ダードン山脈に出現した亜種と焔紅石の採掘についてコヨミハルカと協議する必要があった。遣いを出してコヨミハルカを招く。
俺はトトノトリアと共に我が領のギルドマスターを迎えた。
「忙しいところすまないな。亜種の件についての調査報告を聞かせてくれ」
「はい。死骸の解析の結果、あれはフイムリザードの亜種であることが確定しました。ただ、本部に問い合わせてみたもののこのような亜種に関する情報はないということでした。あれからダードン山脈に何度か冒険者を行かせておりますが、亜種発見の報告はありません。痕跡すら見つからないことから他の個体は存在しない可能性が高いと推測しています」
「そうか。ゴルデア帝国でも亜種の出現が増えているとの話を聞いたが、参考になりそうな情報もないか」
「申し訳ございません。最近帝国でも亜種が出現していることは確かですが、亜種の出現はどれも特殊事例のため本件の参考になるようなものはないかと」
「ふむ。リートヒンド冒険者ギルドなら何か掴んでいるかもしれないと期待していたのだが残念だ」
コヨミハルカが頭を下げる。
その意味は、本当に有益な情報が存在していないか、リートヒンド冒険者ギルドが把握していないか、知っているが隠しているということだ。コヨミハルカは知らずとも本部では把握しているということもありえる。仮にそうだとしても本部が俺に情報を隠すことは特段驚くべきことでもない。
冒険者ギルドは冒険者の名を冠しているがその本体は商会にある。たとえばリートヒンド冒険者ギルドならリートヒンド商会というようにだ。
元を辿れば冒険者ギルドとは商会がより安く魔物の素材を仕入れ、それを安全に運搬するために必要な人材を集めて部門を作ったことが始まりだ。やがて有力な商会は他の商会の素材収集や護衛も引き受けるようになり、この部門を冒険者ギルドとして独立させて手広く活動するようになる。そのため大小の冒険者ギルドがあるがその背後にはほぼ必ずと言っていいほど商会が存在しており、それ故重要な局面では商会の利益が優先される。もし亜種に関する情報が秘匿されているとすれば、商会にとってよほど重要な情報なのだろう。
ともかく、現時点でコヨミハルカから亜種に関する情報を得られることはないだろう。不審な情報があった場合はこちらが報酬を持つので必ず探索するよう頼んで亜種の件を終わりにする。
「次は焔紅石の件だが、この点についてガリウスを呼ぶので後で詳細はそちらで頼む」
「かしこまりました」
「ところで」
俺は世間話だとわかりやすく尋ねる。
「以前渡した回復薬はお気に召してくれたかな?」
「ああ! あれは良いものですね。疲れたときに飲むと頭がスッと冴えるというか体が軽くなるというか」
コヨミハルカは笑顔で答える。その答えは俺を深く満足させてくれるものだった。
「いやはや、それはよかった。貧者の幸福を気に入ってもらえて何よりですよ」
「貧者の幸福?」
「ああ、いや、あの回復薬の名前ですよ。実は今妹が量産できるように調合を改良していてね。目途が立ったらリートヒンド商会にも卸したいと考えているのだがどうだろうか?」
「それは願ってもないことです。金額にもよりますが売れないということはないでしょう」
「値段は普通の回復薬よりも安く、貧困層でも手の届くようにと考えている」
「なるほど、それで貧者の幸福ですか。わかりました。目途が立ち次第お話頂ければ私の方から本部へ話を通します」
「それはよかった。その時はぜひお願いするよ」
俺は部屋の隅に控えていたイクアに貧者の幸福を持ってくるよう指示する。程なくして彼女が貧者の幸福を運んでくる。
「以前お渡ししたものをさらに改良したものです。どうぞお持ちください」
「よろしいのですか?」
「もちろんですとも。そう、試供品というやつですよ。実はこの侍女にも飲んでもらっておりまして。イクア、どうだ貧者の幸福は?」
「はい、とても素晴らしいものだと思います。これが世に広まれば数え切れないほどの者が喜ぶに違いありません」
「では後でお前にも貧者の幸福を渡そう」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
イクアは深くお辞儀をする。彼女の感謝がはっきりとわかった。
コヨミハルカとの会談が終わった後、俺はガリウスとひとつ愉しむことにした。思えばガリウスには日々の領地経営に加え、鉱山開発まで任せている。我が領にとって正にガリウスは欠かせない人材と言っても過言ではない。そしてガリウスは実に紳士的趣味を持つ男であり、俺は彼のそういうところも高く評価していた。
俺はガリウスの好みをずらりと地下室に並べさせる。
「さあガリウス。ほんの労いだ。好きに選んで遊んでくれたまえ」
「ありがとうございます。ローレンス様。それでは」
ガリウスは選んだのはやせぎすの少女だった。茶色い短髪にそばかす。貧相な体つき。どこにでもいそうな、いや実際にいるだろう貧しい子供だ。
だが、ありふれた少女を特別に変えることこそガリウスの悦びであり愉しみであった。
ガリウスはいつもの仏頂面ではなくいかにも子供が好きといった笑顔を浮かべ少女の手をひく。少女は何をされるかわからない恐怖に怯えながらも一抹の期待を胸に抱いて彼に従う。
ガリウスはそのまま地下室から少女を連れ出し、出てすぐにところにある比較的小さな部屋に入る。俺もソラリを従えてそれに続く。
部屋には四人掛けのテーブルと椅子があり、テーブルには簡素ながら麻製のテーブルクロスが敷かれていた。そしてその上にはごく普通の料理。ただし俺達貴族にとっての、だ。奴隷の身に堕とされ、ここ数日はろくに食事を取っていなかった少女にはこの上ないごちそうに見えたことだろう。
「さ、お腹が減っているだろう。たまには美味しいものを食べたらいい。遠慮なくお食べなさい」
少女は降ってわいた幸福をどのように握ればよいのかわからないようだった。席に着かず料理とガリウスへと視線を往復させる。ガリウスが慈悲深く頷いてやると、少女はようやくこの幸福を享受してよいものだと理解した。席に着き、おそるおそる料理を食べ始める。ためらいがちだった少女の手は、段々と速くなっていた。ガリウスは対面の席に座り、その様子を穏やかに見ていた。
「美味しいかい?」
しばらくしてからのガリウスの問いに、少女は何度も頷く。頷きながら涙を零す。涙を零しながら食事を続ける。
ガリウスはやわらかな手つきで少女の荒れた茶髪を撫ぜ、そして彼女の髪を乱暴に掴んでその顔面を料理に叩きつける。
潰れた短い悲鳴と共に料理ごとテーブルがひっくり返される音が部屋に響く。それはささやかな幸福が壊れた音だ。ガリウスは少女を突き倒し、その腹を何度も足蹴した。当然、少女の唇から幸福だったものが吐き出される。
少女が胃液すら吐き出せなくなったところで、ようやくガリウスは満足する。少女の衣服を剥ぎ、その純潔を奪う。破瓜の悲鳴は少女自身のさらなる絶叫によって塗りつぶされることになった。ガリウスが少女の両目を潰したのだ。そのままガリウスが二本の指で眼孔をかき回してやると、少女が一段と大きな悲鳴をあげる。
そうやってしばらく少女を奏でながらガリウスは少女の中に精を出した。少女は苦痛の果てに気絶しており反応は薄かった。
「どうだね、それの味は?」
「思った以上に良好ですね。中の具合はかなり上等です」
俺の問いにガリウスは答える。
「それなら持って帰るといい。お前にはよく働いてもらっているからな」
「ありがとうございます」
ソラリに命じて吐瀉物まみれの少女を清めさせる。少女は然るべき加工をした後に、ガリウスの住居に運ばれることになる。そして絶望に慣れ腹が充分に膨れてきた頃に賞味するのがガリウス好みの食べ方だ。その際は俺やシャリリーゼも相伴に預かることもある。
「そういえば最近奴隷の値が上がっているという話を聞いた覚えがあるのだが、どうなんだ?」
「はい。フェルベリカによると戦闘用奴隷の値が少し上がっているようですね。他は変わらないとのことです」
「そうか。一応理由を探っておいてくれ」
「かしこまりました」
辺境伯領は王国の他領よりも帝国の方が近いため、フェルベリカは王国と帝国に跨って奴隷を調達している。彼女の調達先の一つで戦闘用奴隷が多く買われているのかもしれない。貴族の道楽や傭兵団の人員不足解消のため戦闘用奴隷が買われることは頻繁にあることではないがそこまで珍しいことでもない。
「だがまあ我々が欲するのは戦闘用奴隷ではない。そうだろう?」
「おっしゃるとおりです」
ガリウスは酷薄な笑みを浮かべ、未だに起きない少女の人さし指をへし折った。激痛の悲鳴をあげて少女が目覚める。
今宵の遊戯はまだこれからだった。
あくさかも10万字を超え、ようやくこの孤児院準備編でおおよその風呂敷を広げることができたんじゃないかなあと感じています。
次回はまだ未定なのですがそろそろ舞台を移すことになりそうです。とは言うものの、まだプロットどころか話の道筋すらつけていない状態なので、次回投稿にかなりのお時間を頂くかと思いますので、気長に待って頂ければ幸いです。
それと今月25日の第二十七回文学フリマ東京にサークル名「ささやかさんくみ」としてD-15に出展します。詳しくは今後Twitterや活動報告で告知する予定です。よかったら遊びにきてください。ではでは。