その老婆は、老婆と呼ぶにはまだ若い。
しかし、ここまでずっと生き急いでいた。
その勢いは、いまなお止まることはない。
何故なら神託を受けたから。
その身の余命も、そう長くはない、と。
ならばもう――
その老婆に、手段を選んでいる時はない。
***
さてさて。
二十数年生きてきて、私はこれまで恋人だの彼氏だの意識したことなんてなかった。本当に、ほんの最近まで。だって、これまで抱いていた気持ちに恋心が含まれていたなんて思わなかったし。よりにもよって、その相手が実の弟とあれば。
そりゃ、タッくんのことはずっと大好きだったけど。最初は、家族なんだからずっと一緒だと疑うことなく。そのうち、タッくんに彼女とかできたら寂しくなるなー……からの、嫌だなー……へと。それはある種の独占欲だったのかもしれない。けど、まさかそこに肉欲まで含まれていたなんて。夢で見た光景――タッくんとの幸せな家庭――と、それを築くための行為の生々しく具体的な内容――すべてが夢であり、だからこそ、私の内にそんな願望があったなんて、と恥ずかしくなってくる。けど、それがもし夢でなく現実だったら、いまごろ私とタッくんの間には子供がいて――そんな日々を毎晩のように見せつけられても、不安や恐怖は全然なかった。むしろ、それが夢だったことが寂しくなるくらい。だから、感じていたのはむしろ後悔……なのだと思う。コドモとして無邪気に添い寝とかしていた頃から、オトナとして意識していれば良かった、って。その後悔を取り戻したいからこそ――
「……ふふ……ふふふ……❤」
考え方を変えれば……これまで逃してきた幸せが、いまになって押し寄せてきてる、ともいえるんだよねー♪ さすがに、手遅れってほど先延ばしにしてきたわけでもないし。母方の実家、お祖父ちゃんの調子が良くなくて、お祖母ちゃんも病院に通いやすい老人ホームに入ろうか、って話が出てて、お母さんがちょくちょく様子を見に行っている。その度に、私とタッくんはふたりきり……❤ さらには、タッくんの大学は明日から夏休みに入る。そしたら……もぉ……っ! あー、いっそのことお母さん、ひと夏実家に帰っちゃえばいいのに! ……なーんて欲深いことを考えていたのが、もしかしたら良くなかったのかもしれない。
お母さんはお祖母ちゃんに倣って、私の婚前妊活については認めてくれている。とはいえ当然、相手が血の繋がった弟だってことは知らない。……多分。てか、もしバレてたら、さすがにそこまでは見逃してくれるほどハッチャケてないでしょ。ということで、いくら愛し合っていても自宅で堂々と……はできない。実のところ、私のハロワ通いはそのためだ。毎日外出することで、怪しまれることなく大学帰りのタッくんと密かに外で合流することができる。そして、ホテルとか……つい気分が盛り上がって、ホテルじゃないところでも……❤ だって、タッくんがチンチン
今日も形ばかりの求職活動を終えて、あとはタッくんに会いに行くだけ。タッくんもタッくんでサークルに入って、友人と遊び歩いてる――って設定になってるから、遅くなってもお母さんは気にしない。私も私で――お母さんからだって妊活を進めてくるくらいだから、こっそり彼氏とつき合ってる、ってところまでは察してるんでしょ。だから、今夜は……うふふふ、朝まで……♪
そんな楽しい妄想を、一本の電話が打ち砕く。
ピンポロパンポロ……♪
聞き慣れない着信音を思い出すのに少し時間がかかったのは、電話がかかってくることなんて滅多にないからか。内輪とはもっぱらスマホアプリなので、多分どこぞの業者でしょ。応募した覚えもない企業からの勧誘だったら嫌だなー、と思いながら応じてみると――
「……アンタの母親と弟は預かった」
「!?」
え、え、え……ちょっと待って……? 私が真っ先に考えたのはタッくんのこと。もしこのままタッくんと会えなくなっちゃうなんてことがあったら……私……無理……ッ!
と、震え上がったのも束の間。この話にはちゃんとオチがある。
「変な言い方しないで! 成美が不安になるでしょ」
と受話器の外で揉める声が聞こえた後――
「もしもし? 母さんだけど……いま、達也と一緒にお祖母ちゃんのところにいて――」
ってことは、さっきの声は、お祖母ちゃん? そういえば、そんな気もするけど……なんてブッソーなことしてくれんの。
そして、今度はお祖母ちゃんの逆襲。
「アタシゃ成美ちゃんと話があるんだよ! 受話器返して、ふたりとも向こうの部屋に行ってな!」
ふたり――ということは、どうやらタッくんもそこにいる様子。おそらく無事だろうし、私もすっかり落ち着いた。
「もしもし、待たせたね。ところで、成美ちゃん」
このしゃがれた声に怯える必要はもはやない。ただ、ふたりを追い出した上で私と話をしたい、ってのも、何だか嫌な予感しかしないのだけど――
「……男はおるんかの?」
「ブハッ!?」
思わずスマホに向けて吹いちゃったわ。
「な、な、いきなり何……?」
いる、といえば、いる……といって、いい……相手でもないので……あまり触れてほしくなさそうに小声で告げる。
「う、うん……いちおー……」
「どこの誰だべ」
やっぱりお祖母ちゃんは相変わらずだ。こっちの都合なんて構いやしない。
「それは……うーん……」
と、言葉に詰まっていたけれど……やっぱりお祖母ちゃんは人の話を聞くつもりがない。
「話したない相手なんだべな?」
「えっ!?」
お祖母ちゃん、一体どこまで知ってるの!? そっちにはお母さんもいるし、ヒジョーにマズイ状況なんじゃ……と思ったけれど。
「んだったら、どーでもええ」
ビックリするくらいさっぱりしている。やっぱりお母さんの母ってことか。
「アタシにとっちゃ、ひ孫の顔さえ拝めればそれでええんやし」
「そっ、そんな――」
――気が早い――と言いたいところだけど、私としても……早く欲しい……タッくんの赤ちゃん……名前まで決まってて、夢の中ではもう三歳になってるし……。それがお祖母ちゃんにとってのひ孫であるなら、その言葉を簡単に否定したくないというか。
そんな私に、お祖母ちゃんの方からグイグイ突っ込んでくる。
「ほんなら、産みぃ」
「はぇっ!?」
いやホント、お祖母ちゃんのスピードにはついていけない。
「夏子と達也には秋までここで過ごしてもらう」
「えええええええええッ!?」
ちょ、ちょ……母さんはともかく、タッくんはマズイっしょ!
「付き
「そ、そ、そんなこと言われても……ッ!」
肝心の相手がそっちに監禁されてるんだってば!
「なぁに、男ってやちゃあ、女とスッポンポンのままふたりきりでおれば否が応でも欲情して……な、コラ! 向こうの部屋に行ってろと――」
思考が追いつかずに呆然としている私をヨソに、受話器の向こうでは再び揉めている。そしてどうやら、お母さんが受話器を奪還したらしい。
「もしもし、成美? お祖母ちゃんが無理言ってごめんね。けど――」
私を気遣っていたのはそこまで。そこに続けられたのはものの見事に欲望まみれ。
「これまで渋ってた遺産相続の件、考え直してくれるって言うから……」
シングルマザーとして、老後の生活が心配なのはわかるけど。
ともかく、お祖母ちゃんが言うには、自分のいうことを聞いていれば、自分の死後に遺産はすべて譲り渡す、ということらしい。祖母は結構な資産家で、我が家が母親ひとりで私たちを何不自由なく育てられたのは実家からの仕送りがあったからこそ。しかし、それもお祖母ちゃんが生きている間だけで、その後はどこぞの施設に寄付する、と言い張っていた。お母さんとて金の亡者ではないけれど、先が不安なことは否めない。それで、この有様だ。
「夏休み、母さんたちに成美の邪魔をするなって……けど、あんまり無茶は――」
「ちゃんと四六時中素っ裸で迫るんやぞ! そーすれば――」
「ああもう母さんは黙ってて! ともかく、九月には帰るから!」
どうやらお祖母ちゃんとはこれ以上話をさせたくないらしく、母さんは一方的に通話を切ってしまった。
さて――
いま私は、危機的状況に立たされている。
お祖母ちゃんはひ孫を望んでおり――それはいい。が、肝心の相手が攫われてしまったのだ。これでは子供など産みようもなく――もちろん、妊娠の可否は問われていないので、このまま帰ってくるまで待っていればいいといえばいいのだけれど……タッくんと一ヶ月以上会えないなんて、そんなの耐えられるわけないでしょ! お祖母ちゃんとか子作りとか、そういうのに関係なく!
とはいえ、まあ……普通に考えれば、相手が実の弟だなんて思うはずないもんねぇ……。それでタッくんまでも邪魔な部外者だと誤認して、母さんと一緒に連れ去ってしまったのだろう。
と、いうことで――
私は早速、タッくんに秘策を送った。この事態を地獄から天国へとひっくり返すために。
***
そもそもね、こちとら血のつながった弟とガチ恋してる時点で、多少の苦難は覚悟してるっての。その重さと比べれば、今回の事件なんて事件のうちにも入らんわ!
弟の身柄をこっちに取り戻すため――タッくんには『大学のサークル活動があるから帰りたい』という方向で説得する作戦に出た。が、そんなことで孫娘の妊活を妨げるようなことは、あのお祖母ちゃんが認めるはずがない。だから、如何にサークル活動が活発で……それこそ、夏休みはみんなサークル棟で寝泊まりしてて……もしくは大学近くの友人の家とか。サークル自体は私とのデートのためにでっち上げた架空のダミーだから……とりあえず、お祖母ちゃんからも共感を得られるように麻雀をやってるってことにした。私の方もサークル仲間を装って、いま大学に三連泊中~、とか煽ってみたり。わざわざ捨てアドで別垢作って。
けど、その中身は私であり、話し相手はタッくんであり。
「あっ、ふぁっ……タッくん……タッくん……❤」
まったく、あの祖母ちゃんホントに無茶苦茶言ってくれるわ。これから夏休みが終わるまで、裸で彼氏を誘惑し続けろ、だなんて……❤ ……いや、フツーに考えて、もっといろんなデートしたいもんでしょ。遊びに行ったり、買い物したり。子作り以外をすべて切り捨てろとか、正気の沙汰じゃないわ。
けど、一度言い出したら聞かない人なんよね、昔から。それは母さんも……むしろ、母さんの方がよ~く知っているので……念のためになるたけ服は着ないように、と。母親が、実の娘に向かって。まー、最近は出前どころか通販もネットスーパーも充実してるしね。それで何とかしのいでくれってさ。我が家のために、ひと夏自宅に娘を全裸で軟禁することさえ厭わないとは。ただ、うまくいけば母さんどころか、私の老後まで一安心なので、ここは一肌脱がせてもらうことにした。ブラからパンツまで、一糸残さず。
最初はやっぱり落ち着かなかったけど、半日もすればすっかり慣れてしまった。けど……そーすると、ヤバいんだよねぇ。だって、触れられるところに阻む物が何もないわけだから。
「……んっ」
タッくんのことを想うと、ついほしいところに手が伸びてしまう。そして、誰の目もなければ止めるものもなく。
「んっ、んっ……はぁ……」
だけど、傍にいてほしい人がいない。そんな寂しさから――それに、独り言を聞かれることもないから。
「タッくん……あぁ……タッくん……」
こうやって大好きな人の名前を口にしてると、だんだん気持ちが昂ぶってくる。何より、偽装メッセージではタッくんのことを苗字で呼んでるからね。だから、こうしてタッくん、って呼ぶのは私だけなんだなぁ、って思うと……私にとってタッくんだけが特別なんだな、って自覚できる。そしたら……憚ることなくはしたないことだって言えちゃう。特別なふたりの間に遠慮なんていらない。
「タッくぅん……お姉ちゃんのおまんこに精子ドピュってしてぇ……お姉ちゃんのおまんこ
うわぁ、お祖母ちゃんからはっきりと子供を
「
ビクビクっ! ビクビクビクッ!
「あっ、はぁぁぁぁぁん……っ❤」
こんなに腰をガクガクさせて……タッくんが見たら、どう思うかなぁ……それに……あー……こみ上げてくるものを、そのままに……
びちゃびちゃびちゃびちゃ……
……なんかもう、性的な一線を超えてしまった気がする……。フローリングの床を拭くのもすっかり慣れちゃったし。これまでは布団の上だったから、
「はぁ、はぁ……いいよぉタッくん、
ビクッ、ビクッ、ビクゥッ!
「はんんん……んっ、んっ、んん……❤」
あ……は……はぁ……また
けど、これでもし、タッくんが帰ってきたらどーなっちゃうんだろ。だって、妄想するまでもなく本物のタッくんがそこにいるわけだから。それに、タッくんも裸だったら……ふふ、エッチな気分になったらすぐにわかっちゃう……♪
そのためにも……さぁてそろそろメッセ送っとかなきゃ。姉としてではなく、大学の友人として。部室では盛り上がっていて、タッくんにも早く来て欲しい、という雰囲気を伝えるために。
『戻ってきたら帰さねーからな。朝から晩まで覚悟しとけよ』
お祖母ちゃんだって、こうして誘われてるのを知れば、私の妊活が邪魔されるなんて思わないはず。そしてこの文面には、タッくんへの想いも込められてる。朝から晩まで……覚悟しててね。チンチン勃起してたら……お姉ちゃん、きっとガマンなんてできないだろうから❤
そして、タッくんからの返事もやってくる。
『望むところだ。三徹でも四徹でも付き合ってもらうぞ』
あああああ……っ! 望むところだなんて! しかも、朝から晩までどころか、三徹でも四徹でも、って……! 私、絶対オカしくなっちゃうよ! そんなのもう、タッくんのことしか考えられなくなちゃうぅぅぅぅぅ❤❤
「あぁんっ! もっと……もっとシてぇ……ッ! タッくん……タッくん……ッ!」
こうして、本日オナニー十一回目に突入……。あぁ……もぉ……こんなの止められないって!
そして、あれやこれやと細工すること一週間――
『ようやく帰れる。深夜バスで帰るから、明日の朝には大学に着くはず』
いぃぃぃ……やったーーーーーーーーッ!!
これまでは変に疑われないよう友人宛てだけだったけど、ここまで決まれば私のアカウントにもちゃんとした連絡がやってくる。決定が夕飯後だったから、新幹線とかは間に合わず、深夜バスになっちゃったらしい。けどこれで、明日の朝六時には帰ってこれるとか。旅程は大変だろうけど、そうまでして帰ってきてくれるのが嬉しいよ~!
うん、せっかくだからオナニーはここまで! 明日の朝には逢えるのに、ここでつまみ食いみたいなことをしたらもったいない。今日もオナニー三昧だったから、余計なことしないように明日の朝までとっとと寝ちゃおう!
……って思ってたのに……! ……まあ、そりゃそうよね。こんなの、楽しみすぎて眠れるわけないじゃん。外を出歩けるようなら、気分転換にファミレスでも行きたいところだけど、生憎私は全裸生活を強要されている。ファミレスどころか、家から一歩も出られない。
これからおよそ一〇時間――最後の禁欲生活が始まった。これまで考えなしに、本能のまま性欲を貪ってきたのが悔やまれる。タッくんのこと考えて、オナって、考えて、オナって……時々ご飯食べて、疲れたら寝て……うわ、ヤバすぎない? 人として。
そういえば、タッくんの夢を見るようになってから、文字通り寝ても覚めてもタッくんのことしか考えてなかった。私の頭からタッくんがいなくなることがなかった。だから……うぅ……いまも、足の付け根がペトっとしてる。これまでは絶頂の度に拭き取ってたから良かったけど……ほっといたら、こうなっちゃうんだなぁ……。
シーツのことも気にせず、気づいたら寝ててくれないか、なんて期待しながら布団の中で横になっていたんだけど――夢と現実を見極めるには、マヤちゃん――私とタッくんの娘なんだけど、あのコがいたら、間違いなく夢。だから、いつの間にか眠っていたみたい。だけど――
ピピピピ、ピピピピ……
「は、は……ん……あ」
何かもう、息をするようにアソコに手が伸びてたわ。で、でも、これは……あくまで夢の所為であって……しかも、今夜のはヤバかった。マヤちゃんが、早く生まれたい、パパとママに会いたい、ってタッくんと私に子作り急かすんだもん。夢の中なのに三回も
お陰様で、再会まであと一時間。あとは本当に大人しく待っていればいい――はずなんだけど――
「……うぅ……あぁ……はぁ……」
もし、寝ぼけオナニーしてて、絶頂までしてたら……目も覚めるわな、普通に。実際、夢の中でタッくんに何度も
うん、もう完璧に目が覚めたわ。外はまだ暗いのに、二度寝なんてできそうにない。だとしても……もうすぐタッくんが帰ってくるんだから――お
この際こっちから迎えに行ったるかー! ……って言いたいところなんだけど、お祖母ちゃんから全裸生活を命じられてるし。いや、こんなの厳密に監視されてるわけじゃないんだけど、お祖母ちゃんに難癖つける隙を作るな、とこちらは母さんからの命令。
ということで、裸のまま私は玄関前で……うう……ううう……我ながら、こんなにオナニー生活が染み付くなんて思ってなかったわ。一緒に暮らしてた頃は、意外と性欲って抑えてたのね。っつーか、こんなにずっとムラムラしてることなんてなかったのに。いまでさえこうだったら、排卵近づいたらどうなっちゃうことやら。
お気に入り、とかいって、玄関前でシまくってたのもマズかったかも。この場所でのタッくんとのプレイは脳内に刷り込まれすぎてて、もはや本人がいるかのよう。油断してると、いじりたくなってしまう。
「ハァ……ハァ……もう……ッ!」
サンダル履いて、覗き穴から外の様子を窺ってみるも、まだ陽が昇ってないからかただただ真っ暗。
「ハァ……ハァ……うん」
タッくんを待ちきれなくなった私は……つい……玄関の扉を開けて……。
「ハァ……あぁ……」
隙間から身を乗り出して、道の向こうを覗いてみた。家の前をまっすぐに道路が横たわっていて、右の方からタッくんが帰ってくるんだぁ……❤ 東の地平線は、ほんのりと明るくなっている。私はそっちの曲がり角をひたすら凝視。タッくんが出てきたら、すぐにわかるように。その距離は一戸建て二軒分。そこを曲がれば、ずーっとまっすぐ、バス通りが駅まで向かっている。私の視力がいくつか、正確なところはわからない。けど、私の全力を注ぎ込んで、真っ先にタッくんを視認してあげたい。
そう思うと、その角が異様に邪魔になってくる。というか、私がそこへ行けばいいんだけど。てか、行けるものなら行ってるわー! なんて葛藤しながらじーっと待ち構えていると――
「…………うわッ!」
新聞配達だっ! あまりの危うさに私は玄関へ引っ込んで扉を閉める。そして、ふぅ……と息をついた。さすがに肝が冷えたのか、少しはエッチな気分も引いてくれたみたい。そして、床においていたスマホを再確認。タッくんは予定通りにバスを降りて……家に着くまであと三〇分かー……。
「……ハァ、ハァ……」
ああ、ダメだ。タッくんを強く感じると、さらに頭がおかしくなってくる。あと三〇分なんだから、大人しく待ってればいいのに……むしろ、あと三〇分くらいなら……って、タッくんを出迎えたくなってくる。やっぱり、一分一秒早く逢いたいわけで!
立ったり座ったり、家の中をウロウロしたり――もうすぐ、タッくんが帰ってくる……そんな思いが、私に再びドアノブを握らせる。そして――
「……あぁ……」
二度目ともなると、ちょっとは緊張も薄らぐらしい。緊張が薄らぐと、もっともっとタッくんが待ち遠しくなってしまうわけで。あの曲がり角の向こう側から、タッくんが……❤ なら、ちょっとだけ……もうちょっとだけ……。太陽もちょろっと顔を出したからか、通りは白く塗り替わり始めている。だからか、静かな街が、さらに静まり返っているように感じられた。これなら、少しだけ……ちょっとだけなら……。
私は慎重に周囲を見回す。そして……パッと玄関から躍り出た。たった一〇メートルくらいの道のりだけど、私にとってはとんでもなく危険地帯。それでも、そこを走り抜けて――壁に身を隠しながら、私はその先を覗き込む。信号はないけど二車線でガードレールも走ってる。そのずーっと先まで……人影はない。早くタッくん来てくれないかなぁ。というか、ここってタッくんだけでなくお隣さんや……さっきみたく配達の人や車もやって来るんだけど。
「……はぁ……はぁ……」
や、やばい……私いま……もう、ガマンできないくらいに……オナニーしたい……ッ! もしいま家の中に戻ったら、思わず指入れちゃいそう。だから、私はあえてここにいる。何も着ず、胸からアソコまで生まれたばかりの陽の光を浴びながら。
「はぁ……はぁ……タッくん……早くぅ……」
前の通りからは身を隠していても、後ろからは丸見えなんだよなぁ。はぁ、はぁ、タッくん……早く帰ってきてくれないと、誰かに見つかっちゃうよぉ……❤
とかやってたら!
「――ッ!」
私は慌てて自宅へと猛ダッシュ! そして、玄関へと逃げ込むと覗き窓に張り付いた。うわぁ……ヤバかった……いま、こっちに近づいてきてたのって……トラック、だったよね……? しばらくじーっと外を窺っていたけれど……家の前を通り過ぎる様子はない。ってことは、直進か右折したってことかな。私に気づいて、追ってこられたらどうしようかと思ったけど。
そして、安心すると……ああ、いかん。怯えるか発情するかしかないんか、私は。スマホによると、タッくんはそろそろ駅に着いている頃。そこから……のんびり歩いたり、寄り道したり……なんてしないよね? だって、一週間ぶりの再会だもの。きっと早足で……それこそ駆け足で? だったら、ものの五分くらいで着いちゃうはず! さっきの通りを……まっすぐ歩いてくる……タッくんが……さっきの通りを……❤
残り時間が短くなればなるほど、私の心は収まらなくなってしまうらしい。たったあと五分だからこそ……こんな早朝だし……!
本当に性懲りもなく、私は三度目の危険行為を。もし服を着ていたのなら、駅まで……というか、新幹線使って、お祖母ちゃんの家まで迎えに行ってたところだわ。それと比べれば、こんなお出迎えなんて些細なもの。本当に本当に、待ちきれないだけ。それで、ついつい……
「ハァ……、……あぁ❤」
ヤバイなぁ、私。誰かに見つかったら、それこそ大変なことになっちゃうのに。けど、できるだけタッくんの傍にいたい。タッくんを迎えたい。慣れてきたのか、それとも、タッくん以外のことが考えられなくなってるのか。自分の格好さえ忘れてしまうほど自然体な早足で、またしても曲がり角のところまでやってきた。そして、そっと身を乗り出して覗き込むと――
「――ッ!」
うわっ、こんな時間なのに……ああ、いや、始発で帰ってくる人だっているよね。タッくんみたいに。急いで隠れてみたものの、相手は遠かったし徒歩だったこともあり、私はそこまで慌てたりしない。いや、もし後ろからも人が来ちゃったら逃げ場なくなっちゃうけど。だというのに、私は妙に落ち着いてる。それは、本能的に察していたからかもしれない。
だから、もう一度だけ覗き込むと――
「…………っ!」
もう、何もガマンなんてできない!
私にとって、他のすべてはどうでもいい!
だって、私には……タッくん……タッくんさえいれば……っ!
長年見てきたシルエット――それに歩き方――遠目でも、それがタッくんだってすぐにわかった。だったら、こんなとこで待ってなんていられないよ! 私は十字路に躍り出ると、大好きな弟に向けて走り出す。
それに気づいてくれたのか、タッくんも同じように駆け足で。どこぞの自販機の前あたりで、私たちはついに――
「タッくん!」
「姉ちゃん!」
真っ先に抱擁。そして、口づけ。
「ん、ん……ふにゅ、んにゅう……❤」
あぁ……あぁ……タッくんだぁ……タッくんのキスだぁ……❤ ずっと欲しかったものが、ようやく手に入った。今度こそ本物……本物なんだよぉ……。シャツから手を入れて、すーっと胸元に向けて伸ばしていくと――
「んんっ」
口の中のタッくんの舌がピンと強張った。
「ん、ん……ん……」
あぁ……やっぱり、タッくんは可愛いなぁ❤ そんな可愛いところに口づけしてあげたくて、私は――裾をぐいと持ち上げてしまう。そうして離れてしまった唇と唇。けれど、男のコの唇には戻らない。小さくも、鍛えられた丸いところに――
「あっ、はぁ……」
もーっ! 男のコがそんな声あげるのは反則だって! お姉ちゃん、これ以上ガマンできないよ!? 舌先ではチロチロしながら、私の指は本当に欲しかったところへ。ベルトを緩め、ジーンズの腰元を開くと――中から出たがってるものがそれだけで感じられた。だから、パンツのゴムをひょいと広げて下ろせば――あはぁ……ここからでも全部見えちゃう。私を欲しがって、こっちを向いてるチンチンの先っぽが❤
「ね、姉ちゃん……姉ちゃん……」
「タッくん……あぁ……タッくん……」
握った感触を、私が忘れることはない。けど、久々に手の平に感じる熱さは……やっぱり嬉しくなってしまう。ううん、タッくんの熱……もっと欲しい。だから、その手を離して再びタッくんの背に回した。
「ん、ん、ん……」
「はぅん……あぁ……」
あったかい……タッくん、あったかいよぉ……❤ タッくんの一番熱くなってるところが私の一番熱くなってるところに挟まれて……上に、ピンって。こうしてクニクニしてると……あぁ……当たっちゃう……タッくんの((勃起||カタ))いところが……お姉ちゃんの……クリトリスに……❤
「あ、あ、あぁん……」
いい……タッくんのチンチンでクリクリするのぉ……。キスも気持ちいいし……私、このまま……もう……このままぁ……❤
なのに――
「はぁ、はぁ、ね、姉ちゃん……」
タッくんは私の肩を掴み、ぐいと引き離してしまう。
「うぅ……タッくん、お姉ちゃん、もっと欲しい」
変にガマンしてたからか、それとも、ずっとそういうことを口にしてきたからか。
「もっとぎゅーってしてよぉ……っ!」
私はもうタッくんが欲しすぎて歯止めが効かない。なのにタッくんはモジモジするばかり。
「で、でも、これ以上シてたら、俺……もう……」
「え、トイレ行きたいの?」
そういうのは新幹線の中とかで済ませといてほしかったよ!
と思ったけれど、すべての元凶は私にあった。
「だ、だって、姉ちゃんが……
……あ、そうか。私は全力でオナニー三昧だったけど、タッくんは……しかも、それを命じたのは他ならぬ私。男のコは、適宜
だったら――
「待たせてごめんね。じゃあ……」
ここでこれ以上意地悪したら、ここまで頑張ってきたタッくんの苦労を台無しにしてしまう。
だから私は、タッくんに向けて背を向けた。
「よく頑張ったね。だから、もう頑張らなくて……いいよ」
タッくんは少しキョロキョロと周囲を窺っていたけれど……やっぱり私と同じ気持ちだったんだね。もう、ちょっとだって待てないっていう。
「ああああああああっ!」
これ、これぇ……っ! タッくんの、タッくんのチンチン……ッ! ずっと、ずっと欲しかったものが……っ!
しかも――
びゅるっ! びゅるっ! どくんっ、どくん……っ!
「ご、ごめん……俺、本当にガマンしてて……」
いいんだよ、そんなにしょげなくても。タッくんの精子を
けどまあ、それはそれとして。
「じゃあ……お姉ちゃんも満足させてね❤」
だって、タッくん、まだ
「あっ、あっ、あ……あぁ……!」
私はタッくんに向けてムニムニとお尻を押し付ける。
「いい、いい、いい……っ!」
これまで、自分の指で自分の
「タッくんの……タッくんのチンチン……いいよぉ……っ!」
ずっとオナニーしてきたからこそ、逆に感じる。いまは、オナニーじゃない。タッくんと、ふたりでひとつ……!
「私の
女のコと男のコがしっかりとつながって、ひとつになってる……それはまさに、タッくんの精巣と、私の卵巣がしっかりと結ばれてる、ということで。いまタッくんが射精してくれた精子は、私の卵巣に着床すべく、必死で向かってきてくれているはず。タッくんと私がひとつになるために。少なくとも、チンチンとおまんこはひとつになってる。私はもう……ひとりじゃないんだ!
だったら、どこまでもタッくんと一緒になりたいし、タッくんにも私と一緒になって欲しい。だから……もっと、もっとぉ……❤
「タッくん……おっぱいも……ぎゅってしてぇ……」
お尻で押し返しながらも、タッくんの方からも来てほしい。こんな場所でなければ、本気で貪ってきたんでしょうね。後ろから腕を回して……乳首を摘む、厭らしい抱き方。
「はっ、あぁ……っ」
やっぱり、自分で触るよりタッくんの指の方が断然いい! だから、もっといいところに欲しくなってしまう。
「クリトリスもぉ……ねぇ……割れ目の中、くにゅくにゅしてよぉ……」
そしたらタッくんは、腰をヒクヒクと動かしながら、右手の方を……ああ……あ……あああああっ!
「いいっ! いいっ! タッくん、いいっ!」
乳首も、クリトリスも、そしておまんこから、子宮まで……全部、全部タッくんを
だから、私たちを止めるものは何もない!
「ね、姉ちゃん! 向こうから、バイク……っ!」
それは焦ってるのか、震えてるのか、腰の動きがむしろ激しくなった気がする。そしたら……やめてくれだなんて言えるわけがない!
「じゃあ……隠してくれる? タッくんの手と……腕で……❤」
正面から原付きがやってくるのに、私はさらに誘惑してしまう。タッくんが、私を拒むことができないって知りながら。タッくんは左手を私の右胸まで伸ばし、手の平でお毛々は隠しながらも割れ目に食い込む指はグニグニと。何より
「タッくん……お姉ちゃん、もう……
「俺も……姉ちゃん……っ」
さっき
「
ビクビクビクビクッ! ビクビクッ! ビクビク……ッ!
そういえば、ここんところ声を抑えるってことをしてこなかったから……それに、タッくんにも
立て続けに二度も射精したからか――何より、昨晩は深夜バスだったし。さすがにタッくんも疲れたのかな。
「ね、姉ちゃん……それじゃ、そろそろ……」
と離れようとするので、私はタッくんの後退に合わせて――
「だぁぁぁめっ❤」
この幸福感を忘れたくなくて、タッくんのチンチンにぴたりと追従する。
「私が裸で生活するよう言われてるの、タッくんだって知ってるでしょ?」
そんな私と、これから一緒に過ごすのだから――
「だから、タッくんも……これから一緒に裸で生活するの。ということで……このまま一緒に、つながったまま帰ろ♪」
お尻をムニムニ押し付けて、私は催促。
「ほらほら、早くしないと、また誰か来ちゃうよ~?」
そしたらタッくんも……どうやら覚悟を決めてくれたみたい。ズボンはいつの間にか足から抜いていたようで、シャツと一緒に背負ってたカバンにしまっちゃった。そして、私の両手をぎゅっと握ってくれる。
お手々つないでお家に帰るなんて、私たち、本当に仲良し姉弟だね。ただ、お手々どころか、裸のまま――裸のチンチンと、裸のおまんこを――これなら、精子と卵巣もつながってくれてるね❤ だから私たち……世界で一番仲のいい姉弟なんだよ!
「はぁ、あぁ……はぅんっ」
タッくんのひと突きに、つい私は足を止めてしまう。すると、タッくんもずっと触りたかったのか――手を胸の方に持っていってしまい――
「あ、あ、はっ、ああああ……っ」
早速三回戦に突入。このままだと、いつまで経っても帰れないよ❤
そして、曲がり角を過ぎたところでもう一回だけ足止めして……ようやく、私たち姉弟は帰宅でしたのでした。その間、知らない人には何度も((視姦||み))られちゃったけど……ご近所様と鉢合わなくて本当に助かったー!
振り返ってみると、変な禁欲生活の所為で、お互い頭おかしくなってたんだと思う。それは、夜半すぎのオナ禁のことじゃない。ここまで弟と離れ離れになってたこと。
けど、これからはもう、ずっと一緒だよ。夏が終わるまで――子宮の奥まで――❤