※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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暗黒魔城をなかなか攻略できません。拠点をリーザスから三角谷に移します。ヤンガスの語りです。


難攻

「行こうか……」

いつになく無表情な兄貴がおっしゃった。

腰は大丈夫なんですかい? エイトの兄貴……。

 

暗黒魔城を訪れたおとついの晩、俺はトロデのおっさんと飲み明かした。嬢ちゃんはさっさと部屋へ引き上げ、エイトの兄貴とククールはおしのびですっきりしにお出かけになったようだった。

明け方に戻った二人は、すっきりっつーより、へとへとだった。…そんなに激しく……。

 

俺は猛々しい兄貴のご様子を妄想し、ちょっとチビりそうだった。戦いのときのあの激しさで……。ああっ……。

 

そんなこんなで、寝不足の二人に二日酔いの俺は、その日を寝て終わらせちまった。翌日……つまり今日は、朝早くから嬢ちゃんにたたき起こされ、日中いっぱい地図を眺めながら作戦会議。そして今に至る。

 

見れば見るほどわからねえ暗黒魔城の地図。まあ、初回に地図を見つけただけでももうけもんだ。エイトの兄貴は立ち上がり、また少し攻略してみようとおっしゃったところだ。

 

 

魔城はふわふわと注に浮いていやがる。こんなのが落ちてきた日にゃ、大陸が潰れちまうぜ。だから海の上にある夜に、俺たちは魔城攻略に望む。

 

 

魔物が強いのなんのって……。

兄貴は回復重視の戦法だ。確実な蘇生呪文の使えるククールを特に守らせる。

で、ククールの野郎のMPが底をついたんで、再びリーザスに戻ってきた。

 

 

「なかなかキツいわね」

深夜の食卓で、普段あまり弱音をはかない嬢ちゃんがため息をついた。

 

「あそこまで複雑とはな」

瀕死になりかけたククールが言う。まだ顔色が青っぽい。

まだ調子が戻ってねえようだな。

 

「のうエイト、ここまで来たんじゃ。焦らず行こう。あの城は相当厳しい」

おっ、トロデのおっさんが珍しく兄貴をいたわる。

 

「はい。しかし、見通しがあるとはいえ、僕たちの絶対的な力が足りません。レベルアップできるとはいえ、あの魔城は厳しいです」

エイトの兄貴は、憂いを秘めた黒い瞳を真っ直ぐに地図へ向けなさる。視線が厳しい。

 

「僕がもっと強ければ……」

エイトの兄貴は椅子から立ち上がってぽつりと呟きなさった。

 

「何言ってるの? エイトは十分強いわよ」

嬢ちゃんが力強く立ち上がる。

嬢ちゃんの言う通りだ。このところの兄貴はメチャメチャ強い。俺もブンブンと首を縦に振った。

 

「そうでがすよ。ゴルドでだって……」

やべっ! うっかりだ。ククールの兄さんのことは禁句だ!

あんな電波野郎でも、ククールにとっちゃ血を分けたきょうだい。ああ、気が利かねえな、俺。

そっとククールを見ると、奴は腕を組んだままいつものポーカーフェイスを保っていた。ふう。

 

「ねえ……マルチェロさん、どこにいるんだろう。もし会えたら、僕らのパーティーに入隊してくれないかな」

は? 何とおっしゃいました?

 

「ちょっ……何言ってんの? エイトったら。あたし嫌よあんな……」

「あんな? 嬢ちゃん、あんな何だ?」

嬢ちゃんはもぞもぞと口を動かしてごまかす。あんなM字ハゲとでも言いそうな勢いだったぜ。

 

「マルチェロさんだって、暗黒神には恨みあるでしょ? もし、一緒に戦えたら、すごい戦力だよ。頭のいい人だし、あんな迷路もすぐわかりそうじゃない? あとグランドクロスしてくれたらさ……」

そりゃ、あいつは強え。俺たち4人がかりでやっと膝をつかせたんだから。

 

「ドルマゲスも生きてたら、戦力になったかなあ。三人に分かれるし、恐竜みたいのに変身もできるし……」

兄貴のそんな冗談に場が少し和む。

 

「いやあ、兄貴、ドルマゲスはダメでがすよ。杖がなきゃあいつはヘタレ道化師。チンケな野望だけ持って、実現する力は持ってねえでがす」

「ヤンガス、たまにはいいこと言うわね」

「ヤンの言うとおりかもしれないな。杖に勝ったのはマルチェロさんとゼシカだけだし」

「エイト、違うわよ。あたしはみんなのおかげで生き残っただけ」

あはは、としばらくぶりに笑いが起きる。

 

「じゃあまた明日。もしダメなら明後日。作戦も変えながら行こう。……もし、マルチェロさんを見かけたら、全力で入隊をお願いしようね」

エイトの兄貴はすっかり笑顔になり、おやすみ、と可愛くおっしゃって寝室に行かれた。

 

大丈夫だ。俺たちなら。

 

 

だが魔城の攻略は遅々として進まない。複雑な造り、そして強い魔物。

 

俺たちパーティーに疲労感が表れてきた。今までにないことだ。

 

魔城とリーザスの嬢ちゃんの実家の往復が何日も続く。いつも希望的見解をおっしゃる兄貴が、口を閉ざしがちになってきた。

 

一撃でククールを瀕死にさせられたある晩のこと。今回の魔城攻略は早目に諦めて俺たちはリーザスに戻ろうとしていた。

 

「ラジュさんのところへ行こう」

珍しく、兄貴がリーザスから離れるとおっしゃった。

 

もちろん異論を唱える者はおらず、兄貴が嬢ちゃんの実家に連絡することにし、三角谷へ飛んだ。

 

 

 

久しぶりの三角谷。人の喧騒のないのもいいもんだ。別の意味で落ち着く。

 

「イライラしてるのう……」

トロデのおっさんと俺はさっそくバーで飲んでいる。

 

「兄貴がか?」

エイトの兄貴は今、回復の遅れているククールに付き添っている。

嬢ちゃんはニンフのラジュと一緒だ。

 

「ゼシカの実家にいかなかったのは、マダムと顔を合わせづらいからじゃろう」

「そうか? 俺たちの成果があがらなくたって、いつも変わらずに休ませてくれるじゃねえか」

俺の言葉に、おっさんは「だからこそ、じゃ」と言って酒をあおった。

 

なんでい、訳がわからねえ。

俺が怪訝な顔をしているもんだから、おっさんは俺に酌をしながら話し出した。

 

「わからん奴だな。ゼシカのことじゃよ。わしらは客だから、マダムも嫌な顔をするわけにいかぬ。じゃがゼシカは娘じゃ。相当言われておるじゃろう。こんな戦いは止めろと。わしはエイトにゼシカを外せと言った。一回だけでもよいと。エイトもそれには賛同した。おそらく、次回はゼシカをここに置いて行く」

そうか、だから三角谷に来たんだな。ラジュとはかなり親しくなった嬢ちゃんだ。実家で待つよりいいんだろう。

 

「兄貴、そこまでお考えで……。しかし、厳しいぜ? 嬢ちゃんなしじゃ」

「だから、ククールを死なせる訳にはいかんのじゃ。回復にどうしても力をつかうククールは、自分の身の守りがおろそかになる。あやつが瀕死になったらエイトがお前さんを回復するから、攻撃が手薄になる」

今日、早く上がったのはそのためか。

 

「じゃあ、相当厳しい戦いになるな」

「じゃろうな」

おっさんはふうとため息をついておかわりを注文した。

 

「しかし、嬢ちゃんは納得するかね」

「させるじゃろう。エイトなら」

まあ、そうしていただくしかないんだが……。

 

俺たちは無言で杯を重ねた。

 

 

 

三角谷へ来て2日目。ククールがすっかり回復したのを確認なさり、エイトの兄貴は嬢ちゃんに休憩を言い渡した。

嫌だと駄々をこねるかと思ったが、「わかった。死なないでね」とだけ言い、再び魔城へ向かう俺たちを見送った。

 




次も魔城攻略です。
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