※この作品はR-18です。

ようこそ強姦魔のいる教室へ   作:生太郎

30 / 36
30話

 龍園との取り引きを終えた後、俺は一人で部屋に戻った。

 まだ結果が発表されていないので打ち上げもできないからな。

 

 昼寝でもするかと思いながらドアを開けると、ジジイが唸り声を上げていた。

 

「タナカス。レイプだ」

 

 触らぬレイプ神に祟りなし。

 俺は無視してベッドに寝転がる。

 

「レイプ」

 

「やめろ。何も言うな」

 

 聞きたくないから。マジで関わりたくないから。

 

「なぁ……レイプしようや……」

 

「ふぇぇ……キモいよぉ……」

 

 約束しただろ。こっちはノルマを達成しているんだ。

 

 仕事が終わったら次の仕事を押し付けられるのは社会人になってからにしてくれよ。こっちはまだ学生なんだよ。

 

「レイプするのだ。格式ある儀式は守らねばならぬ。レイプするのだ!」

 

「スリザリンはいやだぁぁ!」

 

 俺は布団を頭から被って全力で拒否する。

 最近大人しかったから油断していたが、やはりジジイはクソだ。

 

 だが、このまま足掻き続けていても最後にはジジイに洗脳されるのがオチだ。

 

「わかった! わかったから! また今度レイプするから!」

 

「レイプだな。褒美をくれてやろう」

 

 そう言いながら、くたびれた三角の帽子を取り出すジジイ。

 

 薄汚れていて悪臭を振りまいている継ぎはぎだらけの帽子だった。

 

「いらねぇよ。なんだ、その小汚い――」

 

 言いかけている途中で、ジジイが勝手に帽子を俺の頭に乗せてくる。

 

 以前ジジイに洗脳された時のことを思い出す。

 

 やばい――と思ったのも束の間。

 

『んん、難しい。こいつは難しい。君は知恵を使ったレイプが得意だからレイプンクローでもやっていけるだろう。しかし優しくレイプするのでレイプルパフも捨てがたい』

 

 なんだこれ。

 

 なんだこれ!?

 

 この帽子、直接脳内に語りかけてくるんだけど!

 

『狡猾なレイプをする君にはレイプリンもよく似合う。しかし勇気あるレイプができる君はレイプンドールが向いているかもしれない』

 

 全部嫌なんだけど。

 

 と言うか、お前の設定ガバガバじゃねぇか。

 前にグロチンドールって言ってたよな。改名したのかよ。

 

『レイプリンに入れば間違いなく偉大なレイパーになれるのだが嫌なのかね?』

 

 だから嫌だって。

 

『そうか。ならば、レイプンドール!』

 

「嫌だって言ってるだろうが!」

 

 ジジイに帽子を投げ付ける。

 

 クソ、何がレイプンドールだ。ふざけやがって。

 

 ジジイは「自信作だったのじゃが、レイプが足りなかったか……」としょんぼり肩を落としていた。だからやめろ。レイプマシマシにしたら余計にひどくなるだけだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あまりのストレスにふて寝した後。

 

 目を覚ますとジジイは消えていた。

 

 あのクソみたいな帽子も見当たらない。ナイフで滅多刺しにしたらどんな悲鳴を上げるのか興味があったのだが、ちょっと残念だな。

 

 携帯を見ると大量のメールが溜まっていた。

 返信めんどいな。大半がひよりからだから無視するのだが。

 

 鈴音や桔梗は試験の結果を受けて話し合いをしているらしい。

 できれば俺にも参加して欲しいと言っているので、ロビーで落ち合うことにした。

 

「礼司君、来てくれたんだっ!」

 

 駆け寄ってくる桔梗。見た目だけは天真爛漫である。

 

 ロビーには多くの生徒が集まっていた。

 試験の結果が発表されたからだろう。

 みんなが思い思いに頭をひねっている中、俺が現れると一瞬だけ空気がざわついた。

 

「すっかり有名人ね」

 

 桔梗に手を引かれてテーブル席に着くと、鈴音が俺を憐れむように見てきた。

 

「前から有名人だっただろ」

 

 ハーレムクソ野郎のタナカスとしてだが。

 

「あ、田中君。コーヒー飲まない? あたしの飲みかけだけど」

 

「いらない」

 

「田中君が好きなブラックだよ?」

 

 軽井沢が身体を寄せて紙コップを差し出してきたが即効で拒否った。

 

 鈴音と桔梗の前で間接キスなんてできるかよ。

 

 と言うか、なんでブラックなんだよ。前にブラックを馬鹿にしてただろうが。

 

「変わった組み合わせだな」

 

 鈴音と桔梗、軽井沢である。見ていて違和感しかない。

 

「誰かさんが消えてくれれば何時も通りになるわよ?」

 

「田中君! 堀北さんがいじめてくるの! お願い助けて!」

 

「白々しいわね」

 

 波瑠加の姿はなかった。

 あいつは集団行動が苦手そうだからな。

 

 二人の言い争いは面倒なのでスルーしておく。

 

 鈴音は軽井沢をひと睨みすると、話題を変えるために軽く咳払いをした。

 

「今回の特別試験で私たちのDクラスは新たに百のクラスポイントを得ることができたわ」

 

「すごいよね! もしかするとCクラスに上がれるかも!」

 

 桔梗がはしゃいでいる。頭の悪いフリである。

 

「櫛田さん。Cクラスも私たちと同様に百クラスポイントを得ているわ。差を詰めたわけではないから、クラスの順位はそのままでしょうね」

 

「え? そうなの?」

 

「スタートがゼロだったからな」

 

 無人島と船でポイントを稼いだところで順位は据え置きだ。

 

 とは言え百クラスポイントである。これは大きい。

 

 最初は部屋代さえ稼げれば他のグループはどうでもいいと思っていたが、当初の予定から外れて結果的にクラスに貢献してしまった。

 

 やはり俺は天才だったようだ。うん、間違ったかな?

 

「あれ? ちょっと待てよ」

 

「どうしたの、礼司君」

 

「Cクラスも百ポイントなのか?」

 

「ええ、そうよ。ちょうどそのことで私も不思議に思っていたの」

 

 俺は結果発表のメールを確認する。

 そこには今回の特別試験の結果が書かれていた。

 

 

 

 Aクラス  マイナス百五十クラスポイント

 

 Bクラス  マイナス五十クラスポイント

 

 Cクラス  プラス百クラスポイント

 

 Dクラス  プラス百クラスポイント

 

 

 

 たしかにCクラスの加点は百ポイントだった。

 

「大前提として牛グループ以外のグループが裏切者の正解によって処理されている。すべてのクラスが優待者が発見されたことによるマイナスペナルティを被り、百五十のクラスポイントがマイナスされている」

 

 俺が呟くと、それを拾った鈴音がノートにペンを走らせた。

 

「CクラスとDクラスが残った十一グループで裏切りを成功させることで、先手のCクラスが三百クラスポイント、後手のDクラスは二百五十クラスポイントを得る」

 

 俺の独白を鈴音が引き継いだ。

 

「差し引きするとCクラスはプラス百五十クラスポイント。Dクラスはプラス百ポイントを得るはずだった。ところが――」

 

「Cクラスが得るはずだった五十ポイントがどこかに消えたってこと?」

 

「……え、ええ。そう言うことになるわね」

 

 軽井沢が首を傾げながらも理解していることに鈴音が驚いていた。

 

 鈴音は馬鹿っぽく見える軽井沢を見下しているが、軽井沢は真面目に勉強する気がないだけで地の頭は悪くないんだよな。

 

「龍園君がミスをしたとか?」

 

「伊吹さんが入力ミスしたんじゃない?」

 

 桔梗と軽井沢がとぼけたようなことを言う。

 単純なケアレスミスという可能性もゼロではないが、この場合は他の理由が思い付く。

 

「おそらくは牛グループだろう」

 

「牛グループって、たしか二日目ぐらいで終わっちゃったよね」

 

 俺は頷いた。

 

「Cクラスがポイントを失った理由が、牛グループ以外に存在しない」

 

 Bクラスがマイナス五十クラスポイントになっている理由もそれで説明がつく。

 

 牛グループの優待者はBクラスだったのだろう。Cクラスが裏切りに失敗したことで五十クラスポイントを失い、逆にBクラスは五十クラスポイントを得たわけだ。

 

「Cクラスの一部の生徒が龍園君の指示を無視して暴走したと言うことかしら?」

 

「その可能性が高そうだ。龍園のブラフという可能性も捨てきれないが」

 

 試験が終わって結果に気付いた龍園が、今頃はクラス内で犯人探しでもやっているのかもしれないが――興味はない。

 

「そう言えばDクラスの反応はどうなってる?」

 

「おおむね好意的に受け入れられているかな」

 

 桔梗が答える。

 予想通りの結果だが、俺はホッと胸を撫でおろした。

 

 今回は俺のほぼ独断でクラスの大半を蚊帳の外に置いていた。

 さらに今までは仮想敵だったCクラスと手を組んでいる。それによりBクラスとの同盟が破綻してしまった。

 

「みんな、あの時のことが衝撃的すぎて批判なんて飛んじゃったみたい」

 

 桔梗が言う。

 

 俺は龍園と共同でほぼすべてのグループを一瞬で終了させた。

 

 さぞかし衝撃的な光景だっただろう。

 自分たちのクラスがAクラスやBクラスを手玉に取って勝利したのだ。

 

 勝利の味は甘美である。

 俺がやったのは衝撃を叩き込んで思考を飛ばし、勝利で脳を溶かしてやったと言うわけだ。

 

「それでも須藤君たちは納得していないみたいだけど」

 

「もうあの馬鹿は放っておけば?」

 

 軽井沢が呆れながら言う。

 奇遇だな、軽井沢。ちょうど俺もそう思っていたところだ。

 

「プライベートポイントを山分けすると言うのもあるだろうな」

 

「そうだね。これから夏休みだし、ポイントはいくらあっても足りないよ」

 

 今回の試験で得た数百万のプライベートポイントは一度平田が回収して、改めてクラス全員に配分することになっていた。

 

 四十人に分配すれば一人あたり五万ポイント程度にしかならないが、夏休みを満喫するためのボーナスである。Dクラスは万年金欠なのでこれは大きい。

 

 ここまで話して俺は喉の渇きを覚えた。

 飲み物を取りに行くのも面倒だ。何となくテーブルの上を見る。

 

 軽井沢はコーヒーに手を付けていない。ブラックだからだろう。

 

 これなら間接キスにならないか。

 

「軽井沢。コーヒー貰うぞ」

 

「……あ。うん」

 

 なぜか頬を赤らめる軽井沢。

 

 あれ? 間接キスじゃないんだよな?

 

「礼司君」

 

 鈴音が満面の笑みを浮かべていた。嫌な予感しかしない。

 

「どうして私たちの飲み物ではなく、軽井沢さんの飲み物にしたのかしら?」

 

「いや、ブラックが好きだから」

 

「それなら頼んでくれれば私たちが淹れてきたわ。そうよね、櫛田さん?」

 

「そうだよ、礼司君。流石に今回は私も怒るよ」

 

 桔梗も両手をぎゅっとして「私おこってます」ポーズをしている。あざとい。

 

 周りにいた無関係の連中も「タナカスが悪い」と便乗していた。

 

 ちょっと待て。関係ない奴らまで俺をディスってんじゃねぇよ。

 

「あ、あの、田中君。あたしは田中君の味方だからね!」

 

「お前のせいだからな」

 

 頬を染めている軽井沢に、俺は白い目を向けた。

 

 いや、俺が迂闊すぎるのも悪いのだが。半分はそっちの責任だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が逃げるように部屋に戻ってから、すぐに部屋のドアがノックされた。

 

「礼司君。私です。夜分にすいません」

 

 ひよりの声だった。

 俺は部屋のドアを開けて、一瞬だけ硬直する。

 

「何よ? 文句あるわけ?」

 

 伊吹が不機嫌そうに突っ立っていた。いきなり喧嘩腰だ。

 

 隣にいたひよりが申し訳なさそうな顔をする。

 

「ごめんなさい。伊吹さんにも関係のある話をするかもしれませんので」

 

「ああ、あの件か」

 

 と言うことは、ひよりにはバレてしまっているようだ。

 

 これは龍園にも隠し通せていないと考えた方がいいか。

 まぁ、スパイはひより一人で充分だ。伊吹は性格的にスパイに向いていないからな。

 

「さっさと部屋に入れてくれない?」

 

 伊吹は俺を押しのけて部屋に上がると、勝手にベッドに腰を下ろした。

 ふてぶてしい態度だった。まぁ別にいいけど。

 

 ひよりも苦笑しながら後に続く。

 

「それで、話って何なのよ?」

 

 伊吹がぶっきら棒に言い放つ。その質問はひよりの方を向いていた。

 

 どうやらひよりは何も説明せずに伊吹を連れて来たらしい。

 

「取り引きの条件のことです」

 

「龍園と結んだ契約のことか」

 

 ひよりの質問はおおむね俺の予想通りだった。

 

『CクラスとDクラスの確執をリセットする。

 以前のお互いの問題行為を追及および吹聴しない』

 

 表向きは軽井沢に対する救済措置に見せかけている。

 しかしその範囲には当事者にしかわからない問題行為も多分に含まれていた。

 

 龍園は俺の暴力行為のことだと解釈していたが、俺にとってはそれだけでは済まない。

 

 条件に照らし合わせると、ひよりや伊吹へのレイプすらも含まれてしまうのだ。

 

「礼司君」

 

 ひよりが俺に詰め寄った。

 息が吹きかかる距離で俺に密着してくる。

 

「礼司君はすべてをなかったことにしたいのですか?」

 

「いや、そ、そんなわけはないだろ。当たり前だよなぁ!」

 

 俺は即答した。

 ひよりがゾッとするような暗い目で俺を見詰めていたからだ。

 

「そうですよね。よかった」

 

 やべぇよ、やべぇよ。

 返答を誤るとナイスボートされそうだった。

 

「ひより。あんた、何の話をしているのよ?」

 

 伊吹が訝しげにこちらを見てくる。

 

 ひよりが伊吹の方を振り返って、花が咲くような笑みを浮かべた。

 

「よかったですね、伊吹さん。礼司君は私たちとの関係を清算するつもりはないそうですよ」

 

「は、はぁ!? あんたいきなり何言ってるの!?」

 

 伊吹は顔を真っ赤にしてまくし立てている。過剰反応する方が怪しいんだよなぁ。

 

「伊吹とのことも気付いたのか。流石だな」

 

「そうでしょうか。伊吹さんの可愛らしい反応を見れば一目瞭然だと思うのですが」

 

「かっ、かっ、可愛くない! 可愛くないから!」

 

 ひよりに俺を独占する気持ちが薄いのが救いだった。

 

 ひよりが嫉妬のあまり鈴音たちをナイスボートするような奴だったら、俺はもうこの世界線を捨ててIBN5100を探しに行っていただろう。ゲル化したらゲルタナと呼んでくれ。

 

「伊吹さんも礼司君のことが好きなんですよね?」

 

「は、はぁ? なに勘違いしてるのよ……って! なんでいきなり脱いでるの!?」

 

 素っ頓狂な声を上げる伊吹。

 それもそのはず。ひよりはいきなり服を脱ぎ始めていた。

 

「せっかくなので礼司君に可愛がって貰おうかと。伊吹さんはもう帰ってもいいですよ?」

 

 そしてひよりは挑発するように伊吹に流し目を送る。

 熱っぽい吐息を吐きながら俺の右手を股間に添えて身体をくねらせていた。

 

「礼司君。私、もう我慢できません」

 

「そうだな。やるか」

 

 最終日ぐらいゆっくり過ごしたかったが、ここまでされたら俺も勃起する。

 

 ひよりを抱き上げてベッドまで運ぶ。そこは伊吹の真横だった。

 

「ちょ、ちょ、ちょっとぉぉ!?」

 

 伊吹がびっくりして飛び上がる。

 

「……ああん……礼司君……好き……好き……」

 

「何やってるの、ひより!? あんたら頭おかしいんじゃないの!?」

 

 俺はひよりと情熱的なキスをかわしながら女性器に指を入れた。

 ひよりの身体はすでに出来上がっていて、くちゅりと指が膣内に飲み込まれていく。

 

「はやく、礼司君が欲しいです」

 

「わかった。入れるぞ」

 

 俺のズボンから飛び出した凶悪な肉棒が少女の中に沈んでいく。

 

 伊吹は騒ぐのをやめて、ごくりと生唾を呑み込んで見詰めていた。

 

「あっ、あっ……あぁぁ……大きいです……」

 

 ひよりの艶めかしい白い生足を抱き締め、側位になって腰を叩き付ける。

 

 膣奥をコンコンと突くと、ひよりが身をもだえさせて大声で喘いだ。

 

「あっ! あんっ! あぁんっ! そこっ、いいです!」

 

 ひよりの弱点を執拗に抉りながら伊吹の方に目をやると、伊吹は捨てられた子犬のような目をして切なそうに俺たちの情事を見詰めていた。

 

「……ひより」

 

「ふふっ、どうですか、伊吹さん。あっ、んっ……早く素直になった方がいいと思いますけど?」

 

「あんたも、こいつにレイプされたの?」

 

「ええ、そうですよ。伊吹さんと同じです」

 

「……同じって」

 

「伊吹さんも沢山レイプされて、礼司君のことが好きになったんですよね?」

 

「す、好き!? そ、そんなわけないし!」

 

 無駄話はこれぐらいでいいだろう。

 

 俺は止めていた腰の動きを再開させる。

 

「ああぁぁぁっ!」

 

 ひよりが目を見開いた。

 

 それから俺は手加減せずに肉棒を突き入れる。

 

「あぁっ! だめっ! だめですっ! ああぁぁぁん!」

 

 何度も俺のものを受け入れてきたひよりの膣内は、まるで精液をねだるように俺のものに吸い付いていた。

 

「あっ、あっ、ああっ、あっ、い、いくっ!」

 

 ひよりの身体がぶるっと震え、弛緩していった。

 

 こいつは何時も俺よりも先にイクよな。

 感じやすい女は嫌いではないが、俺は時折やり辛さを感じることがある。

 

 消化不良の肉棒をずるりと引き抜いた。

 

「さて」

 

 俺は伊吹の方を振り返る。

 

 伊吹は涙目で俺を見上げていた。

 

「こっちに来いよ、伊吹」

 

「……命令しないで」

 

 伊吹が目を逸らしながら言った。

 

「なら部屋から出て行くか?」

 

 答えは沈黙だった。

 伊吹は無言で俯いている。ポタリと一滴の涙が床に落ちた。

 

 自分だけではなかった。ひよりにまで手を出していた。

 

 その悲しみが伊吹を傷付けている。それはわかっている。

 

 それを承知の上で、俺は最低な台詞を吐くことにした。

 

「来いよ、伊吹。可愛がってやる」

 

「最低」

 

 伊吹は俺を罵った。

 

 しかし、部屋を出て行くことはなかった。

 

 俺は伊吹を抱き締めて唇を吸う。

 伊吹は目を閉じて受け入れた。涙が頬を伝っていた。

 

「ふふっ。3Pですね」

 

 ひよりが空気を読まずに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜三時。

 

 俺は部屋の内風呂で汗を流してから、船内のラウンジに足を運んでいた。

 

 深夜は立ち入り禁止になるエリアが多い中で、ラウンジは二十四時間利用可能だ。とは言え深夜にもなれば人の気配もない。

 

 ホットのカフェオレを自販機で購入して、高級そうなソファに腰を下ろす。

 

 天井を見上げてぼうっとしていると、やがて足音が聞こえ始めた。

 

「ごめん。待たせちゃった?」

 

「いや、今来たところだ」

 

 メールで俺を呼び出したのは帆波だった。指定された時間は深夜三時だ。

 

 壁の時計に目をやると、深夜四時になっていた。

 

「嘘吐き」

 

「バレたか」

 

 帆波が「あはは」と笑う。

 

 彼女は躊躇う気配を見せていたが、思い切ったように俺の隣に座った。

 

「ごめんね。どんな顔をして会えばいいのか、ちょっとわからなくなって」

 

「この場合、顔向けできないのは俺の方じゃないか?」

 

「タナカス君って厚顔無恥だよね」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ」

 

 帆波が唇をとがらせる。

 

 表面上は普段の帆波に見えるが、俺には無理をしているように見えた。

 

 あんなことがあったばかりだ。

 俺に会うのが怖くなって、待ち時間に遅れてしまったのだろう。

 

「それで。こんな時間にどうしたんだ?」

 

「ごめん。特に大した用事はないんだ」

 

「おい」

 

「でも、このまま何もしなかったら礼司君との距離がどんどん開いていってしまう気がして。そう思ったらメールしちゃってた」

 

 要するに、ただ会いたかったわけだ。

 

「気まずくなって会わない間に疎遠になる。よくある話だな」

 

「うん。それが、嫌だったの」

 

 帆波が俺に寄りかかってくる。

 

 話題が途切れる。途端に息が詰まりそうなほどの静寂が押し寄せてきた。

 

「礼司君。私、リーダーに向いてないのかも」

 

「そうだな」

 

「即答? ひどくない? そこは普通なら慰めるとかするでしょ?」

 

「優しい言葉はクラスの仲間だけで腹一杯だろ?」

 

 耳当たりのいい言葉はBクラスの仲間から飽きるほど聞かされているはずだ。

 

 今回は運が悪かった。

 一之瀬は悪くない。

 俺たちの力が足りなかった。

 次はもっと頑張ろう。

 

 そんな言葉ばかり聞かされたら、俺なら気が狂いそうになるだろうな。

 

「俺から見た感じだと、お前は参謀型だよ」

 

 帆波には率先して集団を引っ張っていく資質が不足しているように見える。

 もちろん人並みの生徒よりは優れている。

 平田よりも優れたリーダーであるとも断言できる。

 

 だが、龍園や坂柳には一枚も二枚も劣っていた。

 

「……そんなこと、初めて言われたかも」

 

 帆波は目を驚かせていた。

 Bクラスの不幸はリーダーの不在だな。

 

 俺の肩に頭を乗せて「あーあ」と残念そうに呟く。

 

「礼司君がBクラスだったらよかったのに」

 

「それも面白そうだな」

 

「でしょ?」

 

 所詮は仮定の話だ。

 

「ねぇ、礼司君。二千万ポイント出したら私のクラスに来てくれる?」

 

 帆波が言っているのは二千万プライベートポイントでクラスを移動する権利が買えるということだろう。

 

 しかし、それも仮定の話。

 帆波のクラス全員でポイントをかき集めても二千万には届かない。

 

 それに――。

 

「今回の件で俺は神崎たちに嫌われた。無理だろう」

 

「そうかもしれないけど、それでも答えて」

 

 一瞬だけ考える。

 俺がリーダーで帆波が補佐をする。そんな光景が浮かんで消えた。

 

 鈴音と桔梗の泣き顔が見えてしまう。駄目だな。

 

「悪いが俺は今のクラスを気に入っている」

 

「……残念。堀北さんと櫛田さんか」

 

 帆波が立ち上がる。

 今のやり取りで俺と帆波の間に見えない壁が生まれたような気がした。

 

 残念だな。だが、それも仕方がない。

 俺が選んだのは鈴音と桔梗だ。帆波ではなかった。

 

 俺が帆波から視線を切った瞬間。

 

「んっ」

 

 帆波の唇が俺の唇に押し付けられる。

 

「なぜだ」

 

 ここまでされて、なぜ俺を嫌わない。

 

 帆波は瞳を濡らしながら、取り繕うように笑顔を浮かべた。

 

「どうしてかな。クラス対抗戦ではまったく手加減してくれないし、頑張って誘惑してもまったく靡いてくれないし、傷付いてるところを見せてもまったく優しくしてくれないのにね。不思議だよね。どうして礼司君のことが嫌いになれないのかな」

 

「帆波。俺は――」

 

 俺はわかっていた。

 嫌いな相手にキスなんてしない。

 

 だが、それを言ってしまえば今の曖昧な関係に決着を付けなければならなくなる。

 

「いいの。何も言わないで」

 

「それでいいのか?」

 

「うん。フラれて終わってしまう方が、もっと怖いから」

 

 答えを先送りにする。それが帆波の選択だった。

 

「礼司君。覚悟しておいて。私はもう決めたから。次からはDクラスであっても手加減せずにポイントを奪いに行くからね」

 

 お人よしすぎるだろう。

 わざわざ宣言せずに俺みたいに騙し討ちにすればいいものを。

 

 帆波が踵を返した。時刻は五時を回っている。俺もそろそろ部屋に戻るとしよう。

 

 

 

 ざっと現在のクラスポイントを大雑把に羅列するとこのようになる。

 

 

 

 Dクラス 五百ポイント

 

 Cクラス 六百九十ポイント

 

 Bクラス 七百二十ポイント

 

 Aクラス 千ポイント

 

 

 

 順位こそ変動していないが、Dクラスが一気に追い上げていた。

 

 CクラスとBクラスの差もほとんどなくなっている。

 

「なぜレイプしなかった?」

 

「また今度ね」

 

「ぐぬぬ……しょうがレイプないな。今回だレイプけだぞ」

 

 俺はジジイの追及を誤魔化した。

 

 どうでもいいけど言語野バグってますよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。