※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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意外に複雑なリーザス塔。エイトさんは方向音痴です。また下ネタです。ヤンガスの語りです。


ラビリンス

女の脳ミソは、立体や空間を把握できねえつくりになっているそうだ。だから地図も読めなきゃ、道も覚えられねえ。

 

俺は自慢じゃないが、いっぺん通った道は絶対忘れねえし、初めての所だって、方角さえしっかり見てりゃ大抵迷わねえ。町や村にあるワナやオトリとか、とにかくヤバいものにばっちりとカンが働く。賊の天性からくるんだろうな。

しかし、そんな俺でも、魔よけはダメだ。魔法の力が作用している所じゃ俺の素晴らしいカンも全く役立たずだった。

 

ここ、リーザス塔はなんか知らねえが、魔力が効いているようだった。おまけに、物理的に簡単に登れない仕掛けがしてありやがる。塔全体が仕掛けの塊で、トロデのおっさんも感心しきりだった。この塔まで案内してきたポルだかマルだかいう名前の小僧も、「あとはよろしく」とか言って帰っちまったからあとは俺たちが攻略するしかない。

 

この塔は、滝の洞窟と違い先が見えねえのが歩きにくい。たまに外に面したところに出れば行き止まり。そしてお宝もゴロゴロ落ちてるから、ちっとも進まねえ。何よりもまがまがしいというか、建物のあらゆるところをチクチクと棘が這いずり回ったような得体の知れねえ薄気味悪さがここにはあった。全身がぞわぞわしてかなわねえ。

 

ところが、エイトの兄貴ときたら、水を得た魚のごとく楽しそうにあちこち探索なさる。このおかたには呪いもよけて歩くから、たとえ邪気が追っかけてきてもお気づきにならねえんだろうな。

 

楽しそうにしてらっしゃるのはいいんだが、兄貴の方向音痴っぷりはハンパじゃねえ。フィールドで寄り道しているときからうすうす感づいてはいたんだが、こういう場所ではそれが顕著に表れる。方向感覚ってやつを全くお持ちでない。

 

兄貴は、「あれ? ここ何階だっけ?」と、階段の上り下りのたびにおっしゃり、「あれ? 今どの扉から入ったんだっけ?」と、扉を開けるたびにきょろきょろなさる。

確か、さっきのアルバート家の二階でも迷子におなりだった兄貴。仕掛け扉ときた日にゃ、押した瞬間に方角を見失ってらっしゃる。もうお手上げだ。

 

そして、兄貴は渦巻き酔い(俺が名付けた)が激しい。階段はもちろん、90度以上身体が回転すると酔ってフラフラなさるんだ。その身体を支える俺は役得、なのかも知れねえが、実際ふらついて肩に手を、時には頭を乗せられて「ヤン、ごめ……ん、ちょっとだけこのまま……」なんて十分に一ぺん耳元でささやかれてみろ? 理性など青い目の扉おばけに喰われてしまえ! と叫びたくなるだろう?

 

今も、階段の途中で手すりに寄りかかっていなさる。浅い息をおつきになり、天井を仰ぎなさる。小せえクモがつーっと下がってきやがるから、俺はそっと手で払う。

ただのクモくらいならいいが、リーザス塔の魔物は強かった。迷う上に激しい戦いが続き、俺たちはやむなくリーザス村へ戻ることになった。

 

「仕方がないね、でもゴールドもたまってるから、薬草たくさん買っていこう」

と、兄貴はやる気十分でいらっしゃる。

いつもの展開だなあ、とぼんやり考えていた俺だったが、どうにも効率が悪い。

そこで、今日五度目となるリーザス塔詣での時、腕組みをしながら塔を見あげる兄貴に、俺は思い切って申し上げた。

 

「エイトの兄貴、今回はあっしが先を行きやしょう。レベルも上がって、身の守りも兄貴より強いでがすから、奇襲を受けた時にも盾になれやす」

「えっ? そう? うん、でも……」

兄貴が先頭を行きなさるのは分かる。リーダーとしての責任を感じてらっしゃるから。でも、そんなに迷いたいんですかい? あの塔で。俺はせっかちってわけじゃねえが、早くこの薄気味悪い塔の用事をすましちまいたいんでがすよ……。

 

しかし、兄貴は考え込んだまま、何もおっしゃらねえ。

俺は、兄貴が「方向音痴だから」という理由ではなく、俺の方が「守備力が高いから」という理由で先達を申し出たつもりだ。しかし兄貴は違う解釈をされたのか……。

俺は不安になった。

 

「……エイトの兄貴?」

俺は沈黙に我慢できずに言うと、兄貴は憂いを秘めた黒い瞳に、哀しみのさざ波を一瞬立てなさって、伏せた。

 

???

 

俺は兄貴の真意がわからねえまま、黙った。ややって、

 

「ヤン、後ろからじゃ、ダメ?」

なんですって?

 

「僕の後ろは、イヤ?」

イヤって? イヤって? 兄貴の後ろ!

 

「すすす、好きだと思うでがす、いや、好きに違いない!」

俺はいまいち会話が成り立っていないと思ったが、それを言い直す余裕はなかった。

 

「ああ、良かった。僕の後ろが嫌なのかと思って。ごめんね、ずっとおしり向けてて。たまには前がいい?」

兄貴の顔がぱっとばら色に染まり、続いてそんな発言!

俺は返す言葉が見つからなかった。ただ、ぶるぶると首を横に振り続けた。

 

「ヤン、これからも、僕の後ろから頑張ってくれると嬉しい」

俺が今度はぶんぶんと首を縦に振ると、エイトの兄貴はスズランの花が風に頼りなく揺れるように、小首をかしげて「良かった」とおっしゃった。

 

「あ、兄貴の後ろはあっしが命をかけてお守りしやす」

俺はクラクラする頭で、二度と兄貴の前を歩くまいと誓った。

 




エイトさんは、方向音痴で乗り物酔いしやすい設定にしました。次はゼシカ嬢登場です。
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