ようこそ強姦魔のいる教室へ 作:生太郎
豪華客船七日間の旅だった。
途中でどこかに寄港するわけでもなく、岸田さんがSOSを発信しているわけでもない。
平和な船旅だ。これこそ俺が求めていた――。
「ヘヘッ、ひどいことをしやがる奴もいるもんだぜ」
須藤がニヤニヤ笑っている。
俺の部屋のベッドがズタズタに切り刻まれていた。
数時間前まで伊吹とヤッていたベッドだが、今やそこら中に羽毛が散乱している。
船室は相部屋になっている。
その中に須藤がいたのでこうなることは予想していた。
まさか初日からやらかすとは思ってもみなかったが。
俺は溜息を吐きながら携帯で現場を撮影しておいた。
「お、おいっ、何やってんだよ?」
「俺では手に負えない問題だからな。茶柱先生に訴え出るつもりだ」
「は、はぁ? いきなりセンコーに頼るのかよ?」
期待していた反応ではなかったのだろう。
須藤の表情には焦りが見えた。短絡的に行動するからこうなるのだ。
「学校はいじめ問題には敏感だから、すぐに犯人探しが始まるかもな?」
「い、いじめとは決まってねぇだろ! どっかの部外者が悪戯でやったのかもしれねぇぞ!」
「なおのこと問題だな」
俺が船室を後にすると、扉の向こうから「早く片付けろ!」と声が聞こえた。
同室の池や山内に命令しているようだ。
とはいえ俺の手元には写真がある。切り刻まれた布団と一緒に写っているのは笑顔の須藤君だ。片付けたところで飛び散っている羽毛をどうにかする程度だろうし、証拠を隠滅しようとすると怪しさが増すだけである。
それにしても須藤はいい仕事をしてくれた。
教員用の部屋を訪ねてみたら、ちょうど茶柱先生がいたので泣きついてみる。
「先生っ! ぼく、いじめられてるんです!」
「そうか」
冷ややかな視線が返ってきた。
「世の中には、いじめられる側も悪いという言葉がある」
「それ教師が言ったら駄目な奴です」
「もちろん冗談に決まっているだろう。ユーモアを解さない奴だな」
先生も休暇を満喫しているらしい。
ベッドに半身を横たえてリラックスしていた。エロい。
それにしても生徒の相談を受ける体勢じゃないよね。
「……これは、また面倒事を起こしてくれたな」
茶柱先生は頭痛を堪えるように顔をしかめ、ベッドの横に置かれていたトロピカルなドリンクに手を出した。
ただ、分厚いファイルも手元に置かれていた。次の仕事の資料なのだろう。
「うわ、すごいね。見た感じ、一緒に写ってるこの子が犯人かな?」
星之宮先生が俺の携帯を覗き込みながら目を丸くしていた。
「で、お前はどうしたい? 犯人探しでも要求するつもりか?」
「犯人とかどうでもいいので個室を下さい」
「……それが目的か」
須藤、池、山内と同室なんて嫌すぎる。
俺はこれを布石にしてマイルームをゲットするつもりだった。
マイルーム。サーヴァントと語り合う部屋……ではなくヤリ部屋である。
「どうせあるんでしょう? 何かあった時のための部屋ってのが」
「まぁ、あるにはあるが」
先生が俺をジト目で観察してきた。
本当にお前を隔離する必要があるのかと疑うような眼差しだ。
「どうせ犯人の証拠は出て来ないですよ。警察が科学調査をするなら別ですがね。調査したのに何もなかったら、奴は調子に乗って同じ行動を繰り返すだけです」
エスカレートしていくのは言うまでもない。
そうなれば須藤やDクラスだけの問題ではなくなる。学校自体が問われることになる。
茶柱先生が溜息を吐いて、星之宮先生に視線を投げた。
「お前はどう思う?」
「うーん。私には田中君が個室を欲しがっているだけにしか見えないけど、面白そうだから提案を受けてもいいんじゃないかな。ただし、私ならタダってわけにはいかないけどね」
「……三十万プライベートポイントだ」
有償ってことになったか。
たぶん星之宮先生が傍にいるから簡単に許可を出せなかった、と言うことかな。
「学校に戻ってから三十万プライベートポイントを徴収する。足りない分は借金扱いとして、翌月に支給されるはずだったポイントから払って貰う。この条件が呑めるなら個室を与えてやってもいいぞ」
「うわー、佐枝ちゃん鬼だねー」
「うるさい。一人の生徒を特別扱いするなら、それ相応の代償が必要というだけだ」
ここまで条件を厳しくすれば星之宮先生も口を出せない。
それともう一つ。
この後に行われる特別試験でポイントを稼いで来いと発破をかけているのだろう。
三十万ポイントか。
まぁ、大丈夫だろう。次の試験は大量のポイントを稼げるようになっている。
これでヤリ部屋ゲットだぜ。
今日はサバイバルが終わったばかりでダウンしている者が多い。船内もどこか寒々しかった。
例外は早々にリタイアしたCクラスの生徒である。
元気に遊び回る彼らを見ながら、椎名あたりは暇をしているかなと思っていると。
俺の携帯が振動した。
確認すると、桔梗からのメールだった。今すぐ会いたいと書かれている。
文面だけなら甘酸っぱさ全開だったが、このメールには絵文字や顔文字が使われていない。
普段の桔梗らしくない、どこか切迫した緊張感が漂っていた。
とりあえず会ってみるか。
指定されていた船外のデッキに足を運ぶ。
無数のベンチが並ぶその一つに桔梗が座っていた。
桔梗は夕日に照らされた水面を眺めていた。
「何を見ているんだ?」
「あ、礼司君。ごめんね、急に呼び出して」
特に意味のない質問はスルーされる。俺は気にせず彼女の隣に腰を下ろした。
チラリと桔梗の横顔を確認する。
髪がほのかに濡れていた。シャワーを浴びてきたようだ。
「どうしたんだ。疲れているなら無理をせずに部屋で休んだ方がいいぞ」
「心配してくれてありがとう。私もそうしたかったんだけどね」
桔梗が苦笑する。どうやら事情があるようだ。
「これ、見て欲しいの」
差し出された携帯を眺める。
……なるほど。だからこそ俺が呼び出されたと言うことか。
「どうして、そいつがそこにいるんだ」
背後から声が聞こえた。
池寛治が呆気にとられた顔をして立ちすくんでいた。
池は桔梗にメールを送っていた。
話があるので会いたいと書かれていた。
桔梗は指定されていた時間の十分前に俺を呼び出しておいた。
ボディーガードとしてか、あるいは――。
桔梗が俺に抱き着き、唇を吸った。
「――っ! ちくしょう!」
池が明後日の方へと走り出した。もう脈ないよ、お前。
桔梗が妖艶な笑みを浮かべて池の背中を見送っている。
ブラックモードはやめてくれませんかねぇ。
「ごめんね、礼司君。体のいい虫よけみたいに使っちゃって」
俺を見上げた桔梗の表情は、もう普段通りに戻っていた。
虫か。
無意識に言ったのだろうが辛辣すぎる。
もはや桔梗にとって池とは虫と同じなのだろう。あるいはそれ以下かもしれないが。
「あれ?」
「どうしたの?」
「……いや、何でもない」
これってもしかして俺が悪くね?
池を泣かせるために俺が仕組んだような構図になっているわけだが。
ま、まぁいいか。
池が落ち込んだところで俺の知ったことではない。
「気を取り直して、飯でも食いに行くか?」
「うん! やった! 礼司君とデートだ!」
おう。腹ごしらえをした後はヤリ部屋に直行だけどな。
部屋に連れ込んだ直後に、俺は桔梗の身体を抱き締めていた。
「あ……礼司君……駄目だよ……」
「何が駄目なんだ?」
「だって、私たちだけ、部屋でこんなことをしているなんて……」
「こんなことって?」
桔梗は恥ずかしそうに目を逸らす。
「え、エッチなこと。……もう、言わせないでよ!」
礼司君の馬鹿と言いながら胸をポカポカ叩かれるが、唇を奪うと大人しくなった。
優しくベッドに押し倒す。
ボタンを外して制服を脱がせていくのを、桔梗は固唾を呑んで見守っていた。
豊満な乳房が露わになる。俺は乳首に吸い付いた。
ピンク色の乳首を舌でベロベロと嘗め回す。
「あっ……やぁっ……あっ……あぁっ……」
桔梗は両手をぎゅっと握り締めて、身体を緊張で強張らせていた。
俺は手すきの左手で股座を探る。ショーツの中に手を潜り込ませると、くちゅりと指先が濡れたのがわかった。
「なんだ、もう濡れてるじゃないか。実は期待していたのか?」
「……久しぶりだもん。礼司君に触られたら、我慢なんてできないよ」
「そうか。もう挿れても大丈夫そうだな」
俺は桔梗の制服を半脱ぎ状態にしてから入口に肉棒を押し付けた。
「あっ! あっ! ああぁぁぁ! 礼司君の、入って、くる……」
ぐっと腰を押し出すと、ねっとりとした膣内が俺を出迎えてくれる。
グロテスクな肉棒を押し込まれて、桔梗の膣口は張り裂けそうなほど広げられている。
しかし俺のものを何度も受け入れているおかげで、俺のペニスはぬるりと簡単に呑み込まれていった。
「はぁっ、あぁっ、礼司君の、おっきい……」
「動くぞ」
「う、うん。優しくね?」
桔梗は少女漫画のようなロマンチックなセックスが好きなのだろう。彼女は行為の度にそう言うが、今まで優しくできた試しがなかった。
どうしても興奮するとガンガン突きまくってしまうのだ。
と言うわけで、悪いな、桔梗。
俺は探るように何度かピストンすると、段階的に速度を上げていった。
最初はスローセックスのようだったのが、何時しか貪るように腰を振りまくっていた。
「あっ、あっ、あっ、やぁっ! はげしいっ、よっ! ああっ!」
桔梗は目を見開き、酸素を求めるように口をパクパクさせていた。
「はぁっ、ああんっ! れ、礼司君! 駄目だよ! 優しく! あぁっ! お願いだから! あっ! ああっ! あっ、あっ、あんっ! いやっ、ああぁぁっ!」
何だかんだで膣内は俺のペニスを吸い込むように脈打っている。
「あっ、あんっ、そ、それ、だめぇっ! あんっ、ああっ、あぁぁっ!」
子宮口をぐりぐりと攻めると、桔梗は思わずというように俺に抱き着いてきた。
「ああぁぁぁ! だめぇぇっ!」
亀頭と子宮口が愛し合うようにキスをして、桔梗は一度目の絶頂を迎えた。
俺の身体を抱き締め、ビクビクッと痙攣する。噴き出た愛液がシーツを濡らしていた。
「……あっ……あっ……」
桔梗はぐったりと脱力していた。
回復するのを待つ間、俺は桔梗のおっぱいを楽しませて貰う。
そろそろかなと思ったので抽挿を再開すると、桔梗は首を横に振って悲鳴のようなあえぎ声を上げ始めた。
「ああっ! だ、だめ! まだ動かないで!」
ちょっと早かったか。
だが、もう俺の我慢も効きそうにない。悪いが桔梗には耐えて貰うとしよう。
「あぁーっ! あぁっ! いやあぁ! ああぁん! あっ! ああーっ!」
部屋の外まで聞こえそうな声だった。
俺は慌てて桔梗の口をキスで塞ぐ。
桔梗は快楽と酸欠で大変なことになっていた。
顔を真っ赤にして涙をポロポロと零している。
でも、俺もそろそろイキそうなんだよな。
あともう少しだ。俺は一心不乱に腰を叩き付けた。激しい動きに唇が離れてしまう。
「んあっ、あっ、あぁっ! ああぁぁーっ!」
「桔梗! イクぞ!」
「う、うん! きてっ! あんっ! あっ、いっちゃうよ! ああぁぁぁっ!」
腰を桔梗と密着させる。
「ああぁぁぁ! いっ、くぅぅぅ!」
桔梗が俺に抱き着いて痙攣する。
俺は一滴も漏らさないとばかりに亀頭を子宮口に押し付け、精液を吐き出した。
翌朝。
俺は船内レストランで朝食を取っていた。
ビュッフェスタイルである。
一人寂しくテーブルを使っていると「おっはー!」という古臭い挨拶が聞こえた。ゆとり世代に流行っていた古式ゆかしい伝統的な挨拶である。ほぼ死語だった。
俺はコーヒーをすすった。ブルーマウンテンである。コーヒーの良し悪しは俺にはわからないが、何となく美味い気がする。
「無視しないでよ!」
椅子をガシガシと蹴られてしまった。
トレイを抱えた一之瀬が俺にガンをつけていた。何様だこいつ。
一之瀬は俺の許可を得ずに、勝手に対面に腰を下ろしていた。
「おっはー!」
「だからそれは何なんだ?」
「知らないの? ゆとり世代に流行っていた挨拶だよ。おっはー!」
「……止めろ。頭が痛くなってくる」
どうやら突発的なブームらしい。
朝から謎のハイテンションだった。正直ついていけない。
後ろに控えているBクラスの女子たちが楽しそうにこちらを見ている。
今日は白波は一緒ではないようだ。
流石にあんな裏切りをしておいて顔を出せるとは…………。
五つ隣のテーブルにいた。
一之瀬のことをねっとりとした目で見詰めている。
色々とこじらせすぎてヤバそうな視線だ。……見なかったことにしよう。
「無人島ではよくもやってくれたよね。あれって田中君の差し金なんでしょ?」
「いや、鈴音の作戦だ」
「嘘だね。Dクラスの女の子が言ってたよ……って、鈴音ぇ?」
「Bクラスは残念だったな。あまりポイントを伸ばせてなかった」
「話を逸らさないで」
真顔だった。
ホラー映画みたいだ。こわい。
「タナカス君」
「それやめろ」
「堀北さんのこと、名前で呼んでるの?」
真顔だった。
日本人形みたいだ。こわい。
「ちなみに櫛田のことも桔梗と呼んでいる」
あえて墓穴に飛び込んでみる俺である。
どうせ後でバレるから、隠しておくよりも今バラした方が傷は浅いという打算だった。
「ききょぉぉぉっ!?」
奇声を上げながら机の下で俺の足が踏み抜かれた。痛い。
「ねぇタナカス君! 恋人を差し置いて他の女の子を名前で呼ぶなんて、一体どういうつもりなのかな!? 私のことは遊びだったのかな!?」
一之瀬がフォークで俺の手をブスブスと突いてきた。痛い痛い痛い。
俺は真摯な顔をして一之瀬の手を両手で握り締めた。
「ごめんな、帆波。本当はお前のことを最初に名前で呼ぶつもりだったんだ」
「……だ、騙されないからねっ!」
と言いながらも、一之瀬もとい帆波の口元はひくひくしている。チョロい。
もう一押しだな。
「信じてくれ、帆波」
「うっ! そ、そんな目をしたって駄目なんだから!」
「帆波」
「……うぅぅ。私ってダメ男に引っかかるタイプだったのかなぁ」
堕ちたな。
心の中でゲス顔を浮かべる俺である。
俺って女癖が悪いらしい南雲副会長のことを笑えないよね。
パリンと音がした。
白波が皿を床に落としていた。ウエイターが駆け寄って来て、白波は礼儀正しく「すいませんでした」と頭を下げている。……見なかったことにしよう。
「れ、れいじく、タナカス君はもう食べ終わったの?」
「なぜタナカスになる」
「れ、礼司君っ!」
やけくそになったみたいに帆波が叫ぶ。
「……肉をお代わりしてくる。なんか取ってきて欲しいものはあるか?」
「別にいいよ。私、朝はあんまり食べないんだ」
などと供述しながら、帆波のトレーにはちゃっかりとケーキが三つも乗っていた。
「こ、これは違うもん! 無人島で痩せた分を取り戻してるだけだもん!」
俺がカロリーの塊を凝視していることに気付いて、帆波が赤面しながら弁解している。
……口調が幼児退行しているのだが。
「礼司君は恋人がガリガリでもいいって言うの!」
「デブったら捨てるから」
「ひどっ! 血も涙もないよ!」
いや、デブ之瀬とか無理だから。
たぶんサバイバルを頑張った自分へのご褒美とか考えているのだろう。
ビュッフェスタイルだと、ついつい食べ過ぎてしまうからな。
だがそれは罠だ。
サバイバルではカロリーが制限されていた。そこに一気に高カロリーをぶち込むと、栄養を欲しがっている身体は余すことなく吸収してしまう。
要するに、太る。
俺は筋肉がエネルギーを持って行ってくれるが、帆波みたいな女子は……。
二の腕とか下腹部とか太股とかに脂肪が溜まるのだろう。
ぽっちゃり一之瀬の誕生である。
……ダイエットでもさせるか。
せめて今日摂取したカロリーぐらいは消費させておかないと一之瀬ファンが泣きを見ることになりそうだ。
「九時半に展望デッキに集合な」
「え、デート!? 覚えててくれたんだ!?」
それもある。
帆波のカロリー消費とデートを兼ねた一石二鳥の策だった。
俺たちは待ち合わせ場所で合流した後、船の屋上プールに足を運んだ。
事前に聞いていたが、水着はレンタルできるらしい。
水着を選ぶだけで三十分も時間が飛んだ。帆波が言うにはこれでも妥協したらしい。
「また後でね」
一端別れてから、更衣室でパパっと水着に着替える。
プールに出ると痛いぐらいの日差しが降り注いできた。貰ってきた日焼け止めを自分の身体に塗り付けていると。
「おや、田中ボーイではないか」
プールからさぶんと音を立てて金髪が現れた。
今日も自信にあふれる笑みを浮かべている。
俺に声をかけておきながら、俺など眼中にないという態度だった。
「高円寺か。一週間以上も船にいて飽きないのか?」
「フッ、わかっているじゃないか。私ほどの男を縛り付けるには、この船は少々手狭と言う他にないね。豪華客船という看板には問題があるようだ」
高円寺をチヤホヤともてはやしてくれる上級生の女子もここにはいないからな。
それにしても、俺と高円寺。どちらが男子のヘイトを集めているのだろう。
男子からは俺の方が嫌われている気がするが、女子が味方なので俺の方が……いや、底辺争いは悲しくなるからやめとくか。
「私も君みたいに個室を貰いたいところだが、ここには共に夜を過ごす相手がいないのでね。あと数日、適当に過ごして無聊を慰めるとするさ」
「……お、おう」
俺が個室を手に入れたことを気付いていたのか。
何と言うか底知れないものがある。
殴り合えば勝てるとは思うのだが、その後がまったく予想が付かない。
高円寺はプールの水に濡れた身体のまま船内に戻って行った。
船内に戻っていく濡れ鼠を目撃してしまった帆波が面食らっている。
「え、何? 何なの!?」
「水着、似合ってるぞ」
「この状況でそれ言っちゃう!? …………あ、ありがと」
ビキニである。
青地に白い蝶々の模様が入ったトップス。
水色一色のボトムス。腰にはパレオを巻いていた。
スタイル抜群の帆波が着ると色気がやばい。
高校一年にしてこのおっぱいだ。バトルシップ級である。
俺が見詰めていると、帆波の肌が見る見るうちに朱色に染まっていった。
帆波はそれを誤魔化すように手を団扇にしてパタパタしている。
「いやー、暑いねー」
「そうだな」
「日焼け止めを塗らないと肌が真っ赤になりそうだよ」
なんか物欲しそうな目をされてしまう。
俺の持っている日焼け止めが欲しいのだろうか。
「あ、私、日焼け止め貰ってくるの忘れた!」
「そうか。そこで貰えるみたいだぞ。もちろん無料だ」
「ふーん。そうなんだ」
チラチラと俺の手にある日焼け止めを見てくる。
俺が指さした売店を振り向きもしない。
さて泳ぐかとプールに向かおうとすると、俺の肩がガシッとつかまれた。
帆波が満面の笑みを向けてくる。
「塗って」
「おい」
……いや、いいのか?
こういうのって女子は更衣室とかで済ませるものだと思っていたのだが。百歩譲って砂浜でサンオイルを塗るのはわかるが、これは日焼け止めだ。
プールサイドの白い椅子に寝そべる帆波。
日焼け止めを手に立ちすくむ俺。
周りでは普通に生徒が遊んでいた。が、今や注目の的である。
帆波は顔を真っ赤にしてプルプルしていた。
「いや、やっぱり止めておいた方が……」
「塗って」
「……いいのか」
「塗って!」
帆波は唇をぎゅっと結んで、こくりと頷いた。
公開羞恥プレイの始まりである。
俺は頭痛を堪えながら両手に日焼け止めを塗り付ける。
帆波はまな板の上の鯉のごとくガチガチになっていた。
これ、なんか違うくね?
そう思いながら右手を帆波のお腹に置いてみる。
「ひあっ、ひやあぁぁっ!」
群衆がどっと沸いた。
あと帆波の声がやばい。勃起しそう。
実際、周りにいる男子が前かがみになっていた。
どうしてお前は毎度のこと冒険したがる。
チャレンジ精神に溢れているのはいいことだが、物事には限度があると思う。
「やっぱ駄目だ」
「きゃっ!」
俺は帆波を抱き上げた。いわゆるお姫さま抱っこだ。
流石に公開プレイは色々と問題が有りすぎる。
俺は帆波を見世物にする趣味はない。男子にオカズを提供するのは御免だった。
女子の更衣室まで帆波を連れて行くと、日焼け止めを押し付けた。
「頼むから後先考えて行動してくれ」
「……あ、あの。怒ってる?」
「当たり前だ」
帆波に押し切られて公開プレイに踏み切ってしまった俺自身に怒っている。
役得かなと思ったが、そんなことはなかった。
帆波に恥をかかせただけだった。
「あ、あの。礼司君。その、ご、ごめ――」
俺は帆波を引き寄せてキスをしてから、彼女を更衣室へと突き飛ばした。
まったく。世話をかけさせてくれる。
「あ、あわわっ! わわわっ!」
部屋の中から帆波が叫んでいた。
どっかのロリ軍師みたいな口調だが、奴はスタイル抜群の美少女だ。タイプが違うぞ。
「ちょっと待って! 具体的には一時間ぐらいプリーズっ!」
「とっとと出て来い!」
怒鳴り返す。
更衣室に入ろうとしていた女子たちが目を丸くしていた。
俺は愛想笑いを浮かべて女子更衣室から距離を置く。
……まぁ、恋人ごっこも悪くないかな。