※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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ククールが仲間になります。ククールは、エイトのことを「リーダー」、ヤンガスのことを「トゲトゲ」、ゼシカのことをときどき「ハニー」と呼びます。イベントの流れを含めてゼシカが語ります。


ククールがなかまになった

悲しみの雨が降り続く。

憎いドルマゲスがすぐそばにいたというのに、あたしたちは何もできなかった。

 

「オディロ院長様、助けられなかった」

思わずもらした言葉に、エイトが優しく肩を抱いてくれた。

ヤンガスも涙をこらえて天を仰ぐ。

 

ドニでククールと知り合ってから、短い間にいろいろなことが起きた。無理やり持たされた指輪を返しに行ったら、まがまがしい気配がするから院長の館へ行って見てきてくれって言う。でも院長の館には団員が見張っていて入れてくれない。ククールの言う「まがまがしい気」はこれは間違いなくドルマゲスだと思ったあたしたちは、ククールに言われた通り旧修道院跡地を通って院長の館に行った。でもそこであのイヤミな騎士団長に指輪ドロボウとか院長さま暗殺とかの濡れ衣を着せられて修道院の地下牢へ。そしてよくわからないまま、ククールに牢から出してもらった。

その後よ。院長様の館がゴウゴウと音を立てて燃えて……。ククールは一目散に走って行った。それは間違いなくドルマゲスの仕業。院長の館では、ドルマゲスとオディロ院長さまが対峙していた。騎士団員たちは、みんなドルマゲスにやられ、院長様をお守りすることができない状態だった。

ドルマゲスは先にトロデ王を狙った。あたしたちは金縛りにあったように、まったく動けずにいた。そんな中、オディロ院長さまだけがトロデ王を助けに……。投げつけられた杖は、トロデ王をかばった院長様の命を奪った。

あいつは気味の悪い笑いを残し、月の方へ消えて行った。そう、文字通り、消えた。あいつは空を飛べる。

 

翌朝とり行われた葬儀にあたしたちも参列させてもらっている。怖い団長さんもククールも、他の騎士団の人も、修道士たちが見守る中、院長様は荼毘に付された。鎮魂の鐘が鳴り渡り、皆のすすり泣く声を優しく隠している。

 

「もう遅いから、泊まっていってくれ」

葬儀の片付けが終わるのを見守っていたあたしたちに、ククールが声をかける。

男性ばかりの修道院に泊まるなんて変な感じがするけれど、来客用の部屋があるのね。

ククールは、あたしたちを案内してくれた。その間中、無言だった。ククールって、わからない。院長さまのことや、団長さんのこととなると、なんだか真剣な様子なのよ。ドニの酒場でペラペラしゃべっていたククールとは大違い。始めはただの軟派ケーハク男だと思っていたけれど、この一連の騒ぎのなかで感じたのは、彼がものすごくいろんなことを考えて行動してる人なんじゃないかってこと。特に団長さんに関することでは、不自然なくらいピリピリして。

 

「明日、ゆっくり寝てていいぜ。適当な時間に起こしに来る」

ククールはうつむいたまま「いろいろありがとうな」と言い、静かに扉を閉めた。

エイトもヤンガスも、もう何も話さない。あたしも何も言えなかった。ただ、悔しくて、情けなくて。ベッドに入ってもなかなか寝つけない。夜通し鳴り響く鐘に答えるように、ごめんなさい、ごめんなさい、と心の中で繰り返した。

 

 

そして夜が明け、あたしたちは騎士団長と面会した。あたしたちを起こしに来たククールもいて。あいつ……二階からイヤミのヤツが、口だけだけど、低姿勢を見せている。いろいろ言いたいことはあったけど、もうどうでもいい。あたしたちの嫌疑も晴れたことだし、さあ、さよなら、と思ったら、あいつはとんでもないことを申し入れてきた。

あいつ……二階からイヤミ団長が、世界地図とともに、ククールを押し付けてきたの。

イヤミは「ククールをどうぞよろしく」とか澄まして言っちゃって。それは、確かに人数が多い方がいいけど……。ククールは、さんざん文句言ってたけど、お兄さんでもある団長には逆らえないみたいで、あっさり仲間に加わった。

 

「……よう。まあそういうわけだ。オレも旅に加えてもらうぜ」

ククールはわざとらしくポーズ決めて、ニヤニヤしている。

「ゼシカ。これからオレは片時も離れず君を守るよ。君だけを守る騎士になる」

「はいはい。どうもありがとうございますー」

まったく、なんて軽々しい人なのかしら。やっぱりただのケーハク男ね。

 

それよりなんなのよ、この展開。あたしは、昨日の出来事をまだ自分の中で消化しきれていないのに、どんどん状況が変わることにちょっと気持ちがついていけてなかった。

ヤンガスも気に入らないような目つきでククールを見ている。エイトに「いいんでがすか? エイトの兄貴の許可もなく勝手に入ってきて……」なんて言って。ホントよね、まったく。誰もいいなんて言ってないのに。エイトもずっと困った顔をしている。まあ、目の前で院長さまを殺されたんですもの。かたき討ちはしたいわよね。百歩譲ってそれは分かるけど。騎士団なんだから、それこそ自分たちで討伐隊を組めばいいのよ。なのにあの団長、人手不足だとか言って、このめんどくさい赤い弟を追い出したいだけなんじゃないの。

実際、なーんかワケありなこのきょうだい。見た目も性格もも全然違うし、いつもいがみ合ってる。なんなのかしら。知りたくもないけど。

 

マイエラ修道院を出て、あたしたちはドニへ向かうことに。赤い騎士服のククールが「ドニの子猫ちゃんたちに挨拶させてくれ」って言うから。

まあ、これがあきれたことに、あっちの女の子、こっちのお姉さまとべたべたいちゃいちゃ別れを惜しんじゃって! あたしの隣でヤンガスがふるふる震えていた。

「軟派野郎! ぶん殴ってやりてえ!」

「そうよね。いくら修道院の暮らしがきゅうくつで飽きてたからって、オディロ院長さまが亡くなったばかりなのに……不謹慎じゃない?」

「ホントにきゅうくつな暮らしだったのかわからねえぜ。こんなにたくさんの知り合いがいるんだ。しょっちゅうハネ伸ばしてたにちげえねえ」

 

やっとあたしたち三人でいいパーティーになれたと思ってたのに。嫌な予感がするわ。それに、エイトがおろおろしている。エイトったら、ククールに会ってからずっとこんな調子なのよね。心配だわ。

 

「ね、これからどうする? ヤン、行きたいところある?」

「とにもかくにもククールがどの程度腕が立つのか。そこらへんを見極めねえといけません」

エイトとヤンガスがそんなことを話していると、ようやく子猫ちゃんたちへの挨拶が済んだのか、ククールがこちらへ歩いてくる。

 

「そうだね。地図もらったことだし、ちょっと探したいものもあるから、まず近くを探索してみようか。あっ、ほらこの川の先、行かれそうだよ?」

「おお、アスカンタだな」

赤いのがエイトの手の地図をのぞきこむ。エイトはちょっと身体を引き気味に赤いのを避けた。ヤンガスも睨んでる。

 

「あ、あの、ククール? 道わかるの?」

「道? アスカンタなんて一本道だし、この地図見て行きゃ間違いないさ。迷路でもなんでもないんだから。それより、修道院跡地、どうだった? 迷わなかったか?」

「え? ああ、なんとかね……」

赤いのはニヤニヤしてエイトの肩に手をかける。

エイトが困ったように曖昧に返事をした。ヤンガスは黙ったまま。あたしも何か言うつもりはない。

 

「えっと、じゃあ、ククールの並び順は……どうしよう? レベルいくつ?」

「ああ、騎士団レベルは80だけど、旅人レベルは12だな。スキルもリセットされちまったし」

そっか、スキルって人それぞれなのね。ククールはあれでもお坊さまだから、魔法の力が強いみたい。

 

「おもしろいシステムよね」

「うん。僕は、お城を出たら兵士レベル50から旅人レベル1になってた。ヤンも旅人レベル1になってたよね」

「そうでがす。山賊86だったのに」

「へえ! あたしはそんなの意識したことなかったなあ。お母さんなら知ってるかしら」

サーベルト兄さんは魔法戦士としてきたえてたから剣のスキルは高かったわ。

 

「アルバートレベルとか、リーザスレベルじゃねえのかい? あっ、嬢ちゃんはお屋敷のお嬢様だからお嬢様レベル?」

「ヤン、違うよ。ムチ持ってるからさ、女王様レベルじゃない?」

「やあね、そんなのないでしょ」

あたしたちは笑った。ふと横を見ると会話に入れない赤い人がいる。エイトはさっと話題を戻した。

 

「あの、ごめん、なんの話だっけ? そうだ、ククールの場所は……」

「兄貴、嬢ちゃん、あっし、ククールでどうでがす?」

「うーん、ゼシカは後ろがよさそう」

「えっ?」

ヤンガスがなぜか赤くなる。

 

「じゃあ、エイト、赤い人、ヤンガス、あたしは?」

「うーん、ヤンはやっぱり僕の近くの方がやりやすいな」

「そ、そうでがすか?」

ヤンガスが更に赤くなる。

 

「オレのことは気にしないでくれ。先頭でもいいぜ」

「うーん。僕の後ろはヤンだし、ゼシカは後ろがいいし、ククールはどっちでも?」

ヤンガスがふらついている!エイトはそんなヤンガスを無視して続けた。

 

「ククールはまだHPが低いから……よし! 僕、ヤン、ククール、ゼシカだ」

「いや、トゲトゲ、ゼシカ、リーダー、オレだ。……それならみんな前が見える」

それって背の順?

「ダメか?」

「ダメ。僕は前だ。そしてヤンは僕の後ろだ」

あ~あ、ヤンガスが倒れちゃった。

 

ヤンガスの貧血が治るまで、あたしたちは並び順でもめた。で、結局「エイト、ヤンガス、あたし、ククール」の順に決まった。

この並び順でいいかどうか、マイエラ地方からアスカンタに向かう道のりで宝箱なんかを探しながら進んだ。そして、ヤンガスが心配していたククールの腕前だけど、まったく問題ないこともわかった。

 

ククールの剣さばきは不思議だった。強く振り出していないのに、力がある。サーベルト兄さんの立ち回りに似ている。優雅な動き……それなのに与えるダメージは大きくて、空を走る剣は月の光を一瞬映して残像を作る……。

 

「ゼシカ?」

「えっ? 何、エイト」

ああびっくりした! ホント、エイトったらあたしがサーベルト兄さんのことを考えていると必ず声かけるんだもの。

 

「よそ見してるとまともに食らうよ。よけられたらよけてね。残りHPも気をつけて。僕のホイミが間に合わなかったら、薬草使うんだよ」

「ええ、わかったわ。ごめんなさい」

エイトは優しく微笑んで、また前を向いた。すぐに表情は険しくなる。隣のヤンガスもテンションためてる。魔物と戦っている最中に、集中切らしてちゃ駄目よね。あたしは、どうしよう。薬草つかうか攻撃するか。隣のククールはヤンガスにホイミをかけている。ああ、この人も回復呪文使えるのね。あたしは……攻撃しよう。テンション溜めて。あたしだってやらなくちゃ。今回の敵は数が多い。アスカンタ近くになって急に強いのが増えた気がする……・

 

!!!

 

 

……遠くで声がする。それからゴールドを数える音……。

 

「……カ、……ゼシカ?」

あたし?

 

「急に起き上がっちゃ駄目だ」

「ククール?」

「やっと名前で呼んでくれたね、ハニー」

ここは……教会?

 

「あたし、まさか棺おけだった?」

「すまなかったね。オレのホイミが間に合わなかった。テンションためてたから攻撃した後で大丈夫だと思って」

「あ、みんなは?」

「いるよ。化け物王さまと話してる。今日はここに泊まるって。川沿いの教会だ」

 




ゲーム進行に沿っているので、レベルやスキルのシステムも導入しています。次は川沿いの教会イベント後からのお話です。
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