「すごい! ククール! たった3時間で?」
「まあな。チョロいもんさ! では、ハニー、献上致します」
「ありがとう!」
オレは膝まづいて、伝説のグリンガムのムチをゼシカにうやうやしく差し出した。
カジノの客はみな拍手をする。
「いやあ、今日はやられたよ……。僕の計算では、報酬のコインを全てスッて、あと300コインは買ってくれると思ってたんだよね。もちろん、それもみんなスッて……。あの台確変調整しとかなきゃなあ」
フォーグが頭をかきながらやって来た。
「ま、これでうちのカジノも当てる人がやればちゃんと当たるって証明できたから、いい宣伝になったよ。ククールは次から上限つけなきゃね!」
大当たりが出たこと、最高ランクの景品交換があったことで、オーナーから祝いの酒が振る舞われた。カジノはお祭り騒ぎになり、盛り上がる。オレたちはフォーグとユッケとともに飲み、この夜は楽しく過ごした。
「いやあ、ベルガラックはホントいいとこでがすね。食いもんも酒も旨かった」
「そうだね。みんな満足できたみたいでよかったよ」
「ねえ、それより……エイトにご馳走してもらっちゃっていいの? 今の食事代、ポケットマネーなんでしょ?」
「うん、いいよ。たまにはさ。ゼシカは実家にお土産買うでしょ? ヤンはゲルダさんに定期的に付け届けが必要だし、ククールはまだドニにツケたまってるし。僕は特に使うことないから」
「そっか。じゃあ、ごちそうさまでした!」
「兄貴、すいませんっ! あっしにもっと甲斐性があれば……」
「やだな、ヤン。君ほど甲斐性のある人はいないよ。頼りにしてるんだからね。……ほら、泣かないで。さあ、明日からまたレオパルド探しの旅に出るからね。みんな朝はちゃんと起きてよ?」
翌日。
「エイトさんからは0ゴールド預かっています」
「えっ?」
ゴールド銀行のカウンターでエイトがすっとんきょうな声を上げる。
「どうした? リーダー?」
「あのさ、ゴールドは?」
えっ?
「あ……」
やべえ!
「……」
みんな一斉にオレを見る。
「すまない!」
オレは土下座した。
「ククール、一体お前?」
ヤンガスが睨みをきかす。
「ククールどうしたの? まさか……」
「ハイ、まさかです……」
……オレは、昨日ゼシカのためにグリンガムのムチが欲しかった。それ相当分のコインを稼いだとき、すぐに交換すりゃよかったんだが、ルーレット場がやけに盛り上がっていたもんだから、つい手を出した。そしたら見事に大ハズレ。グリンガムのムチを交換するコインが足りなくなっちまった。で、手持ちのゴールドを調べたら、ちょうど不足分のコインが買えるじゃねえか。ドニのツケは後回しにして、コインを買いグリンガムのムチと交換した。……オレはすっかり忘れていたんだ。手持ちのつもりのゴールドこそ、銀行に預ける予定のゴールドで、エイトから預かっていたものだということを。大体オレ、手持ちのゴールドなんていつも最低の宿代くらいしかねえじゃんか……。だからオレがそんなにゴールドを持ってるはずないんだよな……。
オレは深く、深ーく反省した。
だが、誰もオレを許しちゃくれなかった……。ゴールドには厳しいんだよな、このパーティー。
「あ~あ。世界樹の葉を買いたかったのに……1ゴールドもないなんて……」
オレはエイトにブツブツ文句を言われながら旅を続ける羽目になった。なんとなしにゼシカを見ると、グリンガムのムチをビュンビュンうならせながらニヤニヤ笑っている。
「もう少し強いヤリも欲しいなあ……でもゴールドがないんだよね。ちょっと魔物倒したところでカジノの軍資金にもならないし……」
けっ! エイト、どこでそんなイヤミを覚えてきやがった?
エイトとゼシカは目配せしながら調子に乗って言い続ける。
「そうよククール。あたしが最強のムチなんだから、みんなもっと強い武器が必要よ。そうだ、エイトには英雄のヤリくらいは装備させてあげましょうよ。それならゴールドかからないし」
ゼシカにもイヤミを浴びせられ、ついでに先頭で歩かされた。
ちょっとでも道を間違うと、後ろからギャイギャイ野次が飛び。オレ、すげえ虐げられてる……。
英雄のヤリを手に入れるために、オレたちは再びモリーを訪れた。
わりとあっさりバトルロードAランクを制覇し、目的のヤリをもらった。ふう。
「兄貴、よくお似合いでがすよ」
英雄のヤリを背にしたエイトを、ヤンガスがうっとりと見つめる。
うん、確かによく似合う。……だが、エイトにはもっと短いものをしょってほしい。
引っかかって転ぶのがオチだろ。やっぱり剣のほうが……。
ところが、エイトはまんざらでもない様子で、背中のヤリの位置を確認している。
「そお? ありがと、ヤン。……そういえば、ヤンも山賊から足洗ったんだし、そろそろ違うオノが欲しいんじゃない? 貰いモノのムーンアックスもクールだけど、ヤンにはちょっと役不足だよ。もっとガッチリしたオノのほうがカッコいいなあ」
「そうでがすか……」
「ちょっとヤンガス、ニヤケすぎよ? でもエイトの言う通りね。確か……人が歩いて行かれない場所に最強のオノがあるって聞いたけど……」
「そうか。僕たち弱いし、そんなところへはまだ行かれそうにないね。ゴールドがないから買うこともできないし。それに、ヤンのはがねの盾も壊れてきてるんだよね。拾ったドラゴンシールド、ヤンが装備する? 本当ならもうひとつ買いたいところだけど、ゴールドなくなっちゃったから……」
なんだよこれ、イジメ?
オレは三人の……いや、特にエイトのイヤミに耐えながら、先頭を歩き続けた。
で、イヤミ旅の最中に立ち寄ったサヴェッラで海賊の宝の噂を聞いた。何かいいものがあるかもしれないと、オレたちは船でそのアジトを探すことに。
ああ、いつからオレたちは盗っ人に成り下がったんだ?
……オレのせいか……。
久しぶりの船。
今日はやけに波が荒い。オレたちをあざ笑うかのような波しぶきだ。
「ヤン、お願いね」
「合点承知の助!」
エイトに舵を任されたヤンガス。鼻息を荒くして前方を見据える。
「ヤンガスってば張り切ってるわね」
「おタカラと聞きゃ、賊の血が騒ぐだろ? ましてや海賊とくりゃ、なおさらさ。あいつら永遠の商売敵だからな」
「そうかしら。海賊のほうがかっこよくない? 山賊なんかビンボーくさいし、相手にしてないんじゃないの?」
「キツいな、ハニー。だが全くもってその通りだ!」
オレとゼシカのそんなやり取りも聞こえないのか、エイトに戦いの先頭も任されたヤンガスは、張り切って真空波を起こしまくる。エイトはと言うと、船縁に背を当て、黒目をくるくるさせながらヤリにしがみついていた。
……あのな、足腰弱いじいさんじゃねえんだからさ……。英雄のヤリを杖代わりにするためにバトルロード頑張ったんじゃないんだぜ? そういや、スカウトするモンスター探しや、その組み合わせまで、みんなオレにやらせたろ? キミ!
まあ、仕方ねえな。いや……仕方ねえのか……?
エイトを見やるオレに、ゼシカが冷たい視線を寄越す。……やっぱり……仕方ないです。
ゼシカのムチが容赦なく魔物の体を切る。そして船体も。オレは戦いの最中はベホップと化し、魔物がいない間は、三等水兵となった。
「あっ! あの洞窟!」
ゼシカが崖の隙間に入り口らしきものを見つけたようだ。
「リーザスの近くにこんなところがあったなんて、知らなかったわ」
ゼシカの示す先に、小さな洞窟がある。注意して通らなければ、そこに洞窟があるなんてわからない。ある角度からしかその入口は見えなかった。
宝を隠すにはもってこいだ。
ヤンガスが手早く船を舫う。へえ、海賊でもやっていけそうじゃん。それより、嬉々としたエイトの足取り……。お前、ホントに賊みてえだぞ。まあ、今そんなこと言ったらドラゴン斬りされちまう。いや、今はヤリだから、一閃突きで即死か。
「おい、腐れ坊主、置いていくぞ!」
くそっ、腐ってねえっての!
ゼシカが「さあさあ、お腐れさま、先頭へどうぞ」と、オレを前へ押しやる。
なんでオレばっかり!
ふとエイトを見れば、あくびしてやがる。ったく……。
だが、船酔いで少し顔色が冴えねえ。仕方ねえか……。
洞窟の最奥には、亡霊がいた。
こいつがまためんどくせえ奴で、死んでんだからあきらめりゃいいのに、なんだかんだと因縁をつけてくる。
おまけに、麗しの貴婦人号で来ていたゲルダ姐さんを軽くひねりとばし、ヤンガスを激怒させた。
血もないだろうに血の気の多い元海賊王は、テンションを上げまくる。そのたびに落ち着かせるオレ。なんか、最近こういう役が多くないか?
なだめたりすかしたりしながら、ゼシカにデレデレする亡霊をようやく倒すと、ヤツは海図を寄越して消えた。
「えー、宝の地図なの? これ。ここへ行けばお宝があるの? ねえ、ヤン、どう思う?」
「えっ? いや、どうなんでがしょう。この洞窟にはこれといっていいブツはなかったでげすから……信じるしか……」
おお、ヤバいヤバい、また矛先がこっちに向きそうだ。
オレは聞いてないふりをした。すると、回復したゲルダ姐さんが立ち上がり、オレたちに高らかに言い放つ。
「宝の地図? そんなガキみたいなもの、まさにあんたたちにぴったりじゃないか。あたしはさっき10000ゴールド手に入れたから、そいつはあんたたちに譲るよ。あはは!」
10000ゴールドのショックから立ち直れないオレたち。一番がっかりしているのはエイトだ。マジ、お前、いつからこんな守銭奴に……? オレのせいなのか? なあ、オレの? 教えてくれ、エイト!
もう、洞窟には用事はなかったが、資金集めのため、リレミトせずに戦いながら出口を目指した。誰も何もしゃべらない。無言で叩きまくっている。
なんか、殺伐としていないか?
オレたち、こんなに好戦的なパーティーだったか?
やっぱり、オレのせいなのか? おーい!
「ちょっとククール、いいかげんに回復術かけてよ。ヤンガスが死んじゃう!」
「あ、いいよ、ククール。僕がやるから。君はゼシカをお願い」
「お、おう」
何やってんだ、オレ!
余計なこと考えてたらみんなの命があぶねえよ。
オレたちにはここの魔物はきつかったが、大したゴールドも稼げないまま、出口に到達してしまった。
「まだたまらないね。ゴールド……。仕方ないから闇商人のおじさんのところに行ってみようか……とりあえず、上薬草を作ろう。薬草なら買えるから……」
くそっ! エイトの奴め!
海図を手にした一行は、光の道を目指します。でもすぐは行きません。3DS版では、ここでゲルダが仲間になれるそうですが、PS版しかやったことがないので仲間にはなりません。同様に、モリーも仲間になりません。