※この作品はR-18です。

DQ8 勇者と寄り道の旅   作:ぽんぽんペイン

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ゼシカ登場です。ブラコンです。ゼシカの語りです。


強い人

どこの誰だか知らないけれど、ドルマゲスをやっつけたいあたしに味方があらわれたかも。それは、リーザス塔のてっぺんで出会った旅人たち。

悪いけれど、あたしは試してみることにした。あたしの味方となり得るかどうか。ただ、この人たち、見た目が……「怪しい」のよね……。

 

だって、馬車をひいた緑色の魔物とトゲトゲ兜のおじさんは、いかにもマンガみたいだし。エイトって人はまともそうだけど、あくびばっかりしてどこか頼りなさげ。あたしの大好きなサーベルト兄さんに顔が似ているから合格だけど。

 

最初はリーザス像の宝石ドロボウかと思ったわ。この塔の魔物は旅人などのよそ者を特に容赦なく襲うから、ドロボウもあんまり来ないんだけど、たまに腕だめしとかいって、戦闘能力の高い冒険家崩れのドロボウもいるのよね。

 

あ、あたし? あたしはゼシカ・アルバート。リーザス村に住んでいるわ。リーザス村はトロデーン城の管轄下にある小さな村よ。お水がいいから葡萄酒とか麦の蒸留酒とかが名産。少し南の港、ポルトリンクでは新鮮な海の幸も豊富にとれるわ。とても住みやすくていいところよ。つい最近まではね……。

 

トロデーン城が謎の呪いをかけられて、お城の人たちがみんな石になってしまったらしい、ってトラペッタの商人から聞いてはいたわ。でも、その人も実際に見たわけじゃないらしいし、にわかには信じられなかった。だけど、お城の兵隊さんたちの見回りも来ないし、何より、関所が破られたってことで、みんな警戒していたの。そして……。

 

宝石ドロボウ、いえ、エイトが言うには、呪いの話は本当で、呪いをかけたドルマゲスを探しているっていうのよ。緑の魔物はトロデーン城の王様で、綺麗な白馬はお姫様のミーティア姫。そしてエイトはお城の兵士だって。はっきり言って、あたしには信じられない。あたしはこの目で見ないと信じない主義なのよね。

 

サーベルト兄さんが殺されたこと……それは信じるわ。それこそ、他の人には信じられないかもしれないけれど、リーザス塔のてっぺんで見た幻影……。あれが本当のことなんでしょ?

あの気味の悪い道化師、あれがドルマゲス。あいつ、最初から兄さんが目的だったみたいじゃない? 宝石ドロボウなんかじゃない。宝石なんてちらりとも見なかったわ。リーザス塔に兄さんがやってくるのを待ち伏せしてたのよ! あの変態!

 

村のみんなも、サーベルト兄さんがかわいそうだ、って言うけれど、誰も兄さんを助けてくれなかったわ。どうして一人で塔に行かせたの? 関所が破られていたのよ! どんな奴がいるかわからないじゃない。弱虫よ、みんな。いくら兄さんが強いからって、正体不明の奴がいるかもしれない、魔物だらけの塔へ一人で行かせるなんて、ひどい。

 

みんな兄さんに頼りっきり。いえ、アルバート家に頼りっきり。最近は私の顔を見るたび、村がこれからどうなるか問いただしてくる。そんなことあたしにわかるわけないじゃない。みんな悲しそうな顔をしてるだけ。何も考えてない。

お母さんだってそう。喪に服しているだけで何もしやしない。あの家に閉じこもっていて何が変わるっていうの?

 

……あたしは、違う。あたしはサーベルト兄さんの仇を討ちたい! 今、あたしに考えられることはただ一つ、あいつを倒すことだけ。それがあたしの信じる道だから。たとえどんな困難だって耐えてみせるつもりよ。

 

村ではおかしな道化師ドルマゲスを恐れて、あたしとたたかってくれる仲間は誰もいない。リーザス像の前で見たことは、やっぱり信じてもらえなかった。

ポルクとマルク、あの子たちだけは味方になってくれたけど、いくらなんでも子供すぎるわよね。だから「村をお願い」と言ってきたけど、納得してくれたかな。一緒に来てって言えば来るだろうけど、どんな危険があるか知れないし、あたしじゃ保護者やってられない。もう少し大人だったらよかったのに。

 

一人でもドルマゲスを追う予定のあたしは、ポルトリンクで南へ向かう怪しい人影を見たって言う情報を追って、南の大陸へ行くと決めているわ。でも、南の大陸へ渡る定期船の航路に巨大な魔物がいて、定期船が運休している。で、ちょっとだましたみたいになったけど、その魔物退治をエイトたちにやってもらうことに。ふふっ、すぐに話にのってくれてラッキー! あんがい単純なのね。単細胞??

 

まあいいわ。この怪しいパーティーがあたしの目にかなうかどうかは、その魔物を仕留めてからね。腕がいまいちなら許さないわ。リーザス塔に登ってこれたのを見る限り、少しは期待できそうだけど。今は二人とものんきに船旅を楽しんでるようにしか見えないわね。本当に大丈夫なのかしら。

そういえば、エイトたちがこのポルトリンクに来るまで、ずいぶん日にちがあったけど、何してたのかしら。リーザス塔で会って、翌日、あたしは家を出て……その日の午後にはポルトリンクには到着していた。村で待っててとは言ったけれど、どうせすぐに彼らも追って来ると思ってたわ。まさか、ポルトリンクまでの道のりの魔物に手こずってたのかしら。それとも迷子?

 

定期船の航路に出るイカだかタコだかの魔物は、何しろ大きくて、ふざけて話しかけてくるっていうじゃない? まったくバカにしてるわよ。あたしもエイトたちと船に乗り、いざとなったらあたしだって戦う。武器はアルバート家に代々伝わるムチ。まあ、トゲトゲおじさんは見るからにガラ悪いしバカ力ありそうだから大丈夫だとは思うけど。ただ、リーダーのエイトは虫一匹殺せない感じがするのよね。

 

エイト、エイト……。彼、見れば見るほどサーベルト兄さんに似ている。少し幼い感じだけど、優しい雰囲気に黒い瞳。もう少し赤ければその茶色の髪だって、クセの強いところなんてそっくり。サーベルト兄さんが若返って帰ってきたみたいよ。エイト、あたしより年上だけど、幼い顔立ちだから同い年みたい。ふふっ、かわいいわ。

 

ちょっと観察っと……ええと、武器はブーメランね。エイトって兵士よね。剣は使えないのかしら。あたしはエイトに聞いてみた。

 

「剣? 使えるよ。兵士だからね。兵士の剣のほかは、今は銅のつるぎを持ってるんだ。拾ったものだけど」

エイトはにこにこして答えた。なんていい笑顔なの? サーベルト兄さんにそっくり! 癒される!

でもちょっと待って。拾った剣ですって? 剣のスキルも低いし、やる気あるのかしら、この人。おまけにブーメランだってよくみれば「ただの」ブーメランだし。聞けばスキルも低いじゃない。スキルと言えば、この「勇気」って何? 意識して上げなきゃいけないほど意気地なしなの? あたしは絶句してしまった。サーベルト兄さん……助けて!

 

「ゼシカさん、だよね? ここに出る魔物知ってる? 強いのかな」

「噂ではね。本当のところ、この目で見てないからなんとも言えないわ。誰もあたしを乗せてくれなくて」

エイトは、そう、と言って水平線を見やった。波の反射を受けて、少し細めた瞳に大地のぬくもりが浮かんだ気がした。

 

優しい人なんだわ。お城の呪いを解くための旅、ドルマゲスの呪いがなければこんな戦いだらけの旅なんてエイトに似合わない。でも、いくらエイトが優しくても駄目よ。あたしは強い人が好き。サーベルト兄さんのように、剣の腕のたつ人が好きなんだから。

 

「お兄さん、強い人だったんだよね」

「えっ? え、ええ」

あたし、兄さんのことを考えていたから、焦ってしまった。

 

「きみのお兄さんなら、その魔物を軽く倒せたかもしれないね。僕らはサーベルトさんのように強くないけれど、全力を尽くすよ」

悪びれず、にっこり笑うエイト。……なんだか頼りないわね。そりゃサーベルト兄さんなら一太刀でしょうけど。まあ、そんなふうに謙虚になられちゃうと、もし逃げだすようなことがあってもエイトを責めたりしないかも……。

 

さあ、船がとまったわ。頑張ってちょうだい!

 

 

 




エイトさんとサーベルトさんは酷似しているという設定です。リーザスやトラペッタがトロデーンの管轄下にあるとか、リーザスの名産品とかも勝手な設定です。次はゼシカがパーティーに加わります。
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