※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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討ち入り前、それぞれの決意はどうなのか、というお話です。7日間使います(長くてすみません)。それぞれが語ります。


それぞれの一週間・六日目

*ヤンガス(ゲルダのアジトにて)*

「最後だ。明日、俺は行く」

ゲルダの作ったこってりした朝飯を食いながら言った。

静かな一日が始まった。

 

馬小屋の掃除をしていると、昼飯だとゲルダが呼びに来た。昼飯もこってり料理だ。

「あちこち傷んでるんだよ」

「何が? ……お前がか?」

「……家だ」

「……」

午後中、ゲルダの家の修繕をさせられたが、晩飯もごちそうしてくれるってんで俺は張り切った。ゲルダは最後の晩餐だと言いながら、またこってりした料理を作っている。料理の腕はいいんだが、俺はこってり料理以外食ったことがない。大勢いる手下に食わせてるのかと思ったらそうでもないし、だいたいゲルダはこってり料理は少ししか食わず、生野菜ばかり食っている。あと酒だ。

 

「今日は飲まないのかい?」

「いや……」

晩飯の時、酒のグラスを伏せたままの俺にゲルダは言った。良く考えたら、いくら腐れ縁とはいえ、よくも俺みたいのに飯を食わせてくれたものだ。俺は、明日のドルマゲス戦を前にし、ゲルダと水杯を交わした。ゲルダは、まあそういうことになるかもしれないね、と言い、杯を空けた。

 

 

 

*ゼシカ(アルバート家にて)*

 

「ゼシカ、もう少し優しく混ぜて頂戴。ほら、ボウルを押さえていますから」

あたしは無心でフィナンシェを作り続けた。みんなの好きなクルミをたくさん入れて。

 

 

 

*ククール・エイト(サザンビークにて)*

 

「あーあ、よく寝たな。ハラ減ったろ。朝飯行こうぜ」

一緒に寝ていたオレたちだったが、だんだん熱くなってきて、お互いを蹴るわなぐるわ。寝返りを打った拍子にエイトの肘がオレの顎に入り、すげえ痛かったからベッドからけり落としてやった。エイトはすぐに「ごめん、ごめん」と言ってオレの腕に戻ってきて、結局、仲良く朝までぐっすり。

 

朝食の時間にはまだ早いようで、客もまばらだった。メニューはコンソメのスープとカンパーニュ、サラダ。パンは固く、サラダ野菜は少なく、スープはぬるい……これなら修道院のほうがましだ。

 

「今日はどうするんだ? 行きたいところあるか?」

最後の一日だ。海辺の教会に行くのがいいか……。

 

「……もう行きたいところないんだ」

食後の薄いお茶を飲み干して、エイトはそう言った。

教会に行けば、終わりだ。オレたちはこのまま。エイトはきっとこのままの関係を望んでいる。エイトのヤツ、オレに告白したくせに、オレの気持ちを聞く気がない。勝手な野郎だ。明日死ぬかもしれないのに、気持ちを伝えないでいられるか。だから、オレはどうしてもエイトに確かめなきゃならない。

 

「どっかプラプラすっか?」

「ククールは行きたいところないの?」

「ない」

「……即答しないで考えてよ」

「じゃあ、ここにもう一泊するべ。……二人で」

「え? うん……」

「あ、おっさんに言わなきゃまずいか……」

「いや、みんな明日の集合までは自由だから。王にもキメラの翼渡してあるし」

「じゃ、決まりな。オレ、連泊の手続きしてくる」

 

* * * * *

 

僕たちはバザーを眺めて、橋の上のベンチでのんびり過ごした。サザンビークのバザーは、世界中からたくさんの人が訪れて賑やかだ。嘘みたいだ。明日、死ぬかもしれないのに。今は何もすることがない。ただ二人だけで過ごす時間……泣きたくなるくらい大切な……。

 

日中は少しフィールドに出て、二人で剣の稽古をした。僕とククールの剣は、流儀が違うからか、いつも激しいあたりになってしまう。それも楽しくて。ときどき草むらに寝そべって休憩した。他愛ない、いろんな話をした。時間を忘れて……。

陽が傾き出したため、稽古を終わらせ、再び城下へ入る。最後の晩餐だ。僕たちは喉の渇きを優先させ、酒場に入った。

「少しだけ飲もう」

「少しでいいの? 僕のことは気にしないで、飲んでよ」

夕べみたいになりたくないから、僕はミネラルウォーターを注文するよ。

「いや。なんか、そんな気がしない。今日は軽くしておく」

ククールはショートサイズのスパークリングワインを頼んだ。

明日のこと、考えているんだね。決して口に出さないけど、もう目の前に迫っている事実を先延ばしにはできない。

「辛口だが、飲みやすいぜ」

ちょっとくらい付き合えよ、と、ククールは僕のグラスに丁寧に注いだ。グラスを上げる。乾杯だ。

 

シャンパングラスの丸い泡を通して見るククールの瞳は星が瞬いているように見えた。クラクラする。こんな風に女の子を虜にしちゃうんだね。

「腹減ったろ?」

「……あんまり」

空腹なんだろうけど、食欲がない。ククールは、そうか、と言って木の実や果物、チーズを注文した。

 

「チーズ食え。空きっ腹で飲むな」

お待たせしました、と色っぽいお姉さんが必要以上にククールの顔を覗き込む。酒場の客はもちろん、男性の店員さんまでククールに流し目を寄越す。さすがククール、なんて冗談にならないくらいの注目度だ。昨日も来ていたから、みんなククールを覚えているんだろう。あからさまに誘ってくる玄人さんもいて、僕は落ち着かない。僕って嫉妬深いな。

 

「どうした、リーダー!」

「えっ?」

急に大きな声で喋らないで。今までちらちらとこっちを見ていた人たちが、一斉に目をそらした。ククールは店を見渡し、マスターを呼ぶ。

 

「悪いね、このワイン、残りを宿屋に持ち込めないかな。このつまみも。なっ?」

ククールは、マスターにかなりのゴールドとなんだかよくわからない宝石を渡した。

「出よう。落ち着かねえ」

ククールはスマートに愛想を振りまいて店を後にする。そしてまっすぐ宿屋に向かった。

 

「あら、お兄さん、もうお泊まり? サービスするから今からスイートにかえない? お連れの方にもちょうどいいコいるわよ」

まだ陽があるのにチェックインする僕たちを見て、きれいな女の人がすっと隣にやってきた。

「悪いな、彼女なんだよ。痴漢に会わねえように男装させてる。それでも痴漢に会うから厄介だ」

そう言いながらククールが僕の肩を抱くと、女の人は、あら、残念、と言ってすぐに消えた。

 

夕べと同じ部屋は綺麗に掃除されていた。

ククールはなんだか神妙な顔をしてベッドに座る。

「……さっきはごめんな。女だなんて言って。リーザスではホントのこと言って失敗したから……」

「……」

僕はなんて言っていいかわからなかった。だから黙ってお酒を注いだ。

 

「いくらも残ってなかったな」

「もう一本開けようか?」

ククールが渡したゴールドのおかげで、マスターはもう一本ワインを持たせてくれていた。さっきと違う、真紅のワイン。

ククールは、いや、と言って僕を見つめた。

 

それから、何の話をしたんだろう、たぶん他愛ない話だったんだと思う。

グラス一杯分しか残っていなかったスパークリングワイン。僕が注いだまま、口もつけずに置いていて、すっかり気泡が抜けている。

 

話が途切れがちになる。

そのたびにククールは笑顔を消して僕を見つめる。

 

すごくドキドキする。

気恥ずかしい、っていう感覚。ゆうべなんて一緒に寝たのに。シャワーも一緒に……。

「今日も洗ってやろうか?」

ククールがにやにやして言った。

「ばっ……」

ククールのバカ!

ククールは笑ってシャワー室に消えた。

どうしよう、動悸がおさまらないよ……。

 

ククールの次にシャワーを浴びて出てくると、いつもの赤い聖堂騎士団員の制服をきちんと身にまとったククールが椅子から立ち上がって僕の前にやってきた。

 

「どこか……行くの?」

「さあな……。お前もちゃんと服を着ろ」

なんで? もうゆっくり眠るだけなのに。わざわざ着るなんて。僕はククールに言われるまま、いつもの服を着た。黙って待っているククールの、あんまり見たことのない、真面目な表情……。二人でいて、こんなに不安な気持ちになったことはなかった。

 

身支度を整え、僕はククールと向かい合う。ククールは背が高いから、僕はククールの顔を見上げる。ククールは、冷たくも見える表情で僕の目を見る。笑っていないククールは、とても綺麗だ。本当に彫刻のようで怖いくらいだった。

「エイト、……確かめたい」

 




このあとのエイトさんとククールがどうしたかは次の()つきの話でどうぞ。お嫌いなかたは飛ばしてください。
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