※この作品はR-18です。

オバロR18もの   作:しうか

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6 ニニャの本領 ニニャ

 

 少し時間が戻る。詰め所と冒険者ギルド、そして会合に出ていたリイジー・バレアレの元に「若い冒険者風の男二名がバレアレ薬品店の扉を蹴破り入っていった」という通報が駆け巡った。

 

 オチバの所業を見ていた近所の人が「衛兵呼んで!」という本人の言から詰め所へと走った。途中で巡回していた衛兵を見つけ、事情を話すと衛兵は現場へ直行。正面扉が蹴破られているのを見て、呼子を鳴らした。

 

 オチバの不可解な行動から、駆けつけた上司は一人を冒険者ギルドへと報告に行かせる。すでに夜になりかけている中。冒険者ギルドはようやく忙しさのピークから解放されるところだった。しかし冒険者の数は多い。

 

 そんな中衛兵が一人飛び込んできて、「若い冒険者風の男がバレアレ店に押し込んだ、組合長に話を通してくれ」と言ってきた。イシュペンは気が遠くりそうになりながらも、フラフラと組合長を呼びに行った。

 

 他の冒険者の可能性もある。しかし、そんな事を仕出かす若い冒険者は他に心当りがなかった。当然イシュペンから聞いたアインザックも他に心当りがなかった。アインザックは話を聞いた瞬間力が抜け、執務室の自分の机に頭をぶつけた。

 

 アインザックは装備を整えながら、イシュペンに漆黒の剣に連絡を取り彼らがオチパと一緒にいるか確認するよう頼み、ギルドにいた高ランクの冒険者に声をかけ、「緊急依頼だ。道中話す」とだけ言うと、高ランク冒険者は珍しさもあり付いて行った。

 

 アインザックは過剰戦力と知りつつも、聞いた限りでは何とか無傷で押さえ、バレアレ薬品店に被害があまり及ばなければ何とかなるかもしれないと思っていた。そのため、集まった冒険者チームはほとんどが金(ゴールド)だったが、ミスリル級冒険者チームクラルグラがいてくれたのは大変心強かった。

 

 バレアレ薬品店に着くと、すでに衛兵によって薄く取り囲まれていた。事情を聞いてみると、リイジー・バレアレの孫、ンフィーレア・バレアレが店内にいる可能性があるため、声を掛け、おとなしく出てくるのを待っているようだった。状況からその可能性も高いと踏んだそうだ。

 

 ただ、荒事になった場合、冒険者がいた方がいいだろうということで、裏口をクラルグラに指揮を任せ、彼らに金(ゴールド)チームを二つ付けた。

 

 そこでリイジーが駆けつけ、リイジーの情報からンフィーレアが中にいる可能性が高い事がわかったが、裏口に配置されたクラルグラから報告が来た。裏口にはどう見ても怪しい魔法詠唱者(マジックキャスター)がおり、こちらに気付き裏口から入っていったとのことだった。裏口が本命だろう。つまり目標が増えた事が伝えられた。

 

 そして今まで静かだった店内からンフィーレアの叫び声が聞こえてきた。カジットが殺され、中の音が外に届いたのだ。そこで伝令に金(ゴールド)級冒険者のレンジャーを一人裏口を固めるよう伝令を送り、ギルドマスター自ら先頭に立ち、警戒しながら店内へと入っていった。

 

 まさかオチパがこんな事を仕出かすとは思ってもみなかった。アインザックは自分の責任を感じ、過去の自分への怒りとこんな事を仕出かしたオチパへの怒りで自ら先頭に立ったのだった。そしてアインザックは愛剣を引き抜いた。

 

 リイジーは孫の叫び声に駆け出そうとしたが、衛兵に待つようとどめられた。しかし、孫を思う気持ちからそれらを振り切り、アインザックの後を追うように店内へ入った。アインザックが引きつれた冒険者に前に出ないよう抑えられたがリイジーは気が気ではなかった。ンフィーレアの声からいる場所を案内した。

 

 そして、ンフィーレアの叫び声が急に止まり、そこにいた誰もがンフィーレアが殺されたと感じた。しかしそれでもリイジーだけはンフィーレアの無事を信じたかった。せめてンフィーレアが声を返してくれればと願いながらリイジーはアインザックの背を押しながらンフィーレアを呼び続けた。

 

 そして奥から聞き覚えのある若いと幼いの間ほどの間の抜けた声がリイジーを呼ぶ。今度の標的がリイジーである可能性がある以上、リイジーを外に出したかったが、叶いそうもないため、アインザックを先頭に冒険者が両脇を固めるようにリイジーを守り、後ろからは後詰の衛兵がその部屋へと入った。

 

 室内の惨状はアインザックから見てもひどいものだった。ンフィーレアは床にうずくまり、その下には血溜まりがあり、漆黒の剣の魔法詠唱者(マジックキャスター)は座り込み、裏口の近くには爺さんが血溜まりに沈みピクリともしない。服に付いた血痕の位置からすでに事切れているようだった。

 

 そんな中、平然と立っていたのは予想通りの人物、オチパだけだった。アインザックの思考はしばらく停止した。

 

「こんばんは、リイジーさん。すみません、また避妊薬を買いにきました。ついでに鑑定もお願いします」

「孫は! ンフィーレアは!」

「あ、ンフィーレアさんは無事ですよ。傷つけられていたので治癒をしておきました。あ……、すみません。冒険者ギルドの規定で治癒魔法代を請求しなければならないのですが……。緊急でしたので大丈夫だとは思いますが、一応事前に契約したということで話をあわせていただけませんか? そこから支払うという形でもいいのですが……」

「こんな時まで避妊薬の心配かい! そんなものいくらでも払ってやるわい! ええい、アインザック、退くのじゃ!」

 

 リイジーにどかされたことでようやくアインザックに思考が戻った。リイジーはンフィーレアを介抱し、体に異常がない事をしると、安心したように腰を落とした。そんな状況を見て、安全だとは思いつつもアインザックは剣をさげたままオチパへと近づいた。

 

「説明してくれるかね?」

「え、はい。本日夕方頃、バレアレ薬品店に避妊薬を買い求めに来た所、正面扉が閉まっていたため、中にいたバレアレさんをよびました。」

「中に誰かいたことはわかったのか? 閉まっていたのだろう?」

「ええ、それはまぁ……、ルクルットさんにレンジャーの教育を受けまして……」

「ふむ。レンジャーの素質もあるようだな。それで?」

 

 アインザックは別にオチパにレンジャーの才能があるとは全く思っていない。ただの嫌味だったが、話が逸れそうだったので続きを促した。

 

「片方が攻撃を受けたようなので踏み込んだ所、ンフィーレアさんが痛そうに血を流してうずくまってました。犯人と思われる女性と対峙していたところ、裏口から彼女の仲間と思われるそこの爺さんが入ってきたのでそれを処理、女性の方は力及ばず取り逃がしました」

 

 ちらりと見るとすでにその爺さんは剥ぎ取られた後のようだった。漆黒の剣の魔法詠唱者を見ると恥ずかしそうにうつむいたままだ。こちらに説明を求めた方がよかったかもしれないと思いつつも後で聞けば問題ないだろうと思い直し、オチパに続きを促した。

 

「ひとまず脅威が去ったのでンフィーレアさんにリイジー・バレアレ氏の要請もあり治癒の魔法を施しました。その後、爺さんから戦利品を回収し、現在に至ります」

「そうか、ご苦労だった。しかし、犯罪現場である以上、今後は検分が済むまで手を出さないように。あと今回の治癒に関しては報酬を貰う限り教会もうるさいことは言わないはずだ。そこも正直に話して問題ない。というかサラッと変な嘘を混ぜるな」

「はーい」

 

 アインザックはオチパの言葉を信じた。接した時間は少ないものの、彼は自分の出自はごまかすが犯した罪に関して頓着しておらず、隠すことはしないだろうと思ったのだ。むしろそれがどうしたと言わんばかりに隠す気がない事からワーカー落ちや犯罪者になる事を危惧しているくらいだ。

 

 それに被害者たるンフィーレア氏が脅されていない限り、唯一の公正な証人になるだろうし、彼が証人になりえなかったらもはや公正な証人は存在しないだろう。

 

「それと、ニニャ君……だったかな? 彼の言っていることは本当かね?」

「はい。わたしが来た頃にはすでにオチパと金髪の女性が対峙していましたがその後の彼の行動は話どおりです」

「そうか。ごくろうだった」

「いえ、その……、わたしは何もできませんでしたから……」

 

 アインザックはひとまずオチパが問題を起こしたのではなく、むしろンフィーレアを救った事に安心した。色々と聞きたくない情報も散見されたが、今回の件にはあまり関係がないだろう。いや、あっては困る。特に避妊薬など使う状況が……。

 

 そこまで考えたあと、裏口に向わせていた冒険者の一人がアインザックたちが入ってきた扉から転がるように入ってきた。

 

「ギルドマスター! 助けてください! 仲間が! クラルグラの皆さんが!」

 

 その様子にアインザックは剣を構えると裏口から外へ出た。外に出るとき、金(ゴールド)プレートの冒険者が三人いたが、アインザックとわかると安堵の息を漏らし、武器を下げた。アインザックは彼らの報告を受けながら軽く見回す。

 

「クラルグラの皆さんは全滅です。先頭は俺たちに任せろって……、結局俺たちを守って……、くっ……」

「そうか」

「逃走者は向こうに。戻ってくる可能性も考えて両サイドに見張りを立てています」

「ふむ。もうしばらく頼めるか?」

「はい……」

 

 ミスリル級冒険者チームが全滅したのは痛い。しかし、ミスリルで勝てなかった相手に金級冒険者が勝つのは難しいだろう。彼らだけでも生存してくれただけありがたいと思わなくてはやっていけない。

 

 アインザックは金級冒険者達を守ったクラルグラのメンバーの遺体へと近づき、検分を始めた。全員眼孔から一突き。他に傷はない。抵抗も出来ずに即死だったことがわかった。しかし、それならばそれを退けたオチパは一体どれだけの者なのだという疑問がアインザックの中に湧き出てきた。

 

 そして、アインザックはオチパの登録書に「剣が得意」と書いてあったのを思い出し、冷や汗をかいた。

 

 アインザックが室内に戻ると、ンフィーレアが目を覚まし、リイジーと衛兵に事情を説明している所だった。時折恐怖からか体を震わせていたが、すでに外傷は完全に治癒されていたようだった。

 

「それで、その後のことは全く見てないんです。声だけは聞こえていたのでその方たちが助けてくれたのは分かるんですが……」

「そうかい、そうかい。怖い思いをしたねぇ、ンフィーレア。今日はもうお休み。―――構わないね?」

「うん。おばあちゃん」

「はい、バレアレ様。後ほど改めてお聞きしたいのですが構いませんか? その詳しい人相などが必要なので……」

「うむ。様子を見ながらになるがのう?」

 

 ンフィーレアは一度オチバとニニャに「ありがとうございました」と頭を下げたあと、のろのろと寝室へ向った。本当はすぐにでも手配書を作りたいのだが、衛兵はリイジーの剣幕に押され、ンフィーレアの状態もみた事であきらめた。あと二人目撃者がいるので問題ないだろうとも思っていた。

 

「お話は済みましたか? リイジーさん、こんばんは。今日は道具の鑑定と避妊薬を買いにきました」

 

 オチバはさっさと用事を終わらせて帰りたかった。しかし、店主の孫が非常事態だったのでオチバはンフィーレアの介抱が終わるまで辛抱強く待った。つまり、自分の順番が来たと確信したのだが、そこにいたアインザック組合長や衛兵はオチバとニニャから詳しい状況説明や調書、人相書きなどを作るために同行して貰うつもりだった。

 

 リイジーも両者の思惑を察し、恩人であるオチバの話に乗った。リイジーとオチバが話し始めた事で、アインザックと衛兵は割って入ることが難しくなった。街一番の薬師は街全体に影響を及ぼすため、その力は下手な名士より大きいのだ。

 

「……お前さん、相変わらずじゃのう。先に礼を述べさせて貰おうと思っておったのじゃがのう。お前さん相当高位の治癒魔法を使ったのじゃろう?」

「ええ、まぁ……。(その辺りは中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)でごまかそうかなと)いえ、ただの中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)です!」

「(じゃろうな。失明を治す治癒魔法なんぞ聞いたことがないわい。恩人の言う事じゃ、ンフィーレアにも言っておくから安心せぃ)そうかそうか……。それでいかほど支払えばよいかのう?」

 

 リイジーとオチバは時々こそこそと顔を寄せて話していた。とても怪しかった。どう見ても密談だった。しかし、誰も突っ込めない。

 

「あ、それじゃあ僕とニニャさんが買うときに値引きしてください。できれば鑑定料の方も!」

「かっかっか! それなら安いもんじゃ! 諸経費だけ払ってくれればよいて!」

「おお、ありがとうございます。ニニャさん、やったね! たくさん避妊薬買えるよ!」

「え、ええ。って避妊薬ですか!? (まぁ必要ですが……)冒険者なら普通は治癒のポーションでしょうが! ですが本当に私も良いのでしょうか」

「この小僧がこう言っておるのじゃ。問題などありゃせんわい。それで、鑑定と避妊薬じゃったか……。場所を移そうかの」

 

 リイジーが先導して歩き始めたため、オチバはニニャを抱きかかえるとリイジーの後をついていった。ニニャは恥ずかしがって「降ろしてください」と言っていたが、オチバは気にせず運んだ。実際ニニャは腰が抜けていたためそれまでずっと座っていた。降ろしてとは言ったが歩ける保障はなかった。

 

「最近避妊薬ばかり売れるのぅ?」

「売り上げに貢献できて幸いです。在庫は大丈夫ですか?」

「まぁそこは何とかするわい」

 

 そんな遠ざかる声を聞きながら、アインザックと衛兵は再起動を果たした。手配するためには早く動かなくては逃げられてしまうだろう。衛兵はひとまず「金髪で赤っぽい目の女」という情報で警戒するよう部下に命じたが、アインザックは果たして手配に意味があるのか疑問が残った。

 

 そう、勝てる見込みがあるのかと……。

 

 ミスリル級冒険者チームが全滅したのだ。恐らく勝てる見込みがあるのは王都にいるオリハルコン級やアダマンタイト級、そして王国戦士長ガゼフ・ストロノーフくらいなものだろう。それならば、注意喚起を行い、戦力が整うまで行方を追う程度に留めるしかないだろうと考えた。

 

 それならば今オチパやニニャの聞き取りを急ぐ必要はない。決してリイジーが怖いわけではなく、必要なことを先に終わらせるべきなのだ。アインザック組合長は衛兵の協力の下、事件の後処理を優先することにした。衛兵も同じ事を考えたのか、とても肯定的だった。

 

 

 

 工房へ場所を移した三人はひとまずニニャが飲んだ避妊薬の鑑定を行うことにした。ビンの底に残ったわずかな量だがリイジーは鑑定可能だと判断した。リイジーはそのビンをオチバから受け取ると、ふと首をかしげた。

 

「なんじゃ? このラベルは……読めんのう……。まぁよいか」

「え……」

 

 ニニャは嫌な予感しかしなかった。作った本人が知らないラベル……。つまりオチパが自分でラベルをつけたとしか思えない。先ほどまであった、自分を守ってくれたオチパに対する好意が消滅し、一気に怒りがふつふつと沸いてきた。

 

「ふむ。香りは避妊薬で間違いないのう……。どれ、《道具鑑定(アプレイザル・マジックアイテム)》。ふむ。間違いなくわしが作った上級避妊薬じゃな」

「でしたかー。ヨカッタネ。ニニャさん」

 

 淡々と鑑定を終えたリイジーに、すでにニニャにバレていると知っているはずのオチパが棒読みで喜ぶように言うと、ニニャの怒りは爆発した。

 

「よ、よかったじゃないですよ! 確かによかったですけど! 騙したんですか? 騙したんですね? あああああ! もうっ! もうっ!!」

「なんじゃ、お主。あれほど変な事に使うなと言うたのにそのお嬢ちゃんにイタズラしたのかい?」

「あははは。イタズラ好きなお年頃でして……。すみません」

「まぁ確かにそういう年齢じゃわな……。まぁ責任取れる範囲にしとくんじゃぞ?」

「はーい、善処しまーす」

「お主……そのうち刺されても知らんぞ?」

「あはははは! それならさっき金髪美女に刺されそうになりましたよ」

「そうじゃったか……」

 

 ンフィーレアのタレントを狙って襲ってきた人間を、追い払った恩人にリイジーはそれ以上言う言葉がなかった。少なくともお小言を言うのが精々だった。実際傷つけられ、もう少し遅かったら攫われていただろう。その恐怖にリイジーは震えそうになった。

 

 ニニャはそんな二人のやり取りにさっと顔が青くなった。色々と聞き捨てならない言葉が飛び交ったのだ。

 

「あ、あの、私おとこ―――」

「女じゃろ? よく見ればわかるわい。まぁ男という事にしておいておくから安心せい」

 

 さらしもなく、アレだけ取り乱せばさすがにバレてしまいますよね……。そう考えたニニャはリイジーが秘密にしてくれるようなので気にしない事にした。しかし、もう一つ大事な問題がある。一人襲ったのはギルド経由ですでに知っている。しかし、リイジーが言った内容を考えると、すでに何人も手にかけている可能性もあるのだ。

 

「そうですか……。それで、いつか刺されるってオチパは何度もそんな事してるんですか?」

「いや、わしも詳しくは知らんが……、まぁ一人は確実じゃのう? 実際何人にイタズラしたんじゃ?」

「えーっと……。今は言わないほうが良さそうですね。それこそ刺されちゃいそうです」

「くっ、それってすでに何人も手にかけたって言ってるようなものじゃないですか。この変態! 変質者! 強姦魔!」

「怒ってるニニャさんもかわいいですね」

「小僧。それは悪手じゃぞ……。火に油を注ぐ行為じゃ……」

 

 しばらく痴話げんかをしたあと、リイジーに「喧嘩ならよそでやれ」と言われたため、「絶対言ってもらいますからね!」と一度ニニャは矛を収める事にした。ついでにニニャは安くなった避妊薬をリイジーの説明を聞いたあと何本か買った。そしてリイジーにこそこそと相談したあと、違う薬を数本買った。

 

 

 

 そしてオチパとニニャはバレアレ薬品店を後にした。表から出て行ったため、事後処理をしつつ待っていたアインザック組合長はオチパとニニャが帰ったことに気付かなかった。そもそもそのまま帰るとは思っていなかった。普段のニニャならその辺りに気付いただろう。しかし彼女も怒っており、どうやって口を割らせるか考えていたため気付かなかった。

 

 オチバとニニャが外に出ると漆黒の剣のメンバーが待っていた。銀(シルバー)プレートの彼らはイシュペンから事情を聞いた後、オチパとニニャに何かあったと思い急いでバレアレ薬品店を訪れたのだが、金(ゴールド)級冒険者と衛兵が立ち入り制限をしていたため、外で待つしかなかったのだ。

 

 オチバとニニャが彼らと合流すると、早速質問攻めにされたが、「怪我もないし薬も買えたので詳しくは宿に戻ってから」と宿に戻ることになった。ただ、メンバーとしては気になることは気になる。そこで軽い空気で話題を振れるルクルットが話題を振った。

 

「そうは言っても気になるよなぁ……。大体でいいから教えてくれねぇ?」

「ふむ。そうですね……。薬を買いに行ったら扉が閉まってまして……」

「うんうん」

「中に人の気配があったので呼んでみたのですが……」

「おお、さすが俺の弟子! お前レンジャーに向いてるんじゃねぇの?」

「ありがとうございます。ルクルット先生」

「おう、それでそれで?」

「血の匂いがしたので扉を蹴破って入ったのですが……」

「ほうほう、匂いまでわかるようになったか」

「色々ありまして……。ニニャがもら、もごもご(しました)」

「うわああああああ! ちょ、ちょっとオチパ! 何を言い出すんですか! そこは一番必要ないところですよ!」

「……あー。そ、そうだな。まぁ詳しくは後で聞くわ……」

 

 オチパが色々端折って言おうとした内容に気付いたニニャは大声を出しながら両手でオチパの口を塞いだ。オチパに言われてニニャの匂いに気付いた仲間思いのルクルットはもう何も言えなくなった。ニニャの服装が変わっていたことで察していたペテルは無言でルクルットに拳を落とした。その拳をルクルットも甘んじて受け入れた。ニニャは知られた事を悟り顔を真っ赤にしつつ仲間の優しさが少し辛かった。

 

 

 

 宿に付くと、ニニャはお湯をもらって部屋に直行した。オチパは他のメンバーに四人部屋に連行され、あった事を詳しく話した。

 

「それって、まだ現場に残っていた方がよかったのではないでしょうか」

「だなぁ……、こりゃ明日はお前、呼び出しがあるぞぉ? すっげぇ怒られるぞぉ?」

「でもほら、疲れてましたし、用件も済みましたし、ニニャさんもアレでしたからさっさと宿に戻りたいなと……」

「まぁそうだよなぁ……。そう考えると判断に困るよなぁ……」

「事情を話せばわかってくれると思いますよ」

「うむ。某も協力するのである」

「おお、ありがとうございます。ダインさん」

「でもお前、明日動けるかね? ぜってぇ筋肉痛でうごけねぇって……」

「デスヨネー」

「では明日オチパが動けなさそうなら私とダインで事情を説明に行きましょう。オチパが動けないと言えば考えてくれるでしょう」

「それじゃあ俺はニニャと一緒にコイツの面倒だな」

 

 この部屋にいた人間は全員のんきに構えていた。まさか裏口でミスリル級冒険者チームが全滅していたなど誰も知らなかったのだ。仮に知っていたとしたらオチパをギルドへ行かせただろう。

 

 

 

 ニニャはオチパとの二人部屋に入り、服をすべて脱いで体を拭いた。その時下腹部に書かれた「オチパ専用」という文字に目をやり、そっと撫でた。あれほど消したい文字が、今はそうは思っていない。

 

 それだけ自分を守るオチパの姿が格好良く見えたのだ。つり橋効果はばつぐんだった。しかし、姉を見つけるまで女になるわけにはいかない。そう思う気持ちも大きい。ニニャは自分の気持ちを整理することができず、しばらく下腹部をさすっていた。しかし―――

 

『実際何人にイタズラしたんじゃ?』

『えーっと……。今は言わないほうが良さそうですね。それこそ刺されちゃいそうです』

 

 リイジーとオチパの会話がニニャの脳内でリフレインされ、先に片付ける問題があった事を思い出した。ニニャは今までの悩みが嘘のように消え、さっさと体を拭くと、着替え、汚れてしまったズボンを今まで使っていたお湯で洗って室内に干すと、爺が使っていたローブを畳んだ。

 

 そしてお湯を窓から捨てると、オチパがいるであろう四人部屋へと向った。

 

 

 

 ニニャが四人部屋に入るとギルドから早くも使いが来ていた。それをオチパは何だかんだ言って断ろうとしていたのだが、使いも断固として引かない。漆黒の剣のメンバーも本当なら行った方がいいとわかってはいたが、一日ニニャを運び、薬品店でトラブルに巻き込まれたオチパを休ませたいという気持ちも大きかった。

 

 ニニャもその話に加わり、明日にすべきと主張した。1対2の劣勢になったギルドからの使いは最終手段を取った。オチパに二人だけで話があると言って廊下に出ると、切り札を切る。

 

「イシュペンさんも心配している。そう伝えろとギルドマスターが―――」

「行きます」

 

 即答だった。

 宿の中では外に仲間が張り付いているので手を出しにくい。見張りを眠らせても違和感が残るだろう。音を漏らさないマジックアイテムを使えば出せないわけではないが、不意に入ってこられたときに困る。イシュペンがギルドにいるのなら一人で行けばチャンスは生まれる。そう考えたオチバの答えは最初から決まっていたのだ。

 

 イシュペンとオチバの関係はすでにギルド内で暗黙の了解の如く広がっていた。なんであんなヤツに? と誰もが思い、イシュペンの右手を見て納得する。そんな感じだった。しかもギルドマスターはイシュペンを利用する気満々だった。

 

 アレだけの指輪を送った相手を無下にはしないだろうし、イシュペンも特に嫌がっていない。むしろ堂々と指輪をつけている時点で恋人なのは確定だろう。むしろ「一人決まった相手がいれば被害はなくなるだろう。手綱が付いて幸運だ」くらいにしか思っていなかった。

 

 四人部屋に一人で戻ると、「やっぱり行ってくる」と言い、ニニャから爺のローブの場所を聞くと、二人部屋に荷物を取りに戻った。

 

 最初は脅されたのかと考えた漆黒の剣だったが、オチパの様子が妙に嬉しそうだったので何かエサに釣られたのだろうとあっさり正解にたどり着いた。しかし、そのエサに心当たりがなかった。

 

「倒した相手が賞金首だった……なんて線はどうだろうか」

「金ってこたぁねぇだろ。やっぱ女じゃねぇの?」

「ええ!? い、いえ、マジックアイテムとかじゃないですかね?」

「うむ。あれだけの資産を持ち歩いているのだ。よほど珍しいマジックアイテムに釣られたのであろう」

 

 ニニャも女の可能性が大きい事を知りつつ、そうじゃないといいなと思い、マジックアイテムというミスリードを行ったのだが、その行為には自分を慰めるだけの意味しかなかった。結局最後まで正解を引いたのはルクルットだった。

 

 

 

 冒険者ギルドに着くと、イシュペンの姿は見えず、アインザック組合長が笑顔でお出迎えした。組合長がそのような事をしたことはなく、夜でなければ騒ぎになっていただろう。カウンターに座る夜番の職員も珍しいと思っていた。

 

「ようこそ、冒険者ギルドへ、オチパくん。さぁ行こうか」

「こ、こんばんは、組合長。イシュペンさんは……」

「うん? 彼女はもう帰ったよ。夜に女性が出歩くのは良くないからね」

「え……。でも、イシュペンさんが心配しているって……」

「ああ、確かに彼女も君の事を心配していたよ。明日元気な顔を見せてあげるといい」

「騙したなぁあぁああ! 騙してくれたなぁあああああ!」

「あっはっは! まぁ来たまえ、話をしよう」

 

 漆黒の剣のメンバーに「行ってくる」と言って出てきた以上、今すぐ帰るのも色々と不味い。しかし、監視が離れたのは確かだ。オチバはさっさと終わらせてイシュペンのところに行こうと心に決めた。

 

 アインザック組合長の先導でオチパは初めて組合長の執務室へ入った。そこには一人先客がいた。魔術師組合の組合長のテオ・ラケシルである。オチバとラケシルはアインザックの紹介で自己紹介し、席についた。

 

 アインザックとラケシルの話で殺した爺が持ち物から秘密結社ズーラーノーンの人間であることはわかったが、他に持ち物や情報はないかと言われ、爺から剥いだ赤いローブとマジックアイテムと財布を出した。

 

「爺が口にしたのは『遊びすぎだ』くらいですかね? すぐに殺しちゃったので……」

「そうか……、ラケシル、何かわかるか?」

「こ、これは……。『死の宝珠』だと? 個人で持っていていいものではない! アインザック、これはとても危険なものだ。街がアンデッドの巣窟になりかねんぞ。魔術師組合で管理させてもらう!」

「ふむ。オチパくん。私もそうした方がいいと思う。買い取らせてもらうよ?」

「えー……。値段によりますけど……」

「そうか。ラケシル、いかほど出せる?」

「千だ。あの爺の装備全て含めて千金貨でどうだ!」

「売りました。どうぞお持ちください。あと素手で持つのも危ないのでこの袋をお付けします」

「うむ。すまんな。アインザックも構わないな? では私はさっそく組合に戻る」

「おい、ラケシル! まぁいいか。オチパくん、金は後で組合を通して渡そう」

 

 そしてアインザックの希望通り、―――ここで話さなければ詰め所で話す事になると脅されながら、オチパはクレマンティーヌの詳しい情報をすべて話した。似顔絵や姿絵も描いたがどう見ても子供の落書きだった。クレマンティーヌの落としていったローブは宝物なので言うつもりも手放すつもりもない。むしろあとでリイジーに《保存(プリザベイション)》を掛けてもらおうと心に決めた。

 

 クレマンティーヌの話が終わると、今回の事件で功績が認められ、銀(シルバー)に昇格する事になった。さらにズーラーノーンの人間には懸賞金が掛けられており、オチバはそれなりの金貨を受け取った。しかし、戦闘には参加していないものの、ニニャもいたため、賞金や魔術師組合からの金は漆黒の剣とわけた方がいいとアインザックはアドバイスした。

 

 アインザックはどの程度オチパが金にこだわるか見ておきたかったのだが、散財していたオチバは悔しそうな表情を浮かべつつ、じゃあ自分の取り分は冒険者ギルドが立て替えて先に寄越せといった。相当な執着心を持っていると判断したアインザックは「案外金でも釣れるのか」と思いつつ了承し、金庫から200金貨を出してオチパに渡した。

 

 オチバは一階へ戻り、受付で職員から新しいプレートを貰うと短い付き合いだった銅(カッパー)プレートを職員に渡した。どうせならウィナかイシュペンから受け取りたかったなと思いつつ、折角だからイシュペンに見せに行こうと冒険者ギルドを出たところでルクルットに捕まった。

 

 実は漆黒の剣もその後すぐに別口で呼ばれており、現在アインザック組合長と話しているらしい。ルクルットは組合長の指示で出口を押さえていたそうだ。オチバはさっさとエ・ランテルから出たくなった。なんだか面倒くさくなったので爺の賞金の1/5を抜き取るとルクルットに投げ渡した。

 

「あん? どうしたんだ? この金」

「爺さんの報奨金だってさ。チームで分けろって」

「ああ、賞金首だったのか。お前がソロで殺した(やった)んだ。お前が総取りでいいんじゃねぇの?」

「まぁ、爺さんの装備も高く売れたから。それで我慢しとく。それで装備整えなよ」

「そうかぁ? まぁ、お前がそう言うんならありがたく受け取るけどよ……。って結構入ってんな!」

「それ4人分だから。追加も組合で貰えるから明日にでも聞いてみてよ」

「なんだぁ? 妙にふて腐れてんな。何かあったか? って昇級してんじゃねぇか! 今日はパーッとやるか?」

「ちょっと嫌な事が色々とありまして……」

 

 何となく、「女か……」と口に出して察したルクルットに、「ええ、まぁ……」とさらに沈んだオチバを慰める言葉をルクルットは即座に思いつかなかった。オチバはただ会ってエッチしたかっただけなのだが、ルクルットは振られたと勘違いしたのだ。

 

「色々とつれぇよな……」

「はい。つらいです」

 

 どんよりと沈んだ冒険者ギルドの入り口に漆黒の剣のメンバーが加わり、宿へと戻った。道中お金に関してルクルットと同じ内容を言われたが、オチバも同じような事を言ったため、明日から数日はチームの装備を整える事に決まった。すでに夜も遅いのでそのまま寝ることになった。

 

 

 

 オチパが「あーうー」とうめきながらベッドへ倒れこんだ。それを見たニニャは「まぁしょうがないですよね」と苦笑しながらオチパのベッドへ近づき、オチパに「そんな格好で寝たらベッドが汚れますよ」と声を掛けながらオチパのブーツや外套、上着を脱がし、壁にかけた。

 

 そしてオチパを仰向けにすると、「おやすみなさい」と言って上掛けをかけようとしたところで、ちょっとくらいならいいかなと自分の唇をオチパの唇に重ねた。そして今日あったことをオチパの身体を触りながら思い出す。

 

 起きた時にこのヒザで膝枕されていた。今日のほとんどをこの腕に抱かれていた。時々この胸に押し付けられた。お漏らしたところをまたこの目で見られた。でもミスリルチームですら全滅した相手から守ってくれた……。

 

 アインザック組合長から聞いた話は実際に見ていたニニャですら声を出して驚いた。ペテルなどは聞き返してすらいた。ルクルットは今頃仲間に聞いているだろう。信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)が前衛を兼ねることがないわけではない。実際ダインは森司祭(ドルイド)だがメイスを持ち、ニニャを守りつつ戦い、ゴブリンなどはそれで何度も倒している。

 

 だが今回の相手は格が違った。ミスリル級といえば3つ格上だ。エ・ランテルでは最高峰の冒険者チームだった。それを全滅させるような相手だ。漆黒の剣だけだったら全滅していただろう。実際漏らすほど怖かった。でもオチパはなんでもないように守ってくれた。

 

 ホントはこんなに消耗するほど怖かったんだろうな……。そう思うとその後の行動もニニャには自分の緊張を解くためわざとやっていたのだと感じた。

 

 『強い男に好意を抱くのは女性の本能というものであるからな』

 

 ダインが前に言っていた話をニニャは聞き流していたが、ニニャは実際に実感してしまった。しかも好意を抱くどころではない。あれだけの事をされて嫌悪感しかなかったのに、今ではそれすら大切な思い出に変わってしまっていた。

 

 ニニャはそっとオチパの頬に触ると部屋の外に出て、部屋の前にいたダインに話かけた。

 

「オチパも疲れて寝てしまいましたし、今日はもう大丈夫だと思いますよ。みんなにもそう言っておいてください。一応警戒(アラーム)もかけますが……」

「うむ。ニニャがそう言うのであれば某も休ませて貰うのである」

「うん。おやすみなさい、ダイン」

「おやすみである」

「あ、それと明日の事なんだけど―――」

 

 オチバは残念ながらチャンスはもうないと思い込んでいたため、ふて腐れてガチで寝ていた。ニニャは部屋に鍵をかけて、ぐっすりと眠るオチパの元へ戻ると残ったオチパの上着を全てはだけさせ、オチパの腕に抱かれるようにベッドに入りオチパの腕を自分の身体に回すと上掛けをかけた。

 

 

 

 ダインが四人部屋に戻り、事情を説明すると、ルクルットは「あちゃー」と頭に手をあて天井を仰いだ。しかも「私はマジックキャスターですし、明日は皆さんで買い物に行ってください」ときたもんだ。ニニャが女だと知っているメンバーはニニャがオチパに迫る気満々だと即座に判断した。

 

「おい、どうするよ?」

「どうするって言われてもな……。ニニャの意思を尊重するしかないんじゃないか?」

「うむ……。強い男に好意を抱くのは女性の本能というものであるからな……」

「やっぱそうだよなぁ……。でもよぉ、オチパだぞ? 不幸になる未来しか見えねぇよ……」

「それでもニニャが冒険者でいられるのもお姉さんを見つけるまでだろう。それならオチパがニニャしか見ないようにできないか? ルクルット」

「無理だろ……。むしろニニャが折り合いつけられるか考えた方がいいわな……。それよりも早くお姉さん見つけないとやばいかもよぉ?」

「ルクルット! お前なぁ……」

「いや、オチパの野郎、ギルドの受付嬢に振られたみたいだぜ? いっぱしに落ち込んでいやがった」

「そうか……。ルクルットの言う通り早く探したほうがいいのかもしれないな」

「うむ……」

 

 

 ◇

 

 翌朝ニニャはノックの音で目が覚めた。そしてオチパのはだけた胸を枕にしていた事に気付き、ニニャは「仲間に見られては困る」と焦った。

 

「ニニャ、オチパ、起きてますか?」

「え? あ、はい。す、少し待ってください」

「いえ、私達はこれから買い物に行きますので夕食までオチパの世話をお願いできますか?」

「はい、あの、任せてください」

「では、頼みましたよ」

 

 ニニャはそれを聞いて何となく色々と察したが、すでにもう遅いと考えた。それに仲間が気を使ってくれている事を嬉しく思いながらも意外と早く訪れたチャンスにニニャはオチパに対する復讐と尋問を開始することにした。

 

 オチバもノックの音で起きていたが、ニニャが何かしそうな気配を感じ、寝た振りを続行した。何もされなかったらすればいいとも思った。ニニャはオチパの両腕をベッドへと片方ずつ広げるように縛ると、オチパのズボンと下着を脱がした。それらを自分のベッドへ放り投げるとニニャは部屋から出て行った。

 

 まさかの放置プレイにオチバは戸惑いながらも、《千里眼(クレアボヤンス)》を発動し、ニニャの動向を探ると、ニニャは朝食をとっていた。ただ、いつもより量が多かった。ニニャは朝食兼昼食を食べ終えると、「筋肉痛で仲間が寝込んでしまって」と言いながらスープを一皿もらった。そしてニニャは部屋の前で一度スープを置き、腰のポーチに入れた薬をスープに入れ、部屋に戻った。部屋に戻ると戸惑った顔のオチパがいた。

 

「おはようございます、オチパ。ふふっ、体調はどうですか?」

「えっと、おはよう、ニニャさん。少し腕が痛いです」

「そうですか、筋肉痛ですね。腕が動かせないほどがんばってくれたんですね」

「えっと……。まぁそうですね……」

 

 暗い笑みを浮かべるニニャにオチパは戸惑いを隠せない。これからされることに想像はつくが、果たしてそんな事をするような娘だったかと……。ただ、折角の機会なのでオチパは楽しむことにした。

 

「そうそう、今日はみんな夕食まで戻らないそうなので、わたしが看護してあげますね」

「あ、ありがとうございます。その、起きたばかりでおしっこに行きたいのですが……」

「ふふっ、それはもう少し我慢してください。先に朝のお食事です。オチパの好きな口移しで食べさせてあげますね」

 

 口移しなら毒の類ではないだろうとオチパは安心した。毒や気絶を無効化するパッシブスキルを取っていたため、問題はないが、毒殺されるほど憎まれていると後々面倒だなと思ったからだ。

 

 ニニャは薬入りのスープを口に含むとオチパの口に押し付け、食べさせはじめた。オチパはそれを素直に食べる。ニニャは自分の唾液が混ざったスープを飲み、自分の体液がオチパの中に入っていく様子に興奮し、秘所が濡れはじめた。

 

 オチパもニニャの唇の感触と、たまに唾液だけを飲ませるニニャに興奮し、肉棒が硬くなるのを感じた。スープを飲み終え、しばらくディープキスをしていると、ニニャは唇を離した。

 

「ふふっ、もうこんなになってしまったんですね。やはり教育が必要ですね」

 

 そう言うとニニャはスープの皿をテーブルに置き、ポーチから先ほどの薬の入っていた空のビンを取り出してオチパに見えるように振った。

 

「これ、スープに混ぜたんですけど、何の薬かわかりますか?」

「え? い、いえ。何を飲ませたんですか? ニニャさん」

「ふふっ、毒じゃありませんから安心してください。ただの精強剤です。リイジーさんから買ったものなのですが効果はすごいみたいですよ? 本人の体質にもよりますが半日以上おさまらないそうです……。大変ですね?」

「ちょっ!? えええええ!?」

「オチパでもそんな声出すんですね。ふふっ、安心してください。ちゃんと教育してあげますから……」

 

 ニニャは空のビンをテーブルに置くと、「少し暑いですね」と言いながら脱ぎはじめた。ニニャは胸に巻きつけたさらしや下穿きもすべて脱ぎ、自分のベッドへ放ると、首にかけていた冒険者プレートを外してテーブルに置いた。そしてニニャがオチパの上に股を開いて立つと、ニニャのワレメから太ももを伝ってこぼれる愛液を見てオチパは我慢できなくなりそうになり、一瞬腕を縛るロープを引きちぎりそうになったが何とか我慢した。

 

 ニニャはもがくオチパを見て暗い笑みを深める。

 

「辛そうですね……。でもこれは教育ですから少し我慢してください」

「ニ、ニニャさん、ロープ解いてください」

「まだダメですよ? 教育が終わったらほどいてあげます。では最初に、今まで何人の女性を襲ったのですか? 怒りませんから聞かせてください」

「そ、それって絶対怒るヤツでは?」

「いえ、わたしは絶対怒らないから安心して答えてください」

 

 ニニャは「さぁ早く」と言いながらオチパの顔を覗き込むように腰を落とし、ワレメを肉棒の裏筋に沿わせると、くにくにと腰を動かしはじめた。オチパは何とか入れようともがくが、肉棒がイきそうになったり膣内に入りそうになるとスッとニニャは腰を浮かせた。

 

「さぁ、言ってしまった方が楽になりますよ? 全部正直に答えたら入れてあげます」

「あぐっ……。ほ、本当?」

「ええ、あっ、あん……本当ですよ……んんっ」

「ニ、ニニャを入れて四人です」

「最初はどんな子だったんですか?」

「い、言ったのにっ!」

「全部っ、正直にっ、あんっ、答えたらって……言ったじゃないですかっ」

 

 ニニャのクリトリスが肉棒のくびれを通過するたびにニニャは甘い声を出した。それでもニニャは腰の動きをやめない。我慢の限界に達していたオチパはあっさりとニニャの質問に答えていった。そして一度ニニャは身体を落ち着けるように身体を浮かせると、オチパに明るい笑顔を向けた。

 

「最初はカルネ村のエンリ・エモットさんでしたね。今からわたしはエンリ・エモットです。エンリって呼んでくださいね? さぁわたしの顔を見ながらエンリさんの事を思い浮かべてください」

「ニ、ニニャ?」

「エンリです。さぁ……」

「エ、エンリ……」

「ふふっ、ではご褒美をあげますね。終わるまでわたしはエンリです。分かりましたか?」

「わ、わかりました! わかりましたから早く!」

「では、エンリの穴をじっくりと味わってくださいね……あんっ、あ、あぁああああ!」

 

 ニニャはオチパの肉棒を手に持つと、それを自分のワレメの入り口へ押し当て、ゆっくりと腰を下ろして挿入していった。

 

「エンリ! エンリ! ああ、でちゃっ!」

「ふふっ、あんっ、オチパ、出してっ……あんっ、いいですよ!」

「くぅっ……」

「あぐぅううっ……あっっつううぅぅぅ……ふふっ、さすがにすぐに出ちゃいましたね。エンリの中はどうでしたか?」

「き、気持ちよかったよ、エンリ……」

「そう、オチパは物覚えの良い、いい子ですね。んっ、んっ……」

 

 ニニャの膣内はきつくうごめき、子宮口がニニャの腰の動きに合わせてぐりぐりと肉棒の先端をこすりあげる。ニニャは膣内の射精とその熱さで一度イったが、眉をしかめ、目を瞑って耐えた。そしてイったばかりの肉棒をニニャの膣内はぬるぬると擦り上げ、締め付け始めると、精子を出したはずの肉棒があっという間に硬くなった。

 

「あぐっ、だ、出したばかりなのにっ」

「ふふっ、すぐに、んんっ……硬くなって……あんっ、きましたねっ」

「エ、エンリ、これじゃあ、また、でちゃうよ」

「ふふっ、あっ、そんなにっ、わたしの中が、んんっ、気持ちいいですか? ああんっ……何度、出しても……あふっ、……いいですよ?」

「あくっ、に、二度目なのに! あぐぅっ」

「あはっ、イった顔はっ、あっ、あっ、かわいい、あっ、あっ、あっ、ですねぇぇっぇええ」

 

 薬の効果と連続射精、そしてうごめくニニャのイき続ける膣内にオチパはあっという間に達した。ニニャの膣内は絞るようにキュンキュンと痙攣し続け、子宮口はごくごくと飲み干すように肉棒の先端に吸い付いた。

 

 そんな射精がもう六度続いた。その数はカルネ村でエンリを犯した回数より一回だけ多い。ニニャは汗で湿り、熱で赤みを帯びた真っ白な身体をオチパの身体に匂いをこすり付けるように抱きつき、頭の中を駆け巡るバチッバチッと断続的に続く強くて甘い快楽を落ち着かせるために、ハァハァと荒い息を吐いた。そして、オチパはそんなニニャの感触と匂いにオチパの肉棒が拷問のように再び硬さを取り戻すと、ニニャはベッドの脇に立った。

 

 ニニャの股からは白い液体がぽたっぽたっと垂れ落ちた。そんな光景に肉棒はますます硬くなったが、ニニャはそれに一瞥も送らずオチパの両頬を手のひらで包み、瞳を覗き込んだ。

 

「オチパ。今のわたしはニニャです。わかりますか?」

「ぁぃ……」

「ふふっ、わたしとエンリ、どっちが気持ちよかったですか?」

「……えっと。あれ?」

 

 さっきまでのエンリはニニャになった。ニニャの膣内だったはずなのにエンリの膣内だった。そういうことだったのだ。つまり、エンリと答えると先ほどまで入っていた膣内であり、ニニャと答えると無理やり犯した時のニニャになるのだ。それにオチパは混乱した。

 

 そして、ニニャは精液と愛液でぐじょぐじょになったマンコをオチパの手のひらに乗せるとその手のひらに自分の手を重ね、オチパの指を膣内に入れた。

 

「このタネは……エンリの中に……出したはずなのにっ、わたしの……中にぃっ……あり、ますね……あんっ」

「え、ええ……」

「んぅうっ、どうしてっ、でしょうね?」

「……わかりません」

「ふふっ、上手くいったみたいですね」

 

 ニニャはエンリの上書きをしたのだ。ニニャのドロドロになった嫉妬心が、上書きしたことで同じような黒くドロドロとした執着心へと変化し、増えていた。

 

「ではオチパさん、ンフィーレアさんに使った第三位階より上の治癒魔法をかけてください」

「え?」

「とぼけても無駄ですよ? 失明を治す治癒魔法なんて聞いた事ありません。さぁ、秘密にしておいてあげますから。あ、《下級筋力増大(レッサー・ストレングス)》もお願いします」

 

 上手くいったと言いながらニニャはオチパの手をマンコから抜き取ると、自分に魔法を使うよう言った。オチパがニニャに言われるがままニニャに第六位階魔法《大治癒(ヒール)》を使うと、ニニャは一度手を握り、《下級筋力増大(レッサー・ストレングス)》の感触を確かめ、テーブルに置いた自分の冒険者プレートを首からさげた。

 

「今のわたしは鉄(アイアン)級冒険者のブリタです。オチパさん、わかりますか?」

「はい、ブリタさん……」

 

 ニニャは再びオチパに跨り、同じように今度は二人目のブリタを刷り込む。ニニャはオチパの理解が追いついたと判断すると、魔法で元通りになったマンコに肉棒をゆっくり挿入し、魔法で強化された膣内でギュッと締めつけた。

 

 そして、ニニャはゆるゆると身体をこすりつけ精液を搾り取り、馬に跨るように腰を振って首から下がる冒険者プレートを暴れさせながら搾り取り、オチパの口を手で塞ぎ「声を出したら起きちゃいますよ?」と言いながら静かに搾り取り、最後は「子供できちゃう!」と言いながら搾り取った。

 

 ブリタの上書きのあとはイシュペンだ。しかし、ニニャには足りないものがあった。ニニャは自分のおっぱいを寄せてオチパの口に近づけ、オチパも縛られたままそれに口を伸ばすが残念なことに息があたるだけで届かなかった。

 

「くっ、あんっ、オチパっ、今重要なっ、ところなんでっ、すからあぁっ! う、動かないっ、でっ!」

 

 自然に動き、我慢も出来ず射精してしまうようになったオチパの腰がニニャの子宮口を何度も何度も叩き、ビクビクと震えるたびにニニャは頭の中を快楽でかき混ぜられ、プシップシッと透明な汁を噴き出した。

 

 ニニャは一度おっぱいを吸わせる事を諦めると、そのまま真っ白な頭で快楽に身を任せてイき続け、四度搾り取ると、ぐったりとオチパの上に倒れこんだ。そして荒くなった呼吸を落ち着けると、最後の上書きを終え、オチパに魔法を使わせる。

 

 終わりのない快楽でボーっとしたオチパは、ニニャに言われるがままだった。そんなオチパに身も心もドロドロになったニニャは「ちょっと待っててくださいね」と言い軽いキスを落とすと、イシュペンのときに外していた冒険者プレートを再び首からさげた。

 

 そして、自分の股にタオルを挟みこみ、初めてを奪われた日に着ていた上着とズボンを身につけ、マントを羽織ると事後の香りをまとったままトイレへと向った。ニニャはトイレで自分の中に入った体液をある程度落とし、大きいほうを済ませると、股に挟んだタオルで出来るだけ後ろの穴をキレイにした。

 

 ニニャはそのタオルをトイレへと捨てると部屋に戻り、オチパに話しかけた。

 

「オチパ。大丈夫ですか? 今ロープを切りますね」

 

 漆黒の短剣でオチパの両腕を拘束していたロープを切ると、その短剣で自分のズボンの股を裂いた。ニニャは漆黒の短剣を鞘に戻して自分のベッドへと放ると、そのままピクピクと動く肉棒を手に取り、オチパに跨って自分のマンコへと肉棒をおさめた。

 

 ボーっとした瞳にマントを羽織った冒険者すがたのニニャが跨り、自分の上で腰を振りながら眉間に皺を寄せるニニャの顔が目に入った。

 

「ニニャ! ニニャ!」

「はい、……んんっ……ニニャはっ……んはっ……わたしはっ……あなたの、ニニャは、あんっ、ここに、いますよ!」

 

 オチパは無意識で身体を起こし、いつの間にか自由になっていたオチパの両腕が自分に跨るニニャに抱きつき、普段見ている服装のニニャをギュッと抱きしめると、ニニャもそれに答えるようにオチパの頭を抱きかかえ、頭をなでた。

 

「オチパ専用のっ……ニニャの子宮に……あ、あ、あぐぅっ……んあっ……いっぱい……あああああっ……―――んうぅっ……全部、……オチパ専用にっっぃぃいいいい、あああああっ! ……―――あくっ……あっ、あっ、あっ……いっぱいっ……こわして……っあぐぅぅううう……―――はっ、はっ、はっ……あっ、あぐっ、あぐっ、ああああっ、ぐうぅぅぅぅ……―――」

 

 ニニャは何度も何度もイき続け、何度も失神と覚醒を繰り返しながら頭の中でバチバチとはじける快楽の中、腰を振り続けた。オチパはボーっとする頭で冒険者のニニャを犯し続けた。

 

 ニニャのすべての穴に何度も肉棒を奥まで挿し込み、精液を注ぎ込み、すべての穴ですべての体液を飲み込んだ。そして、意識を保つことも難しくなり、白目をむきながらもそれに痙攣とうめき声で答えるニニャに抱きつくと、オチパもほとんど体液の出なくなった絶頂を終え、ニニャの胸に顔を埋め意識を失った。

 

 

 

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