※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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悩めるエイトさん、ゼシカを休ませ、レベルアップに励みます。エイトさんの語りです。


迷いと嫉妬と自信喪失

「やっぱりキツいね」

暗黒魔城で3体で襲ってきた魔物を倒したところで、僕はヤンにベホマをかけた。

 

「地下の回廊まではなんとか来られるようになったな。この先に暗黒神がいるんだろう。地図では……この回廊も何層かに分かれている。ずいぶん地下まで潜るんだな」

ククールは地図をにらんで言う。

 

3人での行動は、ゼシカが杖に操られていたときと同じ状況だ。

あの時もキツかった。僕たちは4人で一つのパーティーなんだって改めて実感したのを覚えてる。

 

「僕ら3人で回廊の最後まで行かれるようになったら、ゼシカを入れる」

「おい、待てよリーダー。ゼシカなしじゃ無理だって」

ククールの言葉に、ヤンもうなずいた。でも駄目なんだ。今のままじゃ。

 

「いいんだ。僕がもっと強くなればいいんだから。……ゼシカの回復はククールに任せて、僕はヤンの回復をする。ククールは魔力があるけど、僕が一撃を決めるにはもっと強くなくちゃいけないんだ」

「エイトの兄貴? お言葉を返すようですが、兄貴はかなり強くおなりですぜ。ヤリも極めなすった」

ヤンはそう言って握りこぶしをつくって見せた。ありがとう、僕を信じてくれて。でも、まだまだなんだよ……。

 

 

ゼシカなしでの戦いが5回目を迎えた。三角谷に拠点を移してから、もう一週間が経っている。僕らはまだ回廊の途中で引き返すことを続けている。

進めない。僕たちを阻む魔物の群れ……。

 

目の前には5体の魔物。苦戦を強いられていた。

 

「兄貴!」

ああ、やられた。先に攻撃されちゃった。

 

「おいトゲトゲ! よそ見するな!」

ククールの声だ。大丈夫、敵はあと2体、かなり弱っているはず。

 

「くそう、兄貴の仇だ!」

ヤンのオノがふり下ろされる。

ククールのかえん切りも決まり、倒せたみたいだ。

 

「兄貴……兄貴」

ヤンが僕を呼んでる。泣かないでよ……。大丈夫。

 

「やべえ、今リーダーを蘇生してももうオレの力も尽きそうだ。リレミトすっぞ」

ごめん、ククール。意識が遠のいてくよ……あとはよろしく……。

 

 

 

風が冷たい。

ひんやりした……水?

 

「あれ……ここは……」

痛っ。背中打ってるな。

 

「お目覚めか? リーダー」

「ククール?」

 

ここは不思議な泉だった。

僕はククールに抱かれて、泉に浸かっている。

 

「わっ! ククール、君までびしょ濡れじゃないか! 降ろしてよ!」

「ばっ……暴れるな!」

僕を押さえようとするククールにしがみつくと、「みんな見てる」と小声でたしなめられた。

 

見ると、姿が戻った姫の心配そうな緑色の瞳がこちらを向いていた。

僕は精一杯の笑顔を姫に向けた。

 

「姫、ご心配おかけしてすみません。すぐよくなりますから……」

「エイト、無理しないで下さいね。あなたの命は何物にも変えられないのですから」

姫はまた馬の姿になっていく。その姿を見守った王が口を開いた。

「エイト、三角谷に戻るか?」

「はい。ですが、すみません……背中を打ってしまい、痛みがとれないので、ここで少し休みます」

今すぐには動けそうにない。

それに、一人になりたかった。

 

「大丈夫でがすか、兄貴? やらけえ布団の上の方がよくねえですか?」

「ありがとう、ヤン。……でも、もう少しここにいたいんだ」

 

「わかった。ここなら安全だ。痛みがひいたら……一人で帰れるな」

ククールはそう言って、そっと僕を水辺に降ろした。

 

「うん。ありがとう。明日朝には三角谷に戻るよ……」

 

 

 

みんな行ってしまった。

一人だ。

 

ドルマゲス戦の前みたいだ。

あのときは、なんとなくバラバラな気持ちのみんなを一たん離して、それぞれ考えてもらって、また集まった。もちろん僕自身の気持ちの整理もあった。

 

今は、違う。

僕が……僕だけが……恐れている。この旅の終わりを……。

 

みんな暗黒神に立ち向かうことを恐れていないのに、僕だけが……。

暗黒神を恐れているふりをして、旅の終わりを遅らせようとしているんだ……。

 

僕は何も見たくなくて、目を閉じ続けていた。泉の横、柔らかい草の上に寝そべっている。ククール、ちゃんと居心地いい場所に僕を降ろしてくれたんだね。

 

嫌な態度とってる僕に、ククールは優しい。

 

あれから、マルチェロさんの話をしないククール……。

 

この前、「オレを信じられないのか」って怒られて、サザンビークで愛し合った。

あの時も優しかった。

泣いている僕を、本当に慈しむように、抱いてくれた。

行為そのものは激しかったけど、触れる指先……包み込む手のひら……愛してるとささやく唇……全てが優しくて……涙が止まらなかった。

 

「なぜ泣くんだ」って何回も聞かれた。答えられなかった。だって、勝手に涙が出るんだ。

「信じろ」って何回も言われた。僕はうなずくことしかできなかった。

 

ククールを信じてるよ。

僕が僕自身を信じられなくなっているんだ。

 

マルチェロさんに勝ったあと……君は全力であの人を助けた。

何も変わっちゃいない、君とマルチェロさんの絆。

 

あの人は去った。

ククールは僕といるのに。

愛してる、信じろって何度も言われちゃうほど、僕がふらふらしてること、君にはわかるんだよね。

 

ああ、もう! 僕は……。

僕にはトロデーンがある。守らなきゃいけない場所がある。

トロデーンのみんな……王も姫も、僕は愛している。

僕の個人的な感情なんて、後回しにしなきゃいけない。

 

姫だって、国同士の約束を果たすために、あんなチャゴスと結婚しなきゃならないんだ。

姫……姫は多分……僕に対する感情を押さえている。一国の王女が、ヒラ兵士なんかとどうかなっちゃいけないって。

 

でも、僕がヒラ兵士じゃなくて、王族の身分だとしたら、姫はチャゴス王子との結婚を断ることができるんだろうか。サザンビークとの結婚の約束は次世代に任せるということにでもして……。

 

僕が姫と結婚できたら……。

そうすればククールは……。

 

僕が姫と結婚できなくても、阻止することはできるかもしれない。王だって、チャゴス王子を見てがっかりしてる。第一、姫が真剣に嫌がっている。破談の可能性がないとは言えないんだ。

 

サザンビークと戦争になるかもしれないな……。

それは最悪で最高のシナリオなんじゃ……。

 

 

ぼんやりといろんなことを考えていた。

 

 

少しうとうとまどろんでいると、不意に気配を感じ、飛び起きる。

 

 

「誰だ!」

槍を構える。……急に起き上がったら、頭がクラクラきた。

 

「さすが、勇者どのじゃのう」

「オディロいんちょ……じゃなくて、賢者さま?」

現れたのは、不思議な泉の賢者さまだった。姫の本当の姿を見抜いた人だ。

 

「お一人で悩んでらっしゃるな。まあ、槍を収め、お座りなされよ」

賢者さまはそう言って僕の隣に座る。僕は賢者さまの言う通りにした。

 

「お仲間はお前さんを待っておろう」

「はい」

 

「早く元気になりなされ」

賢者さまは僕の背に手を当てた。すると、痛みの残っていた部分が軽くなった。

 

「あれ……痛みが……なくなりました。じゃあ、帰ります」

「待たれよ」

「わっ!」

賢者さまは、立ち上がりかけた僕のチュニックの裾を思い切り引っ張る。そのおかげでよろめいて転んでしまった。

 

「まあまあ、もう少し元気になってから」

「はあ……」

賢者さまの近くにいると、思考を全部読み取られているようで怖い……。

 

「怖いことなどない」

うわっ! それもお見通し?

 

「お前さんは優しいのう。竜のようじゃ」

「竜ですか」

 

「竜は優しくて、愚かじゃ」

「愚かなのですか……じゃあ僕も……」

 

「お前さん、竜神の王に似ておる」

「竜神の王ですか? あの伝説の……」

 

「守りたいものがありすぎて、身を滅ぼしてしまった」

「守りたいものがありすぎて……?」

 

「今のお前さんと一緒じゃよ。国を守りたい、仲間を守りたい、愛する者全てを守りたい……」

「僕にはそんな力はありません」

 

「ほっほっほっ。あるぞあるぞ! ただ、意気地無しの愚か者なだけじゃ」

「お、愚か者かもしれませんが、意気地無しじゃありません!」

僕は思わず立ち上がった。しかしまたチュニックの裾を思い切り引っ張られて転んだ。

 

「怒るでない。よいか、お前さんは意気地無しの欲張りじゃ。全てをよい方向に向けようとしておる」

「……いけませんか?」

 

「マルチェロを倒して、良かったか?」

「核心を付きますね」

 

これには良かったと答えるしかない。マルチェロさんが杖と共にある以上、取り上げなきゃならなかったんだ。暗黒の力を倒さなきゃならないんだから。

 

「お前さん、決心が鈍ったようじゃ。前に会った時よりも」

「……」

 

「他人のことは分からん。どんなに推し量ったところで、分からんものだ。言っていることが常に本心とは限らぬし」

「僕は、卑怯者なんでしょうか。人の気持ちを都合よく解釈して……」

 

「卑怯ではない。愚かなのじゃ。じゃが、暗黒の神を倒すまでは、しがらみを気にせず、自分の思いを通すがよい。そのつもりじゃったろう? 今は先のことまで考えて行動する時期ではない。暗黒の神を倒すのは、そんなに容易くはない」

「……」

 

「お前さんは、まだ若い。考える時間はまだある。……命を捨てるような計画を立てるでないぞ……迎えがきたようじゃ」

迎え?

 

泉に向かって、ククールが歩いて来る。

……また涙が……。

 

「よお、復活したか? おっさんたちまた飲んでるから、いいトコ行こうぜ。それから、次回はゼシカも一緒に攻略だ。いい加減に仲間に入れろって怒ってるぜ」

ククールは僕の腕を掴むと、サザンビークに飛んだ。

 




いちゃつく二人の様子は()つきのほうでどうぞ。大した描写はありませんがお嫌いなかたは飛ばしてください。
次はゼシカを入れて魔城へ行こうという話になります。
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