月日、なんて言葉は使っていいのかも分からないけど、わたしと竜の生活のようななにかは続いていた。
何がしたいのかは、分からない。
竜は生肉を持ってきて、わたしはそれを食べる。そして、たまに遊ばれる。それだけが繰り返される。
何も生み出されることのない、わたしを生かすという行為。
ただ、肉なんてめったに食べたことなくて、やせ細っていたわたしが、自分の力で歩けるくらいまでになったのは、すこし可笑しかった。
そうやって、ゆるやかに終わりに向かうはずの日々は──。
それは、突然のことだった。
「…………?」
竜の頭で小突かれて、押し倒されるのまではいつものこと。
そこからじゃれつくように顔をうずめられたり、大きな腕で押しつぶされたりして、牙や爪で肌を切って血を出るまでが、決まりごとのようだったのに……
「どう、したの?」
わたしは竜の翼で両手を塞がれたまま、動けない。
いつもなら冷たいはずの竜の吐息が、熱い。
それは、なんというか、なんとなく覚えのある感覚。色褪せても、刻み込まれている記憶。
わたしは。
わたしは、こうやって向けられている感情を、知ってる。
「はつ……じょうき?」
わたしは小さく呟いた。
竜が私の腕から翼をどける。わたしが痛がっていると、勘違いしたのかもしれない。
わたしは少し体を起こして、闇の中に紛れた、その竜の下半身を見た。
それは、いままでに見たことのないくらい大きくて。
でも、まだ半勃ちなのかな。と思ってしまうわたしが、なんだか可笑しくて。
「……ふ、ふふっ」
わたしは、笑ってしまった。
それは、生まれて初めてなんじゃないかって思うくらいの、壊れていない笑顔。
わたし、こんなふうに笑えるんだ。
竜は自分の欲望と、わたしの弱さの間で板挟みになったいるみたいで、どうすればいいか分からないと言った感じで。
わたしは仰向けになったまま、その竜の顔にそっと触れた。
「いいよ……わたしに、任せて」
ああ──まさか、こんな日が来るなんて。思いも、しなかった。
わたしは、その日、初めて。
私がここに来る前にされていたたくさんのことに、少しだけ感謝した。
竜の下腹部まで這い寄って、その一物──性器にそっと触れる。
わたしの手のひらくらいでは、まったく包み込めないくらいに大きくて。そして少し、濡れている。
「あつい……」
吐息と共にそう呟くと、びくりと竜が体を震わせた。その性器が呼応するようにむくりと大きくなる。
その先の割れ目から、雫のように液体が染み出してきて、わたしはそれを、手に取った。
とろりと、糸を引いて私の手を濡らすそれ。すごい量だ。
私はそれを、まずはその性器の先、亀頭と呼ばれる部分に塗っていく。
竜はくぐもった唸り声をあげて、腰を少し引いた。手を引いて、わたしは竜が落ち着くのを待つ。
「変な感覚だと思うけど、我慢してね」
曖昧だけど、記憶によれば、それは嫌な感覚ではないはずだから。
そしてまた、わたしは亀頭に手を当てて、その液体を塗りつけていく。
先走り液と言うのだろうそれは、割れ目から次から次へと漏れ出てくる。そして、その性器は、どんどん大きくなっていく。
「ほんとうに、大きいね……」
亀頭の全体に塗り切ったころには、それは私の顔くらいに太く、腕よりも長くなっていた。
これが、竜の生殖器。わたしで、満足させられるだろうか。
「ちょっと借りるね」
まだ溢れ出てくる先走り液は、地面に滴りはじめていた。
それを掬い取った私は、こんどは私の身体に、それを塗りつけていく。
「あっ……はぁっ……んぅ……」
透明で、暖かなその液体は、まるであの竜の唾液のよう。
胸に塗りたくって、お腹を伝う。熱に浮かされるように、もう溢れていたわたしの愛液と、その液体が混じり合う。
乳首はぴんと勃って、触れる度に痺れる。はぁぁ、と吐く息が濡れる。
竜は、その姿をじっと見ていた。ときどきびくりと性器がはねる。
「もう、ちょっと……まって……あっん、あぁ……!」
その大きな一物を見ているだけで、身体が熱くなっていく。
その液体で塗られた部分全てが敏感になってしまったかのように、わたしは喘ぎながら腋やお尻にもそれを塗りたくっていく。
まるでそれは自慰のよう──わたしが出来上がる頃には、わたしと竜の間を熱っぽい淫らな雰囲気が包んでいた。
「待たせちゃって、ごめんね……はじめ、ようか」
わたしはそう呟いて、竜の方を見た。
そして振り返って、その性器の目の前で膝立ちになって──その先に、わたしの身体を押し当てる。
「んんぅ……!」
私の声と、竜の声が重なった。
また腰を引きそうになった竜は、でも今度はそれを抑えて、むしろ私にそれを押し当てる。
ぬるぬるとした亀頭が、わたしのお腹と胸の間を滑る。
「あつい……っ! あっあっ、ん、あんっ……ふぁ……!」
すごく、すごく熱い。そして大きく脈打っている。
先走り液はどんどん溢れ出て、つう、と膝立ちしたわたしのお腹から股下を伝っていく。
どうしてだろう、胸も股も弄られてないのに、体がどんどん熱くなっていく──
「はぅ、んぅ……あ、あ、あぁ……! はぁっ、はぁっ……!」
竜は夢中で私の身体に性器を押し当てている。わたしはそれで倒れないようにするので精一杯。
でも、心臓の鼓動はどんどん早くなっていって、身体の内側から気持ちよさが増していく。
「気持ちよさなんて、感じたの、いつぶりだろう……っ! っあぅ……!」
わたしが昔、人から犯されてたときには、鈍くなってしまっていた、快感。
それが、ちゃんと感じられるようになってる。
そうなってしまったら、わたしが長続きするはずもなかった。
性器と身体を押し付け合うやりとりがしばらく続いて、わたしと竜には早くも限界が訪れる。
竜の性器の根元についていた睾丸が膨れ上がって、性器がびくびくと震える。
言葉では伝わるはずもない、それでも口を開いた。
「でる、の……っ? んっあっ……うん、たくさん出して……! わたしに、かけて……!はぁっ……! わたしも、もうすぐ……あぁぁ……っ!」
最後、倒れてしまわないように。
わたしは火傷しそうなくらい熱くなったその性器にぎゅっと抱き着いて、胸元に亀頭を強く押し付けた。
それが合図になった。竜が震えるような唸り声をあげると共に、亀頭の先の割れ目から、弾き出るように白い液体が放たれる。
「んっ……あ、ああ……! ふぁああぁあぁーーっ!?」
胸元に熱が集中して、一瞬で零れ出す。それと同時に達したわたしは、なんとか性器にしがみつき続ける。
どくっどくっとまるで心臓を打つように。精液が放たれる度にわたしも身体を震わせる。
「あっ、あっ、まだ、出てる……」
胸元から溢れた精液はわたしの胸や肩、顔にもかかってきた。
下半身はもう水浴びのよう。閉じられた太腿と股の間に、精液が溜まってる。地面にもぼたぼたと落ちて、白い斑点を作っていく。
「はぁっ、はぁ、はぁ、はぁ……」
わたしと竜が落ち着く頃には、わたしは精液まみれになってしまっていた。背中にまで達した精液は、未だに熱を保っている。
わたしは、すっかり浮かされてしまって。
肩で息をしながら、とろんとした目で、わたしを精液まみれにしたそれを見た。
まだ、萎えていない。大きく反り勃ったまま、びくびくと脈打っている。
その亀頭の割れ目に、そっと口を付けた。
「んっ……じゅる……んく、んぅ…………」
人に犯されていたころは、無理やりやらされていたそれ。
割れ目の奥に残った精液を、水を飲むように吸い出していく。
精液を飲むことには、何の抵抗もなかった。慣れていたことだから。
その竜の精液は、人のより少しとろとろしていて、喉に絡まずにお腹へと流れ込んでいった。
「じゅる、じゅる……ん、んぅ……んっ」
竜の性器がひくひくと震える。鼻息は荒く、身体を少し屈めている。
たぶん気持ちいいんだと、思う。そうであってほしい。
わたしは、竜に精液という名の乳をもらっている。まるで赤ちゃんみたいだ。
そんなことを思いながら、私は自分の乳首を右手の指でやんわりと挟んだ。左手の指は愛液でぐしょぐしょになった自分の性器にあてがう。
「あっ……こほっ……ん……んく……あ、はぁぁ……」
くちゅくちゅと卑猥な音が混じる。竜の精液と混ざり合った愛液が、糸を引いて左手に絡みつく。
喘いでしまったせいで口から零れ出た精液が、口元から首、胸へと伝っていく。
まるで、溺れているみたい。でも、それでもいいような気がした。
自慰をしながらの竜の性器の掃除は、それからもう少しの間、続いた。
でも、それは終わりではなくて。口に注がれるのが、精液から先走り液に変わっただけだった。
竜の性器は、もしかしたらさっきよりも、太く、硬く、熱くなっていた。
辛抱たまらないと言った様子で、竜が私の身体に性器を押し当ててくる。
「あんっ……まだ、つづき、したい?」
そんな問いを投げかけて、答えを確かめないまま、わたしもそれに身体を絡ませる。
竜が続きを望んでいることはきっと確かで、また胸元にこすりつけてもいいし、手と口で射精までもっていってあげても、いいかもしれない。
でも──
「あなたも、雄だものね……本番みたいに、やってみよ、か」
性器から身体を離して、竜の顔に近づいて、そっと手で触れる。
琥珀色の牙にちょっと当たってしまって血が流れたけど、気にしない。
触れれば怪我をしてしまうような存在を、愛おしいと思う。
白い竜は、ぐる、と唸った。わかった、と言っているような気がした。
「うん、それじゃあ……」
わたしは、その場に手と膝をついて、四つん這いになる。さっきよりは、楽な姿勢だ。
自分のお尻を竜に向けるようにして、股を開いて、手招きをした。
「ここ。ここにあなたのそれを入れて」
指し示したのは、開いた股の下。
残念だけれど、わたしと竜では、性器の大きさが違い過ぎて、挿れることはできないから。
わたしの意志が伝わったのか、それは分からないけれど。歩み寄ってきた竜が、わたしに覆い被さる。
竜の肌の熱が、わたしの背中に伝わる。
そして、反り勃つ竜の性器が、わたしの股の下に潜り込んで、お腹の下の辺りにぴと、と当たる。
「んっ……」
わたしはその感触を確かめて──その性器を包み込むように。太腿でそれを挟んだ。
今度は胸元ではなく、股下で。竜の一物の熱が直にお腹に響く。
竜が、また小さく吼えた。そして、その本能に突き動かされるように、ずん、と一物を私の股に滑らせる。
「────あっ」
それは──とてつもない快感となって、わたしの身体を貫いた。
人に挿れられたときよりも、何倍も、何倍も──
「あっ、あぁぁんっ……!」
身体から力が抜けそうになって、ぐっとそれを堪える。
あるかも分からない脚の力を込めて、竜の性器を挟み込む。
竜はそんなわたしに構うことなく、さっきよりも激しく熱いソレを出し入れする。
止まらない先走り汁と愛液が、ずちゅ、ずちゅと音を立てて弾ける。
「あっあっ……こす、こしゅ、れてぇ……!」
呂律が回らない。性器が打ち付けられるたびに、痺れ蕩けるような感覚が突き抜けてくる。
先に果ててしまわないように。目を瞑って、手をぎゅっと握りしめた。
「あっ、はぅ、んっんぁ……っ……あっ、ああぁ……」
深く突かれる度に、亀頭がお臍のあたりを叩く。
大きく引かれる度に、わたしの股と竜の性器が擦れていく。
竜は、夢中になってくれている、と思う。そうだったらいいな、と熱に浮かされた頭で想う。
わたしが股にぎゅっと力を込めると、竜の性器はびくびくと震えて、どろっと先走り汁が零れ落ちていく。
それが愛おしくて。その愛おしさは全て、気持ちよさに変わる。
「あ、ああっ……わ、わたし……ん、ん……っ……おかしゅ、くな……はぁぁっ……!」
わたしがおかしいのは、いつものことだけど。それとは違う考えが浮かんでくる。
いままでなら、そんなこと考えるはずがない。
わたしのなかで、この竜の精子を受け止めたい。
わたしが今までさんざん使われてきたお腹の中を、あなたの精液で満たしてほしい。
そう考えるだけで、もう体中が蕩けてしまいそうで。ケダモノだ、なんて思って。
「あんっ、あんっ、はぁっ、ん……んぁ、あ、あぁぁっ……ん……っ、……っ! わ、わらし、あんっ、もうらめっ……いっちゃう、からぁ……!」
ばちゅっばちゅっとわたしの股に絶え間なくこすりつけられる竜の性器。
もうどれくらい時間が立ったかもわからない。でも、そんなやりとりも終わりが近づいてきている。
今度は目に見ることができないけど、ピストンが速くなって、竜が精液を吐き出すときが近づいていることを悟った。
わたしは快感と喘ぎ過ぎで呼吸すらもままならなくて、でも、残った力を振り絞る。
「あっ、あっ、いっひゃう? でひゃいそうっ? いい、よ、だしてっ! ……わらし、わたしもっいくから……! あんっ、はぁぁ……っ! さいごは、まかせて……っ」
そして、竜の性器がびくっと固まる。また、あの熱い精液が吐き出される。
そのときに、わたしはぎゅっと股を閉じて、竜の性器を絞り出すように。
そして、わたしの膣の中に、その先の部分だけを招き入れた。
「────ぁっ」
──びゅく、と。
お腹の中の、精液を受け入れる場所の奥の壁に、直接届く。
「あ、ふあ、あああぁぁぁぁっ……!!」
一瞬で、意識は溶けた。視界が真っ黒、いや、真っ白になるような。
腰が砕けて、それを竜の性器が支えていて。
それが刺激になったかのように、またびゅうっ、と精液が私のお腹の中に飛び込んでくる。
「あ、あー……あぁー……」
がくがくと身体が震える。とうとうやってくる快感に耐えられなくなったかのような。
愛おしさが溢れて、体の外へと出ているかのような。
ああ、いまのわたし、きっとすごい顔をしてるんだろう。
そんなことを頭の隅で考えている合間にも、竜の射精は続いていた。どくっどくっと留まるところを知らない。
当然、小さなわたしの膣程度で収まるはずもない。ぱんぱんにわたしのお腹を膨らませて、挿しこまれた竜の性器の隙間から噴き出すように、精液が零れる。
それはとても苦しくて、痛みすら伴ったけれど。
「いい、よ……さいごまで、だして……がまん、しないで…………」
伝わらない言葉を、それでも話す。
ほんの少しだけでも、気持ちが伝わったら。そう思って。
長い射精が終わると、ゆっくりと竜がわたしの膣から性器を抜き取った。
とたんに崩れ落ちるわたしの身体。噴水のように割れ目から精液が噴き出す。
しばらく、立つことはできそうにない。
それは、記憶の中で、人にやり捨てられたときと似ているけれど。
不思議と、まったく嫌な感じはしなくて。それどころか今のわたしは、微笑んですらいて。
恐る恐るといった風に顔を近づけてきた竜に、片手だけを持ち上げてそっと触れて、笑いかけた。
「ありがとう。こんなに気持ちよかったの、あなたのおかげ。
でも、今日は少し、眠らせて、ね……」
そう言って、荒い息を整えながら、目を閉じる。
いままでからは、想像もできないくらい、身体を動かした。そのせいで、どっと疲れと眠気がやってきて──
意識が落ちる寸前に、暖かいものに身体を包まれた気がした。
それは、ここにくる前のわたしには決して与えられなくて。でもここでは、もうそれが何なのか悟ってしまうくらいで。
微笑みながら、一筋、涙が零れた。
決して叶うはずのない、その願いは。
この奇跡のような出来事が、続けばいいのに、なんて。