※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

48 / 96
ゼシカを追ってリブルアーチへ来ました。ゼシカがいないとつい不真面目になってしまいます。ククールの語りです。


クランスピネルを探しに

結局、兄貴には会えないまま、オレたちは西の大陸にもどり、北のリブルアーチへ向かった。途中の関所が壊されていたが、どうやらゼシカがやったらしい。石工の町、リブルアーチに着くや、住民に誘導されるようにある屋敷にお邪魔することになった。二階へ上がると、杖に呪われているゼシカがこの家の主と対峙していた。

ゼシカは杖の呪いなんだろう、真っ青な顔になっていた。オレたちの存在に気づくと、何だかわけのわからないことを言って消えた。

 

「ゼシカ? 今の、ゼシカなんだよね……? ま、まずいよね、あのままじゃ。どうしたらいいんだろう……」

エイトがオタオタしてやがる。まあ、仕方ねえ。今までずっと一緒に旅していた仲間が、杖にとりつかれておかしなことになっちまってるんだから。

それより、この濃~いおっさん……。

 

「むむむ、この結界を破るとは……。なかなかやるな!」

この屋敷の主でもある、妙ななりのおっさんは、上から目線で感服する。呪われしゼシカの力より、自分の方が優ってるとでも思うのか、余裕ぶっこいてやがった。この感じ悪いおっさんはハワードと言う名で、大呪術師だそうだ。「自称」だな、うん。胡散臭い。街の住民も無理やり言わされているに違いない。オレは、このテの威張った人間が大嫌いだ。だが、我らがゼシカを助けるためにはこのおっさんの力が必要だ。……多分。

 

で、またお使いだ。めんどくせえ旅だな、全く。ハワードのおっさんはクランスピネルという宝石を取りに行けとさ。オレたちはその宝石の持ち主に会いに、建築中のライドンの塔へ向かった。ライドンの塔というのは、石工のライドンが一人で建築している巨大な石の塔だそうだ。リブルアーチの町から一山超えたあたりにある。

 

「宝石さえ手に入れば、なんとかいう魔法がつかえるようになるんだよね」

「そうだな。早くとってきてやろうぜ」

めんどくせえが仕方ねえ。

「なんだってまた、宝石なんか必要なんでげすか?」

「う……ククール、そのへんどう? 僕、魔法のことよくわかんないんだ」

「そうだな……魔法は、実は科学的学問でもある。自然現象や、物質がもつ力を制御して使っているのがいわゆる「魔法」だ。例えば、ホイミなんかの回復術は、生物がもともと持っている自然治癒力を応用したものなんだ。誰にでも使える可能性があるわけだが、その力を引き出す能力は、個々に委ねられている。「難しい」と言われる魔法は、やっぱり術として発動する訓練を積まないと、誰にでもできるものじゃない。今回、宝石が必要だと言ったのは、人の力で発動する「魔法」のためじゃない。物質の力を利用した「魔法薬」のためだ」

「魔法薬?」

「ああ。なんていうか、聖水のすごいヤツ、と考えればいい。術が継続的に保てる魔法陣を利用し、ハワードのおっさんは、複雑な結界を張るための薬を作っているんだよ。結界は普通、魔除けみたいに使うが、ゼシカみたいに別の魂が入り込んでしまったときに、そいつを追い出す効果もある」

「そ、そうなんだ。難しいね……僕には理解できそうにないけど」

山道を登りながらオレはこんな話をしたが、エイトとヤンガスの二人にはさっぱりだったようだ。

 

「難しいことは抜きだ。ただ、あの杖は、取りついた者の魂を喰っているはず。時間が重要だろう。早ければ早いほうがいい」

「そうだよね、ドルマゲスなんて、アルゴングレートもびっくりの変貌を遂げちゃったよね。あ、ようやく塔だよ。鍵の剣を刺さなきゃ」

エイトに促され、オレは塔入口の鍵穴に石の剣を差した。鍵まで石で作られている。いくらなんでも凝り過ぎだろう。この塔は遠くからでもかなりの高さのあることがわかる。これを一人で造り続けるライドン、一体どんな人物なのか。相当な頑固職人であるに違いない。果たしてすんなり宝石を渡してくれるのか少し不安だ。

 

「すげえ! なんだこりゃ!」

ヤンガスが、あんぐりと口を開けている。いや、オレも驚いた。円柱の塔の内側は、側面に沿って階段がとぎれとぎれについていた。別の階段に行くには各階を行き来するためのシーソー板を使うようになっている。ちょっと見回した限りライドンの姿はない。おそらく上に登っていくしかないのだろう。だが、どうやって登りゃいいんだ?

 

「とりあえず、上に行くには、下に降りるの……???」

外から入ると塔の2階にいることになっている。考えなしに中央のシーソーに3回ほど乗り降りし、1階と2階をうろうろ。どうすりゃいいんだか、地図を見てもよくわからねえが、石像をどうにか動かしてシーソーを固定させて登るしかないようだ。エイトはすでに途方に暮れている。

 

「うっ……。ムリ……。ヤン……先頭変わって」

エイトは塔を見上げ、そう言うと一歩も動かなくなった。

まあ、エイトじゃ無理だ。普通のヤツでも目がまわりそうだもんな。

 

「じゃあ、あっし、ククール、兄貴の順で……」

「うん、もうどんな順でもいい……」

ヤンガスに先頭をまかせ、エイトはうつむいたまま歩き出した。

 

「強えな、石像」

かなり強力な魔物が多いこのライドンの塔。それでなくても面倒な仕掛けを攻略しながらなのだから、集中力が切れてくる。あ~もう、さっさとクランスピネルをかっぱらって帰りたい。

 

「おい、リーダー! 休むか?」

エイトがオレたちからずいぶん離れてしまった。ったく、足元がふらついてるな。オレでも少しめまいを感じるほどの複雑な塔だ。酔いやすいエイトならなおのこと。

 

「エイトの兄貴!」

ヤンガスが即座に駆け寄る。

「あっ、兄貴! あっしにつかっまってくだせえ! おい、ククール、お前が先頭を行け!」

「おう」

まあ、仕方ねえか。

 

無駄に複雑な造りの塔をどうにか登り(嫌な場所にある宝箱、それは欲しい)、5階あたりにきたところで、後ろから声がかかった。

「ククール、やっぱり、兄貴を頼む……」

振り返ると、ヤンガスがうずくまっている。その足元にはぽたぽたと血が……。

 

「どうした? 鼻血か?」

「面目ねえ……兄貴と密着していたらこのザマだ……」

あー、そういうことね。ったく、どんだけエイトが好きかよ?

オレはエイトを右腕につかまらせたが、エイトはへなへなになっていて、階段が上がれない。しょーがねーな。オレはエイトを背負った。

 

「世話の焼けるリーダーだな……」

「ごめ……ん、ククールぅ……」

耳元で囁くな! しかも吐息がやたら熱い……。こりゃ舎弟ヤンガスなら卒倒するぜ。

エイトは、さらに、一段一段上るのに合わせるように、うっ……ふぅん……っん……といやらしい、いや苦しげな喘ぎ声を……。くそっ! おっ勃っちまう!

オレがそんな状態になっているのも知らないで、背負ってやってからのエイトは見違えるように強くなった。魔物が現れるやオレの背中をするりと降りて、ヤリを振り回す。オレもヤンガスも出る幕がないくらいだった。

しかし、さあ上るぞ、となると、真っ青になってその場にへたりこむ。で、またオレが背負って……。

そんなこんなで、おっ勃ちそうになりながらも、どうにか塔のてっぺんにたどり着いた。やれやれ。

 

ライドンのおっさん(予想はしていたがまたおっさんだ)は、見かけは死ぬほど頑固ジジイだったが、話すと案外気難しくもなく、フツーのおっさんだった。これなら宝石ももらえるかも知れねえ。エイトが丁寧に説明する間も、真面目に聞いてくれている。うん、いい人だ。ハワードのおっさんが気味悪い人物だったから、余計いいオヤジに見える。だが……。

 

「ええっ! お持ちじゃないんですか? クランスピネル……」

なんてこった……。

エイトはへにゃりと座り込んでしまった。

塔のてっぺんで作業中のライドンのおっさんによると、クランスピネルはなんとリーザス塔にあるらしい。

「嬢ちゃんの故郷ってわけですかい。皮肉なもんでがすね」

なんだよ、苦労して上ってきたのに……。まあ、オレもヤンガスも役得だったが。

 

「僕、ちょっと休みたい……」

エイトはそう言ってふらふらと歩き出す。外を見ようと、積んである資材に登りはじめた。

 

「兄貴! そんなはしっこに行かねえで下せえ。落っこちちまいやすよ……」

「ヤン、大丈夫だよ。ちょっと風に当たりたい。ククール、引率して……」

いいぜ。オレはエイトのあとに続き、肩をしっかり抱いて一緒に外を眺めた。

 

「……美しい景色だね」

「ああ……」

 

突き抜けるような空の青。眼下に広がる秋色の大地。聞こえる風鳴り。

かなり高所だというのに、強風が入ってこない。うまく造ったもんだな、ライドンのおっさんは。

エイトの憂いを秘めた黒い瞳は、焦点が合わず、ぼんやりしている。そして至近距離にある乾いた唇……ああ、潤してやりたい。しかし、オレの頸動脈はヤンガスの殺気にロックオンされているので、スマートにエスコートするだけにとどめた。

 

オレの鎖骨にもたれるエイトは、しばらくするとはあん……のような吐息とともにこう言った。

「……ありがとう、ククール。すごく……気持ちよかった……」

オイ! ヤンガスが誤解するだろう? そういう言動は……。

「じゃあ、兄貴、そろそろ」

ほーら、さっそくお声がかかる。ご舎弟さんよ、よく見てやがるぜ。

「リレミトすっぞ。そのままリーザス行っていいな」

オレたちは、失意をかかえたまま、リーザスへ飛んだ。

 

 

 

……オレはリーザス塔でもエイトを背負っている。

 

「兄貴、大丈夫でがすか?」

ヤンガスの問いに、「うん、早くとってきちゃおう」と、少し楽しそうなのは気のせいか?

エイトはもうすっかりライドン酔いがさめているくせに、甘ったれてオレの背中にしがみつく。……あたってんですけど、大好きなあなたの、素敵なアレが……。

チクショー! 押し倒してえ! ……よく考えてみれば、ライドンの塔に入るのに、石のつるぎをグサリと射し込んだあのときから、……いや、ラパンハウスの外でチュウチュウしてたときから……いや、エイトの中で果てたあの瞬間から、また入りたくてしょうがねえ。オレのつるぎ!

 

と悶々としていたら、仕掛け扉が回る度にオレの首筋にキスしてきやがる。いい気なもんだ! こっちは理性を抑えてだな、煩悩をはやぶさ切りで発散してるっていうのに……。

しゃくにさわったから、真っ暗なところで落っことして、マジにキスしてやった。

 

「わあっ!」

エイトはびっくりして転んだ。すぐには立てない。ふふふ、このショックでお前のアレもすぐには勃つまい。

「エイトの兄貴! どうなさったんでがすか! ククール、てめえ!」

「なんだよ? またオレのせいかよ?」

エイトを見るとニヤニヤ笑ってやがる。……オレのせいか。

「……悪かったよ。ちょっと手が……」

「ちょっと手だァ?」

「ヤン、いいんだ、大丈夫。僕は大丈夫だから! ちょっと汗が」

「だっ、誰の汁でがすかっ?」

「落ち着けよ、トゲトゲ! 汁じゃねえ、オレの汗が」

「てめえ、汗かくようなことを!」

「かくに決まってんだろ! こんな換気の悪いトコで平熱高いリーダーをずっとおんぶしてんだからよ! ハアハアしちまうよ!」

「……そ、そうだな。悪かった。兄貴を頼んだぜ」

ヤンガスは前を向いて再び歩き出した。エイトは「てへっ」と笑みを向ける。……いつもオレが悪者じゃん。

 

 

そんなこんなでやっと最上階に到着だ。このリーザス塔、オレは初めて来たんだが、ライドンの塔ほどではないが、かなり複雑な塔だった。ゼシカ入隊前に来ていたというのだから、結構苦労したんだろう。

フロアの奥に進むと、リーザス像は静かにたたずみ、オレたちを迎えた。サーベルトがドルマゲスに殺られたのもこのリーザス像の前だという。クランスピネルは、このリーザス像の瞳だった。

 

「そういえば、初めてゼシカに会ったのはここだった。ここで宝石ドロボウに間違えられたね」

「そうでがすね。あの時ァ、サーベルトの亡霊が出てきて怖かったでげすよ」

へー、そんなことがあったのか。すると突然、リーザス像がぼうっと光りはじめ、アルバート家に賢者の血が伝えられたいきさつを話しはじめた。

「ひいっ! 像が喋った!」

ヤンガスがエイトの後ろに隠れる。リーザスの亡霊が話し終わると同時に、像の両目にはめられていた赤い宝石が外れた。エイトは丁寧に手にし、像に一礼する。

 

「ヤンって、幻とか幽霊とかに弱いよね。イシュマウリさんのおうちでは震えてたし、戦いのときなんてすぐ呪い攻撃にかかっちゃう」

「そうなんでげすよ、だから、あの青面の嬢ちゃんとまともに戦えるか、心配でげす」

「大丈夫だよ、さあ、行こう。僕たちなら、ゼシカを助けられる」

「そうでがすね!」

決意を新たにし、エイトをでれでれと見上げるヤンガス。ったく、おめでたい奴だ。いくら魔法の力があるったって、ドルマゲスの二の舞にならねえとも限らないんだぜ。

 

──大丈夫です……賢者の血、そしてゼシカの力を信じるのです……

 

像からそんな声がした気がした。エイトもヤンガスも気づかなかったようだが。まあいい。ゼシカの味方は大勢いる。ドルマゲスの二の舞だなんて、させやしねえ。

 

 

オレたちは、リブルアーチへ戻り、ハワードのおっさんに宝石を渡す。もう、このおっさんに託すしかない。そして準備を整え、呪われしゼシカと対決した。

 




次はゼシカ戦ですが、戦いの様子はありません。次はもうゼシカが復活しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。