※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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水晶玉を探しに、トラペッタの町から洞窟へ向かいます。ヤンガスの語りです。


初めてのおつかい(その1)

トラペッタに朝が訪れる。

俺は朝が苦手だ。もっと言えば、お天道さんが苦手だ。だが、エイトの兄貴は早起きだ。仕事するには明るいうちがいいと、今朝もはよから草原に出なさる。

 

「気持ちのいい朝だね。こんないいお天気なら、魔物はピクニックでもしてるかな? 洞窟へ着くまでに誰にも会わなければいいね」

無防備なエイトの兄貴は、それこそピクニックに来たように、楽しそうにずんずん先へ進みなさる。

 

おっと、話がまた飛んじまってるな。俺たちは「人探し」の旅をしている。なのになぜ、俺たちが洞窟へ行こうとしているか、だ。

俺たちが探しているのはドルマゲスという名の道化師だ。そいつのせいでトロデーン城は魔法にかかり、王はへんてこな緑の魔物に、麗しのお姫さんは白馬に姿を変えられた。城の人々はみんな石にされちまった。……たった一人、エイトの兄貴を除いて。

エイトの兄貴が魔法にかからなかった理由は分からないが、とにかく、術をかけやがったドルマゲスをとっつかまえて術をとかせにゃならねえ。

で、そのドルマゲスだが、トロデーンに魔法をかけた後トンズラしたらしく、姿が見えない。ヤツには魔法の師匠がいて、そいつ……マスター何とかいうおっさんに会ってみようってんで住まいのあるトラペッタに来ているんだが、どうもそのおっさんは火事で焼け死んでしまったという……。気の毒なことだ。

町の人間もドルマゲスの姿は見てねえっていうし、じゃあもうこの町には用がないと思っていたら、妙なお使いを頼まれてしまった。それが洞窟へ行って水晶玉を取って来いというもの。それがあればドルマゲスの行方が占える、というのだ。

 

何でか知らねえが、占い師がその洞窟に水晶玉を捨てちまったってんだから、迷惑な話だ。そんな中途半端な占いに頼らなくてもいいのに、エイトの兄貴の城の王であるトロデのおっさんが乗り気になっちまったからかなわねえ。水晶玉の依頼主が占い師のおっさんの娘だからって全く……。『うちのミーティアと同じ年頃の娘が困っておるのだ!』とかなんとか言っちゃって……。

 

「待ってくだせえ!」

俺は今にもスキップしそうな兄貴を止めた。

 

 

「なに? ヤン、どうかしたの?」

はあ……、「の?」のところで小首をかしげるのは勘弁してくだせえ。起き抜けの血液は、ある一か所にとどまってますから。朝っぱらから貧血になっちまいやす。

 

「あ、いや、いくらピクニック日和でも、ピクニックの嫌いな魔物がいきなり襲ってくるともかぎりやせん。ここはひとつ、奇襲に慣れたあっしが先を歩かせていただくでげすよ」

「そう? ヤンがそう言うなら、きっとその方がいいんだろうね。ヤンは強いから」

 

エイトの兄貴は目を細めて微笑み、素直に同意して下さった。任せて下せえ、エイトの兄貴にゃ指一本、触手一本触れさせやしねえ。

 

と、我ながらいい作戦だったはず。しかし、いざ歩き出してみるとまずいことが二つあることがわかった。

一つは襲ってくる魔物のこと。俺が先頭を歩き出してからというもの、前より強い魔物が殺気立って襲ってきやがるんだ。経験値が大きく上がるからいいのだが、薬草がすぐに底をつく。で、町に戻って出直すことになり、ちっとも進まねえんだ。

もう一つはエイトの兄貴だ。ことあるごとにあっちこっちに行きたがりなさる……。

「あっ、待ってヤン、あっちに宝箱が見えるよ」に始まり、「あの花は何かな、姫に差し上げたい」、「わあ、可愛い鳥だよ!」、あげくの果てに「あれ! 変な小屋が見えるよ、行ってみようよ」……てな具合だ。あんまり熱心に行きたがりなさるから、その変な小屋に向かえば、途中とんでもなく強い魔物に出くわし、命からがら逃げる羽目に。

 

「ヤン、ごめん。僕が行きたいなんて言ったから。こんなんことになって。でも、どうしても行きたいんだ。あの小屋に!」

トラペッタに戻り、広場で休息をとった俺たち。エイトの兄貴はまっすぐ俺の目を捕らえておっしゃる。……ああ、何もかも吸い込まれそうな綺麗な瞳……。俺はあの小屋に嫉妬すら覚えた。

 

「エイトの兄貴、お言葉を返すようですが、今のあっしらのレベルじゃあの小屋までは無理でがす。もう少し経験を積んでからにしやしょう。このヤンガス、必ずお供いたしやす」

そう言った俺に、エイトの兄貴は「うん、わかった、ヤンの言うとおりだよ、ありがとう」とおっしゃって、傷を受けた俺の肩を優しく撫でてくださった。そのぬくもりは傷を癒し、俺の血流ポンプを高速回転させた。

 

俺たちは買えるだけの薬草と毒消し草を買い、また草原に戻った。

休憩した甲斐あって、さっきよりサクサクと敵を倒せる。そして兄貴も、あっちへ行こう、こっちへ行こうとおっしゃらなくなった。これはいい傾向だと思ったんだが、しばらくすると、ちっともよくなかったことがわかった。なぜなら、一人でこっそり離れ、花やら牛やらの方へ行っちまいなさるんだ。

 

「兄貴、お願いですから勝手に行かねえでくだせえ」

俺はやんわりと進言したつもりだったが、エイトの兄貴ときたら、いたずらっ子が頑固ジジイに叱咤されたかと思うほどにしょんぼりと肩を落としなさる。そのお姿に、俺は自分が「樽しょって町内10周走る」お仕置きを言い渡した頑固ジジイの姿とリンクした。

 

「……あ、いや、もし離れている時に強い魔物に出くわしたらあぶねえでげすし、宝箱を見つけたときは真っ先に兄貴にお伝えしたいんでがす」

エイトの兄貴は「うん、わかった、そうだよね」と、伏せていた顔を上げなさる。普段は意志の強そうな眉が少し下がり、黒い瞳は憂いを含んで遠慮がちに空を仰ぎなさった。

俺はいつまでもその愛らしいお姿を見ていたかったが、身体の中心を押えなくてはならない状態になったので、また草原を歩き出した。

……しかし、それでもだめだった。今までで一番よくない。なぜならエイトの兄貴にやる気がない。すっかり意気消沈されてらっしゃる。

 

「困ったのう。エイトがあれでは戦力が落ちる。お前さんだけでも魔物を倒すことはできるじゃろうが、それではあまりに非効率的じゃ」

トロデのおっさんまでこんな心配をするので、この日はもう洞窟をあきらめ、早めに宿で休むことにした。

 

エイトの兄貴はよっぽどお疲れになったんだろう、シャワーを浴びると、ろくな身支度もせず、半濡れの状態でベッドに倒れこみなさった。

なんて色っぽいお姿……。万が一兄貴が俺、いや暴漢に襲われてしまったら!! 俺は、いろいろな意味のまちがいを恐れ、外からしっかりと鍵をかけた。そのまま俺は宿を抜け出し、酒を買って野宿しているトロデのおっさんのところへ行った。

 




洞窟までぜんぜん行かれませんでした。次回に続きます。エイトさんはお城の外は知らなかったのでちょっぴりはしゃいでいます。ヤンガスがエロオヤジですみません。
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