レオパルドを見つけるまで時間がかかりそうなので章を立てました。ゼシカのための章です。
ゼシカの計略
「護衛と言ったらやっぱり女性につくべきだろう?」
あたしたちは、ベルガラックの元締めであるフォーグとユッケに会った。
この兄妹、どちらがカジノの権利を持つかでもめているらしい。それで、砂漠の迷宮を先に制覇したものがその権利を得るということになり、護衛を頼まれたってわけ。
全く、あたしたちったらどこまでお人好しなのかしら。早くエイトとククールの怪しい関係を知りたいのに。……いえ、黒犬レオパルドを追わなきゃいけないのに、こんなところで寄り道したくないわ。
……でもまあ仕方ないわね。なにより、リーダーのエイトが「人助けだ」って言うんだし。それにいろいろな意味で焦って失敗したら元も子もない。まずはこの試練とやらをさっさと片付けて、真相を聞き出さなきゃ。「あの人」に……。
サシで話つけたいのよね……あたしの家じゃうまく行かなかったから。どこがいいかしら……。
海辺の教会は大部屋だし、普通の宿屋もあたしだけは個室だし。まさか連れ込むわけにもいかないし……って、やだ、あたしったら、連れ込むだなんて! ちょっとはしたないわ。勘違いされても困るからってことよ?
「じゃあ、決まりね。明日は早いんだから、ご飯食べたらさっさと寝てよ!」
迷宮への護衛話はどんどん進み、結局ククールの希望通り、妹のユッケの護衛につくことに決まった。
かなり生意気で高飛車なこの兄妹にムカつきながらも、あたしたちはギャリング邸で振る舞われた食事に舌鼓をうった。今までで一番おいしいかも!
エイトは「これ、おいしいね、王にも持って行ってあげよう!」なんて、目をキラキラさせてまるで子供のよう。ホント、かわいいったらないわ。
普段あまり食べないククールも、珍しいオードブルにナイフを当てている。
ヤンガスはおいしいつまみのおかげでいつもよりお酒も進んでいる。
で、お腹いっぱい食べて眠りについたあたしたち。あっさりと兄フォーグの罠にはまっていた。食事に眠り薬を仕込まれてたってワケ。
翌朝、ユッケに叩き起こされるまで、熟睡していた。
ヤンガスなんてメチャメチャ怒ってたけど、まあいいわ。
「だって、フォーグについたら、ユッケが眠り薬を仕込むもの」
あたしのこの一言に、エイトもうんうんと頷く。
「どうでもいいから早く行きましょう!」
「なあ、ゼシカ! マジであの杖……」
「もう! 持ってないって言ってるでしょ!」
まったく、いいかげんにしてほしいわ。
「ね……ゼシカ変わった? どうしたんだろう?」
「あっ兄貴、兄貴もそう思いますか? 実はあっしも……」
「だよな。杖を持ってないとすると……あの怒りはなんだ……? 何をああプリプリしてるんだろうな」
「プリプリっていうよりも、メラメラって感じじゃない?」
「そうでがすね……。何が気に入らねえんでがしょう」
「ちょっと、早くしてったら!」
男どもがなにやらコソコソ喋ってるから一喝した。
数時間後、あたしたちは竜骨の迷宮の最奥にいた。
「あたしとお兄ちゃんの二人のカジノだねっ!」
ハイハイ、そうですか。
途中、お互いにピンチはあったけれど、迷宮の主を難なくやっつけ、無事に竜骨の迷宮を制覇した。ギャリングさんの遺した言葉も聞けて、ちょっとじーんときちゃったけど、なんかイライラするわ。ついでに言えば、仲良し兄妹は二人でカジノを経営するんだとさ、めでたしめでたし。あーあ、手に手をとっちゃって、語りあっちゃって。
全く、なんだったのかしらね。今回のお使いは。ああ、お使いにもなってないわよ!
……この竜骨の迷宮、メタキンがいるからレベル上げにいいけれど、あたしの装備がいまいちだから、あたしとしてはきつかった。特にメタキンと一緒によくいる、あのバトルレックス。
メタキンのためにあたしはピオリムして、他の三人が攻撃するんだけど、メタキン倒すまでにどうしてもあたしの体力が減りすぎちゃう。ちまちま回復しながらだから戦いは長引くし……。
こんな状況なのに、ベルガラックで一休みしたら、また竜骨の迷宮に行こうなんて男どもが計画している。
それは……真面目にちょっと困る……。
「エイト? あたし、かなりきついの。バトルレックス。装備品、魔法の法衣よりもう少し強いのに換えたいな。あれば盾も……」
「そうか、そうだよね。ごめんね。メタキンについ興奮しちゃって…。ゼシカも祝福の杖で上手く回復してくれるから、気づかなくて……」
エイトは、優しくいたわるように言うと、黒い瞳をキラキラさせてちょっと潤ませた。
暗いところでのエイトって……かわいい。
いえ、そういうこと思ってる場合じゃないわね。
竜骨の迷宮を出ると、エイトの瞳はふっと色をゆるめた。
「じゃあさ、今日は疲れたし、フォーグとユッケの仲直りを祝って、ベルガラックで食事しよう。いい機会だから明日、みんなの装備品を見直そうね」
よかった。さすがエイト。絶対あたしにムリさせないのよね。きちんと先のことを見てる。すごくしっかりしてきたし。
変わったわ……エイト。……余裕がある。
だからあたしは疑わずにいられない。何かがあったんじゃないかって……。姫さまとは今まで通りだし、他所に彼女ができたってわけでもなさそうだし……。……やっぱり……。
「……カ? ゼシカ? ルーラするよ?」
「あっ、ごめんなさい。ちょっとぼんやりしちゃった」
ふう、危ない危ない。
ベルガラックに戻ると、新オーナーから報酬としてカジノのコインをもらった。
そうだわ! これよ!
あたしはカジノに行きたそうなククールを利用することに。
これで上手いこと聞き出せそうだわ。あたしは俄然やる気が出てきた。
「ねえエイト? 前に、カジノ行ってみようって言ったことあったわよね」
「えっ? ……そうだねえ。西の大陸に渡った時かな。ゼシカ、やりたいの?」
「違うわよ。この貰ったコイン、商品と交換しましょうよ。パルミドのカジノとは違って、いい品物が揃ってるらしいわよ」
エイトが「そうだねえ」なんて同意しそうになると、ククールがすかさず口を挟んできた。
「ハニー? そりゃもったいない。ちょっと当てればいいモノに換えられるぜ?」
ふふ。食いついたわね。
「ちょっと? ちょっとで済むかしら? 結局時間とコインの無駄になるだけだと思うわ。ね、エイト、早く交換しましょうよ」
「おいおい、お嬢さん? このククール様を甘く見てもらっちゃあ困るな。オレの動体視力はエイトのしっぷう突きさえよけられるんだぜ?」
それはホント。でも焦ってる。面白いわね。
「あのさ、たまにはいいんじゃない? どうせコイン貰い物だし。スッちゃっても問題ないよ」
エイトったら! いい展開じゃない!
「リーダーまで、オレの腕を信用してくれねえの? 悲しいぜ」
「そんなに言うならやってみろよ、ククール?」
ヤンガスがあおる。
「そうだよ! たくさんコイン買って、たくさんスッてくれるのがいいお客さん!」
いつの間にかユッケも側に来てククールをあおった。
「じゃ、スロットいかせてもらうかな。ユッケ、店がつぶれない程度にしといてやるからな……」
ククールは腕まくりをするそぶりをみせてそう言った。
ふふっ。作戦成功ね。
竜骨のイベントでした。そのまま次に続きます。