夏休みも終わり、早いものでもう9月。
資料もまとめ終わりのんびりと社内をブラついている。......白坂を背中にぶら下げて。何故か懐かれてしまった。何故かだ。決してリアルゾンビなどと言われていない。ないったらない......グスン。あと、サボってるわけじゃないからね?ちひろさんの御厚意だからね?『〜♪』
......ん?ギターの音?誘われるように音のする方へ向かって行く。
八幡「(確か......木村夏樹さんだったか?すげぇな。この人アイドルじゃなくてミュージシャンとして食っていけるんじゃね?)」
音がやみ、拍手する俺と白坂。......顔の前で拍手しないで!余った袖が顔にhitしてるからね!
木村「聞いてたのか。小梅と......誰?」
八幡「あっ、勝手にすんません。CPアシスタントの比企谷八幡です。木村夏樹さんですよね?」
木村「おっ!知っててくれてんのか。ありがとな。八幡だから...ハチでいいか?アタシの事は夏樹でいいぜ。敬語も必要ない。」
八幡「......な、なら遠慮なく。さっきの...My Chemical Romanceの曲だったか?」
夏樹「わかるのか。ハチもロックいけるクチか?」
八幡「詳しくはないがな。嗜む程度だ。」
夏樹「どんなの聞くんだ?」
八幡「あー......多いのはVAMPSだな。あとはLiSAとか。LiSAはどちらかと言うとパンクだが...洋楽は殆ど知らん。」
夏樹「VAMPSは知ってるけど...もう1人は知らないな。」
八幡「まぁ...アニソンがメインだからな。でもバカにできんぞ?」
夏樹「へぇ...曲あるか?」
八幡「すまん。今はない。」
夏樹「そうか......ならハチ、楽器は?」
八幡「......少しなら。」
夏樹「そうか!なら一曲やってくれ!」
言いながらギターを渡してくる。
八幡「いや、無理だから。」
夏樹「ん?ギターじゃないのか?」
八幡「いや、ギターだが...それ持ち手逆じゃねぇか。」
夏樹「あっ、そうか......だったら今時間あるか?」
八幡「まぁ......大丈夫だが。」
夏樹「ならレッスンルーム行こうぜ!そこにあるから。」
八幡「まぁいいが...期待すんなよ?」
わかったよと言いながら歩き出すのでついて行く。相変わらず白坂をぶら下げて...
レッスンルームに着いた。......着いてしまった。......やりたくないよぅ。1人遊びの範疇だった為、小町以外に聞かれた事はない。恥ずかしいが諦めるか......
「あれ?八幡さんと夏樹さんに...小梅ちゃん?みんなでどうしたの?」
こっ......この声は!
夏樹「美嘉か?さっきハチと話しててな。一曲やってもらうんだ。」
美嘉「へ〜......ねっ!アタシもいい?」
夏樹「いいぜ。なっ!ハチ!」
八幡「......おう」
美嘉「やった♪早く入ろっ★」
おぅふ......観客が増えてしまった......帰りたいよぅ......と考えているうちに引き摺られて行き、セッティング完了。仕方ない!と気合を入れてチューニングを終わらせる。白坂?今は降りて美嘉の隣に座ってますよ?
夏樹「そうだ!歌いながらいけるか?」
えぇ......何でハードルあげますかねぇ......
八幡「たっ、多分......でもホント期待すんなよ?」
夏樹「じゃあ、頼む。」
はぁ......しゃぁない。......今ここにいるのは俺1人だ!ここは俺の部屋!恥ずかしがるものなど何もない!「わー!」と拍手をしている美嘉と白坂に気づかないフリをして演奏開始。......いざっ!
「〜〜〜〜〜〜♪」
あっ......なんか楽しくなってきた......
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
曲が終わる。
「「「「.....................」」」」
何でみんな無言なのん?夏樹はなんか考えてるし、美嘉は口抑えて真っ赤だし白坂はぼーとしてるし......まさか俺の後ろに何かいるのん⁉︎こっこわいよぉぉぉぉぉ......
夏樹「......いいな。」
2人が凄い勢いで首を縦に振っている。そんなに振ったら首取れちゃいますよ?
夏樹「今の曲は?」
八幡「あー......LOSERって曲だ。アルバム曲だな。どうだった?」
夏樹「いいね。気に入ったよ。」
八幡「そうか...今度CD持ってくるか?」
夏樹「いいのか?」
八幡「いいぞ。自分の好きなもんを気に入ってもらえるのは嬉しいしな。」
夏樹「サンキューな!それと......よかったらLIVE一緒にやんないか?」
八幡「.........は?」
夏樹「ライブハウスでたまにバンド仲間とやってるんだよ。そこで歌ってみないか?」
八幡「......いやいやいやいや!無理だから!俺溶けちゃうから!」
夏樹「溶けるってなんだよ...。ま、無理にとは言わないから、気が変わったら言ってくれ。」
八幡「...わかった。じゃ、そろそろ行くわ。」
夏樹「あぁ。今日はありがとな。そうだ!連絡先交換しておこうぜ!」
八幡「別に構わんが......ほい、頼む。」
そう言いつつ夏樹に携帯を渡す。...なんでそんなに驚いてるのん?
夏樹「よく他人に渡せるな...」
八幡「...連絡とるやつなんて限られてるしな。見られて困る物もない。あと登録の仕方がわからん。やってくれ。」
わかったよと苦笑いしながら登録する夏樹。わ、私も...と白坂が便乗してくる。あっ、携帯いじる時は手が出るんですね。終わった...と返される。
夏樹「またな、ハチ。」
八幡「......おう。」
さて、戻りますか。白坂をぶら下げ...えっ⁉︎?なんで?いつの間に⁉︎それと美嘉さん、真っ赤なお顔で固まってるけど大丈夫?風邪ですか?お大事にね!
翌日のPR。間も無く終業というタイミングで武内さんに呼ばれ資料を手に対峙している。......あぁ、秋の定例ライブか。
武内「比企谷さん。こちらの資料はご存知ですか?」
八幡「はい。以前一通り目は通しました。秋の定例ライブですよね?」
武内「はい。私もスタッフとして参加します。そこで、比企谷さんにも同行していただこうと思っています。」
八幡「......いいんですか?」
武内「はい。多少手伝っていただくとは思いますが基本は見学です。一番の目的は流れや雰囲気を内側から感じていただく事です。」
八幡「はぁ...でも何もわからないと思いますよ?」
武内「構いません。見ることも勉強になります。それに初めて見るからこそわかる事もあるかと思いますので。」
八幡「わかりました。同行させていただきます。」
武内「宜しくお願いします。あと、こちらを。」
1枚の封筒を渡される。えっ?何?手に取り確認する...‼︎‼︎
八幡「あの...これって!」
武内「当日のチケットになります。是非ご友人をお誘いください。」
八幡「えっ⁉︎いいんすか?...こんな、4枚も...」
武内「お持ちください。比企谷さんのご友人にも楽しんでいただきたいのです。」
八幡「......ありがとうございます。」
武内「では、以上となります。気を付けてお帰りください。」
八幡「はい。お先に失礼します。」
チケット4枚か...誰に渡すか...そもそもどうやって...
八幡「(平塚先生を頼るか...明日相談だな。)」
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八幡「失礼します。平塚先生は...「こっちだ比企谷。ついてきたまえ。」...うす。」
前回と同じ応接室に通された。ここなんか緊張するから嫌なんだが...仕方ないか。
平塚「で、相談とはなんだね?」
八幡「これなんですが...」
昨日の封筒を渡し「開けても?」と問われた為首肯で返す。
平塚「君はまたこんなレアなものを...」
八幡「だから相談してんすよ。俺が渡して変に疑われるのもアレですし。」
平塚「まあ、そうだな。それで、誰に渡せばいいのかね?」
よく分かってらっしゃる。
八幡「1枚は先生に。あとは小町と雪ノ下と由比ヶ浜ですかね?」
平塚「そうか......一色はどうする?」
八幡「まぁ...しょうがないじゃないですか。4枚しかないんすから。」
平塚「そうだな...では私の分は一色に渡そう。構わないかね?」
八幡「いいんすか?そうそう取れないライブなんでかなりレアっすよ?」
平塚「構わないさ。それにその日はな...友人の......くっ!結婚式があるんだ.....................」
「「..................」」
八幡「すんません。」
平塚「謝るな!余計に虚しくなる!.........はぁ、結婚したい。」
...............誰か早く貰ってあげて!いい人だから!「いいもん。比企谷に貰ってもらうもん。」と物騒な事を言っているが聞かなかったことにしよう。あ、帰ってきた...
平塚「さて、部室に行こうか。」
八幡「...うす」
道中先生と口裏を合わせておく。小町にはある程度昨日話したから問題ないだろう。そしてためらいなくノックをせず邪魔するぞーと扉を開ける。先生が。...これだよね?結婚できない理由。
雪ノ下「平塚先生、ノックを。」
平塚「悪い悪い。気をつけよう。」
八幡「...うす。」
雪ノ下「あら?比企谷君も来ていたのね?気づかなかったわ。」
由比ヶ浜「ヒッキー遅いし!何やってたの!」
八幡「...先生に呼ばれてたんだよ。」
雪ノ下「今度は何をやらかしたの?バイオテロかしら?」
八幡「何で俺が何かやった前提なの?何もしてないからね?しかもバイオテロって...菌なの?比企谷菌なの?」
雪ノ下「そんな事誰も言ってないじゃない。比企谷菌。」
八幡「言ってるじゃねぇか...はぁ、バイトの件だよ。一応定期的に報告をな。」
「そう。」と優しい笑みを浮かべる雪ノ下を横に一色が先生のご用件は?と聞いている。おい!お前が聞く事じゃないだろ!君も部外者だからね?
平塚「どうして君がそれを聞くのかね...。まぁいい。君達に渡したい物があってね、だからこうして来たのだよ。」
と言いつつ由比ヶ浜に封筒を渡す...
由比ヶ浜「えええええええええええええええ!」
うっうるせえ!
由比ヶ浜「先生これ!どうしたんですか⁉︎」
発狂する由比ヶ浜に驚く一色。首を傾げる雪ノ下に苦笑いの小町...何これカオス...
平塚「知人から頂いてね。私は都合が悪く行けないので君たちに譲ろうと思ってな。」
由一「「いいんですか⁉︎」」
平塚「構わんよ。楽しんできたまえ。」
由一「「ありがとうございます!」」
雪ノ下「ところでこれは何のチケットなのかしら?」
由比ヶ浜「えぇっ⁉︎ゆきのんしらないのっ⁉︎」
一色「346プロを知らないなんて...雪ノ下先輩ホントに知らないんですか?例えば...高垣楓とか?」
雪ノ下「その人は知っているわ。そう...彼女はそこに所属しているのね...」
由比ヶ浜「あとっ!城ヶ崎美嘉ちゃんとか!」
ぶっ!やっぱりか!由比ヶ浜は美嘉の事好きそうだもんな。こら小町!ニヤニヤするんじゃありません!
由比ヶ浜「あっ!でも4枚しかないよ?」
八幡「あー、俺は大丈夫だ。バイトがあるから行けん。お前たち4人で行ってきてくれ。」
一色「いいんですか?」
八幡「気にすんな。」
雪ノ下「比企谷君もこう言ってくれている事だし、私達4人で行きましょう。」
小由一「「「うん!(はい!)」」」
君たち嬉しそうですね...武内さんが言ってたことが少しわかるな。笑顔か...」
平塚「...比企谷。ちょっと来たまえ」
八幡「?はい。」
?何で呼ばれたのん?部室から少し離れて先生が問いかけてくる。
平塚「比企谷。さっき言った『笑顔』というのはどんな意味があるのかね?」
八幡「......声に出てました?」
平塚「あぁ。私にしか聞こえていないと思うがな。」
やらかした...まあいいか。
八幡「...プロデューサーの、俺がいるプロジェクトのコンセプトなんすよ。」
平塚「笑顔が...かね?」
八幡「はい。詳しくは言いませんけど。」
平塚「...そうか。君は変わったな。」
八幡「...そっすかね?」
平塚「ああ。それもいい方向にな。正直この時期にバイトをするのはどうかと思っていたが、君にとっていい事のようだ。」
八幡「...まぁ、そっすね。」
平塚「くくっ...ホントに変わったな。君の言葉を借りればいい笑顔をするようになった。今みたいなね。」
八幡「.........」
平塚「前にも行ったが何かあったら相談したまえ。ではな。」
八幡「.........うす」
ホントにあの人はどこまでかっこいいんだ...マジで俺が貰っちまうぞ。そんな事を考えながら一礼し部室へ戻る。ライブについて話している笑顔の彼女達。ほんの少しだが...本気でプロデューサーを目指してみようかと考えた。
定例ライブ当時。会場はさいたまハイパーアリーナ。今日は電車ではなく車できている。武内さんは渋い顔をしたが、呼んだメンバーが全員女性。且つ帰宅が22時を過ぎる為送り届けると説明すると渋々だが了承してくれた。ただし、今回だけですと叱られたが...。
会場入りし、武内さんに連れられ様々なところへの挨拶廻り。研修を思い出しながら辿々しくもこなしていく。つ...疲れる...。マッ缶を...俺にマッ缶をぉ!
武内「比企谷さん...大丈夫ですか?」
八幡「あっ、あひ。何とか。」
武内「次で最後になります。もう少しだけ頑張ってください。」
八幡「はっ、はい。すみません。」
では行きましょう。と最後の砦へと赴く。
...やっと終わったぁぁ!
武内「以上で挨拶廻りは終わります。時間まではお好きなところを見学して下さい。注意点としては腕章を外さない事。それと機材移動等をしていますので怪我や事故にお気をつけ下さい。」
八幡「あっはい。」
武内さんも行った事だし、まずは一休み。いざ自販機へ!
............マッ缶が無い、だと⁉︎なんて事だ...仕方ない。違うものを...ココアでいい...ガタン...は?俺押してないよ?何?何が起きたの?えっ?何この手!ホラー?ホラーなの⁉︎
「なーにさぼってんのっ♪」
誰だっ!こんな事したのは!いや、声でわかってますがね...
八幡「...何してんの?美嘉」
美嘉「ん〜?イタズラ?」
人差し指を口元に当てて首を傾げている...可愛いです。はぁ、と軽く溜息をつき商品を...ブラックじゃねぇか!まったくもう!とぼやきながらも小銭を自販機へ。
八幡「...どれだ?」
いいの?と聞かれたので早くしろと急かす。出てきた商品を取り横のベンチへ...様子がおかしい。
八幡「...なんかあったか?」
ビクッとするが返答はない。
八幡「......緊張してんのか?」
美嘉「..............うん。何回やってもこの時間は緊張しちゃう。」
八幡「そうか......」
多分俺には一生わからない事だろう。俺にできる事は何だろう...
八幡「緊張していいんじゃねぇの?」
美嘉「えっ?」
八幡「緊張するってことは...このライブを大事にしてるってことだろ?」
美嘉「うん!」
八幡「ならいいじゃねえか。緊張も含めて楽しんじまえ。それが出来んのはステージに立つお前達だけなんだからな。思いっきり楽しめ。」
美嘉「‼︎うんっ!アタシ全力で楽しむ!」
八幡「おう。小町も来るからな。そのまんまの...可愛くてカッコいい城ヶ崎美嘉を見せてやってくれ。」
美嘉「そのまんまのアタシ......わかった!もう大丈夫!頑張るから!だから......八幡さんも見ててね......」
八幡「...おう。行ってこい。」
美嘉「うんっ!行ってくる!アリガトッ★」
やっぱあいつはああじゃないとな。さて、もう少し見て回りますか。
...........ん〜。さっきからワタワタしてんな。なんでだ?...機材...衣装...行ったり来たりだな。あれじゃ効率悪いだろうに。なんて思うのは俺が動きたくないって考えるからか?まあいい。あとで武内さんに配置図見せて貰おう。
「あっ!」
ん?声の聞こえた方を向くと階段から何か転がってくる。俺の足元で止まった物を拾い上げ、持ち主と思われる女性の元へ。3人いるが誰だ?三者三様この言葉が1番しっくりくる。
一人は長い髪の一部を横で結び、毛先をふわっとさせた優しそうな女の子。
一人は黒髪ロングのストレート。カッコいいと可愛いを合わせたような女の子。
一人は打って変わってショートヘア。毛先が外に跳ねていて、いかにも元気そうな女の子。
色で表すならピンクと青とオレンジだな。などと考えながら階段を登りきり.........
八幡「あの......これ。」
??「すっすみません。拾っていただいて!ありがとうございます!」
八幡「あ、いや、気にしないでください。ではこ......」
ふと時計が目に入る。
八幡「やべっ‼︎」
??「(ビクッ)」
八幡「あっ、す、すみません。時間なんで失礼します!」
返事も待たずに走り出す。「あっ!」と後ろから聞こえるが気にしない。やべ〜!マジやべ〜!間に合えー!.........................
??「行っちゃった...」
現在.........公演中。
集合時間?間に合いましたよ?当たり前じゃないですか。開演後は武内さんの横で見学させてもらっている。すごい...とにかくすごい。一人一人必至になって...時には協力し、時には単独で。スタッフだけではない。アイドル達もそうだ。全員がこの瞬間に全力を出している。
八幡「(この中に...俺が入る)」
考えただけでも身震いする。俺に出来るのか?やっていけるのか?と思考が止まらない。
武内「比企谷さん、いかがですか?」
八幡「........あの.........」
言葉が出ない。
武内「大丈夫です。落ち着いて下さい。」
八幡「はい................その、圧倒されてます。」
武内「それは仕方のない事です。私も初めて見た時に同じ事を考えていました。」
八幡「でも...みんな綺麗っていうか...輝いて見えます。アイドルだけじゃなくて、スタッフの皆さんも。」
武内「はい。これを見て、感じていただきたかったので、今日はお連れしました。」
八幡「......ありがとうございます。」
そこからは無言だった。
ライブ翌日。昨日の報告書を書いている。そんな中疑問を解消させようと武内さんに確認する。
八幡「すみません武内さん。出来たらでいいんですが......昨日のライブ会場の見取り図というか、配置図って言うんすかね?あったら見せてもらえませんか?」
武内「構いませんが...何かありましたか?」
八幡「少し気になる点があったんで......」
武内「わかりました。宜しければ私もご一緒させていただけますか?」
八幡「あっ、はい。お願いします。」
ちひろ「何かあったんですか?」
武内「千川さんも同席していただけますか?」
ちひろ「?はい......大丈夫ですが...」
ちひろさんも席に座り、武内さんが持ってきてくれた配置図をありがとうございますと一声掛け受け取る。
八幡「...................ブツブツ..............................」
武ち「..........」
あの...と声をかけられ、ふと我に帰る。時計を見ると15分ほど経過していた。
八幡「いくつか確認したいんですが、いいですか?」
武内「どうぞ。」
八幡「まず、会場は毎年同じでしたよね?」
武内「はい。」
八幡「この配置はいつからですか?」
武内「最初からです。」
八幡「遅延や事故などは?」
武内「当初はありましたが、今はありません」
八幡「スタッフからの苦情は?」
武内「先の質問と同様です。」
八幡「.........ありがとうございます。」
ちひろ「あの...比企谷君?」
八幡「............すみません。俺が気付いただけでもかなりの改善点があります。」
武内「かなり......ですか?」
八幡「はい。軽く20箇所前後ですかね?改善すれば2〜3時間は削減出来るかと。」
武内「そこまでですか?」
ちひろ「私にはまったく...」
八幡「お2人はそれが当たり前になっているので、気付けないんだと思います。現場の新人スタッフならわかる人もいると思いますが、新人が何言ってるんだと一蹴されて終わりでしょう。」
武内「そうかもしれません。参考までになぜ気づけたか教えていただけますか?」
八幡「はい。それは......武内さんです。」
武内「?私、ですか?」
八幡「えぇ。武内さんは俺に『好きに見学してください』と言いました。なので言葉通り好きに見て周りした。」
ちひろ「......意味がよくわからないんですが...」
八幡「好きにってとこがポイントです。言い換えれば自由にですよね?そこなんですよ。俺はリラックスして見学できました。それこそ誰がどんな表情をしてるかまで観察できました。」
ちひろ「なるほど...」
八幡「そこで見えた...と言うか疑問に思いました。なので配置図を見せてもらったんです。」
武内「そうでしたか。では、比企谷さん。こちらに書き込んでいただいて構いませんので、説明していただいてよろしいですか?」
八幡「はい。では.................................................
.....................以上です。」
ちひろ「.........」
武内「......ありがとうございます。よくこれだけ気づけましたね。」
ちひろ「すごい...たしかにこれなら2〜3時間は削れます!しかもほかの会場でも応用が効きますよ!」
八幡「そっすか?その内誰か気づいたんじゃないですかね?」
ちひろ「その内でも誰かでもないんです!『今』、『比企谷君』が気付いた事に価値があるんです!自己評価が低いのは美徳と言われるかもしれませんが、低すぎたらただの嫌味です!もっと自分に自信を持ってください!」
武内「千川さんの言う通りです。比企谷さんを見ていると、ご自分に自信が持てないと見受けられます。ですが他からの評価ならどうでしょうか?まずは比企谷さんを評価する私たちを信じていただけないでしょうか?」
八幡「............わかりました。出来るかわかりませんが......やってみます。」
ちひろ「(過去に比企谷君に何があったの?)」
武内「(比企谷さんは過去に何かあったのでしょうか?マナー違反ですが先輩に聞いてみましょう...)」
武内「比企谷さん。報告書は結構です。いえ、それ以上の報告をいただけました。今日は上がっていただいて結構です。素晴らしい報告をありがとうございました。」
八幡「......はい。..........お先に失礼します。」
ちひろ「お疲れ様です♪」
比企谷さんが帰ったあと私と千川さんで話をしました。
武内「千川さん。少しよろしいですか?」
ちひろ「比企谷君の事......ですよね?」
武内「はい。千川さんはどう感じましたか?」
ちひろ「あまりにも自己評価が低すぎます。でも実際はすごく優秀です。知識がつけばおそらく私はすぐに追い抜かれると思っています。」
武内「私もほぼ同意見です。付け足すなら比企谷さんは私にはない観察能力を持っています。正直嫉妬してしまうくらいです。」
ちひろ「そうですね。ほぼとはその違いの事ですか?」
武内「いえ......自己評価の部分です。私の勘違いかもしれませんが、比企谷さんは自信をないものと考えている...もしくは自身が犠牲になればいいと考えているのではないでしょうか?」
ちひろ「......そうかもしれません。」
武内「比企谷さんは優秀です。ですがこのままでは.........」
ちひろ「はい。比企谷君は強すぎるくらいに強いですから......その反面が怖いです。」
武内「そうですね。.........マナー違反かもしれませんが、先輩に...比企谷さんのお母様か学校の平塚先生にお話を聞いてみようと思います。」
ちひろ「そっ、それはまずいですよ!」
武内「......覚悟の上です。......私は、比企谷さんを放っては置けません。」
ちひろ「.........はぁ、わかりました。知りませんよ?」