいよ」
「センセの健康が第一だから、ワタシも酒場の娘ってだけじゃなくてちゃんと奥さんしなきゃね」
「はは、本当にボクの奥さんみたいだ」
「みたい、じゃなくてセンセの奥さんだよ」
まだ籍こそ入れていないが、同じ屋根の下こうやって暮らしている今はもう婚約したのと同様な状態になっている。どこかで決断をしなければならない日、つまり真咲と正式に婚姻を結ぶ日は近いうちに来るのだろうが、それでも心のつながりはもう強固なものになっている。あとはもうちょっと彼女が学院から卒業して時間が経てば……
「あっ、メールだ」
「こんな時間にメールなんて珍しいね」
「ええと……あれ、シャーリィだ」
メールの本文は友達同士のそれ、というよりはきわめて事務的な連絡といった様子だった。ずらりと並んだ店名とその横の数字からして、すでに彼女が式場の手配を進めていたのだろうか。確かにこういう式を挙げる場所なら、ウォリックさん経由でレナードさんに取り次いでもらうのが一番確実だろう。金の勘定についても、真咲なら問題ないしボクが口出しする必要もなさそうだ。
まぁ、最後の一文が明らかに真咲に向けた、ボクたちの式の催促だったことは見なかったことにしておこう。いつか、近い未来なのは確実でも今は真咲の両親が先だ。
「せっかくだし、センセの両親も呼んでみよっかなって思ってるんだけど」
「……うん、良いと思うよ。折角だからボクも両親に真咲を紹介したいし」
「えっ、センセってまだ秘密にしてたの?」
「いや、メールとか電話では話したけど、考えたら写真も送ってないって思い出して」
「ワタシ、もしかしてセンセの親に『息子さんをワタシにください』ってしなきゃいけないの?」
「普通立場が逆でしょ、それにボクの親はもう了承済だよ。もちろんライゼルグに帰化することも」
真咲と結婚するということはつまり、ボクもライゼルグの住民としてこれから暮らしていくことを意味する。結局、教師として実績を積み重ねるよりも早く彼女と結婚する方法をとることになってしまったわけだけれども、学校での勤務はこれからも続くからあまり大差はない。
「そっか、ならワタシもちゃんと挨拶しなきゃね」
「ボクも、こんな可愛い奥さんができたって自慢しないと」
「センセ……! そんな言い方は恥ずかしいって……」
ちょっと強気に出てみたら彼女が恥ずかしがってみせてくれた。その表情がまた楽しくて、ついついいじりたくなってしまうなんて言ったら、彼女はきっと怒るだろうか。そんなこんなで、彼女との甘い恋人生活は穏やかに過ぎていく。