※この作品はR-18です。

オバロR18もの   作:しうか

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3 狙った獲物 イシュペン

 

イシュペン編

 

 昼の冒険者組合は基本的に暇である。受付嬢のイシュペンとウィナも基本的に毎日この時間は睡魔との戦いを強いられる。しかし、今日に限ってはそうでもなかった。

 

 初級冒険者用宿のマスターからクレームと情報が来た事を発端として、その新人をイシュペンが受け付けたことで色々とギルドマスターのプルトン・アインザックとオチパについて話すことになり、イシュペンはオチパの所業と今後の対応を聞いてひどく落ち込んだ。

 

 情報によるとその少年はその宿で少なくとも鑑定と第二位階の治癒魔法を使ったとのことだ実際にイシュペンの代筆で信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)として登録されていた。そこは問題ない。ちょっとイシュペンが過去の自分を殴りたくなっただけだ。

 

 しかし、オチパの能力は目を見張るものはあるがワーカー一歩手前だと思えと忠告された。

 

 ガゼフから都市長を通じて冒険者組合、魔術師組合の両ギルドマスターの下へオチバの情報が来ており、登録に来た際は注意し、できるならエ・ランテルに縛り付けろとの話があった。

 

 しかし、ガゼフが都市長にした報告では転移魔法を使う凄腕の剣士で見た目は黒髪黒目の少年、名前はオチバだった。日時、イシュペンから聞いた見た目、名前こそオチパと記載されているが、偶然か必然かと言ったら必然の範囲だろう。むしろ隠す気があるのかと直接聞いてみたいほどだ。

 

 しかし、オチパの申告によると剣が得意という点は一致するものの、使えるのは基本的に第三位階の信仰系魔法。魔術師組合のギルドマスター、テオ・ラケシルはオチバが使ったという転移魔法に興奮していたものの、「魔力系と信仰系は全く違う」と怒り狂い、プルトン・アインザックはテオ・ラシケルを宥めるのに酒を奢る羽目になった。

 

 その席で、二人は新しく現れた英雄と才能ある冒険者に関して、オチバとオチパは兄弟か双子の別人だという事に落ち着いた。実際王国のアダマンタイト級冒険者にはティアとティナという双子の冒険者がいる。だが今回は、片方は英雄、片方はクズという新たな問題を孕んでいそうなイヤな予想だった。

 

 そう、オチパに対する宿のマスターから来た報告書によるとオチパはまさにクズなのだ。使用に関しては問題ない。規則に抵触するかはギリギリの所だが、教会が何か言ってこない限り問題ない。だが10~12歳にしか見えないくらい若いのに女癖が最悪らしいのだ。

 

 信じられない事に、初日にいきなりチームを組んだばかりの年上の先輩女冒険者の剣士の寝込みを性的に無理やり襲い、その宿を出入り禁止になった。本人同士で話はついているらしいが、冒険者組合の提供する宿からクレームが来るような人間には組合から何らかの罰則が与えられてもおかしくない。

 

 しかし、オチバは若すぎ、まだまだ伸びるであろう彼の才能と能力は捨てがたい。もっと上の冒険者をチームで当てて今のうちに矯正しよう。そういう事になった。その窓口にイシュペンが選ばれ彼女は落ち込んだのだった。当然ウィナに酒を奢らせる事が決定したのは言うまでもない。今日の夜は二人でヤケ酒だ。

 

 そんなことになっているとは知らず、オチバは悠々と冒険者組合へと入っていった。そして今度こそもう片方の受付嬢と話してみようとそちらに向おうとすると、もう片方の受付嬢――ウィナは、何か用事があるかのごとくさっさと席を立ち扉の向こうに消えた。

 

 オチバは「あらら……」などとつぶやきながらさっさと用件を終わらせようともう一人の受付嬢、イシュペンの元へ行った。当然新しい宿を聞きに来ただけだ。

 

「ようこそ冒険者組合へ。オチパ様、アインザック組合長から呼び出しがかかっております。ご案内します」

「フムン。もしかして昇格ですかな?」

「そんなわけないでしょう!? 頭くさってるんですか?」

「ええ、まぁそんな所です」

「認めるの!? あ……こほん。ではご案内します」

 

 オチバは3階にある会議室のようながらんとした部屋に案内された。部屋にはテーブルがひとつと簡素な木製の椅子がいくつかあるだけだ。オチバが部屋に入るとイシュペンは「こちらでお待ちください」とだけ言って出て行った。

 

 特にやることもないので椅子に座って組合長を待っていると10分ほどして組合長がイシュペンをともなって入ってきた。

 

「私がエ・ランテル冒険者組合のギルドマスター。プルトン・アインザックだ」

「どうも、オチパです」

「確かに若いな……。いくつになるかね?」

「さぁ……? 詳しくはわかりませんが見た目どおりの年齢かと」

「孤児かね?」

「いえ、まぁ色々ありまして」

「そうか。魔法はどこで覚えたのかね?」

「んー……。まぁ色々ありまして」

「……その言葉はそんなに便利な言葉ではないぞ?」

「そうでしたか」

 

 アインザックはオチバに対して威圧的に接した。モンスター相手の傭兵とまで言われる冒険者組合をまとめているくらいだ。新人冒険者くらいなら簡単にビビるし、ミスリル級相手でも上から話せる。そんなアインザックの威圧をオチバはひょうひょうと受け流した。

 

 しかしこれらは冒険者に対してする質問ではない。つまりアインザックは冒険者ではなく子供として扱おうとしたのだ。しかし、ここまで受け流された事で子供ではなくひとりの冒険者として扱うことにした。

 

「ふぅ……。君は冒険者を続けたいかね?」

「ええ、せっかくですから」

「今回の女性冒険者を襲った件に関しては特別罰則はない」

「デスヨネー」

「が、しかしだ! 今後、こんなことが続けば、君が犯罪者として牢獄に送られる日や、君を除名処分にする日が来るかもしれん!」

「あらら、それはちょっと困ります」

「そうだろう? 我々も君の才能には期待しているのだよ」

「ありがとうございます」

「うんうん。そこでだ―――」

 

 アインザックの提案はギルドが紹介する銀(シルバー)クラスのチームに付いて冒険者として学んではどうかということだった。オチバはほいほいとその提案に乗った。

 

 エ・ランテルにはミスリル3チームを始め、白金(プラチナ)、金(ゴールド)も複数存在しているが、アインザックはこんな事にそれらのチームを動かしたくなかった。本人の申告通り第三位階の魔法を使えるのであれば白金(プラチナ)、実際に使った魔法を考えると金(ゴールド)が適切なのだろう。

 

 しかし、アインザックは緊急時にそれらのクラスのチームが「オチバの教育を兼ねて街道警備に出ていて間に合いませんでした」なんて事になってほしくないのだ。つまり金(ゴールド)以上は出来るだけこのまま管理しておきたい。それに使った魔法は鑑定や治癒、本人の申告では補助系がメインとの事なので銀(シルバー)クラスでも管理ができると判断したのだ。

 

 行儀が良く男だけで編成され、この依頼を受けてくれるような銀(シルバー)チームが現れるかが問題だが、一番面倒くさそうなオチバの説得が簡単に終わったことでアインザックは上手く行ったと手応えを感じた。

 

 しかし、オチバの「ところで宿を紹介して欲しくて来たのですが……」という言葉にアインザックは少し悩んだ。中級や上級冒険者の利用する宿なんか紹介したらそこを拠点とする冒険者と問題になる事は目に見えている。しかし、ここで新たに冒険者組合と関係ない宿を紹介したところで同じことが繰り返され、衛兵に通報でもされたら今回やった事の意味がなくなる。

 

 そこでアインザックは妙案を思いついた。

 

「ふむ。それでは新たなチームが見つかるまで特例で一階での寝泊りを許可しよう。冒険者であれば雨露しのげるだけマシと考えるものだ。むろん金は取らんから安心したまえ」

「ありがとうございます」

 

 つまり冒険者組合のロビーで寝てろと言っているのだが、オチバとしてはそれでもいいかなと考えた。ロビーにはいくつも長いすがあった。宿にあった硬いベッドを考えればあまり変わらないはずだ。そもそもその硬いベッドにブリタを敷いて寝ていたので比較はできないが……。

 

 案外素直なオチバの反応にアインザックは「やはり子供か?」と感じた。

 

 

 

 

 

 受付嬢のイシュペンは仕事に励んでいた。オチバの教育をする銀(シルバー)チームの選出だ。アインザック組合長が、直接冒険者に接する機会はほとんどない。ギルドの出す依頼は基本的に貢献度が高く設定されており、真面目で上昇志向のある冒険者にとっては成功の可能性が高ければぜひとも受けたいものだ。

 

 しかし、エ・ランテルの冒険者ギルドが出す依頼は大抵都市長経由で出される街道警備が精々で、特別なものは指名依頼されることが多い。今回のように特別なものであるにも関わらず、下から三番目に位置する銀(シルバー)クラスに限定される事は大変珍しいため、依頼表を掲示しようものなら取り合いになるだろう。

 

 そして、受けに来たすべての冒険者に対しギルドマスターが面談するような時間はない。そのため、ある程度の絞込みを冒険者と直に接する受付嬢に丸投げしたのだ。受付嬢に絞り込ませ、依頼を受けに来たチームがそのリストにあればアインザックが面談する。つまるところ先に一次審査をしてしまおうという事だった。

 

 この審査が終わらない限り、依頼表を張り出せない。普段なら人の命が関わる仕事が多いので極力急ぐが、ここまで鬼気迫るものではない。しかし、急ぐ必要があったのだ。そう、彼女達はチームが見つかるまでオチバが一階に泊まる事を知ってしまったのだ。あの強姦魔が目の前の長イスに寝転がり、自分達を舐めるように見るのだ。

 

 実際今もイシュペンたちが視線を向ければオチバがじろじろと見ているのが確認できるだろう。時々いなくなるが、気持ちの悪いことに決まって彼女たちが席を立つときだった。時間が空いた時は同じ危機感を抱いたウィナも手伝うが、現在はウィナの受付に冒険者が訪れていた。

 

 オチバが居ついてからまだ半日しか経っていないというのにイシュペンは何でこんなガキに期待を寄せなければならないのかわからなくなってきていた。成長して犯罪者になる前に牢にぶち込んだ方が早いのではないかと思うようになっていた。

 

 イシュペンのその認識は正しかった。実際、オチバはロビーに居つくと、目の前にいる受付嬢たちにイタズラしていた。彼女達が席を立つと《完全不可視化》を使って後をつけ、覗くのはもちろん、トイレに入れば色々な所をおさわりしていた。

 

 そんな彼女達は夕方までには選定を終え、イシュペンはギルドマスターへリストを渡した。ギルドマスターはその数の少なさに少し驚きながらも、来なかったら増やせばいいかと依頼表を作成した。その出来立てほやほやの依頼表を嬉々としてイシュペンが受け取り、ロビーに戻ると掲示板に目立つよう他の依頼を寄せてど真ん中に貼り付けた。

 

 オチバはギルドマスターとイシュペンの話を盗み聞きし、その依頼表が張り出されると、町へと散策に出かけた。イタズラ道具をそろえるのが目的だった。使えそうなものを見つけると片っ端から買っていった。当然売った人間はイタズラに使われるとは夢にも思っていなかった。

 

 

 

 

 エ・ランテルを拠点に活動する銀級冒険者チーム、漆黒の剣の面々は仕事を終え、組合へと清算に帰ってきた。清算を終えると、一応新しい依頼が出てないか依頼掲示板の確認を行い、逗留先の宿に戻る予定だった。大抵新しい依頼は朝に張り出されるため、あくまで一応だった。

 

 しかし、チームの頭脳ニニャが周りの依頼表を張りなおしたような真ん中にあった不自然な空間に一枚の依頼が張り出されているのに気付いた。しかも募集対象は「男だけで編成された」という条件は付くものの漆黒の剣と同じ銀級チームだった。

 

 依頼内容は新人冒険者1名の教育、期間は2週間以上。最低2週間を終えれば依頼は達成されたことになるようだ。2週間といえばエ・ランテルから王都リ・エスティーゼを往復できる期間だが、大口で定期的なものは大抵指名依頼だ。小口のものを取れるかは運次第だ。

 

 それらと比べると、報酬はかなり少ないが危険もなく貰えるだけマシだろう。それに考えたくはないが違約金も安くすむ。追加依頼の際には相手のランクに合わせる必要があるため制限がかかるがゴブリンやオーガの報奨金でまかなえばいい。

 

 男だけに限定されている事や、要面談、というのが気にはなったが、漆黒の剣は話し合いの結果、ギルドからの持ち出しで新人育成を銀級チームに行わせて後進育成能力を見るためではないだろうかと判断した。つまり昇格のチャンスと良い意味でギルドに名前を覚えられるチャンスである。 

 

「どう思う? ニニャ」

「そうですね。受けるべきだと思いますよ。面談という事は受けられない可能性もありますが、私たちなら達成出来ると思いますよ。報酬は少ないですけど……」

「だな! いやー、その新人がかわい子ちゃんだといいな!」

「ルクルット……、教育だぞ?」

「ペテルの言う通りである。ルクルットはおとなしくしているのである」

「ひっでぇ!?」

 

 依頼を受けるなら早い方がいい。明日の朝にはなくなっているかもしれないから。そう考えた漆黒の剣はそのまま受付へと向った。ペテルがリーダーとして対応し、受付嬢は手元の資料を見ると、「今から面談しますか?」と聞いてきた。

 

 今からとなると一番乗りの可能性が高い。そう思い、ペテルは笑顔で「はいっ!」と返事した。その時受付嬢の笑顔が少し引きつったが、漆黒の剣のメンバーは笑顔で一番乗りの幸運に酔っていたためそれに気付いた者はいなかった。

 

 漆黒の剣のメンバーは3階にある簡素な会議室に通されるとしばらくしてギルドマスターが入ってきた。漆黒の剣のメンバーも話したことはないが、見たことはある。いきなりギルドのトップが来たことで、教育対象の新人冒険者が、相当大物なのではないかという推測が各人の脳裏を駆け巡った。

 

「ギルドマスターのプルトン・アインザックだ。君達が漆黒の剣で間違いないね?」

「はい、私たちが漆黒の剣で間違いありません」

「条件は頭に入っているか?」

「はい、対象は男だけの銀級チームであること、依頼内容は新人冒険者1名の教育、期間は2週間以上で間違いないでしょうか」

「うむ。問題ない」

 

 ペテルは少し緊張しつつ対応した。交渉にニニャを噛ませられないか考えつつメンバーの紹介を始める。チームリーダーのペテル・モーク。チームの耳と目、レンジャーのルクルット・ボルブ。森祭司(ドルイド)のダイン・ウッドワンダー。チームの頭脳、ニニャ・ザ・スペルキャスター。いつもの軽い感覚はなく、ルクルットですらまじめに会話していた。

 

 アインザックは彼らを見て大丈夫だろうと判断した。チーム内の雰囲気もよく、バランスもいい。頭数が4人と少ない。むしろ今回はそこがいい。ここに信仰系魔法詠唱者が入ることによってさらに安定感が増すだろうと希望が持てた。さらに腕のよい前衛がもう一人入れば白金(プラチナ)も狙えるチームに成長するだろう希望の持てるチームだった。

 

 しかも真面目で若い魔力系魔法詠唱者がいるのもいい。きっと彼があの問題児を矯正してくれることだろう。

 

 アインザックは漆黒の剣に依頼することにした。その旨を漆黒の剣に伝えると、漆黒の剣は喜んで依頼を受諾した。そして、イシュペンにその事を伝え、オチパを呼ぶように言うと、イシュペンは喜んで出て行った。

 

 イシュペンが戻るまでに漆黒の剣に今回の依頼の詳細を詳しく伝える。つまるところ、オチパについてである。依頼を受諾する前に聞いておくべき事だがギルドマスターになるほどの方なら必要ならば最初に話すだろうと漆黒の剣のメンバーは特に気にしてなかった。むしろこれから伝えられるのは部外秘。情報の秘匿も依頼のうちである。

 

「―――それでその問題児が最低第二位階の治癒魔法を使う信仰系マジックキャスターですか……」

「うむ……。本人の弁では第三位階を使えるらしい。確認できたら報告してくれたまえ」

「はい。わかりました」

「しっかし、いきなり女性の寝込みを襲うなんざひっでぇガキもいたもんだ。このルクルットさまがじっくり女性の扱い方ってヤツを教育してやろうじゃねぇの!」

「こらっ、ルクルット! (ギルドマスターの前だぞ)仲間がすみません」

「いや、構わない。むしろそちらの方を大いに期待している。君のような人間がいた方がいいだろう」

「え? あ、はい」

「そうですね。意外と今回はルクルットが一番活躍するかもしれませんね」

「うむ。ニニャの言う通りである」

「ひっでぇ!? 俺に押し付ける気かよ!」

「言い出したのはルクルットですよ」

「うむ。ニニャの言うとおりである」

「アインザック組合長、仲間はこう言ってますが、ちゃんとチームであたりますので……」

「うむ。よいチームのようだな。方針はまかせるよ」

 

 場の空気がなごみ、ギルドマスターも空気を読んで漆黒の剣との関係を深めていたのだが、待てども待てどもオチパが来ない。そして呼びにやったイシュペンだけが息を切らせて戻ってきた。

 

「組合長、オチパが見当たりません」

「ふむ。まぁ特に縛り付けていたわけではないがな。問題を起こしてなければいいが……」

「いかがいたしましょう」

「話はついた。あとは明日、君がオチパと接触出来次第対応してくれたまえ」

「わかりました」

 

 漆黒の剣は後日オチバがつかまり次第顔合わせすることになり、解散となった。イシュペンとウィナの努力は無駄になった。

 

 

 

 そんな様子をオチバは《完全不可視化》を使って見ていた。あとは依頼を受けた漆黒の剣をストーキングするか予定通り受付嬢のどちらかをいただくためにチャンスを作り出すかのどちらかだが、男だけのチームに興味はなかったので1:99で後者を選んだ。

 

 時間になり、イシュペンとウィナは予定通り仕事を終えて帰路についた。当然酒場へ寄り道である。イシュペンはウィナを行き着けの店へ連行した。この時間に女性だけで酒を飲むのは危険である。しかしこの店は比較的両者の家からも近く治安のよい場所であり、とても安全な店だった。

 

 今日はウィナがイシュペンに酒を一杯おごり、二人で愚痴を言い合う酷い場所になる予定だ。二人とも楽しいお酒にはならないだろうという予感はあったが吐き出さなければ精神衛生上よくない。

 

 二人はテーブルにつくと軽食と酒を二杯頼み、「クソガキに」というイシュペンの乾杯の音頭で食事を始めた。イシュペンはあっという間に一杯目を空け、二杯目を頼み、ウィナが半分飲むころには三杯目に突入していた。当然二杯目からは自腹である。

 

「イシュペン、飲みすぎよ? ペース落としなさいよ」

「なぁに言ってるのよ、ウィナ。あんのクソガキの目ぇ見たでしょう? 強姦魔よ強姦魔。どうせどんなに矯正してもそれは変わらないわよぉ」

「確かに気持ち悪い目で見てたけど、イシュペンそれは言いすぎよ。組合長も期待してるみたいだし……」

「組合長も組合長よぉ。おかげで明日もわたしが相手するのよぉ? そんなに言うならウィナが相手してあげなさいよぉ」

「それはさすがにちょっと……。お金はありそうだし才能もあるんだろうけど、見た目と中身がねぇ……」

「そうでしょう?」

 

 二人が酒盛りをしていると、その席にオチバが現れた。

 

「こんばんは、イシュペンさん、ウィナさん、相席いいですか?《魔法無詠唱化(サイレントマジック)・集団標的(マス・ターゲティング)・魅了(チャーム)》」

「え? あー。こんばんは、強姦魔さん、好きな所に座ればぁ?」

「こんばんは、オチパさん。イシュペンのお隣へどうぞ」

 

 オチバが二人にかけた魅了の効果はイマイチだった。しかし、名前を知られていることに違和感を覚えず、お断りされないだけマシだろう。

 

「では失礼して。店員さーん、何か食べるものと果実水ひとつとー……、あ、今日は奢りますからどんどん頼んでください」

「なぁにたくらんでるのかしらぁ~、じゃあわたし一番高いお酒でぇ!」

「ちょっとイシュペン、それはやりすぎよ!」

「構いませんよ? ウィナさんはどうします?」

「そうですか? ではお言葉に甘えて、わたしも果実水で……」

 

 お酒が進み、会話が進み、オチバはこの街で知りたかった情報を二人からどんどん引き出した。時には甘え、時には慰め、時には褒めた。そしてイシュペンの隣に座ったオチバはチャンス到来とばかりにどんどん飲ませた。そんな状況をウィナも見ていたが、ウィナは「話してみると意外といい人」とオチバ評価を改めてしまっていたため笑って見ていた。

 

 そしてお開きの時間になり、イシュペンがべろんべろんに酔っていたため、オチバがお姫様抱っこで抱きかかえ、ウィナの案内でイシュペンを送ることになった。

 

 イシュペンの家に着くとウィナは出迎えたイシュペンの両親に事情を説明し、自分の家へと帰っていった。そのままイシュペンの両親の案内でイシュペンの部屋まで運び、ベッドへと寝かせると、イシュペンの両親はオチバへ労いの言葉と果実水を出してくれた。

 

「そう、その年で冒険者に……。大変でしょう?」

「いえ、お母さん。好きで選んだ仕事ですから」

「そうか。では何かタレントや特技があったのかい?」

「ええ、お父さん。実は僕、信仰系マジックキャスターでして治癒とか冒険に役立ちそうな魔法をたくさん使えるんですよ」

「ほぉ、それはすごい」

 

 当然のように《魅了(チャーム)》の魔法を二人にかけていたため、お父さんやお母さんと呼んでも問題はない。しかもオチバは猫をかぶり、ある意味イシュペンへの嫌がらせも篭めて彼女のご両親の好感度を稼ぐ気満々だった。自分を毛嫌いするイシュペンが、自分に好感を持つ両親とどうなるか見てみたい。そんな所である。

 

「あ、お父さん、お母さん、どこか調子の悪い所はありませんか? 治癒しますよ?」

「ああ、それは助かるのだが、確か組合の規定があるのだろう?」

「そうでした……。うーん……。でしたらこうしましょう。明日の朝まで僕はご両親公認のイシュペンさんの恋人です。恋人のご両親に治癒の魔法をかけるのでしたら問題はないはずです!」

「まぁ! ふふっ、小さな恋人ですわね。おマセさんですこと」

「あはははは、君がイシュペンの恋人か! それはいい! あの子にも恋人が出来ればと気をもんでいたところだ。ぜひとも頼むよ!」

「はい! お任せください! では治癒しますね。どこか具合の悪い所はありますか?」

「そうね―――」

 

 イシュペンの両親は小さな怪我やちょっとした病気にかかっていたが、オチバはこれから娘さんに酷い事をする予定なので大盤振る舞いで二人に「ナイショにしておいてくださいね」と言いつつ第六位階の《大治癒(ヒール)》をかけ、怪我も病気もすべて完全回復させた。

 

「これはすごいな。今までこれほど体調がいい事はそうそうなかった」

「ええ、あなた。わたしもよ。そうだ、オチパさんはもう宿を取っていらっしゃるのかしら」

「いえ、実は先日宿を追い出されまして、今は組合のロビーをお借りしています。結構人が通る場所なので落ち着かなくて……」

「まぁ、それはいけないわ。狭い家ですけど今日は泊まっていらっしゃって?」

「そうだな。うん、君は明日の朝までイシュペンの恋人なのだろう? 礼もしたいと思っていたのだ。ちょうどいい、泊まっていきなさい」

「いいのですか? ありがとうございます! あ、そうでした。治癒したばかりで体に負担がかかっている可能性があります。今日は早めに寝てくださいね」

「ええ、そうね。わかったわ」

「ありがとう、オチパくん。そうだ、お母さん、イシュペンの部屋に予備のベッドを入れようか」

「ふふっ、あの子びっくりするでしょうね」

「ありがとうございます」

 

 オチバが成人男性だったらこんなことは言わなかっただろう。しかし、オチバの見た目は10~12歳。まだまだ子供である。こんな礼儀正しい子供も珍しいが、それが信用につながった。しかも自分達の娘に憧れるかわいいおマセな小さな男の子という認識だった。

 

 オチバのしてきた事を全く知らないのだから致し方ない。それにぶっちゃけ治癒魔法の腕を体感し、才能もあるようなのでそれだけで家族を養うこともできるだろう。イシュペンとオチバが両思いになればそのまま婿にしても問題はなかった。

 

 

 

 ◇

 

 両親がベッドに入り寝たのを見計らい、二人に《魔法持続時間延長化(エクステンドマジック)・睡眠(スリープ)》をかけ、イシュペンの部屋に置かれた予備の小さな折り畳みベッドに腰掛けた。

 

 オチバは目の前のベッドに眠るイシュペンをどう料理するか考えていた。彼女は泥酔し、意識もなく、記憶も曖昧だろう。受付嬢の制服は母親によって脱がされ、壁にかけられていた。オチバはイシュペンのベッドに腰掛け、薄い上布団をめくると、白い上下の下着一枚で眠っていた。

 

 このまま寝た状態のイシュペンを襲って吐かれても面倒くさい。どうせならこの状況を生かせるシチュエーションで楽しみたい。イシュペンの少し大きめの柔らかい胸を下着越しに揉みながら、そんな事を考えていた。そして、なにやら思いついたオチバは外套を脱ぎ、イシュペンの制服の隣に掛けると行動を開始した。

 

 まず眠るイシュペンに《魔法持続時間延長化(エクステンドマジック)・支配(ドミネート)》を使用する。この魔法は相手を思い通りに動かせるのだが、欠点としてその間の記憶が相手に残る。そして今回はそれすら楽しめると考えたのだ。

 

「イシュペン、分かったら返事して言う通りにしてね。起きて」

「はい」

 

 今まで泥酔して眠っていたイシュペンが人形のように目をパチッと開いて起き上がった。そのホラー映画のような光景にオチバは「こわっ!」と声をだして驚いたが、何とか胸を落ち着けた。

 

「イシュペン、明日の朝まで僕は君のかけがえのない恋人だ。大切にしてね」

「うん。オチパ……」

「イシュペン、一緒にトイレに行こうか」

「わかったわ」

 

 二人でトイレに入ると、イシュペンに飲み食いしたものをすべて吐かせる。淡々とすべて吐き出したイシュペンに「ドミネートやべぇ」とオチバは戦慄した。そして無限の水差し(ピッチャー・オブ・エンドレス・ウォーター)を取り出し、一度多目に水を飲ませてから再び吐き出させ、最後にうがいさせた。

 

「イシュペン、処女?」

「うん。性交経験はないからオチパが初めてかな」

「ふーん。イシュペンの下の毛を何本か欲しいな」

「はい、どのくらい欲しい? いくらでもあげるわよ」

「じゃあ30本くらいで」

「うん、ちょっと待ってね」

 

 イシュペンは下穿きの中に手を入れ、ぷちっ、ぷちっ、と何度も引き抜くと、「はい、どうぞ」と笑顔で言ってオチバに渡した。オチバはその取れたてのイシュペンの陰毛を保存の魔法がかかった小さな小瓶に入れアイテムボックスにしまった。そこでアイテムボックスにボイスレコーダーのようなマジックアイテムを入れていた事に気付いた。

 

 時々探索や諜報などに使っていたアイテムだが、安い事もあってソレ系のマジックアイテムは大量にある。オチバはちょっと使ってみるかと使用感を確かめるため、ボイスレコーダー系のアイテムをひとつ起動し、ズボンのポケットに忍ばせた。

 

 そしてイシュペンの部屋へ戻ると、イシュペンに服を脱ぐように言い、自分のズボンとパンツを下ろさせた。

 

「イシュペン、おちんちん見るの初めて?」

「ううん、小さい時にお父さんのを見たことがあるわ」

「そっかー。そうだよね。じゃあ僕のおちんちん口に含んで舐めて」

「うん。あむっ、くちゅ、くちゅ、くちゅ、くちゅ」

「暖かくて気持ちいいな。これいいかも……。イシュペンも自分の性器いじって気持ちよくなってね」

「ふぁあい、くちゅ、くちゅ、れろれろれろ」

 

 恋人のようにとは言ったがセリフや仕草は変わるもののイシュペンは無表情だった。淡々と性処理するイシュペンの口は無表情ながらとてもとてもよかった。まだ他人に触られたことがないであろう口内に肉棒が入り、イシュペンは色々な方法でその肉棒を舐める。その独特の柔らかくもぬめりとした感触と自分の股に顔を埋めるイシュペンの姿にオチバは肉棒を硬くしていった。

 

「イシュペン、そろそろ出そう。全部飲んでね」

「ふぁい」

 

 イシュペンの後頭部を押さえつけ、肉棒を押し込むと、肉棒は口内の最奥、肉棒が喉を通過し、イシュペンは咽そうになった。

 

「おぐっ、れろれろ、ごふっ、んぐっ、こくん、こくん、こくん、こくん……」

「はあぁ、よかったよイシュペン。それじゃあもう一回おちんちん大きくして、やりかたはわかるよね?」

「ふぁい、くちゅ、くちゅ、れろれろれろ」

 

 普通なら咽(むせ)て吐き出すような行為を淡々と処理し、イシュペンは鼻から精液を垂らしながらもそれすらすすり、唇で舐め取り吐き出された精液をすべて自分の胃へ納めた。

 

「んっ、このくらいかな。イシュペン、一度離れて僕の服を全部丁寧に脱がせてイシュペンの洋服入れへ丁寧にしまって」

「うん。じゃあ脱がしますね」

 

 全裸になったオチバはイシュペンのベッドへ寝転ぶと、イシュペンに自分に跨るよう命令した。イシュペンの恋人設定が効いたのか、オチバの肉棒を自分の愛液の滴るワレメで挟み込み、ぬるぬると愛液をまぶし始めた。

 

「イシュペンの準備も出来たみたいだね。イシュペン、処女をもらってあげるから自分で挿れて」

「うん、わたしの初めてもらって欲しかったの。オチパ、愛してる。あああああん!」

 

 そんな事を言いながらもイシュペンは無表情で自分の膣内にオチバの肉棒を迎え入れた。

 

「あんっ……処女もらわれちゃった……幸せ……オチパ、大丈夫? 痛くない?」

「うん、イシュペンの中気持ちいいよ。もっと気持ちよくなって、僕を気持ちよくしてほしいな」

「よかった。気持ちいいって言われてとても嬉しいわ。あんっ、あんっ、オチパっ、気持ちよくなってね」

「うん、僕もがんばるね」

「あんっ……したからっ、突かれたらっ、我慢できなくなっちゃうぅうう! あっ、あああああああ!」

「イシュペンもうイっちゃったの? その調子でどんどん気持ちよくなろう?」

「うんっ、うんっ、いっぱい気持ちよくなってっ、オチパの子供を孕むの! 一杯孕むのぉ!」

 

 無表情のイシュペンはとても積極的だったが、エロいのは声と身体だけだった。イシュペンの顔を見てもイマイチ乗らなかった。そこで、イシュペンを前かがみにさせ、イシュペンの乳房に顔を埋めることにした。するとイシュペンは慈しむようにオチバの頭を抱きかかえ、自分の乳房へ導いた。オチバは頭を抱かれる感触と乳房に誘導されるシチュエーションにとても興奮した。

 

「ああんっ、オチパ、おっぱいすきなの? あなただけのおっぱいにして! 今はまだ出ないけどすぐに出せるようにがんばるからぁ! いっぱい飲んでぇ! わたしのおっぱいで大きくなってぇ!!」

「うん。ぺろぺろ。イシュペンの大きくて柔らかくて気持ち良いよ。この感触気に入っちゃった」

「嬉しい! あんっ……あんっ……嬉しすぎてっ……あんっ、また……イっちゃうよぉ……オチパ、精子ちょうだい、あなたの精子がほしいのおおおおお!」

「イシュペンの中に出すね」

「うんっ! うんっ! 精子だしてええええ、ああああああああああ!」

 

 イシュペンの中がうねり、搾り取るようにぬるぬると締め付け、イシュペンの子宮口が自ら降りてきてオチバの肉棒の先端に食いつくと、イシュペンは乱れに乱れ、オチパの顔を乳房に抱きかかえながらオチバのうえに座り込んだ腰を激しく叩きつけ始め、最後は全身全霊で精子を搾り取った。

 

 オチバもとても我慢できず、ビクンビクンと体を痙攣させながらドクンドクンと精液を吐き出した。しばらく二人は呼吸を整えると、オチバは肉棒が回復するまでイシュペンの体で楽しむことにした。イシュペンと体位を入れ替え、イシュペンの股の間を観察したり、イシュペンの首筋にキスをし、キスマークをつけた。

 

 キスマークをつけると自分のものだと周囲に見せ付けるような高揚感が起こり、見えそうで見えないような場所や、太ももの内側や乳房にキスマークをつけた。ただ、つけすぎるとただの病気に見られそうな気がしたので、要所要所に一つか二つつけるにとどめた。そんな行為をイシュペンは無表情で受け止めた。

 

「あんっ、またキスマークつけたの? わたしがオチパの女だってみんなに知らせたいのね。うれしいわ」

「うんうん。イシュペンがもう僕のものになったんだっていう印をつけておきたくなったんだ」

「ふふっ、それなら入れ墨入れちゃおうかしら」

「え? 痛くないの?」

「マジックアイテムのインクで書いて書いた人が触って発動するだけだから簡単だし痛くないわよ? 確かあそこの店で―――」

 

 イシュペンから面白い情報を色々と得たあと、ぜひとも手に入れておこうと心にきめ、第二回戦へと突入した。今度は正常位でイシュペンに全身で抱きつかせ、そのままイシュペンの膣内に精子を放流すると、オチバはイシュペンに掛けた《支配(ドミネート)》を解き、そのまま無詠唱化した《睡眠(スリープ)》をかけ、イシュペンに覆いかぶさり、ワレメに柔らかくなった肉棒を押し付け、少し硬くなったのでイシュペンに挿入し、そのまま眠りについた。

 

 

 

 翌朝、空の色が漆黒から薄くなり始める頃、イシュペンは頭痛のなか目を覚ました。さすがに飲みすぎたと反省し、重い体を起こそうとすると、股間と胎に痛みが走った。

 

「あれ? もうアノ日だっけ? たしか前回は2週間前に始まったから……あと2週間くらいあるはずよね? 不安定なのかしら……」

 

 ズキズキと痛む頭の痛み、そして重い体。飲みすぎたとは言え、生理が来たのならそれで休暇が取れるし、ちょうどいいかもしれないと思考の鈍った頭で考えた。

 

「でもそんなに飲んだっけ? 確か、最初の一杯目を一気飲みして、二杯目もハイペースだったわね……。それで三杯目を飲んでる途中で……。あの強姦魔が来て……おごりだからって高いお酒を飲んで…………。……………え? う、嘘よね? 夢よね……?」

 

 お酒のせいか、ところどころ途切れていたりモヤがかかってはいたが、イシュペンは次々と思い出される記憶を否定したかった。まさか自分があの強姦魔の精子を飲み干し、自分が跨って処女を捧げ、子供をねだりながら中に出され、印をねだり、最後は絶対孕むからなどと言いながら全身で抱きついて精子を中に出され、そのまま眠るなど……。

 

 しかし、イシュペンが感じる感覚はいつもの寝間着でもなければ下着でもない、掛け布団すらない。他人の肌の感触だけだった。恐る恐る視線を下に落とすと自分の胸を枕にして眠る黒髪の頭があった。そして、黒髪の持ち主が寝息を立てながらもぞもぞと体を動かすと、イシュペンの太ももの内側や股間にあたる感触に「ああ、そうなのか」と落胆した。

 

 昨日の出来事はイシュペンにとって、彼も求めたが彼女も求めた。脅迫もなく無理やりでもなかった。寝込みを襲われたわけでもない。イシュペンにはどうしようもなかった。むしろこれからどうするかが彼女にとっての問題だった。

 

 数日前に会ったばかりの女冒険者の寝込みを襲ったという嫌悪感はあるものの、イシュペンにとってあまり覚えていないが、昨日は幸せを感じ、愛のある性交だったはずなのだ。確かに何度もイった記憶もある。

 

 高いお酒って怖い……。

 

 確かに体の相性もよく、能力や資金面では今まででトップクラスの良物件だ。これで相手が同じくらいの年齢で見た目もそれなりに良く、女心を少しは理解してくれて気になった女性には寝込みを襲ってでも手を出してしまうような人間でなければ、このまま既成事実と共に結婚まで一気に進んでもよかった。

 

 恋人にするなら80点は必要だ。ちなみに100点満点中オチバは良くて差し引き20点だろう。強姦魔-60点と女に目移り-20点が大きい。強姦魔だけでもなくなれば恋人にしてもいいかもしれない。昨日のアレはちょっと自分でもどうかしていたし、彼をわたしの恋人にしてあげるのなら当然わたしが主導権を握る。それに結婚しようとも入れ墨は入れない。

 

 イシュペンはここでオチパを起こすより、しばらくこのまま寝かせておいて、いくつか対応策を考えたかった。さて、どうしようか……。イシュペンは胸元で眠る意外と手触りのよいサラサラした黒い髪を無意識になでながら考え込む。

 

 このまま恋人にする―――却下。リスクが大きすぎる。せめてギルドマスターが考えた矯正と教育が済み、真人間とまでは行かなくとも衛兵のお世話にならないと思えるくらいになってからだろう。

 

 寝込みを襲われた事にする―――酔って何も覚えていない。気がついたらベッドで覆いかぶさられていて、シーツに跡があった。きっと強姦だろう。……なくはない。彼には前歴がある。ただ、今回は彼も認めないだろう。じゃあどうやって入ったんだって話になるし、わたしも無傷では済まない。上手くいけば最高かもしれないが……。保留にしておこう。

 

 高いお酒を飲んでおかしくなった。忘れてください―――事実そうだろう。一番無難だ。これでオチパが諦めてくれるかが問題だが、結局これで行くしかない。事後に効く避妊薬ってあるのかしら……。最悪堕胎薬も視野に入れておいたほうが良さそうね……。はぁ、最悪。何でこんなことになっちゃったのかしら……。

 

 イシュペンの考えがまとまり、遅くなって両親に部屋に入って来られる前にオチパを起こそうとしたとき、イシュペンの股間に何かが当たるのを感じた。

 

「え……? ちょっと、嘘でしょ? ちょっと待ってよ! オチパ起きて!」

「むにゅ、……んー。スースー、ウィナさんのお尻大きいですねー。むにゃむにゃ」

 

 イシュペンは緊急事態だと悟り、声を潜めながら怒鳴るという技を駆使しながら全力でオチバを起こそうとするが、股に挟まったオチバの体が足を広げ始めたことで自然とイシュペンの足が広げられ、脇から入ったオチバの両手はイシュペンの両脇から差し込まれ、ガッチリ肩に背中側から捕まっている。そして胸のうえにある頭はイシュペンが体を起こすのを器用に押さえつけている。

 

「ちょっと、ねぇ、ちょっと起きてよ! わたしウィナじゃないってば! というか離れて!」

「え? 挿れちゃっていいんですか? ウィナさんも孕みたいんですねー。むにゃむにゃ……」

 

 イシュペンのワレメにツンと肉があたり、くにくにと動かされた。オチバの先走り液が潤滑油となり、イシュペンのワレメを少しずつ濡らしていく。

 

「そっ、それだめよ! 今はダメなの。いいから起きて話を聞いて。お願いよ!」

「ふぅ……。ウィナさん、挿れますね。んんっ! すごくキツイですねー。むにゃむにゃ」

 

 イシュペンは自分の膣内に少し肉棒が入った感触で焦りを覚えた。何とかしなければこのまま挿入されてしまうだろう。しかも自分の膣内は濡れていない。昨日の今日で痛みがあるのに、このまま挿入されたらすごく痛そうだ。

 

 何とか挿入されないよう、オチパに肉棒を外し、秘所に触れないような位置にしようとイシュペンはじたばたと手足や腰を動かすが、無常にも一気に挿れられてしまった。

 

「あくぅっ! いったぁ……そ、そんな……いっ……いたいっ……まだ濡れてないのに……なんとか、しなきゃ……くぅう!」

「ウィナさんも処女だったんですねー。え、激しくですか? いいんですか? むにゃむにゃ」

「いたっ! だからわたしはっ! ウィナじゃないって! 痛い! せめてゆっくり、ゆっくりしてよ!」

 

 激しさの増したオチパの腰の動きに、膣内からくる痛みが増し、イシュペンは泣きそうになりながらも痛みだけでもなんとかしようと試みた。

 

 昨日の二度の性交は、処女であったにも関わらず、ほとんど痛みを感じず甘い快楽が支配していた。それに習って、オチパの背中をさすり、自分の肌を相手の肌にこすりつけ、両足を大きく開いて相手の腰を自分の中に導くように足を絡める。キスをするにはオチパの身長が足りないため、自分の乳首をオチパの口へと導く。

 

「んっ……あんっ、あんっ、あんっ、……これいいかも……ああんっ……」

「ウィナさん、気持ち良いですよ。お尻噛んでほしいんですか? わかりましたー。むにゃむにゃ」

「ウィナじゃないのに……あんっ、あああああっ、ち、乳首噛んじゃ……いたっ、強すぎよっ! ああ、吸われてるぅ……あふっ、あんっ、んんぅ……」

 

 イシュペンの防衛反応と、心が受け入れたことでイシュペンの膣内には愛液が溢れ始め、痛みも薄れ、ぬるぬるとしたスムーズな動きになった。そして相性がいいのか肉棒はイシュペンの一番感じる所を容赦なく突き込み、削り取っていく。

 

「そろそろ出ちゃいそうです。え? ウィナさん僕の子供が欲しいんですか? ふふっ、いっぱい孕んでくださいねー。むにゃむにゃ」

「うぅう……ウィナじゃないのにっ……ううっ……ああんっ! も、もう……ダメなのっ、にぃいい! イっちゃ……あぐぅぅううう!」

 

 子供、孕んでください、その言葉で一気にイシュペンは登りつめ子宮口が勝手に精子をねだるように小さな肉棒を迎えにいき、押し込まれた先端と接触した。

 

 イシュペンは頭が真っ白になるほどの甘い快楽の中。自分の中でドクンドクンと跳ねる肉棒に満足感を覚えた。ウィナに気のある子供がわたしの身体でイってしまったのだ。その征服感と寝取ったような満足感が洪水のようにあふれ出した。

 

「ウィナだと思ってわたしの中に出しちゃう悪い子。ウィナを孕ませるつもりで孕ませたのはわたしなのよ? なんておバカな子なのかしら。これは矯正と教育が必要ね。お姉さんがしっかり教育して、ウィナなんて目に入らないようにしてあげるわ。わたしの未来の旦那様♪」

 

 イシュペンは自分の中で果て、すべてを出し切って小さくなっていく肉棒を感じながら愛おしそうにオチパの背中と頭を撫でた。イシュペンの顔は幸せそうだった。

 

 

 

 オチバは焦っていた。イシュペンの胸を枕にして頭と背中を撫でらるのが気持ち良いなと思いながら焦っていた。気持ちよくてこのまま寝てしまいたいなと思いながらも焦っていた。それホントに焦ってるのと誰かに言われそうだが間違いなく焦っていた。

 

 実はイシュペンのワレメに自分の肉棒がキスする前にオチバは起きていたのだ。胸を枕にし、股の間に身体をうずめ、頭を撫でられている間に硬くなってしまったので、その場のノリで寝た振りをして挿入したのだ。

 

 しかも、彼女の同僚の身持ちが硬くてお尻の大きな受付嬢の名前を呼びながら……。

 

 支配(ドミネート)の効果を確かめつつ、万が一バレても操られている間の記憶も酒の酔いであやふやに出来るかなと昨日色々やって遊んだのは確かだ。イシュペンの陰毛を採取し、録音して精液を喜んで飲ませ、おねだりまでさせて征服感と快楽と魔法を使って毛嫌いする相手を好きと思い込ませての強姦はすごく気持ちよかった。しかもやわらかいイシュペンベッドで眠れた。

 

 それはいい。支配(ドミネート)の効果や命令に関する情報はある程度集まったし、使いどころを間違えなければかなり有用な事がわかった。無表情なのが怖いが……。

 

 しかし、イシュペンの反応が予想外すぎた。

 

 まず、「なんでここにいるの!?」「わたし犯された!?」「ひどい! 悪魔よ! 酒に酔わせてあんなことするなんて」この辺りがデフォだと思っていたのだ。

 そこで、じゃーん!《ボイスレコーダー》「孕ませてぇ!」というのを聞かせ、これを他の人間に知られたくなければいつでも相手してもらおう! なぁに、避妊薬は大量に用意してあるから安心したまへ、はっはっは! ちなみに君の陰毛も採集済みだ! 抜いた時はお守りになっただろうが今はどうなんだろうな? さぁ恥ずかしがるがよい!

 くっ! 卑怯者! 最低! もう……好きにしなさいよ。

 という展開になり、気が向いた時に再び襲う予定だったのだ。

 

 さらに、弱みを握りながら犯し続け、イシュペンを使ってよりよいと思ったウィナも釣り上げ、「より取り見取り、いつでもどこでも強姦! 冒険者組合編」を、できる状態にする予定だったのだ。

 

 そして、ウィナの名前をわざとらしく言いながら、寝たふりをしてセックスし、狸寝入りがバレたらそのまま強姦に移行する予定だった。しかし、狸寝入りがバレる事もなく終わったらなぜかイシュペンの未来の旦那様になっていた。何を言っているのかry

 

 しかも既成事実ゲットとばかりに孕む気満々なご様子。このままでは本当にイシュペンに調教され、生まれてくる子供を盾に責任を取らされそうだ。さらに昨日彼女の両親に好感触を得させたのも裏目に出るだろう。逃げ道がすでにない……。

 

 まさかあんなに蛇蝎のように嫌い、目を合わせるだけでも嫌悪感を露にし、酒場でも平気で僕を強姦魔と呼んでいたような人間がこんなにあっさり落ちるとは思わなかった。しかもこちらが食われる寸前である。

 

 確かにイシュペンとのエッチは気持ちよかったし、またしたいとも思う。むしろ何度でもしたい。下から抱きつきかれておねだりされながら中に出すのは最高だった。しかし、嫌がるイシュペンを襲ったり、嫌悪感を露にしたイシュペンにイタズラするのが好きなのだ。

 

 完全に縛られて手綱を握られ、子供作って結婚などしたくない! たとえ絶世の美女や美少女でも……これは悩むな……。

 

 しかしまてよ? ひとまず落ち着こうか。確かイシュペンは調教すると言っていた。ウィナに目を向けられないほど調教するのだろう。どんな調教だろうか。とても興味がある。ウィナとの接点も増える。もしかしてイシュペンは「おねショタシチュ」に最適なのではなかろうか。あれはいい。甘えたら何でもやってくれるかもしれないのもすばらしい。実はイシュペンは大当たりなのかもしれない。

 

 最悪本当に旦那様になりそうになったら隣国へ逃げればいい。ガゼフからもらった身分証の意味がなくなり、イベントの参加もさらに難しくなりそうだが冒険者なら隣の国へも行けたはずだ。カルネ村にいるエンリのところへはテレポートで行けば国境など関係ない。

 

 うん。そうしよう。しばらくはイシュペンお姉ちゃんに甘える生活も悪くない。そうと決まれば実行だ!

 

 

 

 

 イシュペンは事後の甘い痺れの中にいた。オチバの背中と頭を撫でていると、イシュペンの膣内でオチバの肉棒が再び膨らんでいくのを感じ、「あら? またなの?」と寝たふりをするオチバに声をかけた。そしてオチバが起き、イシュペンの身体に回していた手をベッドへと移し身体を起こした。

 

「んー。……あれ? あ、えーと」

「ふふっ、ウィナはいないわよ? おはよう、オチパ」

「え? あ、おはようございます。イシュペンさん。その、あの……」

「もう今さらね。イシュペンでいいわよ。ふふっ、ウィナを探してるの?」

「い、いえ。そのですね……」

 

 オチバは起きた後、イシュペンを見て、左右を見回した。そんなオチバをイシュペンは笑顔で眺めながらオチバの腰に回した両足に力を入れ、ぐりぐりと腰を動かし始めた。甘い痺れの中で自分から動くのは想像以上に力が入らなく、強くなった甘い刺激に力が抜けそうだったがイシュペンはオチパの困る顔を見てやめられなかった。

 

「寝たままわたしを『ウィナさん』って言いながら犯してたわよ? 良い夢見ていたみたいね? でもお姉さん傷付いちゃったな。心も身体も……んっ……んんっ……」

「あ、あのですね。その、気持ち良い……ってちがっ、その、あの!」

「ん? なに、かしら……? わたしを、んっ、孕ませる、んっ……んんっ、でしょう?」

「イ、イシュペン、入って、入っちゃってる。くぅ……」

「ふふっ、……あんっ、わたし毎日、あんっ……ウィナに、会うっ……のよね……ウィナに、オチパにいっぱい、犯されてっ……あんっ、孕まされたって、……言っちゃおう、かしらっ……あんっ……んうっ……」

 

 イシュペンは自分の中でオチパの肉棒が大きさと硬さを完全に取り戻した事を感じ、一番いいところに当るのを感じながら気持ち良さそうに戸惑うオチパを見ていた。そして、イシュペンがウィナの名前を出すたびに、イシュペンの中で肉棒がビクンと跳ね、そのたびにゴリッとイシュペンの気持ち良い所を削る感覚にイシュペンの身体も跳ねた。

 

「ああっ、イシュペン……出ちゃう、そんなにしたら出ちゃうよっ」

「あんっ……いいっ……ウィナの代わりにっ……孕んであげるからっ! あなたウィナには嫌われちゃうけどっ……あんっ……あんっ……わたしが……あんっ……いるでしょう? ……あんっ」

「そ、そんなっ。ウィナさん! ウィナさん!」

「ふふっ、……わたしはっ……イシュペンよっ……あんっ……中に、出したらっ……においで……あんっ……あっ、あんっ……ウィナにっ……気付かれ、ちゃうわねっ……」

 

 オチバの腰も動きだし、イシュペンの降りきった子宮口にゴツゴツと先端があたり、イシュペンの膣内はぬりゅぬりゅとうごめき、肉棒に絡みついた。イシュペンもすでにイきそうになりながらオチバを逃がさないようにギュッと抱きしめ、オチバの頭を自分の胸に埋めた。

 

「あんっ、……ウィナのお尻じゃなくてっ……わたしのおっぱいがいいのっ……? あんっ……吸っちゃ……まだでないのに……わたしのおっぱいが……飲みたいの……?」

「んんっ、イシュペンのおっぱい飲みたい、イシュペンのおっぱいが飲みたい!」

「あはっ! いいわっ! いっぱい飲ませてあげるっ! たくさんっ……飲みなさい……あんっ……あっ、あっ、あっ、あっ……」

 

 イシュペンはオチパの心がウィナからイシュペンへと移り、自分のおっぱいに屈したことに大きい満足感とすさまじい快感が、膣内と吸われ続ける乳首から脳髄へと駆け巡りバチッバチッと甘い快楽が何度も弾けた。イシュペンの身体はオチバを包み込むように絡みつき、ビクッビクッと跳ね続けた。

 

「イシュペン、でちゃう、でちゃうよ!」

「ふふっ……あっ、あっ……また中で出すの? あんっ、あんっ、悪い子ねっ……ああっ、あっ、いいわよっ、中でっ、出しちゃ、いなさいっ」

「イシュペン、イシュペン、でちゃっ……あぐぅっ」

「あっ、あっ、あっ、あっ、イっちゃう、イっちゃうぅぅうううっ、うぅ、ぅっ……」

 

 イシュペンの膣内がぬるぬると絡みつき、キュンキュンと締め付けられ、肉棒の先端を愛液でぬめった子宮口がコリコリと刺激を与えながら吸い付き、オチバは甘い快楽で何も考える事ができなくなり、イシュペンにしがみついてビクッと身体を跳ねさせた。

 

 イシュペンも甘い快楽の渦で何度もイきそうになりながら、自分にしがみつくオチバを力強く包み込んだ。そしてオチバの絶頂を感じ、イシュペンも絶頂した。イシュペンは自分の膣内でビクッビクッビクッと震える肉棒と中を満たしていく熱い体液にバチンバチンと脳内がはじけ、何度も何度も絶頂した。

 

 イシュペンの激しい絶頂はしばらく続いた。オチバはイシュペンに包まれ、イシュペンの身体がビクッビクッと何度も痙攣し、イシュペンの絶頂を感じた。精液を出し尽くしてなおオチバは痙攣するイシュペンに甘い快楽を感じ続け、強い睡魔に吸い込まれるように眠りに落ちた。

 

 

 

 

 イシュペンは木窓の隙間から差し込む光に重いまぶたをあげた。そして「あぁー、やっちゃったなぁ……」とつぶやきながら自分の胸を枕にして幸せそうに眠る小さな冒険者のサラサラとした髪をなでる。

 

 今まで感じたことのない幸福感の中に、両親に対する少しの罪悪感と将来への不安がちょっとした後悔を覚えさせていた。

 

 しかし、それでも幸せの中にいるイシュペンはこれからどうやってオチパの女癖や他の女への目移りを治させるかという考えしかなかった。もはや彼女の中ではオチパはイシュペンの恋人(モノ)なのだ。例えオチパがふらふら目移りしても他の女に獲られるわけにはいかないのだ。首輪をつけ、縄で引っ張ってでも縛り付けなければならない。

 

「あ、でも少しくらいなら目移りしてもいいかな?」

 

 ウィナの名を呼びながら自分の身体に屈するオチパを思い出し、イシュペンはそんな事を考える。オチパが目移りするのはいい、ただ相手に届くことがなく、目移りするたびにわたしに屈せばいいのだと考え直した。

 

 イシュペンはできるだけオチパを起こさないよう身体を引き抜くと、薄暗い部屋の中、初めて自分のベッドの惨状を目にした。白いシーツはどす黒い赤で汚れており、よく見るといたるところに様々な体液のシミがあった。どこからどうみても事後のシーツだった。

 

 イシュペンはひとまず見なかったことにして、用意してあるタライにタオルを入れ、自分の体を清め始めると、ワレメから色々な体液がツツーっと太ももを伝って零れ落ちた。イシュペンはそっとそれを指先で掬い、においを嗅ぐと、タオルでふき取った。

 

 ほんの少しずつ垂れる体液に辟易し、イシュペンはチェストから月のモノの時に履く分厚い下着を出し、ワレメに小さな布をあて、それを履いた。

 

 体をすべて清め、下着を着ると、イシュペンはオチパの体を「意外と軽いのね」とつぶやきながら抱き上げ、一度ギュッと抱きしめると隣にあった予備のベッドへと移した。そしてイシュペンはオチパの股に付いた自分の血を落とし、自分の寝間着を取り出すとそっとオチパにかけた。

 

「ん……イシュペン……ウィナさん……」

 

 オチパの寝言にイシュペンはクスッと笑い、オチパの唇に自分の唇をそっと当てた。色々と順番が変わってしまったがイシュペンにとって初めての唇と唇のキスだった。

 

 イシュペンはそっと唇を離すと、自分の唇に手をあて、部屋の片付けを再開した。床に脱ぎ落とされた自分の下着を拾い上げ、洗濯籠に放り込んだまではよかったが、シーツをどうしようかと考えた。

 

 ふと視界にオチパのバッグが見えた。イシュペンはニヤリと笑い、小さな机のうえにあるインク壷に刺さった羽ペンを取り出すと、シーツのどす黒い赤の近くに自分の名前とオチパの名前、日付を書いて乾かすと、ただの白い布にみえるよう汚れた部分を隠すようにキレイに畳み、オチパのバッグへ入れた。

 

 吸い込まれるように入る汚れたシーツに驚きながらも、あの身なりならマジックアイテムを持っていてもおかしくないと思い直した。そしてベッドに赤いものが染み込んでしまった部分に新しくタオルを敷き、シーツをかけ、上掛けを畳んで置いた。

 

 そしてイシュペンは仕事着を着て木窓を開け、部屋の空気を入れ替え、明るくなった自分の部屋が問題ない事を確かめると、小さな鏡で自分の身なりを確認した。どうしても仕事着では隠せない首に残ったキスマークをそっとさわり、チェストからスカーフを取り出すと首に巻いた。

 

 イシュペンは準備を終え、キスと共に「また後でね」と幸せそうに眠る自分の恋人(モノ)に声をかけると、静かに部屋を出ていった。

 

 

 

 ◆

 

 イシュペンが出て行くとオチバはそっと目を開いた。イシュペンが起きる時、身じろぎした段階ですでにオチバは起きており、狸寝入りしていたのだ。イシュペンとウィナの名前を呼ぶことでフェラをしてくれるかなと思ったのだが、仕事の時間が差し迫っていたらしい。

 

 イシュペンのにおいのする寝間着をアイテムボックスへ収納すると、オチバはマジックタオルで体を拭き、服を着て装備を整えた。イシュペンが無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)へ入れた事後のシーツをアイテムボックスに入れなおすか少し考え、そのままにした。

 

 イシュペンの親に挨拶し、イシュペンの家を後にすると、オチバは街の散策に出た。朝早くからすでに売り始めている屋台で買い食いし、露天を冷やかしつついくつか買い物をし、昨日イシュペンとウィナから聞き出した色々な店の確認にいった。

 

 イシュペンが言っていた入れ墨を扱っている店やウィナが「行ったことないですけど」と言いつつ教えてくれた連れ込み宿、高価なマジックアイテムを置いている魔道具店、イシュペンが「贈られたらちょっと考えちゃうかも」と言っていた宝石店、ウィナがオシャレだと言っていた装飾店、ウィナが大きいお尻を気にしてこっそり行っているというちょっと高めの補正下着店……は追い出された。しょうがないから女物の服を扱っているお店を見て周り、最後にバレアレ薬品店でリイジーに「変な事に使うんじゃないよ?」と言われつつ色々な薬を仕入れた。

 

 陽光聖典からの贈り物(はぎとり品)をどんどん消費しながら買い物を楽しんだ。さすがに金貨がゴリゴリと減っていくと心もとなく思えたが、まだ何とかなるだろうと楽観視していた。困ったらガゼフに貰えばいいと……。ちなみにガゼフはすでに王都にいる……。

 

 

 

 イシュペンは少し遅刻するくらいで済む時間に家を出ていた。しかし、初めてを終えた股間の痛みをなんでもないように装うため歩みが遅くなっていた。

 

 朝の冒険者ギルドの一番忙しい時間。ウィナはイシュペンが早く来る事を願いながらひたすら冒険者を捌いていた。イシュペンが昨日お酒を飲みすぎていたのを知っているため、遅刻するだろうなと思っていたが想定外に遅かった。

 

 ようやくイシュペンが姿を見せ、「ごめんね」とウィナに声を掛けると、ウィナは「早く手伝って」と小声で返した。イシュペンが隣に座ると、「うっ」といううめき声のような声を上げたのでウィナが「大丈夫?」と視線を送ると「気にするな」という手振りが返ってきた。

 

 朝の忙しい時間を超え、書類仕事を片付けながら時折来る冒険者の相手をする。その合間、ウィナはイシュペンが時々そわそわと入り口を見てはブツブツと口の中で何か言っているのを見た。

 

 きっとオチパを待っているであろう事はわかる。今日で終わるのだ。昨日決まった銀(シルバー)チームが彼を引き取り、短い時間だったが濃厚な苦労がなくなるのだ。さっさと終わらせたいのだろうとウィナは思った。

 

 ウィナは飲まなかったが昨日の酒の席でのオチパはウィナにとってそれほど嫌悪感を抱く相手ではなかった。しかし、一晩明けるとやはりイヤな気がした。イシュペンもきっとそうなのだろうと納得した。

 

 しかし、イシュペンの苛立ちはウィナの考えとは全く違っていた。つまり、「何で早く来ないのよ」である。父は仕事があるため、イシュペンより先に家を出ている。母は家にいるが、さすがに起こすだろう。むしろ寝ぼけてオチパが母を襲っていないか心配だった。

 

(こんなことなら無理やり起こして一緒に来るんだった……)

 

 しかも、昨晩もオチパはギルドのロビーで寝るだろうからとギルドマスターに言われた漆黒の剣のメンバーが顔合わせのために朝から待機していた。しかし中々来ないことで、先に3階にある会議室へと案内された。

 

 お昼ごろになり、ようやくオチバが冒険者ギルドの入り口に現れると、イシュペンは手を止め、少し話をするために席を立ち、オチバの方へ歩いていった。ウィナはイシュペンが自分を守ってくれているんだと勘違いし、イシュペンが溜めている書類を自分の所へ運んだ。

 

「こんにちは、イシュペン」

「ようこそ冒険者組合へ、オチパ様。(遅いわよ。何してたの?)」

「いや、ちょっと色々と買い物に……。はい、これどうぞ」

「(ちょっと! 他の人に見られちゃうでしょ)」

 

 オチバが渡した小さな皮の巾着袋をを、イシュペンは素早く受け取り袖にしまいこんだ。オチバは「あらら……」と渡すタイミングを間違えたと悟った。イシュペンは何を貰ったのか気になったが、懸念していた問題はなかったと安心し、受付嬢の顔に戻った。

 

「オチパ様。依頼の件で漆黒の剣の皆様がお待ちです。ご案内します」

 

 イシュペンの少し遅めの先導で階段を登り、二階と三階の間、階段の上下だけが見える空間に入ると、ずっとイシュペンの受付嬢の姿に惹かれていたオチバは目の前で揺れるイシュペンのお尻に手を置いた。

 

「ちょっ、何してるの!?」

「イシュペンのお尻が気になって……、そういえば触ってなかったなって……」

「もぅ、バカ! ここではダメよ!」

「そうなの?」

「ダメに決まってるでしょう? その、また相手してあげるからそれまで我慢しなさい」

「はーい。あ、そういえばイシュペン。これ飲む?」

 

 ダメと言いつつ振り払わなかったイシュペンに「フリかな?」と思いつつお尻を撫でたあと、イシュペンに説明しつつ事後でも効果のあるバレアレ製避妊薬を手渡した。それをイシュペンは「後で飲むわ」と言って避妊薬の入った小瓶を胸の谷間に差し入れた。

 

 ブリタが店でそのまま飲んだのは冒険者だからで、イシュペンは仕事に熱心な受付嬢だから後で休憩時間に飲むのだろうとオチバは考えた。イシュペンが飲まずに孕む気満々であるなどと考えてはいけないのだ。

 

 

 

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