※この作品はR-18です。

オバロR18もの   作:しうか

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今回はぶっちゃけギャグパート


2 冒険者 ブリタ

ブリタ編

 

 ガゼフ率いる王国戦士団は夜になっても作業を続け、その日のうちに事後処理を終え、次の日の朝にはエ・ランテルへ向う準備を終えていた。戦士団の集めた陽光聖典からの略奪品にめぼしいものがなかったため、オチバは王国への売却を持ちかけ、その場で言い値で売り払い報奨金と合わせて少なくない現地貨幣を手に入れた。

 

 ついでにガゼフ直筆の身分証を手に入れた。オチバには読めないが王国内で提示すれば身分がガゼフ戦士長の下に保障されると聞かされた。とりあえずアイテムボックス行きになった。

 

 さらについでに捕獲していた敵の軍馬は世話ができないからと村に提供したのだが、村としても維持できないので王国が買い取ることになった。

 

 オチバはその日のうちにガゼフ戦士団と共にエ・ランテルへと向うことになったのだが、エンリとの別れに少々手間取った。「テレポートで帰ってくるから」と何とかごまかしつつ、全く使い道もなくアイテムボックスの肥やしになっていたHPが5%上がる指輪と肉体労働の足しにとゴブリン将軍の角笛を二つ贈り、何とかエ・ランテルに旅立つことができた。

 

 戦士団は捕虜や荷物が増えたので別働隊が編成され、ガゼフとオチバは部下数人と先行することになった。オチバは馬に乗ったことがなかったし、騎乗系のスキルを持っていなかったので全く馬に乗れなかった。しょうがないのでガゼフの後ろに乗ることになった。

 

 朝出立し、次の日の昼にはエ・ランテルに到着した。道中特何もなく、オチバとしては肩透かしだった。冒険者が狩るほどゴブリンやオーガが出ると聞いていたのでもっと大量に出てくると考えていたのだが、エリアボスどころかゴブリンやオーガがレアモンスターに思えてしまうほどだった。

 

 なのでガゼフからこの世界の常識や王国の法律に関する知識を引き出した。オチバは常識の違いに驚き、ようやく自分がどう見えていたのか理解し、ガゼフに口止めを頼んだ。それと引き換えに特にガゼフは念入りにこの世界の常識を説き、王国に付くよう頼んだ。間違っても帝国や法国に付かないよう頼んだが、オチバの返事は心無い「いや、冒険者になる予定ですし」との事だった。

 

 ガゼフはいかに冒険者が夢のない職業か、もし戦争になっても戦場に出れないなど欠点をあげつらったが、「とりあえずなってから考える」とそっけなく帰され、これは動かないなと考え、引き抜きを諦めた。

 

 ただ、カルネ村にはオチバと親密にしている娘がいた。カルネ村の保護を求めていたくらいだ。王国が直接保護することによって貸しを作り、カルネ村の危険性を説けば王国の剣になってくれるかもしれないという期待もあった。まぁその辺りは王陛下がお決めになるだろう。

 

 そして、エ・ランテルの門をガゼフの顔パスで待たされる事なく通過すると、「ありがとうございました。ではまた」という声を残し、馬上からオチバが消え去った。オチバの行き先はわかるが追う理由がガゼフには思いつかなかった。

 

 早馬を出し、エ・ランテルの都市長に引き合わせたり、高級宿屋に無料で招待し、足止めする計画はあっという間に水泡に帰し、ガゼフは計画失敗の後処理の事を思いどっと疲れが出た。報奨金をエ・ランテルで渡すことで引き止めることも考えたのだが、なまじその場で払えてしまう金額だったためそんな手は使えなかった。

 

 

 オチバはさっそく冒険者組合に行き、登録を済ませることにした。冒険者とその手続きに関してはガゼフからそれとなく聞いている。この世界の文字の読み書きが出来ないので代筆を頼むつもりである。しかし、身分証がなくても現金をもっていて犯罪者じゃなければなれるというぬるいシステムに感謝しつつ偽名を変更しようか迷った。

 

 ゲーム脳を標準装備しているオチバにとってガゼフが言っていた帝国との戦争はただの大きなイベントである。しかし冒険者は参加できないらしい。オチバとしてはせっかくのイベントなのだからぜひとも参加したい。

 

 それにカルネ村に籍があるわけではないが、カルネ村から村民が徴兵される場合、エンリの好感度アップのために自分が志願して出て行くのもアリだと考えた。そんな事を考えるあたり、なんだかんだ言ってオチバはエンリに惚れてしまっていたが、本人はそのことに全く気付いていない。

 

 結局、文字が読めない事を逆手にとり、見た目の若さを最大限利用することにした。

 

 ギルドの受付嬢、イシュペン・ロンブルとウィナ・ハルシアは暇をもてあましていた。冒険者組合が混むのは朝と夕方から夜にかけてだ。冒険者は昼間、依頼に出ているか依頼の合間の休暇を楽しんでいるかのどちらかで冒険者組合に来る人間は大抵依頼を出す側だ。

 

 そんな時一人の少年が建物に入ってきた。イシュペンもウィナも一目で貴族の子息だと思った。年のころは大体10~12歳くらい。南方系の血が流れているようで髪も瞳も黒く、平凡な顔つきだったが着ているものが豪華すぎた。

 

 くすんだ銀の刺繍が施された黒い袖つきの外套、その下から覗く真っ白で柔らかそうなフリル付きのブラウス、仕立ての良さそうな黒いズボンにも外套とお揃いの刺繍が施され、腰の剣帯から吊るされた二本のサーベルにまで細かな装飾が施されている。どれひとつとして普通の平民に手が出るものではない。

 

 貴族の子息。しかも大貴族の次男や三男か金のかけられた跡継ぎ。もしくはよほど大切にされて育った愛妾の子供。そんな人間は今までこの街にいなかった。それに組合長のプルトン・アインザックからそんな話も聞いてない。お付きの従者がいない所を見ると、お忍びというより王都から家出してきたのだろう。

 

 しかし、見た目の年齢から王都からエ・ランテルまで一人で来るのは難しい。そうなると、大金持ちの商会の子息あたりだろうか。それなら南方系の血が流れていてもおかしくない。しかし、ここまで子供にお金をかけられる商会となると限られるだろう。腰に提げてる剣以外はすべてこの子の体系に合わせて作られている。どちらにせよ厄介ごとだろう。

 

 今は暇な時間。イシュペンとウィナ、どちらの受付も当然空いている。少年はイシュペンとウィナを見比べ、どちらにしようか迷っているようだ。そして、「あらら……」と小声でつぶやくと残念そうな表情を浮かべ、イシュペンの方へと向ってきた。

 

 イシュペンはこっそり隣を見ると、ウィナは書類棚の方へと逃亡していた。そこに今やるべき仕事がない事は二人とも知っている。

 

(逃げたわね!)

(ごめん、後で何か飲み物おごるから)

(本当い厄介ごとだったら酒よ!)

(わかった)

 

 長い付き合いになる同僚同士のアイコンタクトによる一瞬のやり取りが成立し、イシュペンは受付嬢の顔を表情に貼り付け、来るなら来いと覚悟を決めた。

 

「ようこそ冒険者組合へ」

 

 少年ともう一度視線が合った瞬間イシュペンが営業スマイルを浮かべ先制すると、少年はイシュペンの前に立った。

 

「冒険者になりに来たんだが」

「はい、こちらで承ってますが……」

 

 イシュペンは微笑みを絶やさない。

 しかし、内心、「あー、やっぱりかー」と落胆する。大方どこかでこれでもかと誇張された冒険譚を聞いたかどこかの冒険者にでも憧れたのだろう。

 

 冒険者組合は独立した組織だ。例え貴族でも大金持ちのお坊ちゃんでも冒険者として登録したら一人の冒険者として扱われる。冒険者の最高峰、アダマンタイト級にでもなれば話は別だが、そんな貴族の人間は二人しかいない。本当は登録してから規則の説明を行うのだが、後から厄介な事になっても困るためイシュペンはその辺の事情を先に説明したが、少年はどうでもいいから早くしろとでも言わんばかりの態度だった。

 

 何度も言うが冒険者組合は独立した組織だ。門戸は広く開かれており、条件を満たせばそこいらにいるスラムの子供でも加入することができるほどなのだ。後々親御さんが怒鳴り込んできた所で加入金は返せないが脱退届や引退という措置は取れる。問題ないだろう。

 イシュペンはそう考え、手続きを済ませることにした。

 

「まずギルドに加入するのに必要書類料として5銀貨をいただきますがよろしいですか」

「どうぞ」

 

 前もって準備してきたのか、少年は銀貨5枚をズボンのポケットから取り出すとカウンターに置いた。イシュペンは銀貨の両面をざっと見て問題ない事を確認するとギルドの硬貨入れに入れた。

 

「はい、確認しました。ではまず色々と書いていただきたいものがあるのですがご自分でお書きになりますか? ……それとも代筆にしますか? 代筆の場合は5銅貨をいただきます」

「代筆で……」

 

 再び銀貨1枚がカウンターに置かれ、イシュペンは確認したあと銅貨5枚を渡す。王国の識字率は高くない。半分以上の人間が読み書きできず、文字を書けるのはある程度の階級や知識人だ。イシュペンはこの子がまだ文字を習っている途中だと判断した。むしろこんな所で遊んでないで帰って勉強でもしていろと言いたくなるが我慢し、インク壷から羽ペンを取り出し、羊皮紙を広げる。

 

「ではお名前を教えていただけますか?」

「オチパ!」

「オチパ……何さんですか?」

「オチパだけで……」

 

 実際は偽名といっても名乗っていた偽名のバをパに変えただけだった。オチバはきっとこれなら記載ミスや聞き取りミスでガゼフにも言い訳が立つとも考えた。しかも登録名が違うのだから別人としてイベントに参加できるはずだと確信していた。

 

 イシュペンは最初名前だけ本名を名乗ったのだと思ったが、それが偽名だとわかった。組合としては偽名でも問題ない。イシュペンもいつもなら「登録する名前」をたずねるのだが、本名を名乗ってもらえれば後々両親やその使いが来た時に楽だと思い、本名を聞いたあと別の名前で登録するか聞くつもりだった。

 

 この子意外と周到なのかしら。この年にしてはやるわね……。

 

 所定の質問を行い、オチバが答え、イシュペンが書き込む。そして質問が続くうち、イシュペンの表情がどんどんと生暖かくなっていき、つい近所の子供の相手をしている気分になってしまい、受付嬢として対応することが難しくなっていった。

 

 剣が得意でその実、第三位階の信仰系魔法詠唱者。ラキュース様に憧れてるのかしら。うんうん、すごいね。ラキュース様まであとちょっとだね。ちゃんとそのまま記載してあげるわよ。数年後恥ずかしさでのた打ち回るがいいわ! 

 

 オチバからの聞き取りから書類の作成が終わり、イシュペンは冒険者組合の仕組みやルールを説明したが、オチバはあんまり聞いてなかった。さっさと終わらせろとでも言わんばかりだった。治癒魔法に関するルールはオチバにとって重要なのだが、イシュペンはオチバの話を信じていなかったのでオチバの態度をあまり気にしなかった。

 

 規定の説明をしたという事実があれば冒険者組合が責任を負うことはなくなるのでしておかなければならないが、そもそもちゃんと聞く冒険者の方が少ない。

 

「以上になります。質問はありますか?」

「回復魔法の規定の料金っていくらくらいですか?」

「第2位階で8金貨、第3位階で12金貨ですね」

「え……? それって高すぎじぁあ……?」

「そうかもしれませんね。冒険者になるのやめておきますか? お支払いのお金の返却はできませんが……」

「いえ、わかりました。気をつけます」

 

 オチバは胴(カッパー)の冒険者プレートを受け取り、冒険者プレートに書かれている文字を聞くと、「ああ、オチパってこんな字なんだ」とつぶやいたあと、アイテムボックスに入っていたミスリル製のチェーンを取り出してプレートにつけると首にかけた。そしてイシュペンに宿の場所を聞いて冒険者組合を出て行った。

 

 一度宿の位置を確認し、エ・ランテルの街の散策に出たが、カルネ村に慣れてしまったのかオチバにとってエ・ランテルは広大で入り組みすぎていた。とりあえず大通りだけでもと思い、屋台で買い食いしたり露天を冷やかしたりしながら色々と物色するが、夕方になったため今日のところはと諦めて宿に向った。

 

 スイングドアを押し開けて宿に入ると、一階は酒場になっているのかすでに酒を飲んでいる客やすでに酔いつぶれているような客もいた。オチバは一歩入ったところで客からの注目を浴びた。面白そうな顔をする客、間違えて入ったのかと勘違いした客、すぐに気にしなくなった客に分かれた。

 

 ここは初級者の冒険者用宿で大抵胴(カッパー)か鉄(アイアン)プレートの冒険者が使う。安価な事もあるが同じランクの冒険者がいることでチームが組みやすくなる利点もある。

 

 オチバは酒場を見回すと、「まぁいいか」とつぶやき、店主の下へ歩いた。コップを拭いていた宿屋のマスターは一瞬子供が間違えて入ったのかと思ったが、首から下げられた胴(カッパー)のプレートに、面倒くささを感じた。

 

 これが大男なら問題はない。冒険者に成り立てでひょろっとした人間でも魔法などの取り得があれば問題ない。たとえ取り得がなくても少し問題が起きる程度で、新人が入る時にはよくあることだ。だがガキはダメだ。特にこの「私は金持ちです」と全身で語るようなガキは特にダメだ。大問題が起きる事は確実だ。

 

「ここはガキの来る所じゃねぇ、ママのところに帰りな」

 

 マスターは出来る限りぶっきらぼうに威圧感を篭めて言い放ったが当然オチバは気にしない。自分の見た目が場違いなのはよく分かっている。しかし、マスターにとっては厄介な事に、もうここにすると決めてしまっていた。

 

「いえ、これ見せると安く泊まれるって冒険者組合で聞いてきました」

 

 オチバはミスリルのチェーンにつながれた胴(カッパー)のプレートをこれでもかと見せ付ける。普通の冒険者は大抵紐を使うのに真新しい胴(カッパー)のプレートにわざわざ高そうなチェーンを使い、それをゆさゆさとアピールするオチバがマスターにはうざったくみえた。

 

「いや、まぁ確かにそういう宿なんだが……」

「あ、個室でお願いします。無かったら二人部屋でもいいですけど」

「いや、個室はあるがな……。その、なんだ……」

 

 本来、銅(カッパー)が個室や二人部屋を選ぶと言い出したら大部屋を勧める。チームや仲間を探すのもこの宿の利点だからだ。しかし、個室なら盗難や暴力などのトラブルにも遭いにくいだろう(無くはない)。目の届く所ならやりすぎに気をつければいいし、本格的に冒険者になるならそういった事にも慣れておいた方がいいだろう。

 

 そう考え、「1日1銀貨、前払いだ」とマスターはいうと銀貨が一枚カウンターに置かれた。部屋の場所を伝え「今日はさっさと寝な」とぶっきらぼうに言うと要件は済んだとばかりにマスターは仕事に戻った。

 

 オチバは踵を返し、入り口近くのテーブルについている赤毛の女冒険者の所に行った。

 

 赤毛の冒険者、ブリタは赤毛を乱雑に切っており、化粧っけもなく肌は日焼けして健康的な小麦色をしている。顔は整っているが筋肉が服の上からわかるほど隆起しており、目つきは鋭くまさしく女戦士といったいでたちだった。プレートはひとつ上の鉄(アイアン)だ。

 

 彼女は日々倹約生活を送り、ようやく買ったポーションをテーブルに乗せニコニコと眺めていた。そのため、オチバが目の前の椅子に座ろうとしたところでようやくオチバに気付いた。

 

「何? 何か用?」

「こんにちは、僕はオチバと申します。赤い髪がステキですね」

「え? はぁ……どうも」

 

 ブリタは目の前に座った子供にどう接していいかわからず、マスターの方を見たが、マスターは一度ブリタを見ると首を横に振った。「手を出すな。適当に相手してやれ」とのことである。それを見てブリタは「まぁしょうがないよね」と肩をすくめた。

 

 職業柄か見た目からか女として扱われることはほとんどなく、自分でも女としての意識はない。そういった目で見てくる男は大抵碌な人間ではなかったので、基本的にそういった輩には制裁してきた。

 

 ただ、今回の相手は子供だし顔は平凡だが身なりはいいし物腰は丁寧。それに少しおませな所は可愛げがあるかもしれないと思ったのだ。銅(カッパー)プレートをつけているくらいなのだから冒険者になったばかりだろうと見当をつけ、ブリタは簡単なアドバイスでもしてさっさと部屋に戻ろうと決めた。

 

 しかし、運悪く回りの冒険者の野次がブリタ耳に入った。

 

「おいおい、ブリタがナンパされてるぞ?」

「はっはっは! ブリタにもようやく恋人が出来るってか?」

「ガキがんばれ! 多分がんばれば多分落とせる相手だぞ! あはははは!」

「ばか、煽るな! あのガキがブリタに殺されるだろうが!」

「そうだぞバカやろう共がっ! どう見ても相手は子供だぞ? 恋人ってより子守だろ!」

「ぶはははは。ちげぇねぇ! おーい、ブリタ、ちゃんと面倒みてやれよ!」

 

 ブリタは怒りでうつむきプルプルと震え始めた。しかし、オチバは気にせず「はーい、がんばりまーす」とか言いながら野次に向って手を振る始末だ。普段なら目の前の人間を倒れるまで殴ったあと野次を飛ばしたヤツも一発ずつ殴る。しかし見知らぬ自分に好意を向ける子供相手にそれはできない。

 

 とりあえず野次を入れたヤツに一発ずつ入れるのを見ればこの子もわかるだろうと、ポーションを仕舞うために顔をあげると、ポーションは目の前のガキが手に持っていた。しかも「これなんだろう?」とばかりに振ったり傾けたりしている。仕事で使うものなので簡単にこぼれたりはしないが、落とされたりしたら割れてしまう。

 

「ちょっとアンタ何やってんのよ!」

「あ、すいません。これ香水か何かですか?」

「香水ってアンタね……。ポーションよ。高いんだから割らないうちにテーブルに戻して!」

「ポーションですか。効果は状態異常回復とかですかね? いくらくらいするんですか?」

「治癒のポーションよ。金貨一枚と銀貨十枚よ。いいから早く」

 

 ブリタが目を吊り上げてテーブルをトントン叩き始めたので、オチバはまだ気になっていたもののポーションをテーブルに戻した。

 

「魔法で鑑定してみたいのですが、ダメでしょうか。その、割ったりしませんし、壊したら弁償しますので……」

「え? まぁ、そのくらいならいいけど……」

 

 うわぁ……払えちゃうんだぁ……。見た目通りお金持ちなのねー。とブリタは衝撃を受け、その衝撃で魔法鑑定に関してはスルーしてしまった。

 オチバがテーブルに置かれたポーションに《道具上位鑑定(オール・アプレイザル・マジックアイテム)》を使うと、ポーションに魔法の効果が発動し、緑色に薄く光った。

 目の前の光景に、ブリタだけでなく二人のやり取りを見ていたマスターや冒険者は驚きを隠せなかった。

 

「おい、あのガキ魔法を使ったぞ?」

「杖は見当たらないな、信仰系マジックキャスターか?」

「つばつけとくか?」

「いや、でもガキだぞ? 体力が持たんだろ」

 

 周りはヒソヒソと相談を始めたが、ブリタはそれに混ざることは出来ない。「ホントに治癒のポーションだ……」とオチバがつぶやき驚いていたが、そんなオチバに関係なくブリタは相棒候補としてスカウトしてみる事にした。鑑定しか使えなかったら当然話は流すつもりで……。

 

「あ、アンタ、マジックキャスターだったの?」

「えーっと……。はい、まぁ……支援とかがメインですけど……」

「へぇ~。他にどんな魔法使えるの?」

「そうですね……―――」

 

 オチバは少し悩む。どの程度提示していいかすぐに判断できなかった。メインは信仰系で、対魔法用に魔力系がいくつか。あとは移動系、精神系だが、ユグドラシルでは補助の域を出ず、メインは剣なのである。

 

 オチバは剣で食べていくつもりだったし、冒険者組合の受付嬢の反応から冒険者なら位階は低くても基本的にスキルか魔法はいくつか使えるのが普通で大したことではないと思っていたのだ。

 

 しかし、ブリタが予想外の食いつきを見せたため、魔法詠唱者(マジックキャスター)を名乗るのもアリかなと思い始めた。そこでどの魔法を提示すれば目の前の女とお近づきになれるかというゲスな考えに捕らわれた。

 

 オチバは最初ブリタを見たとき、あまりのゴツさに男かと思った。しかし胸は鎧の上からでもそれなりにあり、真っ赤な髪という珍しさもあって興味を惹かれた。よくよく見ると案外顔は整っているし、こういうタイプも食べてみたいなと思った。

 

 しかし、オチバの中の評価ではエンリより数段落ちる。「どうせ職業柄男の中にいるだから経験も豊富だろう。被レイプ経験もあるだろうし、気が向いたらささっとレイプする感じの関係がいいなー」などと酷い事を考えていた。

 

 しかもブリタの反応からレイプしても最終的には許してくれるくらいの利点を示せれば、案外長くお突き合いできるかもしれない。そう考えるとガゼフの言っていた第三位階で足りるのかという不安もあったが、ダメそうなら第五位階まで開放しようと心に秘めつつ取り合えず少しずつ提示してみることにした。

 

「――下級筋力増大(レッサー・ストレングス)、下級敏捷力増大 (レッサー・デクスタリティ)、下位属性防御(レッサー・プロテクションエナジー)、鎧強化(リーンフォース・アーマー)、中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)、ディメンジョナル……」

「もういい!」

「……そうですか?」

「何? からかってるの? ホントにそれだけできるなら銀(シルバー)や金(ゴールド)からスカウトされるわよ! そっちに行きなさいよ!」

「えー……」

 

 実際二つや三つ、しかも第二位階を使えれば銀(シルバー)は確実だろう。第三位階を使えれば白金(プラチナ)クラスといわれているほどだ。マジックキャスターのいない金(ゴールド)クラスのチームからスカウトが来てもおかしくない。

 

 そんな人間が、お金も持ってて才能もあるガキが、こんな掃き溜めのような場所にいる事で、ブリタはみじめになり、カッとなった。

 オチバはブリタの反応に言い過ぎた事はわかったが、これほどだとは思っていなかったので驚いた。しかも第三位階の移動系に入る所だったので危なかったと冷や汗をかきそうになった。

 

「使えますけど……。冒険者組合でここを薦められまして……、ほら、僕まだ銅(カッパー)ですし」

「いや、だから――」

「じゃあ、お試しで組んでみませんか!」

「え゛? それは…………、まぁお試しなら……」

 

 銅(カッパー)や鉄(アイアン)の稼ぎなどその日暮しもいい所だ。しかし、上の冒険者から声をかけられたとしてもランクが上がるまで銅(カッパー)に依頼のレベルを合わせる必要がある。それに言葉通り魔法を使えたとしても年齢や服装から体力的に問題がある可能性も浮かんできた。そう考えるとお荷物になる事もあるだろうし、ブリタは案外トントンかもしれないと考え直した。

 

「じゃあ今日からチームですね! よろしくお願いします」

「え、ええ……。ブリタ、剣士よ。よろしく」

「それでどんな依頼受けましょうか。実は今日冒険者になったばかりでして……」

「あー。それはさすがに知ってるわ。それで依頼の話なんだけど―――」

 

 オチバがマスターから買ってきた果実水を二人で飲みながら、ブリタはオチバに仕事の説明をしつつ、オチバが使える魔法の説明を聞いた。

 

 ブリタは普段街道警備をしており、たまにゴブリンやオーガが出る。不利ならば逃げることもあるが、ゴブリンやオーガの討伐に成功すると数に応じて町から組合を通して報奨金が出ること。少し外れて銀(シルバー)プレートのチームなどはたまにそれで食べてる事。

 

 装備に関しての話になると、オチバの「別の場所に預けてあるけど基本的にこれでいく」という言葉に、ブリタは熱弁を開始した。ブリタが「まず汚れてもいい厚手のマントはあった方がいい」というと、「どこで売ってるんですか?」と世間知らず全開な返答が帰って来たので、ブリタはちょっと呆れながらも、ちょうど明日は休むつもりだったので必要なものは明日そろえようという事になった。

 

 そして、今日はお開きということになったが、部屋に向う階段を登る直前、冒険の話でテンションがあがったオチバがテンションを爆発させた。

 

「皆さん、おかげさまでブリタさんとチームを組むことになりました! 応援ありがとうございました!」

「ちょっ、まっ、なんてこと言うのよ!」

 

 一瞬酒場に静寂が訪れたあと、爆笑の渦に巻き込まれた。

 

「あはははは! いいぞ、よくやった小僧!」

「ブリタ、よかったな! お前男っ気なかったもんな! 子守りがんばれよ! あっはっは」

「ブリタ、ショタ趣味だったのかよ! こりゃ傑作だ! ひー、苦しい」

「おいおい、ブリタ、子供に手だすなよ? 絶対にだすなよ? ぶはははは」

「小僧! せっかくだから襲っちまえ! 俺が許可する!」

「そりゃさすがにダメだろ。小僧が殺されちまう」

「小僧、ブリタに振られたら俺たちと組もうな!」

 

 服装から考えていた高慢な雰囲気は全くなく、魔法を使えても鼻にかけない性格、その日のうちにチームメンバーを自分から見つける社交性、それに案外おもしろい反応をする所から周りの冒険者は小さな新人冒険者に好感を持ち。オチバはガキから小僧に昇格を果たした。

 

「はーい、よろしくおねがいしまーす。あ、ブリタさん、相部屋の方がいいですか? 僕はそっちの方がいいと思うんですけど! ほら、チームですし!」

「ア、アンタねぇ……。いいわけないでしょうが! 少しは警戒しなさいよ! アンタは個室! ちゃんとカギ閉めるのよ?」

「いやでもチームですし! あ、じゃあ個室で一緒に―――」

「狭くなるだけじゃない! って違うわバカ!」

 

 ついに殴られたのかゴンッという音が鳴り会話がなくなると、ギシギシと階段を登る音が酒場に響いた。

 

「あの小僧、大丈夫かな?」

「気絶に1銅貨」

「明日教会に1銅貨」

「あ、ずりぃ、俺も明日教会に1銅貨」

「じゃあ俺は―――」

 

 実際はただオチバが黙っただけで何事もなかったのだが、誰もそれに賭ける者はいなかった。そして翌日、その場にいた全員を驚かせるような出来事が起こる事をオチバ以外誰も知らない。

 

 

 ◇

 

 オチバは一度個室に入りカギを閉めると、ブリタが「それじゃおやすみ」と言って離れる音を聞くと、そっとドアを開け、ブリタの入る部屋をチェックした。

 

 その後、再び部屋の鍵をかけ、個室の使い勝手を大体確認すると、カギ付きチェストを発見し、そこに外套以外の普段使う装備を無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)に入れた後そこに収納して鍵をかけた。早くも全裸コート状態である。

 

 そして《次元の移動(ディメンジョナル・ムーブ)》でドアの向こう側に転移し、即座に《完全不可視化》で姿を隠す。そして、ブリタの入った部屋へ入ろうと思ったのだが、ドアが閉まっていたため、他の人間が来るまで待つことになった。どうせ待つならと《完全不可視化》を信じ、オチバはその場で全裸になり、コートをアイテムボックスに放り込んだ。全裸待機である。

 

 しばらくしてバラバラと部屋に帰る冒険者が現れ始め、ブリタと同じ部屋へ入る冒険者と共にオチバはこっそりと侵入した。

 

 部屋は大部屋で、一部屋に8つのベッドがあった。枕元にはカギ付きの上蓋が開くような大きめの平たいチェストが置いてあり、チェストが開いている所は空のベッドだった。入り口のすぐ近くにブリタのベッドがあり、他には一緒に入った冒険者、さらに4つのチェストが閉じていた。

 

 ブリタはすでにベッドに入っており、戻ってきた冒険者も特にブリタに絡むこともなく装備を外し、チェストへと入れていった。後から戻ってきた冒険者も静かに同じような作業を続け、ベッドへと入る様子を見て、「静かにするのが暗黙の了解かな?」とオチバは冒険者たちの観察を続けた。全裸観察である。

 

 ブリタの部屋に泊まる冒険者が全員ベッドに入るのを見届け、オチバはこの部屋にいる全員に一人ずつ《魔法無詠唱化(サイレントマジック)》《魔法最強化(マキシマイズマジック)》《魔法抵抗難度強化(ペネトレートマジック)》《魔法持続時間延長化(エクステンドマジック)》を付加したある意味豪華な《睡眠(スリープ)》と、ブリタには特別に途中で起きられないよう、《睡眠(スリープ)》に加え《麻痺(パラライズ)》を同じように強化してかけた。

 

 そして、オチバは《完全不可視化》を解くと、服の上からブリタを触ってみた。胸を揺らしたときの視覚効果を少し楽しんだあとブリタの服を脱がしにかかる。ブリタは寝るときも普段着のような麻っぽい長袖長ズボンの上下を着ており、少し脱がすのが大変だった。

 

 ブリタを全裸にすると、脱がしたブリタの服を畳み、チェストのフタの上に置いた。下着、特に下穿きが一番上に来るよう気を使った。

 

 ブリタの体は全身筋肉といった様子で、腕も太く、腹筋は完全に6つに割れていた。さわさわと全身を撫でてみたが、女を感じるのは顔と胸と股間だけであり、これぞ女戦士といった感じだった。

 

 普段はサラシを巻いているのか、鎧で押さえつけていたのか、想像よりブリタの胸は大きく、筋肉量がそうさせるのか、真上を向いているのにあまり潰れていない。しかし、揉んでみると、大きな乳房が柔らかく形を変えた。

 

 しばらくくにゅくにゅと乳房を揉んだり乳首を摘んでみたり、さらにはペロッと舐めたあと乳首を吸ったり噛んだりし、イタズラで乳房にキスマークをつけたりしてみたが、ブリタが起きる様子はない。たまに「うーん」とか「あふっ」といった色っぽいのかよくわからない寝言が口から漏れる程度だった。

 

 次にブリタのヒザをがばっと大股に開き、秘所を見ると全く日焼けしておらず、下穿きの形に白い肌をさらしていた。頭髪と同じ赤い縮れ毛がわさわさと生えており、オチバはちょっとげんなりしたが、これはこれで自然なのだからいいのかもしれないとさわさわと毛の感触を楽しんだ。

 

 しかし、秘所の割れ目自体は経験があるのか不安になるほどキレイで、触ってみるとブリタの割れ目は今まで触ったブリタの身体の中で一番柔らかかった。唇や舌はもっと柔らかいんだろうなと思い、秘所に愛撫をしながらブリタの口に唇を重ね、舌で寝ているブリタの口内の蹂躙を開始する。

 

 ブリタの身体の反応は悪いが、秘所が僅かに濡れはじめ、その愛液をクリトリスに塗りこみ始めると溢れる愛液の量が増えた。そして鼻からの呼吸が苦しいのか、「ふーふー」という音が大きくなってきたのでオチバは唇を離した。

 

「んっ、んぅっ、ぁふ……」

 

 愛撫を続け、ブリタの寝言のような色っぽい声が小さく聞こえ始めたので、指を膣内にゆっくり入れてみるとぬるぬると熱くなっていた。

 

 予想通り処女膜はなかったが指一本でもぬめりとした愛液の中でギチギチと締め付けられた。しばらく指を往復させたあと、オチバは身体をブリタの足の間に入れ、ブリタの両膝を持つとM字開脚の形にして硬くなった自分の竿をブリタのワレメに擦りつけながら愛液にまみれさせた。

 

 そして、ゆっくりと挿入を開始し、入り口あたりで亀頭に愛液を補充し、少し進むたびにぬるぬるぎちぎちとぬめりながら締め付ける穴を楽しみながらすべて挿入を果たした。

 

「あ……、あん……、んふぁ……」

 

 ブリタの声に、起きてないよね? と少し不安になったが目はちゃんと閉じていた。むしろ少し眉間に皺がよっていてかわいく見えた。オチバはそのブリタの表情にますます肉棒を硬くした。ブリタと再び軽く口付けすると、オチバはブリタの胸に吸い付きながらぐりぐりと腰を動かし始めた。

 

「あ、あんっ、だめよ……そんな、クリス。赤ちゃん……できちゃう……よ? あん……」

「ふふっ、ブリタ。赤ちゃん欲しいのかな?」

 

 ブリタは初体験の相手か初恋の人かはわからないが幸せな夢を見ているようだった。そのまま奥に入れたまま少し大胆にぐりぐりと腰を動かすと、ブリタの陰毛がざらざらと肉棒の上を擦り、ブリタの膣内が締め付けるだけでなく搾り取るようにうごめきだすとオチバはあっという間に限界を迎えた。

 

 ブリタの最奥に届けとばかりに腰を押し込むと、ドクッドクッと射精した。寝ている上に麻痺しているはずのブリタの身体はそれに反応してピクッピクッと僅かに筋肉を痙攣させた。

 

「あふん……。もう……。ああん……」

 

 ブリタは眉間の皺を濃くし、射精が終わってしばらくすると、幸せそうな顔をしてすーすーと寝息をこぼし始めた。

 

「はー。よかったよ。ブリタ」

 

 オチバは寝ているブリタにそういうと、ブリタのヒザを開いて自分の柔らかくなった肉棒を抜いた。ブリタのワレメはいまだにひくひくとうごめいており、愛液がぬらぬらと光っていた。それをしばらく眺めているとオチバの肉棒が力を取り戻したため、オチバは再び挿入した。

 

 その後2回ブリタの中に出すと、オチバもさすがに眠くなった。ブリタに服を着せて自分のベッドに戻ろうかとも思ったが、硬いベッドよりブリタの肉布団の方が寝心地がよさそうだったのでアイテムボックスから外套を出すと、自分とブリタを覆うようにかけ、挿入したまま頬をブリタの胸に乗せ、眠りに落ちた。

 

 

 

 冒険者の朝は早い。日の出と共に動き始める。

 しかし、その日ブリタはいつもより早く起きた。夢見がよかったのか幸せな眠気が未だに残っていたが、妙に身体が重く、少しだけ寝苦しかった。しかも寝汗をかいた後のような感じと妙にスースーする開放感があった。

 

「んんぅ……あふぁあああ」

 

 ブリタは一度あくびをし、少し体を起こすと、見たことはあるが見慣れない、そしてここにあってはいけない外套が目に入った。さっと血の気が引き、ブリタは一瞬で目が覚めた。予想通り肌触りのよい外套は見間違いではなく、恐る恐る中を覗くと全裸の自分を布団と枕にして幸せそうに眠る外套の持ち主がいた。

 

「おっきゃああああああああああ!!! ななななんで!? ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとアンタ! 何でここにいるのよ!! 起きなさいよ!!!」

 

 ブリタは奇声を上げながらオチバを引き剥がして起こそうとした。しかし、半身を起こしたことで落ちかかっていた外套がブリタの手を離れ、ブリタが暴れたことで張り付くオチバの背中、ブリタの腰元までずり下がり、オチバは全く起きる気配もなくブリタの背中に手を回すとすりすりと胸に顔をこすり始めた。

 

「うるさいぞぉ、ブリタ」

「ああん? なんだアノ日か? マスターに言っとけよ?」

「朝からうるせぇんだよ、クソが!」

「いってぇ! うっせぇんだよクソブリタ! ベッドから落ちちまったじゃねぇか!」

「ふあぁぁぁ、どうしたぁ? お宝ポーションでも割れたのかぁ?」

 

 ブリタの奇声で同じ部屋で寝ていた男達が文句を言いながら起きてきた。木窓から僅かに朝日が入ってきているものの幸いまだ薄暗かったが男達の声にブリタは焦った。

 

「アアアアンタたちは起きなくてもいいのよ! もう少し寝てなさい!」

 

「あー? そりゃねぇだろブリタ」

「お前が起こしといてそりゃねぇぜ」

「マジでアノ日か? 何だ? 男が出来てようやく羞恥心が芽生えたか?」

「いってぇ……。鼻折れてねぇだろうなぁ……」

「おい、大丈夫か? って暗いな。ちょっと待ってろ。木窓上げるわ」

 

「ちょ、ちょっと木窓待っ―――」

 ブリタの静止の声は間に合わず、無常にも木窓は上げられた。朝のさわやかな空気とまぶしいほどの朝日が室内を満たし、混乱の中にあった部屋に静寂がもたらされた。

 

「―――……いいもん見れた? とりあえず木窓下ろして」

 

「え? あ、はい……」

「マ、マジカ……。えーと……俺、寝てますから……」

「今さら見られて困るもんでも……なぁっ!? ナンデモアリマセン」

「おい、光入れてちゃんとみてくれよ。何か生ぐせぇし、折れてねぇよな?」

「あー……、起きたら診てやるから寝てろ。これ多分夢だわ……」

 

 さわやかな空気はあっという間に凍った。ブリタは怒りと共に冷静さを取り戻し、男達は再び眠りについた。そしてブリタは再度オチバを起こそうとするが、まったく起きる気配がない。

 

 ブリタは我慢に我慢を重ね、穏便に起こそうと努力した。しかし、その際身体の位置がずれたことで、自分の股に身体を差し込んだオチバの位置がずれ、汚れが目立たないよう配慮された灰色のシーツにあってはならないシミが出来ているのを見てしまった。そしてブリタはぶち切れた。

 

「ちょっ! アンタ! なんてことしてくれたのよ!? 赤ちゃんできたらどうすんのよ! こんのバカ野郎があああああ!!!」

 

 大量の殺気と共にガチで殺しにブリタは肘をオチバの頭に全力で落そうと振り上げると、今までの寝坊が嘘のように、オチバは跳ねるように飛び起きた。当然全裸である。

 

「あ、おはようございます。ブリタさん。あの、身体洗う場所はどこですか? それと洋服着たほうがいいですよ?」

「おはよう……。外に洗い場があるわ。そんなことより、これ、どういうことよ……」

 

「あのガキ……マジか……。ぐーぐー」

「しょっぱなから中出し……だと……? ぐごぉぐごぉ」

「ブリタもそういうの気にするのか。すーすー」

「ブリタにガキが出来るわきゃねぇだろ。それより俺の鼻……」

「生きたきゃ寝てろ、相棒。そりゃ夢なんだよ……すーすー」

 

 相手は子供、周りには同じ冒険者、しかも冒険者たちは空気を読んで寝た振りをし続けているし、一人は鼻を負傷したらしい。同じ冒険者に痴話喧嘩なんか見られたくないブリタは怒りを押し込めつつ何とか冷静にこの場をおさめる事にした。

 

「みんなに悪いから後で話しましょ。終わったらアンタの部屋に行くからとりあえず出てって……」

「あ、はい……外套持ってっていいですか? 全裸で歩くのはちょっと……」

「いいから出てって……」

 

 ブリタが自分の外套を胸に抱えたまま離さないので、しょうがなくオチバは全裸で自分の部屋に戻り、装備の入った無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)を背負い、階段を降りていった。

 

 カウンターではすでにマスターが朝の給仕をしていた。朝一番のブリタの叫び声でこの宿の冒険者は全員起きたようで、ブリタとは別室だった冒険者はすでに準備を終え、ブリタを気にかけながらも食事していた。

 

 粥に付け合せのおかずはブリタの発言と昨日の新人冒険者の噂だ。今この場にいる冒険者が全員昨日オチバを見たわけではなく、魔法を使う子供の新人が入ったという大きな情報も大きな話題だった。

 

 しかし、ブリタの赤ちゃん発言に、昨日チームを組んだばかりの相手―――しかもブリタ―――に夜這いをかけるほどの大物なのかという疑問の方が大きく、襲った、他のヤツが襲った、むしろ襲われたと賭けの対象にまで発展していた。

 

 マスターは騒ぎを聞きつつ自分が介入するまでもないと考えていたが、ブリタの声で赤ちゃんという単語が聞こえ、ブリタが性的に襲われたのかと心配しつつ、様子を見に行くか迷っていた。

 

「おはようございます。マスター。身体を洗いたいのですが、洗い場はどこですか?」

「お、おぅ……おはよう……。その、なんだ……。身包み剥がされてねぇだろうな? 大丈夫か?」

「ああ、着替えは全部このザックに入ってます。僕はなんともありませんよ」

「ならいい。洗い場ならそこを出たとこだ。あと全裸では歩くな。何か羽織るもんでも用意しとけ」

「はーい」

 

 手を振って悠々と全裸で歩いていくオチバの姿に、マスターはガキの無邪気さと王者の風格を感じた。前者は無知から来る羞恥心のなさ、後者は襲ってくるなら来い、襲うのは俺だという自信。相反するものが同居する心理にマスターは首を振ると朝の給仕を再開した。

 

 そこにいた冒険者たちもそれを横目に見ていたが、馬鹿なのか大物なのか判断できなかった。ただ、「他のヤツが襲った」に賭けた冒険者は負けを悟ったのか、ブリタか同室のヤツらが下りて来る前にこの場を離れようと猛烈に粥をかき込み始めた。

 

 

 ブリタは一度全身くまなく水を浴びて汚れを落としたかったが、昨日冒険から帰った時に使ったバケツの水にタオルをひたし、それで身体を拭くことで我慢した。そして出来るだけ早く汚れを落とすと、ご丁寧にチェストの上蓋の上に置かれた自分の服を着る。シーツのシミが目に入り、シーツを剥がしてバケツに突っ込み、残った水を使って出来るだけ落とすと、他の冒険者に声をかけた。

 

「みんな、ごめん。とりあえず終わったわ」

 

「あー、おはよう、ブリタ。よく寝たぜ」

「ふああああ、もう朝か? 何か今日はすげぇ夢みた気がするわ」

「ブリタ、その、なんだ……。……おはよう」

「あぁー。いってぇ……やっぱ夢じゃねぇじゃねぇか……」

「おはよう。光入れるぞ? あー、こりゃたぶん折れてるわ。打ち所が悪かったな、相棒。ここの始末はしといてやるから神官に診てもらえ」

 

 ブリタの隣のベッドで寝ていた剣士―――スキンヘッドに刺青を入れ耳にピアスをしている―――はブリタの大声に驚きベッドから落ちて鼻を折っていた。幸いブリタのベッドとは逆の方向に落ちており、ブリタの痴態が見えなかったのは運がよかったのか悪かったのかは誰にもわからない。ただそこには大量の鼻血が広がっていた。

 

 

 

 オチバがゆっくりと水を浴び、着替え、身なりを整えて酒場に戻るとちょうどブリタと同じ部屋に泊まっていた冒険者が下りてくるところだった。

 

「あ、おはようございます。今朝はどうもすいませんでした」

 

 オチバが挨拶すると冒険者たちは「ああ」とか「おう」とか「まぁ気にすんな」とか言葉少なげに食事に向ったが、オチバは一人鼻を折ってしまった冒険者に気付いた。どう見てもガラの悪い冒険者だが、今は鼻血と格闘している。何かかわいそうなのでオチバは治してあげることにした。減ったであろうカルマを回復するといいことがあるのだ。たぶん。

 

「つらそうですね。治しましょうか?」

「小僧、治せるのか? マジ頼む!」

「あ、でも組合の規定でお金取らなきゃいけないっていうのがあったんですが……」

 

 そのあたりどうなんでしょう? とマスターに問いかけると、マスターは少し考え、答えを出した。この辺りはかなりグレーゾーンなのだ。

 

「冒険者同士なら多分大丈夫だ。それに俺は見てねぇ、お前らもしらねぇ。いいな?」

「そうですか。じゃあお試しってことで。ちょっとしゃがんでください」

「おう、頼むぜ」

「《中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)》」

 

 冒険者達の目の前で、第二位階の治癒魔法が使われた。鼻を折った剣士が薄緑に光り、少し曲がっていた鼻が元に戻る。皆驚きを隠せなかったが、一番驚いたのはマスターだった。マスターは元冒険者であり、それなりのプレートを持っていたし、第二位階の治癒魔法も知っていた。

 

 この年で第二位階……、ああは言ったが組合に報告するべきか? いや、確かに才能はあるが、ブリタから話を聞いてからでも遅くないな。場合によっちゃ詰め所行きもなくはないだろうしな……。まぁないか。

 

「……どうでしょう?」

「お? すげぇ! 全然痛くねぇし違和感もねぇ。マジありがとな! マスター、この小僧に果実酒一杯だ!」

「バカ、ガキに酒なんざ出せるか! ほらよ、果実水だがな。食ったヤツはさっさと仕事行け仕事!」

 

 オチバは果実水をあっという間に飲み干すと、「ごちそうさま」と言って個室に戻った。個室の前ではブリタが仁王立ちしていた。

 

「ずいぶんと遅かったわね。神様にでもお祈りしてたのかしら」

「すいません。まぁお祈りと言えばお祈りなんですかね?」

「まぁいいわ。中に入るわよ」

 

 信仰系魔法が神の祈りから発しているのならお祈りかもしれない。そんな事を考えながら答えたのだが、議論の余地はそこになかった。ブリタとオチバは部屋に入り、オチバがそそくさとベッドに座るとブリタはひとまず外套を投げつけて返した。

 

 オチバは「どうも」と言いながらそれに袖を通す。どちらからも言い出しづらい雰囲気がただよった。ブリタとしてはとても許せる事ではなかった。確かに女を捨ててはいたが、初日、しかもチームを組んだばかりの相手に、自分が寝ている間に襲われるとは思ってもみなかった。信頼関係の構築どころかいきなり信頼を裏切る所業だ。

 

 それに、ブリタは待っている間に多少怒りが収まり、冷静な思考を取り戻した。そして違和感を感じた。襲われた段階で自分が起きなかった事に疑問を感じたのだ。薬を盛られたかとも考えたが同じものを一緒に飲んでいたし違和感はなかった。どう考えても答えの出ない違和感にモヤモヤとしていた。

 

「で、なんであんなことしたの?」

 

 返答次第では取り合えず一発殴ろうとブリタは心に決めた。きっとマスターに話せばわかってくれるだろうと。殺さなければ問題ないだろうと、拳を握る。

 

「そうですね。理由はいくつもあるのですが―――」

「端的に」

「初めて見た時に見た目に惹かれまして……」

「え? (わたしって結構いい線行ってる? こんな身なりなのに一目惚れ?)」

「好奇心で一度抱いてみたいなと……」

「……殴っていい? いや殴るわ! わたしは珍獣かああぁぁぁ!」

 

 室内にゴンッという鈍器で殴ったような音が響いた。オチバは避ける事も出来たがそのまま顔面でブリタの拳を受けた。当然ダメージは入らず、むしろ殴ったブリタの拳が壊れた。ブリタは一瞬停止したあと、声も出せず脂汗をかきながら拳を抱えてうずくまった。

 

「だ、大丈夫ですか? 《魔法最強化(マキシマイズマジック)・中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)》……まだ痛みますか?」

「あ、大丈夫。ありがと……。ってどうなってるのよ。何かのマジックアイテム?」

「あー……、うーん……ありていに言えばそんな感じですかね?」

 

 どう見ても下手なごまかしだったが、冒険者には互いの事情を詮索しないという暗黙のルールがある。それにあれだけスラスラと自分の魔法を羅列したのに隠すくらいなのだから何か秘密があるのだろうと納得した。すでにトラブルは起きてるが、この事に関しては追求しないことにした。

 

「まぁ、気になるけどそれはいいわ。で、どうやって寝込みを襲ったの? アンタの魔法?」

「はい、結構がんばりました!」

 

 使える魔法について詳しく聞かなかったのはブリタだ。折角オチバがスラスラと話したのだからあの時ちゃんと最後まで聞いておけばよかったと思った。ただ、オチバは精神系魔法について話したかは今となっては謎である。

 

「そう、レンジャーでも食っていけるんじゃない?」

「そうですか? 信仰系マジックキャスターで行こうと思ってたんですけど、レンジャーにした方がいいですかね?」

「褒めてないから! これ嫌味だから! そのくらい分かりなさいよ、まったくもう……」

 

 起きてしまった事は、とおぉっっっても納得いかないが、仕方がない。環境を考えると今までなかったのが不思議なくらいだ。それにオチバの実力も垣間見えたし、少しタネが分かったことでモヤモヤも晴れた。大切なのはこれから、とブリタは自分を納得させた。

 

「それで、これからどうすんの?」

「まずはマント屋さんですかね?」

 

 再びブリタは拳を固め、思わず殴りそういなったが先ほどの痛みを思い出し、ガンガンと地団駄を踏んだ。

 

「ああああああ! もう! ちっがーう! これからどう責任取ってくれるのかって聞いてるのよ! わたし処女だったのよ!? それを、それを、寝込みを襲うなんて! 最低最悪のクズよ!」

「あ、処女だったんですか。ごちそうさまでした。血が出なかったので気付きませんでした。今度は起きてるときに襲いますね」

「起きてればいいって言ってるんじゃないの! 同意なしに襲うなって言ってるの! 魔法の覚えすぎで頭おかしくなっちゃったの? ねぇ!!」

「ふむ。なるほど、その設定いただきです。実は無理に魔法を覚えすぎたせいで、気になった女性を無理やり襲ってしまう不幸な体質になってしまったのです。申し訳ありません」

 

 ブリタはオチバが反省し、今後一切自分にも他の女にも手を出さないっていうならギリギリ許そうと思った。チームとして今後を考えると惜しい逸材ではあった。だが、ブリタは真面目にコツコツとやってきたのだ。いつ仲間に襲われるかわからず、たえず避妊薬を持ち歩く事になるなんて我慢できるはずがない。

 

 しかし、ふとブリタはひとつ大事な事を聞いてないことに気付いた。今現在避妊薬が必要なのだろうかと……

 

「で、その……さ。なんていうか……中に……その、出したの?」

「ええ、気持ちよかったですよ。ブリタさん」

「……1回だけよね?」

「いえ、確か3回ほど……」

 

 あんまりだった。1回も3回も変わらないかもしれないがあんまりだった。ブリタは思わず自分の股を確認してしまいそうになった。それにニコニコと笑顔でいるオチバが憎かった。しかし、ぶっ殺してやりたいくらいだけど殴ることすらかなわない。世の中の不条理にブリタは泣きそうになった。

 

 最初はいいヤツだと思ったのに……。わたしは娼婦なんかじゃない! 冒険者なのよ! もう最悪! チーム解消よ! もう顔を見るのも嫌っ!

 

 ブリタは落とし前の条件をオチバに出した。「オチバが避妊薬を買って自分に渡すこと」と金貨1枚。飲まなかったら衛兵に突き出すと。さらにチーム解消を宣言した。

 

 オチバはチーム解消に少し落ち込んだが、避妊薬には興味を示した。当然、買うのも金貨1枚も笑顔で了承した。ガゼフから貰ったお金だけでは今後に差し障ったかもしれないが、狩ったスレイン法国の人達がたくさん持っていたのだ。それら装備を売ったお金も合わせてうっはうはだった。今の所支出が限られているのでお金のために冒険者の仕事をする必要はなかった。

 

 そんなオチバを見てブリタはもっとふっかければよかったと後悔した。その後、二人そろってマスターの所に避妊薬を扱う薬師を聞きに行く事になった。

 

 ある程度ブリタの叫び声はマスターの耳に届いており、二人そろって自分の所に来たことで、マスターは自分が今回の厄介ごとの解決に巻き込まれる事を覚悟した。

 

「どうした?」

「あー、マスター、いい避妊薬売ってる薬師知らない? コイツに寝込みを襲われたの」

「そうか……。そいつは災難だったな。しかし避妊薬か……、まぁピンキリだな」

「ああ、コイツに支払わせるからピンで。一番いいヤツでお願い」

「まぁそうだよな……、そこは店で相談してくれや。バレアレさん紹介してやるから」

「バレアレってエ・ランテル最高の薬師という……」

「ああ、こう見えても結構顔は広いからな」

 

 店までの場所をブリタに教え、マスターはバレアレ氏に渡す紹介状を書き始めた。

 

「で、これからどうすんだ?」

「チーム解消よ。コイツ全然反省してないし、いつ孕まされるかわかったもんじゃないし、やってらんないわ」

 

 マスターは「まぁそうだよな」と言いながら書き上げた紹介状をブリタに渡す。

 

「おい、ガキ。反省くらいはしろよ……」

「ええっと、実は無理に魔法を覚えすぎたせいで、気になった女性を無理やり襲ってしまう不幸な体質になってしまったのです」

 

 オチバの発言にマスターは「そういうこともあるのか」と納得してしまった。こんな年で第二位階の治癒魔法を覚えたくらいなのだからそのくらいの不幸があってもおかしくないと、マスターはオチバに寂しそうな顔を向けた。しかし、そんなやり取りをブリタは冷めた目で見たあと、口を開いた。

 

「マスター、それ嘘だから。さっき設定とか言ってたから……」

 

 一瞬時が止まった。ブリタの言葉にマスターはオチバの方を見ると、オチバは「てへっ」と言いながら笑顔で舌を出した。全然かわいくなかった。むしろマスターの怒りが爆発した。

 

「そうか、お前は出入り禁止だ。今後一切来るんじゃねぇ。ブリタに詫び入れたら消えるんだな」

「はーい、それじゃあブリタさん、お薬買いに行きましょうか!」

 

 全く堪えてないオチバの様子に怒り心頭のマスターだったが、今回わかったオチバの能力とこの宿での一件を冒険者組合に報告することで我慢することにした。そもそも当事者のブリタがそれでいいと言っているのだ。自分に出来ることはこのくらいしかないと自分を納得させた。

 

「才能の代わりに人間性失くしたのか? ったく胸糞悪いな」

 

 そんな事をつぶやきながらマスターはギルドへの報告書を書き始めた。

 

 

 

 

 リイジー・バレアレはエ・ランテル最高の薬師と呼ばれている。何人もの弟子を持ち、老齢になる生涯をポーション作りに捧げてきた。孫のンフィーレア・バレアレと共にバレアレ薬品店を営んでおり、普段は工房でポーション作りに励んでいる。

 

 その日もポーション作りに励んでいたのだが、孫のンフィーレアが客を連れてきた。人数は二人の冒険者。戦士といったいでたちで筋肉質の女冒険者と、どこかの貴族の子息といったいでたちの少年冒険者だ。見た目は10~12歳ほど。首からさげる銅(カッパー)プレートがなければ貴族と言われても信じただろう。

 

「おばあちゃん。これなんだけど」

「どれどれ……。ったくしょうがないねぇ。ンフィーレア、ここは頼むよ」

 

 ンフィーレアがブリタから受け取ったマスターからの手紙をリイジーに渡すと、リイジーは作りかけのポーションを任せ、二人の冒険者と共に店舗の方へ移動した。ンフィーレアは避妊薬のような女性にだけ必要な薬を扱うには初心すぎるのだ。

 

「それで、その子は一緒に聞いていいのかい? ちょっと踏み込んだ話になるよ?」

「コイツがお金を出すので」

「ええ、是非聞かせてください」

「……そうかい」

 

 リイジーはンフィーレアの純朴な性格を心配する事もあったが、この少しおかしな少年よりはマシなのかもしれないと思った。

 

 事後でもある程度短期間のうちならば効果がある物で一番いい物を頼むという言葉に、リイジーは「高いよ?」と言いながら副作用のほとんどない一番高い物を出した。オチバが即金で支払うと、ブリタはその場で飲み、空いたビンを返した。

 

「じゃあ、これで。ありがとうございました」

「あ、ブリタさん。僕はもうちょっとここに用があるんだけど」

「好きにすれば? どうせもう会わないでしょ」

「うん、またね」

「またじゃないわよッ!」

 

 ブリタが怒りながらバレアレ店を出て行くと、オチバはリイジーに向き直った。

 

「追わなくていいのかい?」

「まぁあれだけ嫌われてますからあまり変わらないでしょう」

「そうかい……。それじゃ、用件を聞こうか」

「その、治癒のポーションについて詳しい話を聞きたいのですが―――」

 

 リイジーも暇ではないのだが、孫のンフィーレアより若い少年を無下にはできなかった。オチバはリイジーから治癒のポーションは製造過程で必ず青くなるという話やポーションが劣化するという話を聞いて驚いた。

 

 しかし、ユグドラシルの世界ではないのだから当然かもしれないと思い直し、治癒以外にどんなポーションがあるのか、など一時間ほど話し込んだ。オチバは情報量も兼ねて一番高い治癒のポーションを三つと先ほどブリタが飲んだ避妊薬を三つ買い求め店を出た。

 オチバのような子供に避妊薬を売り渡すリイジーもかなりドライだが、飲んで変なことになる薬ではないので問題はなかった。

 

 

 オチバはバレアレ店を出た後、朝と昼食を兼ねて屋台で買った肉を食べながら冒険者組合に向った。オススメの宿を追い出されたので他のオススメの宿を聞こうと思ったのだ。オチバはブリタとのお仕事が流れたため、依頼を受けるという発想はなかった。

 

 

 






回復魔法の規定料金
リィジーさんが鑑定した第2位階相当の回復量の赤いポーションが効果価値として金貨8枚だったところから単純に計算。緊急性への対応力から魔法だと半額とかになりそうだけどどちらにしろ高いことは決まっていた気がする。今後数字はあまり出てこない予定。

お金
よくわからないのでできるだけ忠実に混ぜた結果から予想し、1銀貨=10銅貨、100銀貨=1金貨としました。ぶっちゃけ価値がわからないのであんまり出したくない。
WEB版には1銀貨=10銅貨とわかる記載あり。
書籍版は探すのがめんd(略
アニメでのブリタのポーションの値段が金貨一枚と銀貨十枚。なおアニメでは5銅貨と言ったり銀貨十枚と言ったりバラバラなため数字と貨幣の順番はどっちでもいいもよう。

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