※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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マイエラ地方です。修道院、ドニの酒場の順に行きます。修道院の人のセリフなど、一部ゲームのセリフをそのまま使っています。ヤンガスの語りです。


ゼシカ強化計画その2

「きゃー! やったわ、エイト?」

「うん、やったね、ゼシカ。いい調子だよ!」

 

トラペッタで一泊してからマイエラ修道院に着くまで三日かかった。それはエイトの兄貴の「ゼシカ強化計画」が発動されたからだ。

嬢ちゃんは、トラペッタでスライム3匹をのしたところから始まり、俺たちがたどった道をなぞりながら戦って、数々の魔物を倒せるようになっていた。今は手強い暴れうしどりを倒したところだった。

 

「ゼシカ、いいよ。どんどんレベルも上がってる」

兄貴の言葉に、嬢ちゃんも嬉しそうだ。

俺ははっきり言って、嬢ちゃんは泣きべそかいて家に帰るかと思っていた。ところが、気の強さからなのか、半殺しの目にあってもなかなか音を上げねえ。たいしたもんだ。兄貴の目に狂いはなかった。意志の強いところが気に入った。女とバカにしていたところもあったが、俺の見当違いだった。

 

「嬢ちゃん、悪かったな。俺はあんたがさっさとうちへ帰るだろうと思ってた。力はねえが、兄さんの仇を討ちてえ、って意志の強さにゃ頭が下がるぜ」

「ヤンガス……。ありがとう。あたし、強くなりたいのよ。まだみんなの足引っ張ると思うけど、頑張る」

「うん、みんなで強くなろうね」

「エイトも遠慮なく戦闘命令してね。あたし、すぐカーッとなって、ついメラ出しちゃうから」

俺たちは笑った。

 

「いい雰囲気じゃ。トラペッタに一旦戻ったのは正解じゃった。ゼシカのレベル上げにも成功したようじゃな」

おっさんも上機嫌だ。嬢ちゃんが入隊してから今日までギスギスしていたのが、ようやく明るい雰囲気になっていた。

それから、俺個人的に大きく変わったことがあった。兄貴は嬢ちゃんの色気にようやく気づいたようで、あの胸元が目に入りちょくちょく顔を赤らめてらっしゃる。今までの俺なら激しく嫉妬していただろうが、それがねえんだ。兄貴も一人前の健康なトロデーン男子。女の一人や二人いたってかまわねえ。女に溺れるようじゃ漢(おとこ)じゃねえが、兄貴ならそこんとこ大丈夫、てな具合だ。もちろん、俺の兄貴への忠誠は揺らぐことはねえさ。

 

俺は新しく生まれ変わったような気持ちで、兄貴の行く先を見守ると誓った。ポルトリンクからの定期船でも、二人で楽しそうに話していたもんな。ちくしょう、お似合いじゃねえか。俺はマイエラ修道院から少し離れたところにおっさんの馬車を止める。おっさんは、「わしは寝るから後で起こしてくれ」と御者台から荷台にひょいと飛び移った。

 

俺は修道院てのは初めてだ。まったくもって関わりのねえ人生を送ってきたからな。女神さんてのを信じてないわけじゃねえが、信じてるかっていうと、わからねえ。だから、「帰依」する、って奴らの頭ん中や、気持ちがわからねえ。本当は行きたくねえところだ。

 

入り口を入るとそこは礼拝堂だった。天井も高く、落ち着かねえ。俺はなんとなく居心地が悪くて、兄貴の真後ろにくっついて歩く。兄貴や嬢ちゃんは平気な顔しておしゃべりしながらうろうろ探索なさる。いいんですかい? そんなとこのぞいたり、勝手に扉開けたりして……。

 

「なによ、マイエラ修道院はイケメンばっかりって言うけど、見たとこゴツいかショボいしかいないじゃない。エイトやサーベルト兄さんのほうが、よっぽどイケメンよ」

エイトの兄貴はイケメンと言われて頬を染めてらっしゃる。なんて可憐な……。確かに、ちょっと見渡したかぎりでは「イケメン」に属する奴ってのは見つからねえな。俺が言うのもナンだが……。偉丈夫の中での兄貴は、派手な花壇の片隅に咲く乙女ユリのようでがすよ……。

 

「三大聖地っていうわりには地味な建物ね。お坊様の他に騎士団がいるんだわ。あの人たち睨んできて怖くない?」

「俺は坊さんのほうが怖ええな。坊さんと山賊じゃ正反対だ」

「あれ、ヤンは『元』山賊でしょ? まだ怖いの?」

兄貴にからかわれて三人でゲラゲラ笑っていると参拝客に睨まれた。俺たちは慌てて口を押さえ、顔を見合わせる。

 

「……なんか、荘厳って言うより、殺風景ね」

礼拝堂の奥から表へ出ると、そこは噴水のある中庭だった。

「確かにね。もの哀しい雰囲気があるなあ、この中庭」

俺たちは灰色の石造りの中庭を回った。

 

「ねえ、あそこに扉があるよ。あの奥何かな。入れるのか聞いてみようよ」

でかい外扉の前に、がっちりとしたおっかねえツラの聖堂騎士団員が二人立っていた。

ずいぶんと威張ってやがる。話しかけたエイトの兄貴の肩を、来るなとばかりに小突きやがった。兄貴に何をしやがるッ!

その時だ、建物の二階の窓が開き、目つきの鋭い男が見下ろしてきた。さっきまで威張っていた見張りの騎士団員が膝をついて敬礼する。

 

「……だれも入れるなとは命じたが、手荒な真似をしろとは言っていない。我が聖堂騎士団の評判を落とすな」

そう言われて、「手荒な真似」をした団員は、でかい身体をちょっぴり小さくまるめた。二階の男は兄貴の方を見て話し続ける。

「……私の部下が乱暴を働いたようですまない。だが、よそ者は問題を起こしがちだ」

詫びを入れているのか、脅してるのか微妙な言い方だ。偉そうに。気に入らねえ。

「この修道院を守る我々としては見ず知らずの旅人をやすやすと通すわけにはゆかぬのだよ」

そら、そうだ。しかし、おっかねえ男だ。眼力が普通じゃねえ。

「ただでさえ内部の問題に手を焼いているというのに……いや、話がそれたな」

内部問題を抱えている? こりゃ、うっかりな発言じゃねえのか?

「この建物は修道士の宿舎。君たちには無縁の場所ではないかね? さあ行くがいい。部下たちは血の気が多い。次は私も止められるかどうかわからんしな」

おいおい、修道院てなあそんなに物騒なところなのか? 山賊暮らしと大差ねえじゃねえか。

二階の男はパチンと指を鳴らし、騎士服をはためかせながら去って行った。なんなんだ、イヤミな奴。

 

「せーどーきしだんてそんなに偉いのかしらね」

ゼシカの嬢ちゃんに激しく同意だ。全く、こんなのに関わりたくはねえ、さっさと……。

 

「お前たちのせいで、団長殿に叱られたではないか、あっちへ行け!」

エイトの兄貴は懲りずに見張りに話しかけ、とうとうつるつる頭に叱られてしまった。兄貴はくすくす笑いながら、行こうか、と俺たちを促しなさった。

 

「ねえ、エイト、何がおかしいのよ?」

「だって、あんなに威張ってたのに、あの人……団長さんなんだね、出てきたらとたんにおろおろしちゃって。あの団長さん、よっぽど厳しいんだね」

「おっかなそうな男でがす。目つきが鋭かったでげすよ」

「そう? 緑のきれいな目だったよね。あの団長さん、どんな人か見当つかないけど、騎士団の人たちが子供っぽいんだよ」

さすが兄貴。あんなおっかねえ男を恐れないなんて。おまけに強面の騎士団員を子供っぽいなんて。まあ、童顔の兄貴にこんなこと言われたら、あいつら真っ赤になって怒るだろうな。

 

「やだ、ヤンガスまで、何がおかしいのよ。変なの。早くドニってとこに行きましょ。今日はベッドで眠りたいわ」

「そうだね。なにか武器とか防具買えるかもしれないし、ヤンも飲みたいでしょ。酒場も活気があるみたいだよ。今日は僕も行ってみようかな。ゼシカも行かない?」

兄貴と酒場で? 俺はまだ飲んでもいないのに嬉しくて浮かれてしまった。ゼシカの嬢ちゃんも嬉しそうだ。

 

 

マイエラ修道院に参拝に訪れる者は、ほとんどがこの近くのドニという町に滞在する。小さい町だが、とりあえずなんでもそろっているらしい。もっとも、観光客だけでなく、マイエラの騎士団員も出入りしているって話だ。地元密着型聖地なんだな、ここは。

ドニへの道はほぼ一本道で、兄貴でも迷うことなく行くことができた。嬢ちゃんもだいぶムチ使いに慣れてきて、魔物退治も楽になった。

兄貴と嬢ちゃんは連れだって前を歩く。なんだか熱心に話している……。いい雰囲気だ……。仕方ねえ、俺は兄貴の後ろを守るのが仕事だ。兄貴の色恋沙汰に首を突っ込むつもりはねえよ……。

宿を取るときはいつも嬢ちゃんが一人部屋、兄貴と俺は大部屋だ。今日は二人部屋をとって、兄貴と嬢ちゃんを二人きりにさせてやるかな……。

 

「あら、ヤンガス、どうしたの? 泣いてるの?」

ドニの入り口で兄貴と嬢ちゃんが振り返った。

「あ、いや、目に砂が……」

俺は泣いていたのか。やっぱり寂しいんだろうな。

 

「それで、ヤンはどっちがいい?」

「はい?」

エイトの兄貴とゼシカの嬢ちゃんは二人とも腰に手をあてて俺の返事を待っている。兄貴と嬢ちゃんとどっちがいいかだったら、兄貴に決まってるが、……そんな話じゃねえな。

 

「だ~か~ら~、三人で酒場に行くか、王さまの分も買って、外で飲むか、どっちがいいかって聞いてるでしょ?」

ああ、そういうことか。それは、まあ、どっちでもいいことだ。兄貴と一緒に盃を傾けられれば……。俺が黙っているもんだから、兄貴と嬢ちゃんは話の続きに戻る。

「たまには三人で酒場に行こうって言ったんだけど、ゼシカが、王がかわいそうだって言うんだよ」

「そうよ、姫さまだって、あたしたちと一緒のほうがいいでしょ」

「だから、いつも一緒にいるんだから、今日くらいみんなでさ」

「だから、みんなって言ったら王さまも姫さまも、ってことよ。夜は宿をとるんだから、お食事くらいは一緒のほうが……」

「でも、新しい町に来た時くらいはさ、町の様子も知りたいし……」

「だから、それは食事が済んだらでいいじゃないの……」

「……でもさ、それじゃ夜おそくになっちゃうし、飲んだら即寝のヤンは置いていくわけ?」

 

トロデのおっさんが「いいかげんにせい!」と怒鳴りつけるまで、言い争いは続いた。嬢ちゃんの強化計画は、無事に成功したってことだよな。

 




三人でいいパーティーになってきた話でした。R-18設定ですので、どの宿屋の仕様も小部屋があることになっています。次はククールと会います。
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