辺境伯で十八歳ともなれば既に婚姻しているか、さもなければ婚約くらいはしていてもおかしくない。
というわけで、もちろん俺にも婚約者がいる。それがザックソー伯爵家の第二令嬢トトノトリア・ザックソーだ。
伯爵が王都から領に戻るということなので、それに合わせてトトノトリアに会いに行くことにしたのだ。
ザックソー伯爵家の屋敷に到着したのは日が暮れてからになってしまった。それでも伯爵は笑顔で歓待してくれる。
「やあやあ、ローレンス殿。ようこそいらっしゃいました」
「デルコミア様、この度はお世話になります」
「いやいや、未来の
「お言葉に甘えさせていただきましょう」
ザックソー伯爵はつきでた腹を陽気に揺らす。
トトノトリアは屋敷の離れに住んでいて、少ない侍女の他はほとんど人と会うこともにない。今夜会いに行くよりも日を改めて顔を見せたほうが彼女にとっても過度な負担にならずにすむだろう。俺の婚約者は人見知りの臆病者なのだ。
赤髪でそばかすの多いメイドに部屋を案内される。伯爵の屋敷は俺の屋敷よりも美術品が多く豪奢だ。俺は美術品など買い漁るよりも奴隷を買ったほうが愉しいのであまり興味がない。
しばらく与えられた一室で長旅の疲れを癒していると、先のメイドがやって来た。その手は小さく震えており、怯えているのがわかった。
「あの、ローレンス様……、旦那様からローレンス様の夜の世話をするよう申しつけられました」
「ふむ、伯爵は他になんと」
「その私を好きにしてよいと」
メイドは素朴な顔を青くして答える。
なるほど、さすがザックソー伯爵。物事がよくわかっている。
俺はとても満足して頷いた。
シャリリーゼがいないため、旅の間はソラリを無闇に壊すこともできずにいて欲求不満だったのだ。これで盗賊なりが道中で襲ってくればそれを虐げることもできたのだが、幸いにというべきか、盗賊の襲撃はなかった。
「では伯爵の言葉に甘えるとしよう」
メイドは恋人がいるらしく既に破瓜をすませていた。きっとザックソー伯爵が味見をしたのだろう。それを少し残念に思いながら俺はメイドの玉門と
俺は隷属魔法をかけて命じる。
メイドはナイフをもって自分の腹をかっさばくと、ずるずると腸を引きずり出した。
「その中味を吸え」
メイドは適当なところで腸を切り、その先端を咥えた。そのまま恥辱と激痛に涙しながら腸から血と糞を啜る。やがて嘔吐する。そして啜れなくなったらまたさらに腸を捌いては啜る。
そうしてメイドが失血死する様を眺めながら俺はソラリを犯した。
翌日、俺は婚約者に会いに行く。
トトノトリアは一日のほとんどを離れの自室ですごし、屋敷の外に出ることはまずないので、俺が離れに足を運ぶ形となる。
離れの部屋は伯爵家令嬢のものとは思えないほど質素で、さして広くない部屋の傍らに彼女の侍女が控えている。
俺は勧められた椅子に座り、気さくな貴族のように笑顔を作る。
「やあ、トトノトリア。元気でしたか?」
「はい。あ、ありがとうございますローレンス様。ローレンス様もお元気そうで何よりです」
トトノトリアはうつむきがちにか細い声で答える。
トトノトリアはいつもこうだ。自信がなく他人に怯えている。今は俺の機嫌を損ねることを恐れている。
まあそれも無理からぬことなのだろう。トトノトリアは脚が悪く、車椅子がないと移動もままならない。そして顔の右半分を覆う大きな青痣が生まれつきあることが貴族の女として致命的だ。脚も顔も悪い女を娶りたがる貴族などまずいない。
そのためトトノトリアは役立たずとして離れに捨て置かれていたのだ。俺はそんな彼女を婚約者にしてまともな女としての価値を与えてやった。トトノトリアにとって俺は絶対的な存在なのだ。
俺は淹れたての茶葉の香りを楽しみながら口をつける。やはりここの茶は美味い。
「ええ。ですが少し前に魔物の被害にあった村の視察に行ったら酷い目にあいましてね――」
俺はトトノトリアに適当な話をする。
トトノトリアを婚約者にしたのは、ザックソー伯爵との縁が強くなること、婚姻後彼女をどう処遇しようとザックソー伯爵が目くじらを立てることがないこと、そして動かない脚に醜い痣、臆病な態度が面白かったからだ。
けれど時間をかけてここまで訪ねるのは面倒だし、いい加減物珍しさも薄れてその態度にも飽きてきた。
トトノトリアの抱える膨大な劣等感は貴族の矜持を根こそぎすり潰し、その精神には奴隷のような卑屈さが染みついている。実際俺がトトノトリアを奴隷のように扱ったとしてもザックソー伯爵は一切の文句を言うことはないだろう。ザックソー伯爵にとって重要なのは役立たずな娘の処遇ではなく辺境伯との血縁なのだから。
しかし、貴族的矜持を持った女を奴隷するならともかく、元から奴隷的な貴族を奴隷するのは面白みに欠ける。奴隷などフェルベリカからいくらでも買えるではないか。
……そうだ、逆だ。
逆のほうが面白い。トトノトリアに貴族としての正しい力の使い方を教授し、その魂を悪徳で染め直してやろう。奴隷的貴族をまっとうな貴族にするのだ。そうすればシャリリーゼにも遊び相手が増えてちょうどいい。
「トトノトリア」
と俺は微笑みかけた。
「僕と貴女は婚約者です。わかりますね?」
「は、はい。それはもちろん」
「だけど貴女は自信がおありではない。果たして自分でよいのだろうか、どうしてローレンス様は私を選んだのだろうか、脚が悪く痣のついた醜女をいつ捨てるのだろうか、と悩んでいるのでしょう」
トトノトリアは顔を青くして答えることない。俺は構わずに続ける。
「ですがそれは間違いです。僕は貴女がよいのです。貴女は美しい」
「嘘です」
「嘘ではありません。貴女は脚が悪い。そのとおりです。貴女は顔に醜い青痣がある。そのとおりです。ですがそれは貴女の魂の美しさを損ねることはありません。
人の美しさとはなんでしょうか。容貌? 財貨? 武力? 権力? もちろんそれも一つの美であることは否定できないでしょう。しかし、ただあるがままの人間が持つ最も重要な美しさとは生き方です。それは王も乞食も等しく持ちえる美しさです。僕は知っています。トトノトリア、貴女は不完全な体で産まれ、伯爵には冷遇され、それでも貴族の令嬢たらんと教養と礼節を深く学んでいることは聞き及んでいます。それは美しく、気高い生き方です。そうであるからこそ、僕は貴女を迎えたいと思ったのです」
俺の三文小説にいる王子様の如く綺麗な微笑を作る。
「つまり僕と貴女はいつか結婚するわけです。僕はそのいつかがそろそろ来てもよい頃だと思っています。伯爵にも伺わないとならないことではありますが、どうでしょうか」
「それは……」
トトノトリアは言葉をつまらせた。華奢な体を震わせ、感情をこらえる。
俺はそんな彼女の右手を取り、その甲にそっと口づける。
「トトノトリア様。どうか僕と結婚してください」
姫と騎士の物語のような求婚に、出来損ないの伯爵家第二令嬢は歓喜の涙を零した。
その夜はザックソー伯爵に誘われてお愉しみに耽ることになった。
俺のために伯爵が用意してくれたのは年端もいかない麗しき少女と少年だった。よく似た顔だと思えば、どうやら二人は姉弟らしい。
俺はラコーニコフら護衛の騎士に弟の方を辱めるように命じる。もちろん俺とザックソー伯爵も参加する。弟は泣き叫び許しを乞うが、その変声期前の高い悲鳴は加虐者の情欲を焚きつけるばかりだ。幼い男児の若気はきつく青い蕾のようだ。それがたまらない。
鎖に縛られた姉もまた泣き叫んで弟の名を呼ぶが、それが報われることはない。
散々弟のほうを輪姦したあと、その様子をあますことなく見せつけられた姉に問う。
「弟を助けたいか?」
姉は涙でぐしゃぐしゃになった顔で頷く。
「それならばお前が代わりになれ。いや、代わりではすまないほど滅茶苦茶に犯して壊してやろう。それでも弟を助けたいか?」
姉は悲壮な表情で、それでも頷いた。
アハハ、なんとも健気な姉弟愛ではないか!
俺達は大笑した。
「さてさて、この麗しくも気高い姉の家族愛に敬意を表して、お望みどおりにしてあげるのが我々の優しさってものではないでしょうかな?」
ザックソー伯爵が大仰な発奮に従い、俺達は姉にお望みどおりのものを与えてやった。
それは実に愉快だった。ある者は一寸ごとに姉の手足を切り刻み、ある者は鞭打ちをし、ある者は口で奉仕させ、ある者は玉門を貫き、ある者は若気を犯す。
俺は死なない程度に激痛をもたらす毒薬を含ませてからすっかり手足が短くなった姉の後ろを愉しむ。
しばらくして埒をあけたあと、俺は弟をひきずって連れてくる。そして、お前の姉を犯せ。そうでなければ塗炭の苦しみを味わわせてから、ゆっくりと殺してやると、やわらかに脅迫する。
既に尊厳を奪われた弟に反抗という選択肢はなかった。弟は謝りながら必死で姉を犯そうとする。けれど弟の陽物はしおれて使いものにならなかった。
「どれ、私が手助けしてやろう」
ザックソー伯爵が弟に薬を服用させると、たちまち弟の陽物は天を衝き、狂った獣のように姉を犯し始める。
「いったい何を飲ませたのですか?」
「なあに、ただの強壮剤さ。ただ副作用として理性がなくなり、事が終われば命まで失ってしまうが。
ああ、待ってくれローレンス君。君は麗しき姉弟愛に対してそれは無粋だ、姉のほうにもこの薬を飲ませるべきだと言いたいのかもしれない。なるほど、確かに二人仲良く命の灯火を消す様は歌劇の一幕のような絵があるだろう。しかしだからどうしたというのだね? そういう刹那的な美徳を求める人間が愚かしい選択をしたことは枚挙にいとまがないではないか。生きることが、何を犠牲にして誰を踏みにじろうともただ自分の幸福のために生きることこそが人間のあるべき姿であるし、そういう生き方を肯定することに悪徳の素晴らしさがあることは君だってよくわかっているだろう。ならばここは少女に生きて愛を貫く選択肢を与えるべきだよ」
ザックソー伯爵は先とは別の薬を姉に飲ませる。
「これで姉は愛しい弟の子供を孕むだろう。さて、手足も不満足な少女がこれから生きるためには春をひさぐくらいしか生きる道はないだろう。この少女が娼館に放りこまれたら自身の境遇に絶望して自死を選ぶか、それとも弟の忘れ形見のために泥濘を啜るように生にしがみつくことを選ぶか。どちらを選択するか興味がないかな? これが娯楽ってものだよ」
「ああ、ザックソー伯爵!」
俺は感極まって叫んだ。
「貴方は本当によく人生を、悪徳を、快楽を、娯楽を存じてらっしゃる! 俺は改めて貴方に尊敬しますとも! 全く、最高に面白い娯楽ではないですか。よろしい、ならば俺はこの哀れな玩具が生にしがみつくほうに賭けましょう」
「それならばこっちは自死を選ぶほうに賭けるとしよう」
そして俺達は狂犬のように姉を犯しぬいた弟が息絶えるまで他のメイドやソラリを使って愉しんだ。
一通りお愉しみが終わったあと、ザックソー伯爵にトトノトリアのことを話す。
「実は伯爵、そろそろ僕の婚約者を連れて行こうと思うのですが」
「ああ、あれを」
ザックソー伯爵は実にどうでもよさそうに葉巻をふかす。
「もちろん構わないとも。君の好きにしたまえ。だがあんなのがいいのかい?」
「玩具というのは完璧ではつまらない、不完全なくらいがちょうどいいのです。僕はあれを悪徳に染め直してまともな貴族にしようと思いまして」
「君も物好きなものだ。まあ私としてはあれでゴールドマン辺境伯家とのつながりが太くなるのだから文句はないよ。それよりも最近はどうも国王派の動きがキナ臭くてね。そっちのほうで頭がいっぱいなんだよ」
俺達のアインハルト王国の貴族は主に国王派と貴族派に分かれている。ザックソー伯爵は貴族派の重鎮の一人で、もちろん俺も貴族派だ。だいたい何故国王なぞという血縁だけで俺達の上にふんぞりかえる暗愚に仕えなくてはならないのだ。俺の主人は俺だけだ。たとえ国王だろうと神だろうと俺の主人になることは許されない。
もっとも、若さ故に特別な役職を持たず領地にずっといて政治に積極的に関わっていないこと、王都から辺境伯領は遠いため政治的影響力に乏しいこと、唯一領地を接するアスターン子爵が貴族派のため、仮に俺が王国派に与してアスターン子爵と不仲になると領地経営に不都合が生じるおそれが大きいことから、周囲からは貴族派を標榜するものの実質的には数少ない中立派にあたると評価されているようだ。否定する益もないので俺はその評価を放置している。
俺はザックソー伯爵に尋ねる。
「国王派に何か動きがあるのですか?」
「どうやら一部の阿呆貴族を粛正することにより綱紀を引き締めるつもりらしい。王都じゃ血筋をかさにきた無能が多くてね」
「正直彼らがいなくなったほうが貴族派も助かるのでは?」
「しかしそれを理由に国王派に主導権を握られるのは避けたいのだよ。味方にしても有害だが、粛正されて相手を勢いづけるのもやめてほしいところだ」
「なるほど」
「何かよい考えはないかね、ローレンス君」
そう言われて俺は少し考える。要するに国王派の勢力を削ればいいのだ。
「エビオシア帝国と内通して戦争を起こすというのはどうですかね。あそこなら地理的に王国派の貴族が多く被害を受けると思いますが。それか王国派の一部の貴族が内乱を企てていたとでっちあげるとか」
「君の発想は大きいが実現が難しそうだな」
ザックソー伯爵が苦笑する。どうやら妙案とは思われなかったみたいだ。残念。