汚物食い転生──それは食えば食うほど強くなる禁断の力 作:関節ロック
ギルドの受付は冴えない風采の四十男で、いつ来ても黙々と事務の仕事を処理しているようだった。
「すいません、何か仕事ないっすか」
ジュウゾウが男に声をかける。
「おや、ジュウゾウさんですか。今ある仕事でジュウゾウさんが受けられるのはこんな感じですね」
そういうと男が依頼書をまとめたファイルを開いて見せる。
正直、ろくなものがなかった。
受けられる仕事は害虫駆除とか夜間警備、それから広場の見廻りとかそんなのばかりだ。
報酬も30オーブから40オーブほどと、これでは日雇いと何ら変わらない。
「もっと金になるような仕事ってないっすかね」
「都会に行けばともかく、この町は小規模だし、比較的平和ですからね。
まあ、他にも仕事はありますけど、ただ、今のジュウゾウさんにはちょっと紹介できませんね」
冒険者にもランクというものがあり、それは実力や名声で変動する。
これらは強いモンスターを倒したとか、地道に依頼をこなしていくとか、
あるいは試練場でギルドに雇われている試験官と戦って、その実力を示すとか、
国や町の為に尽力し、貢献したとか、ダンジョンの階層を突破するなどをして上がっていく。
ここらへんの仕組みはファンタジーゲームに近い。
「それじゃあ、何かパーティーの募集はないっすか」
「ああ、それだったら、丁度いいパーティーがありますよ。
モンスター駆除のパーティーなんですがね、ランクもそれほど大差はないし、紹介しますよ」
そこでジュウゾウが紹介されたのは、三人の冒険者だった。
その内の二人はジュウゾウの見知った顔だ。
そう、排泄物をジュウゾウに食べられたあの少女達──キャスとナリアだ。
「あはは……あたしはキャスよ、よろしくね」
キャスが苦笑いを浮かべながら、ジュウゾウに挨拶する。
「ナリアです……よろしくお願いします」
ナリアが俯いたまま、ジュウゾウに名乗る。
そして最後の一人が自己紹介をした。
「おいらはメルカッツ、よろしくなっ」
「俺はジュウゾウ、三人ともよろしく」
四人で町の東門周辺に出るモンスター達を駆除していく。
弱いモンスターしか出ないので、苦戦することはない。
「ホワイトマタンゴ、これで五匹仕留めたぜ」
と、メルカッツがショートソードを振り回して言う。
「こっちはグリーンスライムとオオネズミだらけだったわよ」
これはキャスの声だ。
門の周辺に出没するモンスターの間引き──正直、地味だしつまらない仕事だ。
それでも大事な仕事でもある。
町を行き交う人々にモンスター達が危害を加えないようにするためだ。
それとは別に人間を襲わない種類のモンスターもいるが、
こっちはこっちで増えすぎると草花を食い荒らしたりする。
だからやはり間引きをする必要があるのだ。
だからこれらも充分に町の貢献になる立派な仕事だ。
それでも地味な仕事には変わらないのだが。
四人が退治したモンスターを一箇所にまとめておく。
「結構倒しましたね」
「うん、そうだな。よし、あともうひと踏ん張りだ」
ナリアとメルカッツが倒したモンスターを数え始める。
「あっちは何匹も蜘蛛が巣食ってたぜ」
ジュウゾウが麻袋に放り込んだ蜘蛛の死骸を地面にばらまいた。
「うわあ、大量じゃないの?オオネズミも嫌いだけど、蜘蛛はそれ以上に苦手だわ」
キャスが顔を顰めながら、蜘蛛の死骸から遠ざかる。
「でも、これだけ倒せたら依頼料にボーナス出るかもな」
そう言いながら、メルカッツが嬉しそうに笑った。
「ボーナスってどれくらい出るんだ?」
ジュウゾウが何となく聞いてみる。
「場合にもよりますが、依頼料の一割から二割くらい上乗せして貰えるみたいですね」
「へえ、そうなんだ」
それから四人は少し休憩し、軽食を取った。
「みんなも普段はこういう仕事をしてるのか?」
ジュウゾウがメルカッツから貰った果実を齧りながら三人に尋ねる。
「うん、あとは迷宮の浅い層を探索してどんなモンスターが出たか調べたり、そんなもんだよ」
メルカッツが答える。
「私の場合は薬草採取とかもしますね」
「あたしはたまに鍵や罠の解除を頼まれたりするかな」
「なるほどなあ」
「おいらももっと強くなれれば、金になるモンスターも狩れるようになるんだけどな」
そんな事を呟きながら、メルカッツが溜息を漏らす。
「まあ、オオネズミや大蝙蝠じゃ、素材を売ってもほとんどお金にならないし、
ホワイトマタンゴだってそれよりはマシ程度ですからね。
結局はこの手の依頼で退治するしかお金にならないのがきついです……」
「そうねえ、もう少しランクが上がれば、もっと美味しい仕事にありつけるんだけど……と、
ちょっとあたし、お花摘みに行ってくるわね……」
そこでチラリとキャスがジュウゾウを横目で見やる。
だが、鈍いジュウゾウはその事に気づかない。
そこでシルフィーが耳元で囁いて、ジュウゾウに助け舟を出した。
「あ、じゃ、じゃあ俺、見張り役するわ」
そこでジュウゾウが慌ててキャスに申し出る。
「じゃあ、お願いするわね」
「二人とも気をつけてな」
メルカッツが草むらに消える二人に注意を呼びかけた。
メルカッツとナリアから少し離れた樹の辺りまで来ると、キャスがジュウゾウの方へと振り返った。
「それであたしのウンチ、いくらで買う?」
キャスがジュウゾウに切り出す。
「10オーブでどうだろう?」
「もう少し出せない?」
「じゃあ、12オーブ。ただ、金は手元にないから、今回の依頼料から払うよ」
キャスが銀髪を揺らしながら、いいわよと頷く。
「それじゃあ、少し待ってて頂戴。そこの木の陰で出してくるから」