※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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ゼシカ、ブラコン卒業? ゼシカの語りです。


ゼシカ・15歳

ゴルドの一件でヤンガスの誤解を解くのに手間取ったけど、あたしたちはなんとか予定通りベルガラックに入った。

 

「おお! すげえな、ベルガラック! よおし、トゲトゲ、今夜は飲むぞ!」

「おう!」

さっきまでククールをぶちのめしかねない形相だったヤンガスも、立派な酒場を見るなり機嫌を良くした。

 

あたしは、ベルガラックのカジノのワケあり兄妹のことを聞いてから、自分でもバカみたいと自覚できるほど落ち込んでいる。ククールもヤンガスもそんなあたしを気遣って、そっとしてくれているのが申し訳ない。ヤンガスなんて「エイトの兄貴」って言葉さえ言わない。今もククールにくっついてさっさと酒場に行ってしまった。今、あたしとエイトは、噴水の前に座って、沈み始めた夕陽を見つめている。

 

「ゼシカ?」

エイトはいつだって優しい。いたわるように声をかけてくれる。

「あの、エイト? みんなと行かなくて良かったの?」

「うん、いいよ。なんか疲れちゃったし。……ギャリングさんもやられちゃったんだね」

「そうね」

そうだ、あたしたちはドルマゲスを追ってるんだ。センチメンタルな気分に浸ってる場合じゃない。

「闇の遺跡に行ってみなきゃね」

「うん」

エイトは少し目を細めて優しく頷く。本当に優しい、エイト。エイトのそばにいると安心する」

 

「ククール……ね」

「えっ?」

あたしはドキリとした。ククールがあたしに告白したのを知ってるの? 胸の鼓動がどんどん速まる。

「ククール、君を心配してるよ」

「……」

「僕はお城の呪いをときたい、ゼシカはサーベルトさんの仇を討ちたい、ククールはオディロ院長さまの……」

「あたしは……」

言いかけたあたしをさえぎってエイトは言う。

「ドルマゲスは悪人だ。フォーグとユッケだって、ギャリングさんの仇を討ちたいはず。でも、彼らには街を守る仕事がある。動けるのは僕らだけだ」

「ええ」

 

ドルマゲスを追うこの旅、もう後戻りできないところまで来ている。怖気づいた訳じゃない……そう自分に言い聞かせても、時々感じてしまう不安で震えることがある。兄さんの敵討ちをしたいっていう強い思いに変わりはない。でも、何人もの大人を手にかけてきたドルマゲスを、本当に倒せるのかしら……。あいつを倒したって兄さんは帰ってこない。それは重々承知しているのに。倒せば兄さんの死を受け入れられるんじゃないかって思う。だけど、どこかに兄さんの死を認めたくないあたしもいて。エイトにはお見通しなんだろう。あたしのそんな不安のさざ波を感じとって、ゆっくりと消してくれようとする。

 

「ドルマゲスを倒したら、トロデーン城へ遊びに来てね。王も喜んでもてなしてくれるはず。ゼシカなら姫と気が合うだろうし。姫は女の子の友だち少ないんだ。メダル王女くらいで」

「うん」

「サーベルトさんへ報告する時は僕らみんなで行こう。リーザス村のお母さんのところにも」

「うん」

「ゲルダさんのところにもね」

「うん」

「修道院にも」

「そうね」

ククールが帰っちゃう。あのイヤミのところへ。またあのギスギスした修道院での暮らしがククールを閉じ込めるんだわ。

 

「旅が終わっても、僕らは仲間だよ。いつまでも」

「うん」

そう、変わらない生活が待ってるだけ。お母さんに叱られて、礼儀作法だのをしつこく勉強させられて、間抜けなラグサットと結婚させられて。てゆーか、あれはもう終わったっけ……。

 

「だから、今は旅を楽しもう? 思いきり。僕らの持てる力の全てを使って強くなろう。ドルマゲスを倒したっていう結果だけが僕らに残るんじゃない。旅先で出会った人たちや、いろんな経験は僕らの糧になるはず」

そうだ、兄さんが戻って来ないからってドルマゲスを倒しても無意味だなんて、それこそバカげてる。あたしたちは知り合って、仲間になって、辛い戦いをして、強くなってる。たくさんの人と出会って……。これからのことなんて、あいつを倒したあとで考えればいい。

 

「あたし、自分のことばかり考えてた。兄さんのいないリーザス村から逃げてるだけなのかも。……ね、またリーザスに泊まってね。お母さんにきちんと報告しなきゃ。戦いのことを話しても聞いてくれないけど、みんなのことなら喜んで聞いてくれるのよ。王さまとも仲良くなったし。……お母さん、あんまり村から出ないから、みんな終わったら、一緒にトロデーンへ行くわ」

「ありがとう。是非来てね」

いつの間にかほとんど沈んだ夕陽。太陽が最後に見せる輝きは今日一日がんばったあたしたちへのご褒美かな。それとも明日へのエールなのか。

 

「ヤンガスとククールの様子見に行かない? あたしちょっとだけ飲みたいな」

あたしは立ち上がってぐんと腕を伸ばした。エイトと話して何だかすっきりした。本当にエイトって……ううん、兄さんに似てるけど、もっと先を見てる。あたしなんかじゃ見えない先の先を。エイトについていけば間違いない。……道はしょっちゅう間違えるけど。ふふっ。

 

「ゼシカ、何? 僕なんかおかしい?」

「ううん、何でもない!」

 

 

バーではヤンガスとククールが大声で笑っていた。二人ともかなり酔っぱらっているみたい。さすがのエイトもひるんで、「他人の振りしよう」と言って笑った。

あたしたちは、二人から一番遠い席についた。

 

「……明日、闇の遺跡の様子を見に行こう」

エイトの決意にあたしもうなずく。

「そのあと、サザンビークへ行く」

「えっ?」

「ククールもゼシカも苦しい思いを背負って旅してるんだ。僕だって試練に立ち向かわなきゃ」

エイト……なんて強いの。でもエイトの背負っているものは複雑すぎるし重すぎる。

 

「あたしも、エイトの助けになりたい」

「え?」

「いつも励ましてもらってばっかりだもん。あたしだって役に立ちたい」

「何言ってるのゼシカ、いつだって僕らはゼシカを頼りにしてるんだよ」

「でもあたし……、守備力弱いし、回復できないし」

「守備力弱いのは仕方がないよ。女の子だもん。でもククールと大して違わないよ。それに、回復術は覚えた人が使えばいいんだよ。ゼシカは魔力が強いから、どんどん攻撃してくれていいんだよ。ムチだってどんどん強くなってる」

エイトは、双竜打ちなんか怖いくらいだよ、と、小声で付け加えた。

「そっか、それぞれ得意なことすればいいのよね。エイト、あたし実はホイミすらできないことに焦ってたの。このまま覚えられなくてももう気にしないことにするわ。それに、もっとすごい攻撃呪文使えるようになるかも知れないしね」

ムチももっと怖くなるかもよ、と、あたしもウインクしてみせた。

 

バーにはどんどんお客さんが入ってくる。カジノが閉鎖中だから、みんなこっちに集中しちゃうのよね。バニーガールのショーなんかもあって、にやけたおっさん連中がかぶりつきの位置を確保に走る。

みんな明るくて楽しそう。道化師ドルマゲスのことは今は考えたくないんでしょうね……。あたしだって、何もなければ、エイトとの時間を心から楽しめたかもしれないけど。でもドルマゲスのことがなければ、あたしたちはおそらく永遠にめぐり会わなかった。……複雑だわ。

 

エイトはあたしのグラスやお皿の空き具合まで気にかけてくれて、そろそろデザートいく? なんて声をかけてくれる。エイトとこうして笑い合って食事することに、ずっと憧れてた。目の前の笑顔があたしだけに向けられていることが嬉しい。でも、夢のような時間はどんどん過ぎていく。

 

「あたし、エイトが好きよ」

やだ! あたしったら何言っちゃってるの?

「僕もだよ、ゼシカ」

えっ? えーっ!

「ずっと考えてた。僕にとってのゼシカの存在。……わかったんだ。旅の仲間として、大切な人だって。無事にリーザスに送り届けます、って君のお母さんと約束した」

あ、旅の仲間……として。

「……うん、あたし、ククールもヤンガスも好きよ。もちろんトロデ王も馬姫さまもね」

そう言ったあたしを、エイトはにこにこして見る。エイトの優しさにいつまえも甘えてちゃダメね。もう兄さんの面影を追ったりしないわ。もっと強くなりたい。

 

……ていうか、あたし、今エイトに告白したんだけど、そうとられなかったみたいね。でも不思議。「エイトが好き」って言葉に出したら、なんだかすっきりした。エイトはサーベルト兄さんじゃない。他の誰でもない、大切な旅の仲間なんだわ。

 




次はラパンハウスに行きます。
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