※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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ちっさいラプソーンを倒し、次は大きくなったラプソーンを倒さなければなりません。ちょっと燃え尽き症候群のゼシカの語りです。
エイトさんはヤンガスを「ヤン」と呼びます。ヤンガスはゼシカを「嬢ちゃん」、ククールはエイトさんを「リーダー」、ヤンガスを「トゲトゲ」、ゼシカを時々「ハニー」と呼びます。


最終決戦
新たなお使い


「さあ、今後のことを考えようか……」

エイトがやれやれといった表情で言った。

あたしたちは、レティシアにいる。

 

気候も人々もあたたかいこの村。ともすれば、安息に満たされて、使命を忘れてしまいそう。

 

魔城でラプソーンを倒したあたしたち。

魔城も落ちて、あたしたちは完全に勝利したと思った。

 

それなのに、ラプソーンはまだいる。それも、赤ちゃんみたいだった身体がぐんぐん膨張し、おっさん顔で宙に浮いている。

 

あんなのありかよ、って、ククールじゃないけど言いたくもなる。

 

レティスは言った。

賢者の力を借りましょうと。

彼らの力は、オーブとなって存在しているはずだと。

そのオーブを探すために、あたしたちは「やまびこの笛」をレティスから預かった。力のこめられたオーブは笛の音に応えるという。

 

「この笛をピーヒャラピーヒャラ吹きながらそのなんだかわからん物を探すって訳だな? 街中と言わず、山でも谷でも、サヴェッラでも」

食事のときだった。ククールはあきれた様子でそんなことを言った。

 

「仕方がないよ。レティスがそう言うんだし」

エイトはさっきからずっとお皿の上のクレソンをつついている。

 

「レティスが、でがすね」

ヤンガスはぐいぐいお酒をあおる。もうだいぶできあがっているわね。

 

「あのプヨプヨ、闇の世界から魔物を送り出してるみたいだが、まだその時じゃねえのかな。オレならさっさと支配しちまうのに」

「また膜みたいのにはいってるよね。ドルマゲスみたい」

「保護膜だな。あいつ、あんな顔して意外とハコ入りだったんだなあ」

ははは、と、あきれ果てて笑うしかないあたしたち。

 

「疲れたよね、ゼシカ」

力なく笑ったあたしに、エイトは優しい。労るように声をかけてくれる。

 

燃え尽き症候群じゃないけれど、一気に気が抜けてしまった。

これ以上の力を、あたしたちは出せるの?

まだ……強くなれるの?

いえ。まだ強くならなきゃならないの?

 

 

 

治安のいいレティシア。

夜風に当たりたくて村へ出た。

 

おっとりと優しい人々。彼らの持つ独特の雰囲気は、あたしの心の隙間を埋める。

 

「ヒヒンッ……」

姫さまの声……。

あたしは声のした方へ向かった。

 

薄暗がりに静かに輝く白い身体。ああ、なんて気品があって美しいの。馬であることのお辛さを考えたら、あたしなんて比べものにならないほど自由。何を甘えたことを考えていたのかしら。

 

姫さま、と声をかけると、姫さまは可愛らしいお顔をすっと近づけてくださる。大きな瞳があたしを見る。何の迷いもない、澄んだ瞳。

 

「……ごめんなさい、ごめんなさい」

涙が後から後から出てくる。あたしは姫さまにすがって泣いた。姫さまのたてがみは柔らかくて気持ちよくて、背中は温かくて。

 

 

翌日、あたしはたくさんのせいすいとキメラの翼を持ち、姫さまと出かけた。

どうしても、話したかった。

 

「ゼシカさんありがとうございます。不思議な泉に連れてきて頂いて……」

「姫さま!」

人の姿に戻る姫さま。その理知的な唇から、次々と言葉が溢れた。竪琴の音色のように優しく、心地よく響く。

 

「ゼシカさん、昨日泣いてらしたでしょう? ……どうか、謝らないでくださいな。

ミーティアは辛くなどありません。エイトやみなさんと一緒にいられるのですから。ゼシカさんこそ、恐ろしい魔物といつも戦って、お怪我もされて。それなのにミーティアは何もして差し上げられません。本当にごめんなさい。

最後最後と覚悟して挑まれているのに、なかなか終わりの見えないこの戦い、みなさんのほうがどれほどお辛いか……。

ゼシカさん、全部終わったらお城に遊びに来て下さいね。リーザスにも伺いたいです。お母様のフィナンシェもいただきたいの。それから、ユリマちゃんやゲルダさん、アスカンタのキラさんにもお会いしたい……ああ、楽しみなことがたくさん!

ミーティアは楽しいことばかり考えているのです。……だからお願いです、どうか泣かないで、くれぐれも無理をなさらないでくださいね……。

ミーティアはずるいのです。楽しいことばかり考えていられるから、この旅が続けばよいのにと、時々考えてしまいます……」

 

「姫さま!」

ミーティア姫さまのお姿は、また白い馬の姿になっていった。

 

泣かないで、と言われたばかりなのに、また涙が出る。

 

この旅の目的……ドルトマゲスを倒すという目的が達せられても、次の目的はすぐに見えた。あの杖を壊すこと、そして暗黒の神を倒すこと。

杖の落とし前をつけるために、暗黒神を倒すことが新たなあたしの信じる道だとわかったから。

 

でもまた達せられなかった結果に、やっぱり自分の力不足が情けなくて。

 

どんなにムチや杖の腕が上がったって、強力な魔術を使えたって、敵わないんじゃないかって……。

 

 

「ゼシカ、お帰り。姫を連れて行ってくれてありがとう」

レティシアのルーラのポイントでエイトが待っていてくれた。

 

あたしにそう声をかけ、すぐに姫さまの手綱を持つ。

 

姫さまも嬉しそう。

 

あたしの入る隙間はない。トロデーンという国の人たち。

 

あたしは、ただの村人。

 

エイトときょうだいの契りを結んだわけでも、エイトの恋人でもない。

 

「ゼシカ、なんか元気ないね。やっぱり疲れたでしょ? 怖いことなかった?」

「えっ? あの、大丈夫よ。せいすいのおかげで魔物も寄ってこなかったから」

あたし、気を使われてるのかな。

 

「姫を繋いでくるから、先に村長さんちに行ってて。お昼、みんなで食べようね」

エイトはまだ疲れの残る笑顔を見せてあたしに背を向けた。

 

 

村長さんの家では、ククールとヤンガスが食事の準備をしていた。

 

「おう、ハニー、お疲れさん。メシできてるぞ」

「嬢ちゃん、待ちくたびれたぜ。さあ、座った座った」

いつもと変わらない、二人。

エイトも戻ってきて、四人で食事をする。

 

ククールが下らないことを言い、ヤンガスが怒る。エイトが笑って制し、ヤンガスが嬉しそうに赤くなる。それをククールがあたしに振りつつまたからかい、ヤンガスが……。

 

いつもと同じ雰囲気。

楽しい。

みんな大好き。

 

……あたし、もう、やめたほうがいいのかな。

 

 

午後、何をするでもなく、みんなレティシアの空気の中で安息の時を過ごした。

 

村の高台でエイトとククールが剣の稽古をしている。その横でヤンガスが大いびき。

 

あたしはレティスのところへ向かった。

 

「……賢者の力を借りねば、あの暗黒神を倒すことは難しいでしょう……」

「レティス、もし、もしもよ? あたしたち4人が3人になっても、暗黒神を倒せるかしら?」

レティスはしばらくあたしを見つめ、そして天を仰いだ。

 

「わかりません。暗黒神がどれほどの強さか、また、あなたがたがどれほどの強さになるか、想像つきません」

やっぱり、あたしたちがまだ強くなると踏んでいるんだわ。

 

「確実に、人は変わってゆきます」

「?」

再びレティスはあたしを見る。

 

「人の思いは変わっても、その根底に流れる優しさや熱い情熱は変わらない」

「わからないわ」

 

「気持ちの向かう先……何を目指すかということは変わるものです。しかし、あなたを突き動かすきっかけが何にせよ、あなたを動かす動力は同じ。愛情です」

愛情……。

 

「お兄さんに対する愛情、理不尽の果てに亡くなった人を思う愛情、辛い境遇にある人を思う愛情、そして……」

「そして?」

 

レティスは突然あたしをその背に乗せた。

 

 

バサバサバサッ!

 

 

レティスは舞い上がる。

あたしに世界を上から見せる。

 

「この広い世界を、暗黒神が我が物にしようとしている。しかしながら、あなたがた以外にそれを阻止できる人物は今はいません。あなたがたが失敗したり、このまま年月が経っても、何も変わらないかもしれません」

 

オークニス上空、雪の国。

トロデーン上空、暗い影におおわれている。

 

「世界のほとんどの人々は、あなたがたがなにをしようとしているのか知りません」

 

闇の遺跡だわ。それから煉獄島。サヴェッラ、ゴルド。

ゴルドの穴の底にはまだ……。

 

たくさんの人の思いがある……。

 

リーザス、マイエラ、アスカンタ、西の大陸……。

 

「それでも、暗黒神が倒れて欲しいと願う人はいます。願い、祈ることしかできないのです。暗黒神を倒せるのは、勇者のみ。……あなたのお兄さんも、そういう気持ちだったのでしょう。悪からあなたたちを守るため……」

 

 

村の入り口でおろしてもらった。

 

「ありがとう、レティス。あたし、何か答えが出そう」

そう言ったけれど、結局あたしは自分のことばかり。

 

それは、限界を意味しているのかも知れない。

 

 




次からオーブを探しに行きます。
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