※この作品はR-18です。

ようこそ強姦魔のいる教室へ   作:生太郎

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20話

「……はぁ……はぁ」

 

 伊吹がうつ伏せに倒れていた。

 

 膣口からは精液が溢れ出して地面に垂れ落ちている。

 

 エロい光景だった。もう一回したくなってくるが、腕時計は午前七時と表示されている。そろそろ他の生徒が起き出してくる頃だ。ここはベースキャンプから離れた森の中なので誰も来ないだろうが用心しておくに越したことはない。

 

「……膣内に出すなって言ったのに」

 

 伊吹が涙目で俺を睨んでくる。

 

 俺が寝ている所に襲撃をかけて返り討ちにされたのである。

 綾小路といい伊吹といい、寝込みを襲うのがプチブームなのだろうか。

 

「悪いな。気持ちよかったから、つい膣内に出してしまった」

 

「……死ね」

 

 辛辣な言葉だった。

 あと五日で落とさないといけないのだが、この調子だと先が思いやられる。

 

 ジジイは「レイプ? うん、レイプ」と頷いている。

 まだレイプ認定しているようだ。しかしこの調子だともうすぐレイプではなくなる気がする。

 

 俺は崩れた衣服を整えてから無慈悲に宣告した。

 

「先に戻ってるぞ」

 

「え、ちょっと!?」

 

 伊吹は腰が抜けて立ち上がれないようだ。

 

 彼女を放置して俺は枝を拾いながら寝床に戻る。

 

 それから川辺に足を運んだ。平べったい石を二つ拾い、それを水の中でこすり合わせる。いわゆる磨製石器である。チート腕力のお蔭でごりごり石が削れて、あっという間に石器ナイフが出来上がった。

 

 川に浸していた蛇を引き上げて、皮を剥いてからナイフで腹を切り割いた。

 内臓を取り除いて開きにする。ウナギの蒲焼きみたいな見た目になる。

 

「礼司君、おはよう! 何してるの?」

 

「蛇を捌いている」

 

「へびーっ!」

 

 桔梗が奇声を上げて逃げていった。

 

 枝を使って蛇に串を打つ。

 マッチで焚火を起こし、蛇肉を炙ってみた。

 

 昨日は船内のレストランで食い貯めしておいたのだが、夜を抜いたおかげで空腹だ。

 こんなもんでいいか。俺は蛇肉を火から上げる。

 ……うん、意外とイケるな。骨のせいで食べにくいが、普通に美味い。

 

「あ、あのっ、田中君、おはようっ!」

 

 気配には気付いていた。俺は「おう」と返事をする。

 

 佐藤が後ろに手を組んで俺を見詰めていた。俺を見る目がどことなく熱っぽい。

 

 佐藤麻耶は惚れっぽい女子だ。

 

 原作では綾小路と堀北兄のリレー対決を見て、綾小路に惚れて猛アピールしてくるキャラである。何かの拍子で俺に惚れることも有り得るだろう。

 

 俺には嬉しいという気持ちと面倒だという気持ちが同居していた。とりあえずは保留だな。

 

「櫛田さんが怖がってたよ。何したの?」

 

「これを作ってた」

 

 蛇を見せてみる。佐藤が「何これ?」と首を傾げているので「蛇だ」と教えた。

 

 これで恋が冷めるならそれで構わないつもりだった。

 

 案の定、佐藤は「げっ」と嫌そうな顔をする。しかし何を思ったのか。

 

「あ、あの。私も食べていい?」

 

 耳を疑うようなことを言いながら俺の隣に座り込んできた。

 こいつ、正気か。

 このままだと蛇を食うヒロインが爆誕するぞ。誰か止めろよ……って、誰もいねぇ。

 

「別に構わないが……食うのか?」

 

「う、うん。ちょっとチャレンジしてみようかなって」

 

 佐藤はビクビクしながら串を受け取り、両目をぎゅっと閉じてぷるぷる震えていた。

 ほんのちょっとだけ口を付けたが、怖くて噛めないようだった。

 

 食いたくないなら食わなければいいものを。

 

「やっぱやめとけ。俺が悪かった」

 

 俺は佐藤の手から串を奪い取り、豪快にがぶりと齧りついた。

 

 ペッと骨を吐き出す。

 それを見ていた佐藤が「ワイルドでカッコいいかも」とか言っていた。

 眼科行った方がいいぞ。

 恋は盲目というが、このままだと失明しそうだからな。

 

 そう言えば間接キスだ。蛇肉だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 茶柱先生の点呼の後、女子と男子は再び分離した。

 

 俺は女子の方に向かう……わけにもいかず、とりあえず男子の方に行ってみた。

 

 流石に女子のところに混ぜてくれと言うのは図々しいからな。

 俺に好意的な女子は何人かいるが、彼女たちに甘えるのは男として情けないだろう。

 

「おい! 何で田中までこっちに来てるんだよ!?」

 

 須藤が俺を見て眦を吊り上げる。

 他の男子も俺に罵声を浴びせかけた。

 

「何しれっと混ざろうとしてるんだ! 図々しい奴だな!」

 

「お前は向こうで女子に面倒を見て貰えよ、このヒモ野郎!」

 

「裏切者が! 謝ったら許してやるぞ! 土下座しろよ!」

 

 無茶苦茶である。同じクラスの仲間ではないか。

 

 平田が間に割って入って「まぁまぁ」と取りなしていた。こいつも大変だな。

 

「田中君! うちらに気を使わなくてもいいよ! こっち来なよ!」

 

 それを見ていた佐藤が女子の中から手を振っている。

 

 前言撤回。俺は情けない男でした。

 

 俺は男子に追い払われ、女子グループへと逃げ込んだ。

 

「男子ってひどいよね。あ、田中君は別だよっ!」

 

 佐藤かわいい。俺の傷心に付け込むとは、この女やりおる。

 

「けどいいのか。俺みたいなのを受け入れて」

 

「いいんじゃないかな。ね、みんな」

 

 佐藤が女子を見回した。

 反対意見は出て来ないが、たぶん何人かは嫌だと思っている。角が立つから言わないだけだ。

 

「ありがとう。だが、俺みたいな異物をいきなり放り込むのも問題だろう。しばらくはオブザーバーみたいな扱いにしてくれないか」

 

「オブザーバーって何?」

 

 佐藤が首を捻っている。こいつも須藤ほどではないが赤点候補の一人だった。

 

「会議などで議決の権利を持っていない参加者のことね。この場合は意見を言ってくれる外部協力者みたいなものかしら」

 

 鈴音が口を挟んだ。

 何となくニュアンスが伝わればそれでいい。

 

「と言うわけで早速一つ意見を出したい」

 

 俺は軽く挙手しながら言う。

 

「俺は昨日の午後七時頃に川の水を飲んでおいた。現在は午前八時だ。つまり十二時間経っているが、今のところ身体に異常は表れていない」

 

「それって川の水が飲めるってこと?」

 

 軽井沢が会話に参加してくる。

 

 彼女は顔をしかめながら空を見上げていた。すでに太陽がさんさんと照り付けており、空気が生暖かくなり始めている。

 

「ぶっちゃけ喉が渇いてやばい感じ。田中君が大丈夫って言うなら飲んでいいんじゃないかな。四の五の言ってられる状況じゃないと思うし」

 

 この島に上陸してからDクラスの生徒はペットボトル一本の水しか飲んでいない。

 一日に必要な水分を考えると危険水域である。

 

「私、飲んでみる!」

 

 佐藤を含む数人の女子が挙手した。

 

 それを皮切りに女子が川岸へと大移動を開始する。

 彼女たちはペットボトルで水を汲んで、毒見するように恐る恐る一口だけ口に含む。

 大丈夫だとわかると、勢いよく水を飲み始めた。

 

「普通に美味しいじゃん。ビビッて損した」

 

「あ、今、魚がいたよっ!」

 

 篠原が川の水面を指さしている。他の女子も目を凝らし、見付けたと叫んでいた。

 

「川魚って食べられるのかな?」

 

「淡水魚は寄生虫が怖いと聞くが、熱を通せば問題ないはずだ」

 

 見たところ川の魚は結構な数がいそうだ。

 

 その時、数人の男子がこちらへと近付いてきた。

 平田、須藤、池、山内、幸村の五人だ。

 

 女子たちが身構える。

 

 男子の先頭にいた平田が敵意はないと言うように両手を上げた。

 あのさぁ……仮にも同じクラスの仲間なんだから、敵国みたいな対応はやめようよ。

 

「楽しそうなところを邪魔してごめん。話し合いがしたいんだけどいいかな?」

 

 平田君がそう言うならと、女子たちが敵意を収めた。

 

 鈴音、桔梗、軽井沢、篠原たちが平田の傍に集まる。

 

「まず最初に謝りたい。昨日はごめん。僕たちも過剰に怒りすぎた」

 

「平田君が謝ることじゃないでしょ」

 

 軽井沢がやや不機嫌そうに言う。

 平田はキレた男子を宥める役回りだった。事態を収拾させるのに奔走していた。

 怒りすぎたと言うのは別の男子だろう。

 

 平田は苦笑してから続ける。

 

「今後は独断でポイントを使用しないよう注意して欲しい。次からは話し合いをして決めて行こう。これで昨日のことは終わりにしたい。僕たちは身内で争っている場合ではないはずだ」

 

 流石は平田だ。あえて謝罪することで女子の意見を封殺した。

 今回の場合、悪いのは女子の方だ。男子から頭を下げられたら何も言えない。

 

「俺は納得してないけどな」

 

 須藤が言う。

 こいつはホントに馬鹿だな。平田の努力をたった一言でぶち壊すのだから。

 

 女子たちが須藤を睨んでいる。

 男女が和解する可能性が物の見事に台無しにされていた。

 

 平田は疲れたような表情をしてから女子に向き直った。

 

「言いにくいんだけど、男子にもテントを一つ分けて欲しい」

 

「そうだそうだ! 女子が二つもテントを使うなんて不公平じゃねぇか!」

 

 須藤はもう黙っておいた方がいいと思う。

 と言うか何で連れて来た。

 たぶん自分からついてきたんだろうな。平田の性格が災いして断り切れなかったか。

 

「まぁ、テントは男女で一つずつにしないと公平じゃないかな」

 

 須藤の言葉はともかくとして、軽井沢は納得の色を見せていた。

 女子たちにも仕方ないという空気が流れている。

 

「ありがとう。流石に野宿は堪えたよ。一週間ずっとは無理そうだ」

 

 平田はホッと溜息を吐いていた。

 これで女子もローテーションで野宿しなければならなくなったわけだ。

 

「それと、これも言いにくいんだけど男子にもシャワーを使わせて欲しいんだ。もちろん女子とは時間が重ならないようにするし、指定された時間以外は近付かないよう徹底させる」

 

「絶対イヤっ!」

 

 女子の中から叫び声が上がった。予想は付いていた。篠原だ。

 

「ありえないから! それって男子が汗とか体液をまき散らした後にうちらが使うってことなんだよね? 絶対無理っ! キモすぎっ!」

 

 何人かの女子が同意するように頷いている。

 体液っていうのはアレなんだろうな。白くべたつくなにか。魔法エンチャできそう。

 

「男子は川で水浴びでもしたらいいじゃん! とにかくシャワーは女子のだから!」

 

「シャワー室は女子だけの物ではないはずだ」

 

 それまで黙っていた幸村が口を挟む。

 

 篠原が「またアンタ!?」と目を怒らせた。

 

「男子はすでに仮設トイレの件で女子に譲歩しているんだぞ。シャワーまで独占しようとするのは欲張りすぎないか」

 

「だから川で水浴びしたらって言ってるじゃん! 男子は裸を見られても平気でしょ!」

 

「何か勘違いしているようだが男子だって裸を他人に見せるのは抵抗がある。恥ずかしいと思うのが自分だけというのは、いかにも周りが見えていない子どもじみた発想だな」

 

「そうだぞ幸村! もっと言ってやれ!」

 

 篠原と幸村が言い争いを始め、須藤がそれを煽っている。

 

 昨日の幸村は何やら考え込んでいたようだが、人間すぐには変わらないものだ。

 

「どうしてこうなるんだ……僕はただ……」

 

 平田の顔から感情が抜け落ち、何やらブツブツと呟いている。

 

 ちょ、早いよ。まだ二日目だぞ。

 

 俺は慌てて平田に声をかけた。

 こいつが潰れたらDクラスは終わりだ。

 

「平田、ちょっと来てくれ」

 

 俺は平田を手招きした。平田はハッと正気に戻ると俺と連れ立って集団から離れる。

 

 それから咄嗟に思い付いた策を平田に伝えた。

 

 平田は少し思案し「なるほど、いいかもね」と呟いた。

 

「少しいいかな。僕から女子に提案したいことがあるんだけど」

 

 平田がチラッと俺を見てくる。

 やめろ。発案者が俺なのは察しのいい者にはバレバレだが、せめて隠す努力をして欲しい。

 

 他人の手柄を奪いたくないという平田らしいが、これは女子のオブザーバーである俺より、男子側の平田から言った方が効果的なのだ。

 

「女子はシャワー室の購入で二十ポイントを消費したよね。だから交換条件として男子にも二十ポイントを使わせて欲しい。こうすれば公平になると思うんだ」

 

「……まぁ、そうね。あたしたちがとやかく言う権利はないかな」

 

 軽井沢が消極的に肯定する。

 女子のリーダー的存在である彼女の言葉を否定する者はいなかった。

 

 平田の意見を肯定したものの、軽井沢は残った疑問を提示する。

 

「でも、男子もシャワー室を買うってこと? それはポイントが勿体なくない?」

 

「軽井沢さんの言う通りだと僕も思う。だから男子は調理器具とか調味料、釣り竿なんかを購入するつもりだ」

 

 要するに、こう言うことだ。

 男子は女子が欲しがりそうなものを先手を打って購入しておく。こうしておけば女子はポイントを消費するより、男子と道具を共用した方がポイントを節約できることに気付く。すると女子は道具を借りるために男子に譲歩せざるを得なくなる。

 

「まぁ、別にいいけど」

 

 軽井沢は平田に同情的な目を向けていた。

 

「僕からの話はそれだけだよ。他には何かないかな?」

 

 平田が男子たちに確認した。

 須藤は頭空っぽだし、池と山内は空気だった。幸村も平田の提案を受け入れたようだ。

 

 平田が俺に目配せをしてから男子側に戻っていく。

 友情を感じる。平田はマトモに付き合える唯一の男子だ。この縁は大事にしたい。ホモじゃないけどな。

 

「ケッ!」

 

 須藤が俺に中指を突き立てている。

 

 ……友情を感じない。ケツに爆竹を突っ込んでやりたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Cクラスが安っぽい挑発をしに来た。

 

 須藤事件もとい恐喝事件で運よく被害を免れた近藤。それとモブ男子が一人、あとは山田アルベルト君が俺たちのベースキャンプにやってきて、健気にサバイバルしているDクラスを馬鹿にしまくり、ポテチでも食えよと袋を投げ付けて来たのである。

 

「……どう言うこと?」

 

 鈴音が不審そうに眉をひそめていた。

 

「ポイントを浪費しているとこを見せ付けたいんだろう」

 

 俺は木の枝を石で削りながら答える。

 歪にねじ曲がっているが、他に適した枝が見付からなかったので妥協の産物だ。

 

「偵察に行ってみたらどうだ?」

 

 呟きながら槍を川にぶち込んだ。

 

 ゲイボルグ。必中の槍である。自害するための槍じゃないからね。

 

 槍の穂先で川魚がピチピチしていた。

 

「……あなた、原始人だったのね」

 

 いや、ランサー適正があればこれぐらい余裕だ。

 

 女子たちが「わあっ」と歓声を上げながら集まってくる。

 

「田中君、こっちに頂戴っ!」

 

 篠原が声を上げる。俺は槍から引っこ抜いた魚を篠原に手渡した。

 

 彼女は俺から石器ナイフを借りると慣れた手つきでエラを引っこ抜いて内臓を取り除く。

 

「篠原って料理部だったっけ」

 

「そうだよ。これはイワナだね。結構大きいかな」

 

 感心している女子たちに篠原がくすぐったそうな顔をして説明する。

 

「串を打って焼いちゃおっか」

 

「それっぽい枝とか探してくるね!」

 

 佐藤が率先して森の中に入っていく。数人がその後を追いかけた。

 

 篠原は女子たちに捌き方や串の打ち方を説明していたが、ふと言葉を止めてしまった。

 

「……できれば塩焼きにしたいんだけどなぁ」

 

 女子たちが「あっ」と呟いた。

 

 調味料は男子が購入している。

 

 ポイントを節約するために、できればそれを分けて貰うべきなのだが、シャワー室を独占しようとした篠原がそれを言うのは図々しすぎるだろう。

 

「私、交渉してみるね!」

 

「あっ」

 

 桔梗が男子の方へと走って行った。

 

 篠原はそれを見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 俺の魔槍ゲイボルグは二十匹以上の川魚を仕留めていた。

 刺し穿つ、突き穿つと(心の中で)呟きながら次々に貫いていく。

 これは食べるためなのでむごい殺生ではない。

 

「釣るぜー! どんどん釣るぜー!」

 

 池が釣り竿を片手に川までやって来た。

 

 山内たちも来ている。釣り竿は二本購入したようだ。

 エサ用が一ポイント、ルアー用が二ポイントだから、両方買って試してみることにしたらしい。

 

 俺は綾小路を見付けて声をかけた。

 池たちは釣りに夢中でこちらに気付いていない。

 

「綾小路、ちょっと頼めるか」

 

「何だ?」

 

「鈴音と一緒に他クラスの偵察に行ってくれ」

 

「なぜ俺が」

 

「つれないことを言うなよ。茶柱先生にチクるぞ」

 

 綾小路は溜息を吐いてから「わかった、地獄に落ちろ」と快い返事をした。

 

 俺はまだ龍園に顔を見せるつもりはなかった。

 CクラスはAクラスと密約を結ぶのだが、これはAクラスの盛大な自爆という結果に終わる。できればこの結果を狙いたい。

 俺が下手に干渉したら原作から乖離するし、偵察は凡人の演技が得意な綾小路が適任だ。

 

「借りて来たよ!」

 

 男子のところから桔梗が戻ってくる。

 

 その手には白い袋があった。

 ただの食塩である。実はメキシコ産のあの塩だ。

 

 セットで百均で売ってるっぽいプラスチックの容器も持っていた。

 

「なんか男子には悪いことしちゃったね」

 

 平田の策のおかげで女子の良心にダメージが入っていた。

 

 それはともかく俺は女子に焚火のやり方をレクチャーする。

 そう言えばマッチを借りっぱなしだ。後で平田に返しておかないと。

 

 篠原の主導で川魚の塩焼きが完成した。

 

 俺は桔梗から串を受け取った。

 本日も左右に鈴音と桔梗を侍らせるクソ男ムーブである。

 

「……美味い」

 

 ほどよく焼けた身はふっくらとしていて塩気が効いている。

 

「うん、美味しいねっ!」

 

 桔梗が満面の笑みを浮かべて、俺の肩に身を寄せてきた。

 

「そう言えば、まだ教えて貰っていなかったわよね」

 

「ん、どうした?」

 

 鈴音が俺を睨んでいた。

 

「どうして櫛田さんまで名前で呼んでいるの?」

 

 あっ。

 

「……と、友達として」

 

 桔梗が俺の服をそっとつかむ。ぐっと我慢するような表情で俺を見詰めていた。

 

 俺と桔梗は別に付き合っているわけではない。

 有耶無耶な関係のまま、俺は桔梗を都合のいい女として抱いていた。最低である。

 

 俺が口ごもっていると、鈴音は疲れたような溜息を吐いた。

 

「そう。抱いたのね」

 

 ぎくっとする。なぜバレたし。

 これが女の勘なのか。それとも俺が間抜けなだけか。

 

 鈴音は俺に身を寄せて、俺の肩に頭を乗せる。

 

「礼司君」

 

「はい」

 

「好きよ」

 

「あ、ありがとう」

 

「あなた、最低ね」

 

 俺は一度も好きと返事をしていない。

 卑怯である。最低である。

 

 桔梗も悲しそうな顔をして、俺の肩に涙を押し付けた。

 

「好きだよ、礼司君。堀北さんよりも、ずっと」

 

「ありが、とう」

 

「……うん。ごめんね」

 

 痛い。良心が痛い。

 伊達さんにハートブレイクショットを打ち込まれた気分だ。

 

 これがハーレムである。そう、ハーレムとは修羅の道なのだ。

 

 どっちも好きという答えは駄目なのだろうか。……駄目なのだろうな。

 

 俺の後ろにいた伊吹がぷっと笑って、ざまあみろと呟いていた。

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