ようこそ強姦魔のいる教室へ 作:生太郎
夏だ。海だ。青春だ。
ついにこの時がやってきた。無人島編の始まりである。
無人島でのサバイバル。
あふれる非日常感。心が沸き踊るシチュエーションだ。
……なのに俺は、何やってるんだろうな。
「あっ、あっ、あんっ、ああっ!」
無人島への移動は豪華客船によって行われる。
目的の無人島までは半日ぐらいだ。
小笠原諸島の一つなのだろう。前世の日本には存在していない島かもしれない。
で、俺は客船の女子トイレで椎名ひよりとヤッていた。
椎名とは定期的にセックスしているのだが、無人島では長期間会えなくなる可能性もある。なので今のうちに田中エナジーを補給しておきたい……と言うことらしい。
「礼司君っ、あんっ、礼司君っ!」
制服姿の椎名があえぎ声を上げていた。
「あんま声出すなって」
「……あ、ごめんなさい。つい」
ついじゃねぇ。
こっちは音を立てないように気を使って腰を振っているんだ。
もしバレたら一巻の終わり……と言うほどでもないがタナカス伝説がさらに悪化する。
俺は溜息を吐いてから腰振りを再開する。
「――ふっ、うぅ……っ、はっ、……はぁ……」
椎名が制服の胸元にあるリボンを噛んでいた。
シュルシュルとリボンが解けていく。
あえぎ声を我慢している椎名の表情がすっごいエロかった。
「――っ、うっ、あっ、あっ……だ、だめ、がまん、できない」
「我慢しろよ。もうすぐだろ」
何度も身体を重ねているので、椎名の絶頂のタイミングは把握している。
もうそろそろ達するのは俺にはわかっていた。
椎名は落としてしまったリボンを咥え直し、頬を染めてコクリと頷いた。
俺は音に気を付けながら肉棒を出し入れする。
ねちねちという音が大きくなってきたので、トイレのボタンを押して流水音を発生させた。
「……あぁっ、ごめん、なさいっ! やっぱり、無理です!」
「少しは我慢する努力をしろっての」
俺は呆れながら椎名の唇をキスで塞いだ。
「んっ、んんっ! んっ、んっ、んっ!」
まぁ多少はマシになったか。
俺はラストスパートをかけて腰を振りまくる。
「出すぞ」
椎名が恍惚とした表情をして頷いた。
亀頭を子宮口に密着させる。容赦なく膣内に注ぎ込んだ。
「……はぁ……はぁ」
「満足したか?」
「あの、すいません。もう一回、して欲しいです」
椎名は息をするのも苦しそうなくせに甘えてきた。
まったく、欲張りなお嬢さまだ。
椎名との情事の後。
俺は何とか女子トイレから脱出、何食わぬ顔をして客船の廊下を歩いていた。
到着までまだ時間がある。無人島サバイバルの前に英気を養っておきたいところだ。
大浴場にでも行くか、それとも展望デッキで景色を眺めるか、レストランで食事を楽しむか。よりどりみどりで迷ってしまう。
途中で綾小路とすれ違う。池と山内、須藤の中に混ざっていた。
奴は眼中にないとばかりに俺に見向きもしない。完全に他人のフリだ。他人なんだけどな。
期末テストで赤点ギリギリだった連中だ。
綾小路はまだ五十点チャレンジを続けているみたいだが。
ちなみに俺は百点……のはずが九十九点である。
数学で“4”と“9”を書き間違えたり、古文で誤字っていた。ちゃんと見直しをしたはずなのだが、俺ってうっかりしているのかな。しているんだろうな。せっかくのチートもうっかりミスの前には形無しだった。
「俺、やっぱり櫛田と仲良くなりたい」
ん? 俺は足を止める。
池が苦渋に滲む表情をして呟いていた。
何も知らない須藤が「ならもっと声をかければいいだろ」と言っている。
五月までは積極的に櫛田にアピールしていた池だが、ある時から櫛田とはまったく言葉を交わさなくなっていた。
「やめとけよ。お前、次は殺されるぞ」
山内は俺に気付いていたらしい。振り返って俺を確認していた。
池がその視線を追いかけて「ひっ」と短い悲鳴を上げる。
「チッ! おい田中ぁ! 盗み聞きしてんじゃねぇよ!」
須藤が俺を睨み付けて怒鳴り声を上げた。
以前に小手返しで投げてやってから、須藤は俺を嫌うようになっていた。その場では和解したはずだが、後からムカついてきたらしい。
俺は肩をすくめてから彼らに背を向けた。まずは展望デッキにでも向かうとするか。
にしても、池はまだ櫛田と仲良くしたいのか。
笑えるな。どういう神経をしているんだ。
あんなことをしておいて、よくもそう言えたものだ。仕組んだのは俺だがな。
そう思っていると、ジジイが廊下の真ん中に立っていた。
「レイプ道とは死ぬことと見つけたり」
なら死ねよ。
ジジイは豊かな白髭を撫でつけながら、にっこりと微笑んでいる。
「すべての人間は生まれながらにしてレイプを欲す」
……おい。アリストテレスの名言を汚すんじゃねぇ。
そういやアリストテレスもジジイみたいに白い髭がもじゃもじゃしているよな。
「夏休み中に一人レイプするのじゃ。覚えておるな?」
「当然だ」
気分は乗らなくてもレイプしなければならない。
にしても、夏休み中に一人か。
ジジイにしては随分と甘いものだ……と思ったが、二学期に三人、三学期に三人レイプすると俺が提示した人数全員をレイプできるわけだ。ジジイは完全に耄碌しているわけではない。簡単な計算ならできるようだ。
狂っているのが演技だったら俺は足元をすくわれる。油断は禁物だろう。
「生きるためにレイプせよ、レイプするために生きるな」
ジジイがアルカイックスマイルを浮かべながら言う。
やめろ。
頭がおかしくなりそうだ。レイプ哲学とか考えたくもねぇんだよ。
ソクラテス先生ごめんなさい。
そう言えばあなたも白髭でしたよね。哲学者で流行っていたのだろうか。
「レイプもまたレイプなり」
悪法もまた法なり……って、だからやめろって言ってるだろ!
俺は頭痛を堪えながらジジイに言い放った。
「神は死んだ」
「ぬおおおぉぉぉぉぉ! レイプぅぅぅぅぅ!」
ジジイが胸に手を当てて苦しみ始め、負けたサーヴァントみたいに消えていく。
効いているように見えるが、念仏で消えた時みたいに実際は何ともないんだろうな。
溜息を吐いてから展望デッキに上がる。
潮風に吹かれ、黒髪が棚引いていた。
堀北が髪を手で押さえながら俺の方を振り返る。
結ばれていた唇が一瞬だけ緩んでいた。すぐに表情を取り繕っていたが。
「一人なのか」
「見ればわかるでしょう」
一人分の距離を置いて堀北の隣に並ぶ。
堀北は躊躇いがちに俺の方に身を寄せてきた。
「部屋に籠ってるのかと思ってたよ」
「私にも気分転換したくなる時くらいあるわ」
腕組みをして溜息を吐いていた。何かあったのか。
「さっきまで須藤君たちに絡まれていたのよ」
「そうか」
「鈴音と呼んでいいかと聞かれたわ」
「それで、どうしたんだ?」
堀北がすねたように俺を睨んでくる。
「許すわけがないでしょう。須藤君は友達ですらないただの他人よ。須藤君が私を名前で呼ぶことは永遠に有り得ないでしょうねと答えてあげたわ」
「あらら。須藤の奴も可哀想に」
「どこがよ」
堀北が唇を尖らせる。
それは絶対に報われない恋だった。
堀北は原作よりも須藤に冷たかったし、審議会で須藤を弁護するイベントも消滅している。期末テストも勉強を見ていないらしい。おかげで須藤は退学寸前だった。
一体どこに惚れる要素があったのだろう。
見た目と、あとは性格が須藤の好みだったからだろうか。
なら原作の山内みたいなものかな。佐倉に身勝手な想いを押し付けていたのと似ている。
なんて考えていると堀北が俺の二の腕をぐっとつねった。
「誰かさんはまだ私の名前を呼んでくれないようだけど」
「そうだな」
櫛田に疑われないように今までは堀北のことを苗字で呼んでいた。
しかし、もう大丈夫だろう。
一学期を共に過ごしたのだ。友人として親密になったと言えばいいか。
「わかったよ。これからは鈴音って呼ぶ。これでどうだ?」
堀北は……いや、鈴音は何も答えなかった。
目を見開いて、唖然と俺を眺めている。
その顔がポッと朱色に染まった。
「わ、私は部屋に戻るわ」
慌てて俺から逃げ出すが、足がもつれそうになっている。
わかりやすいな。俺は苦笑した。
「……で、何時まで隠れてるんだ?」
「え!? バレてたの!?」
展望デッキの柱の陰から櫛田が顔だけを出していた。
それで隠れていたつもりか。潮風に吹かれてスカートが出ていたぞ。
櫛田がトテトテと俺に走り寄ってくる。
俺の前に到着すると、子犬のような目をして俺を見上げていた。
「あ、あのね、田中君っ!」
言いたいことは何となくわかる。俺は先手を打ってみることにした。
「どうした、桔梗」
「あう」
櫛田あらため桔梗の顔が真っ赤になる。
「ずるいよー、卑怯だよー」
桔梗がポカポカと俺の胸を叩いてきた。まったく痛くない。むしろ微笑ましかった。
「今日の田中君。えと、礼司君、なんか積極的かも。何かあったの?」
「旅行という非日常が俺を開放的にさせているっぽい」
「なにそれ」
桔梗が俺の胸を殴るのをやめて、俺の胸板に頬を押し付ける。
デッキにいた生徒たちから睨まれていた。微笑ましそうに見守っている者もいるがごく僅かだ。鈴音とイチャついていた直後である。普通に俺は最低だった。
島の面積は0.5平方キロメートルだ。大きさはかなり小さい。
しかしそれは数字だけ見た話。
自然は人の感覚を狂わせる。俺は前世で仕事現場の事前調査をした時、ちっぽけな林の中で迷ったことがあった。真っすぐ進めば道路に出ることはわかっていたのですぐに脱出できたが、あの時はかなり焦ったものだ。
すべての生徒はジャージに着替えてデッキに集合していた。
携帯電話は担任に提出させられている。持ち込みが許されるのは衣服やタオルなどが入った鞄一つだ。中身は教師によってチェックされていた。博士が鞄の中に密かに携帯ゲーム機を入れていて、茶柱先生に怒られながら没収されていた。
予定では島にあるペンションで一週間に渡って集団生活することになっている。
Aクラスから順番に下船していくが、その表情は明るかった。
バカンスを満喫する気でいるようだ。これからサバイバルが始まるなんて微塵も想像していない。
俺たちも船を降りる。砂浜で再び整列させられた。
出席番号順と言うわけではなく、並び方は適当だった。
俺の右側には桔梗、左側には鈴音。両手に花だった。
Aクラス担任の真嶋が壇上に上がり全生徒に呼びかける。
最初に数人の生徒が参加できなくなったのを残念に思うと切り出した。
参加していないのはAクラスの坂柳有栖。彼女は船にすら乗っていない。
たぶん手下を暗躍させて葛城をリーダーから引きずり下ろそうとするのだろうが。
あとはCクラスの石崎と小宮だ。二人は停学中なので参加できない。
そしてDクラスの佐倉愛里。
彼女も残念ながら参加できなかった。佐倉には復帰の意志があるらしいが、男性恐怖症になってしまった佐倉にいきなり男子と共同生活させるのはあまりにも酷だろう。
「ではこれより本年度最初の特別試験を行う」
始まった。
生徒たちがざわめき始める。
旅行だと思っていたらこれだ。天国から地獄とはこのことだろう。
支給されるのはクラスごとにテント二つ、懐中電灯二つ、マッチ一箱。
あとは簡易トイレ。あまりにも心もとない装備である。
とは言え日焼け止めは制限なく支給されるし、女子には生理用品も配られる。
完全に自給自足というサバイバルをするわけではない。
試験専用のポイントで必要なものを購入することもできるしな。
ただし試験専用のポイントを残せば、試験終了後にそれをクラスポイントに加算することができる。最下位のDクラスが一気にポイントを稼げるチャンスでもあった。
試験専用のポイントは三百ポイント。
すべて残せば毎月三万プライベートポイントを貰えるようになる。
「体調不良などでリタイアした者がいるクラスにはマイナス三十ポイントのペナルティを与える決まりになっている。そのためAクラスとDクラスは二百七十ポイント、Cクラスは二百四十ポイントからのスタートとする」
欠席者を出していないBクラスが早速優位になっていた。
すごいな。佐倉ですら容赦なく減点だ。
表向きは入院していることになっているし、佐倉を許していたら坂柳もノーペナルティーになるから減点するしかないのだろうが。
「なんかとんでもないことになってきたね、礼司君」
桔梗が俺に身を寄せて小声で耳打ちした。
瞬間、鈴音が目を驚かせた。すごい形相をして俺を睨んでいる。
「これはどういうこと?」
「話の流れでこうなった」
「……後で覚えておきなさい」
試験の説明中なので深く追及されなかったが、鈴音の機嫌は加速度的に悪化していた。
真嶋の話が終わり、生徒たちがクラスごとにバラけていく。
俺たちは茶柱先生のところに集合する。
先生は俺と綾小路をチラリと一瞥した。
無人島では本気を出せ、だったか。
まぁ手を抜いていると思われない程度に、ほどほどに頑張るとするか。
「今からお前たち全員に腕時計を配布する」
茶柱先生がクラス全員に腕時計を配っていく。
体温や脈拍などを計測するセンサー、他にもGPSなどが付いており、試験終了までに勝手に外したらペナルティが課せられる。もちろん完全防水で、故障しても係員が代わりの物を持ってくるという徹底ぶりだ。
それからマニュアルが配布される。とりあえず平田がそれを受け取った。
そこには色々と禁止事項が書かれている。
環境破壊はペナルティ。体調不良者が出た場合もペナルティ。
午前八時と午後八時に点呼があり、それに不在だとペナルティ。
他クラスの暴行、略奪、器物破損はクラスの即失格。
実行者はプライベートポイントをすべて没収という厳しいペナルティが課せられる。
まぁザルなんだけどな。
原作では伊吹澪というCクラスの少女がスパイとしてDクラスに入り込み、マニュアルを焼いたりリーダーが持つキーカードを奪ったり鈴音をボコッたりしていた。しかし鈴音が告発しなかったおかげで伊吹はノーペナルティーである。
綾小路はAクラスの男子にマッピングしていたメモを奪われている。
これは綾小路がAクラスから目を付けられたくなかったため告発されなかった。
要するに相手の口さえ塞いでしまえば無問題と言うことだ。
ここで軽くルールをおさらいしておく。
この特別試験では各クラスはリーダーを決めなければならない。
リーダーにはキーカードが配布される。
キーカードにはリーダーの名前が刻印される。
正当な理由なくリーダーを変更することはできない。
この島には幾つかのスポットがあり、リーダーは設置されている専用の機械にキーカードを通すことでスポットの周辺を占有することができる。他クラスがそのスポットを許可なく使用したらマイナス五十ポイント。
占有権は八時間でリセットされる。
一度の占有で一クラスポイントを得ることができる。
一週間は百六十八時間なので、仮に一つのスポットを試験中ずっと占有していれば、およそ二十一ポイントのクラスポイントを得ることになる。と言ってもスポットを見付けるまでの時間や、リセット後に占有し直すまでのタイムラグがあるので二十一ポイントというのは理論値でしかない。
キーカードの使用にはリスクがある。
試験最終日に各クラスには他のクラスのリーダーを言い当てる権利があり、それに正解すれば五十ポイントがプラスされる。
リーダーを見破られたクラスはマイナス五十ポイント。さらにそれまでに得ていたボーナスポイントをすべて失う。
しかしリーダーを言い当てるのに失敗すればそのクラスは五十ポイントを失う。強力な権利だがノーリスクというわけではない。自信がないなら権利を行使しないのも有りだろう。
こんなところか。
ぼうっとしていると女子の悲鳴が聞こえた。
「無理に決まってます! 絶対無理!」
茶柱先生が簡易トイレを組み立てていた。女子の篠原が大声で嫌がっている。
段ボール製である。
汚い話だが、箱の中に青いビニールを入れて、そこに給水ポリマーのシートを放り込む。段ボールに座って汚物を排出する。汚物の上にシートを放り込んで重ねていく。一枚のビニールで五回ほど使用できるらしい。
一応簡易テントがあるので、用を足しているところは見られないが。
なおこのビニールとシートは無制限に支給される。学校側からの恩情である。
「男女共有って、ちょっとそれは……」
桔梗も頬が引き攣っていた。
彼女は男女分け隔てなく接する方ではあるが、流石にこれは無いらしい。
まぁ俺も嫌かな。
桔梗のお尻が他の男子と間接的に接触するなんて許しがたい。
池と山内にレイプさせた? な、なんのことかなぁ……。
「いいじゃん、それで我慢しようぜ」
池が言う。
男子の多くがそれに賛同した。
女子たちはそんな男子を汚らわしそうに見ている。
「平田。マニュアル貸してくれ」
「あ、うん。一緒に読ませて貰ってもいいかな?」
「もちろん構わない」
平田の隣に並んでマニュアルをめくる。
目的のものはすぐに見つかった。
ポイントで購入できる物品の中に仮設トイレも含まれている。
「これだな」
「……うん。でも二十ポイントだ」
俺たちを眺めていた女子がざわざわと話し出す。
それに気付いた篠原が飛び付いてきた。
「これ! これ絶対にいる! 簡易トイレより全然マシ!」
篠原は平田にベッタリくっついてマニュアルを覗き込んでいる。
「ま、絶対に必要になるだろ。途中で買うぐらいなら今買っておいた方がいい」
「田中君もそう思うよね!? ほら男子ども! もっと田中君を見習いなさいよ!」
簡易トイレで我慢してポイント節約したい派の男子たちが、俺のことを女子に媚を売る屑のように見ていた。
「あの裏切者が」
「やっぱタナカスだな」
「あいつ、何様のつもりだよ」
「女子の点数稼ぎに必死だな。見苦しいぜ」
男子から罵声が飛んでくる。散々な言われようだった。
池と山内は俺にビビりながらも、他の男子と同調して俺の悪口を言っていた。
「やめなさいよ! 田中君は正しいことを言ってるでしょ!」
「ね、平田君もそう思うよね?」
「僕はみんなで相談して決めるべきだと思うけど」
肝心なところでヘタれる平田である。
平田は公平性を重んじるので、こういう言い争いではあまり役に立たない。
「待ってくれ。ポイントは男女で共有している。仮設トイレが必要だという女子の意見もわからなくはないが、女子の意見だけで勝手に使用されるのは納得がいかない」
それまで黙って様子を見ていた幸村が意見する。
篠原がムッと顔を怒らせて幸村に罵声を浴びせかけた。
「勝手にって何よ! 女の子には大事なことなの! あんたデリカシーなさすぎでしょ!」
「デリカシーについては否定はしないが、男子は我慢できる、女子は我慢できない。それで二十ポイント使用されたら不公平だろう。女子だけが優遇されているのがわからないのか」
「別に不公平じゃないし! 女子の権利――」
「一週間だ」
篠原の反論を遮って俺が答える。
ヒステリックに叫んでいる篠原では幸村は論破できない。何時までも言い争いを続けられても面倒だからな。
「この試験の期間は一週間。二、三日なら我慢できても、それ以上は無理だ。この調子だと士気に関わってくるし、トイレを我慢して体調を崩す女子だって出てくる。一人倒れればマイナス三十ポイントだ。トイレを買うよりも高く付くぞ」
そうだよそうだよー、と女子たちが俺の発言に便乗している。
男子たちが俺を見る視線がヤバくなってきた。
「……確かに田中の言う通りだろう」
幸村が溜息を吐いた。
「しかしこれはクラスポイントを稼ぐ絶好の機会だ。この機会に少しでも他クラスとのポイントの差を埋めておきたい。俺はずっとDクラスなんかに居座る気はないんだ」
「幸村の気持ちはよくわかるが、こう言うのは助け合いだと俺は思う。今回、男子は女子に譲歩する。だが、いずれ女子が男子を助けてくれる機会もあるはずだ。それこそが集団を上手に回していくコツじゃないか?」
俺いいこと言ってる気がする。
女子たちのキラキラした眼差しが最高に気持ちいい。
男子? 俺には何も見えないな。
幸村は黙り込んだ。
真剣な目をして俺を見詰めている。それから無言で頷いた。決まりだな。