※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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今回は下見です。ゼシカの語りです。



闇の遺跡
闇の遺跡


「結界が……」

私たちは、目の前に立ちはだかる闇の遺跡に、ついに一歩を踏み入れた。太陽の鏡は、埋め込まれるとすぐ、まばゆい光を放ち、ドルマゲスが張ったであろう結界を無にした。あたしたちは、今できる最高の準備を整え、ここに来ることができた。

ドルマゲスはきっとここにいる……。兄さんを殺したドルマゲスが……。あいつはこの遺跡のどこにいるかわからない。エイトが言っていた、「最も攻め込まれない場所」に潜んでいるんだろう。でもそこで何をしているのかしら。この遺跡は暗黒神ラプソーンがいたという伝説の遺跡。ドルマゲスはそのラプソーンになろうとしているのかも知れない。遺跡は複雑な造りをしているようね。エイトもゆっくりと静かに進む。余計な動きをして魔物を寄せ付けたくない。それにしても、魔物が強い……。今まで戦ったことのない魔物ばかり。

 

「暗いな」

あたしの後ろにいるククールが呟いた。その声に表れた緊張感があたしの歩みを遅らせる。

「おい、リーダー、ちょっと待ってくれ」

「どうしたの、ククール? 地図あった?」

「ちげーよ、ブーツの紐が」

「おい、遺跡に入ってもう3回目だぜ? そんなオシャレな靴は脱いじまえよ」

「バカ言うな、トゲトゲ。このブーツはな、わがマイエラ修道院の……」

「わかったわかった。いいから早くしろよ」

「暗くてよく見えねえんだよ」

「そうだね。地図も早く見つかるといいんだけど」

「エイトの兄貴、ついにここまで来たんでがすね。あっしは感無量でがす。さっきから武者震いが止まりやせん」

「うん」

みんなの緊張感が嫌と言うほど伝わってくる。あたしだけが不安なんじゃない。でも。

 

「ククール、できた? 行くよ」

珍しくエイトが先を促す。

「ククール? もうほどけないようにしておいてよ」

「わかんねえよ。この魔法のブーツはな」

「魔法のブーツなの? どこが?」

「そうなんだ。ハニー、よく聞いてくれた。このブーツには危険予知能力があるんだ」

「危険予知能力?」

思わず振り返ったあたしに、ククールは笑いかけた。

 

「ハニー、オレの顔を見ながら歩きたいのはわかる。わかるが、足元があぶねえ。声だけで勘弁してくれな。オレは君の後ろにちゃんといるから、安心してくれ」

「別に、あんたのカオ見たい訳じゃないわよ」

ククールは、まあまあそう言わずに、とウィンクして話を続けた。

「このブーツは正確にはブーツカバーなんだがな、危険がオレを待っている場合、紐がきつくなるんだ。逃げろってことさ。よくあったのは、朝帰りして修道院に戻るとき。キューッと絞まるんだぜ。そういうときは必ず見張りが立ってるから、別の入り口へまわるってわけ。あとはその逆で、今みたいに勝手に紐がほどける。そういうときは、大抵、危険がすぐ近くにある。ほどけた紐をゆっくり結び直している間に、そいつが去っていく。うまいこと回避することができるってわけさ。な? 便利だろ?」

「じゃ、今ほどけたのは、何か強い魔物でもいたってことかな」

「多分な。残念ながら、内容まではわかんね」

「ふうん。わからないんじゃ便利なのかどうか疑問ね」

「そんなことないぜ、ハニー。もし、ミイラの包帯とかゾンビの汁とかが落ちてたら、踏みたくないだろ?」

「まあね」

「ちっせえ問題だな」

ヤンガスはフンと鼻を鳴らした。

「小事を侮るなかれ、だぜ、トゲトゲ」

そう、小事。あたしのこのつかまえどころのない不安。

この奥に憎いドルマゲスがいる。でも、あの不気味な強さに立ち向かえるの? 今のあたしは。

 

「っと、まただ。リーダー、待ってくれ。ブーツの紐が」

「おい、ククール、いい加減にしろ?」

ヤンガスの罵声が遺跡中に反響した。

「ちょっ、ヤン、あんまり大きな声出さないで。魔物が寄ってくるよ」

「すみません。でも、これじゃちっとも進みやせんね」

「そうだね、地図もないし」

ククールは座り込んで紐を直している。

「ククール、おめえまさか怖くて進みたくねえんじゃねえのか? それを紐のせいにして」

「そんなことないわよ!」

思いがけず、大きな声が出てしまった。

「ゼシカ、しーっ」

「あっ、ごめんなさい」

 

ククールは、その場に胡座をかいた。

「トゲトゲの言う通りかも知れねえな。オレは怖い」

「てめえ、ココまで来て、それはねえだろう?」

「でも僕だって怖いよ。ドルマゲス、強いじゃない? 死ぬかもしれないって思ったら、怖いよ」

エイトは壁にもたれて言った。

「あっしは兄貴を守ります。たとえあっしがドルマゲスの呪いの前に倒れたとしても、兄貴はあっしの屍を踏んで、本懐を遂げて下せえ! 不肖ヤンガス、兄貴のために死ねるなら本望でがす!!!」

「しーっ! だから、ヤン、声が大きすぎだよっ!」

すみません、とヤンガスは肩をすくめ、辺りを見回した。

みんな、恐怖がないわけじゃない。それでも前に進もうとしている。あたしは自分の弱さに辟易した。

 

しばらくの沈黙。それを破ったのはククールだった。

「なあ、いっぺん帰らねえ?」

「えっ?」

みんなびっくりしてククールを見た。

「ブーツの紐のせいにする訳じゃねえけど、今日は紐が締まらねえ。紐なしだって歩けるが、無理したくねえんだ。何かその悪い予感がしてんだよ」

暗く、静まり返った遺跡の中、遠くで水がポタリポタリと落ちる音が、壁を伝ってくる。

 

エイトが深く息をついた。

「僕、焦ってたかも。みんなの様子を確かめる余裕なかったし。ククールに待てって言われるまで、ガシガシ歩いて。道わかんないのに」

「地図が見つからないんだ。仕方ねえべ」

「そうでがすよ。兄貴は何にも悪かねえでがす」

「ね、ククールの言う通り、今日はやめよう。結界を破っただけでも進んだんだ。みんなまだ体力あるから、もうちょっとだけ頑張れる? 地図だけは探したいんだ。でももし、地図が見つかる前にククールのMPが30を切るようなら、リレミトする」

エイトは、普段と同じ優しい笑顔で、何度でも挑戦しよう、と言った。

「ああ、何度でもな。まあ、希望を言わせてもらえば、一回で済ませたい。オレは夜が似合う男だが、実は暗い所と狭い所は嫌いなんだよ」

「そういや、俺も暗闇は好きじゃねえ」

「えっ? ヤンてそうなの? 山賊は夜仕事するんじゃないの?」

「いえ、あっしは、闇に紛れて不意討ちなんかやりません。ショバ代がわりの通行料を頂くだけの真っ当な仕事してやした」

「へえ、そうだったんだ? そういえば、ヤンに襲われたのって真夏の昼だったなあ」

「そうなのか? 昔から暑苦しいヤツだったんだな、トゲトゲは」

暑苦しいだと! と、また大声を出しそうになるヤンガスをみんなで笑って止めて。

なんか、いつもの雰囲気に戻ったみたい。あたしも足が軽くなった気がした。

「あっ、エイト! あの宝箱!」

「地図だ!」

なんだ、すぐ近くにあったんだわ。

「こういうのを灯台もと暗し、と言う」

「はいはい、もういいからリレミトお願いします」

 

ああ、すっかり日が暮れて。

「どっか明るい所に行きましょうよ」

「ハニー? やっぱり君は笑顔が似合うぜ。今夜はオレと飲もう。ムードのいい店に連れてってやるよ」

「ちょっと! あたしを口説こうなんて10年早いわ」

「10年!? いいのか、ゼシカ! 10年後は25歳だぞ? 婚約も破談になってるし、そんなトシまで一人でどうするつもりなんだ?」

「ふん! 余計なお世話よ! あんたみたいなブラコン男なんて、年増になったってお断り!」

「嬢ちゃん、25は年増ですかい」

「えっ? あっ! ……ゲルダさん」

ゲルダさんはヤンガスより歳上で確か29歳。

「いえ、そのゲルダさんみたいな大人の女性になりたいなって」

「しくしく」

「ヤン、泣かないで! どこか痛いの?」

「あいつ、歳のこと言うと怖えんですよ。思い出すだけで刺された時の傷がうずくんでがす」

「じ、じゃあ、パルミドはやめよう。ここは大人しくベルガラックに」

ベルガラックのどこが大人しいのよ、と言う間もなく、エイトはルーラした。

 




地図を手に入れただけのお話でした。次はなぜかラパンハウスへ行きます。
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