設定が行方不明?いつもの事だ、気にするな。
「ーーもう、またユウナちゃんこうやって散らかして…」
私が部屋のドアを開けるとーー下着姿で妹であるユウナちゃんがソファの上で横になって寝ていた。
「……」
「…シオンさんが居なくなって、深遠なる闇の撃破と仮面の願いの私を救えたからってこんなにならなくていいのに…」
そう呟きーーテーブルの上にスタンバイ状態の見慣れないデバイスに目が行く。
こんなデバイスあったっけ?と思い私はそれに手を掛けた。
そこには私の読めない言語で何かが書かれていた。
ユウナちゃんには悪いけど、と思いながらウィンドウを開きノートの上にオーバーレイ、中の言語を翻訳させる。
そしてそこに書いてある言葉を見てーー私は後悔した。
ーーーーーーーーーー
この身体になって何年が経とうとしただろうか。
そうーー確実に夢であると思える場所でフワフワと漂いながら俺は思う。
今思えば只のなんの取り柄もない俺が良くこんなーー訳わかんない生物と生存競争していた所で生き残れたよな、と。
今は新光歴251年。俺がこのカラダになって体感10年、実際は13年。16歳と言われたルーサーの言葉通りの歳なら今は26歳。全く伸びない身長と最早一週間に3日ほど来る生理の痛みに耐えつつ今をぼーっと生きている。
運の良いことにシャオの方から君の一生は僕が責任を持って見るよ、と半ばプロポーズじみた事を言われて、そんな告白じゃあるまいし。ーーそんな事を口に出すとサラに何か言われそうなので黙っていたがーー法外な量のメセタを貰っていたが為に今まで闘ってきた事を清算する様に贅沢、と言えるのか分からないが…あの時シオンに叱咤を切って今を只々生きている。…正直今の俺ではシオンに顔を合わせれないな。
時折で良いからと第9と10世代にも教官として指導してくれとも。…俺より適任が何人もいると思うんだがなぁ…。いや、ゼノさんやエコーさん、オーザーさんにマールーさんにディア姉妹とゲッテムハルトは後ろに下がったからなおさら無理か。
にしても10年、かぁ…エリートのルベルトとロッティやアイデ、エドガー達士官組やストラトスやキョクヤ、それにルコット達も実戦部隊も育って今や後ろを作る方に入っているからなぁ…尚更彼等に任せれば良いんじゃねぇと。
ふとカタカタと言う音をミ耳が捉えて訳の分からないこの浮遊感から体が覚める。
口元からヨダレを出しつつ誰だと思い、癖でナノトランサーからライフルを取り出す動作を体が勝手に動きーーその方向に向けるとシャオやルーサー、終いにはあのシバからも姉妹と言われている姉のマトイが俺のノートパソコンを弄っていた。
頭の中でアレには俺の、俺が俺である為の日記データが残っているから見られるわけにはいかない、と思ったがどうせ日本語なんて分かるはずがないと思い、ライフルを下げてもう一度寝ようと思いーーここで翻訳機の事を思い出す。
あの翻訳機って…画面からキャプチャーして翻訳できなかったっけ?と。
身体を起こしマトイに声をかけようてしてーーそのままソファから落ちる。
「いっ…そういや俺、ソファに寝てたのか…」
そう呟きながら頭と胸を押さえているとバタンと何かを閉じる音が。音のする方ーーマトイの方を見るとーーノートパソコンを閉じてこちらを見ている。
「…ぁ、おはようユウナちゃん。元気?」
「……あ、あぁ……ぁ、所でマトイ、さっき俺のアレ…見てた…?」
「えっ⁈あの、その…うん」
そう言いノートパソコンを手に持ちソファの隣に座ってくる。
最初に会った時は俺と変わらない高さだったのに気が付きゃ170だぜ?150前後しかなかった身長がたった10年で20センチも伸びるか?成長期か?遅めの。
そう思いながら可愛いから美女になったマトイを顔を上げてみつつノートをテーブルに置く。
「…ユウナちゃん…これ、どう言うことなの?」
そう言いマトイの示す指の先にはーー綺麗にオラクル言語に翻訳された俺の日記が現れる。
「…私と会ったあの日から3日前の日付まで。ちょくちょく抜けた日があるけど大体7日に一回は付けている。……だからさ。余計にこのーー『俺の役目は終わった』辺りからはどう言う事なの?」
「……」
1番見られたくないものを見られた。よりによってそこーー自分が生きる目的を見失ってどーにかなっていた時の事を聞きたいらしい。
「私はね?ユウナちゃんに前世が合って元々は男の子なのも分かっている。その上でね?私は'妹'として、唯一の家族として一緒にいるの。…それが何?『俺の役目は終わったから後は居なくなるだ、イレギュラーは…もう、不要だろう』だって…ッ」
そう言うと立ち上がりどこからとも無くロッドーークラリッサをとことん改造に改造を重ねた上にフォトナーのマジック技術を使用して最早別物となったクラリッサmk6を俺に向けてきた。
「ーー私がっ!どんなに貴女の事を心配しているのかっ!分かった上で書いていたのっ⁈」
「……分かるかよ、俺がどんなに、一人だったかなんて…」
「それでも、私がーー「違う、違うんだ…マトイ…」ぇ?」
「さっきも言ったろ?俺には前世がある、それも男としての前世が。どぉーしてもそれが邪魔をして…今、俺はここにいて良いのかと悩ませる」
「…ユウナ、ちゃん?」
「…マトイは…その、逆行に巻き込まれても歳を取るだけで、少なからず、この時間にはいる。居るんだ。…だけど」
「…俺は…俺はこの時間には、本来は居ない…」
「…だけどっ!」
「マトイは見ただろう?…俺と言う体の失敗作を」
そう言い脳裏に浮かぶは敗者と化したルーサーの見せたーー俺のこのカラダの失敗作の数多。それこそ色んなアニメや漫画で使い古された衝撃の事実、とでも言いたいが…自分の身に起きればそれは別だ。
「…分かるか?この平和になったオラクルでな?寝ると彼女達が…俺を追って来たり攻撃してくるんだ…。そして皆んなが言うんだよ、『オマエハダレダ』ってな」
ーーーーーーーーーー
「ゆ、ユウナちゃんはユウナちゃんだよっ!」
そう言い私は声を上げて言うがーー今のユウナには聞こえていない。
「…なぁ、マトイ。もしその名前もウソだとしたら?」
「…どう言う事?」
「…オラクル船団の人はどんな人でもデータがあるって言う常識は知っているよな?」
「う、うん」
「…俺のデータだがな。…ふっ。笑えるよな、シャオに教えてもらったよ。新光歴235年より前のデータが無い。それこそデータをツギハギして光歴も調べてもらったけど…無かったよ」
「…っ!だ、だって!シオンさんが造ったのならそう言うところに届け出ないのもーー」
「マトイのはあるのに、か?」
「……」
「…更にルーサーにも協力して貰ってな。更にーーそれこそ敗者の残した施設にも行ったよ。ーーそこでようやく俺に関するものを見つけてな…」
「そこには…俺を人と見てない節があったのかもしれんなぁ…あのルーサーが顔を思いっきり顰めて居たからな」
そう言いその時の映像データを私に見せて来た。
動画の後半にてルーサーとシャオが何かのデバイスを弄りーーこう呟く。
『…今ここであった事は全て忘れる様に。良いね?ガーディアン?ーーシャオ、聞こえているならここの自爆シーケンスを脱出次第起動してくれ。ーーここは残していてはいけない。ーーほんと、僕は面倒毎ばかり残していくね』
そうユウナちゃんに言い切るとそこで動画は終わる。
「後で大雑把に教えてもらったよ。ーーヒューマン、ニューマン、デューマンとビーストの全ての特性を持つ新たな種族として出来たのが俺だってよ、そして魂の無い俺の身体は冷凍保存されてーー何者かの手によってここに、だってさ」
「……」
「なぁ、マトイ…俺が何をしたって言うんだ?なんで、なんで俺だけこんな訳の分からない悪夢をーー俺は一体いつになったら覚める?」
そう言い立ち上がりーーそのままソファに後ろから倒れてまた座る。
「ユウナちゃーー」
「…俺は、俺は…そもそも俺は…なんなんだ…?」
「…ユウナちゃんはーー」
「こんなおっぱいのデカイ女にされて!少し嬉しかったけど!俺は、俺はっ!ーーおとこ、なんだよ…ッ」
「生理はイテェわ、視線はキツイわ、匂いでそういうのも分かるわ…っ!なんで、くそがっ!」
「…ゆ、ユウナちゃん…?」
「そもそも!シオンっ!俺の任務は終わったんだろぉ⁈なんでっ!元の世界に戻してくれない!確かに此処は楽しいさ!でもなあぁ!ーー家族が居ないなんて…もう…耐えられないんだよ……」
「せめて、親に…妹や兄に会いたい…あの地球じゃない、俺の'本来'の地球の…」
そこまで言うと足から何かを取り出してーーそれは私がよく見る形の物を取り出す。
「ユウナちゃん⁈」
「…もう一回死ねばーー覚めないかな」
そこまで言いーー私は咄嗟にロッドを構えーーグランツをユウナちゃんの持つ銃に合わせて放つ。
グランツが当たりそのままソファに倒れ込むユウナ。すぐさま駆け寄り頭を膝上に乗せる。
「…ユウナ、こんなに悩んでいたなんて…」
そもそもふと思い返せば余りユウナは自分の事を言わなかったなと。
最初に会った時だってそうだ。記憶喪失の私に、デュケットさんも居たけど、あの手この手で釣れ出したりして、外出させたりしてくれて…。
「…なのに…私からは何も上げられなかったなぁ…」
と言うか記憶の中じゃ半笑いや苦笑いしかしてない様な…。
取り敢えずユウナは寝たと言うか気絶と言うか…今は大丈夫のはず。でもこの事を他の人には言えない。こんな余りにも込み入った事なんて。
「…それでも。ユウナちゃんが帰りたいと言うなら…多分私は…見送るんだろうなぁ…」
そう言いながらユウナのーー28歳になって170を越した私に比べてさほど伸びていないーー私の唯一の家族である妹の頭を撫でる。
「…まぁ、ユウナちゃんの状況を考えればあぁ言うのも仕方ないよね…」
私だっていきなり連れてこられて訳の分からない敵と戦わされた上で死ぬ事の確定している人を救えなんて…'普通'は無理だからねぇ…。
「かと言ってユウナちゃんの妄想なんて事で片付けられる訳もないし…でもシャオさんの言葉を信じるなら今は見つかってないみたいだし…」
そう呟きーーすぅすぅと涙を流しながら眠る妹を見る。
「…ごめんね、なんて言わないよ。なんせ私の命はユウナちゃんがーー私の唯一の家族がくれたいのちなんだから。その命をどう使おうとーー私の勝手だよね?」
そう言い眠る妹の顔に口を近づけてーーキスをする。そのあとゆっくりと妹を抱えてベッドに乗せて私は部屋を出る。
ユウナちゃんは家族に会いたいと言っていた。ならーー。
「ーー私達で家族を作れば良いんだわ」
そう言い私は妹の部屋から出て行く。目的地は艦橋、シャオの居るエリアーー。
正直特殊百合って何よ?全く想像が付かん。
誰か、(案の)救援を求むッ!